「ファクトフルネス」感想。賢い人ほど間違える!エリートがクイズでチンパンジーに負けた理由とは?

評価:★★★★★

より多くの命を救いたければ、クマよりもDVの被害を防がないといけない。そんなことは、数字を比べれば一目瞭然だ。
(本文引用)
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 弁護士や医師、銀行員・・・一流の頭脳をもつエリートたちが、チンパンジーにボロ負けした。
 しかも木登りではなく、クイズで。

 そのクイズの一例を挙げる。

 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
 A 約2倍になった
 B あまり変わっていない
 C 半分になった


 さて、あなたはどれを選ぶだろうか?


 
 本書は、事実(ファクト)に基づき世界を見つめ、より正しい行動・考え方へと自分を導く本。
 イメージはいったん外に置き、あくまで「数値が示す事実」が重要。
 
 「事実」から、自分がいかに勘違いをしていたか、誤った判断をしていたかを知ること(=ファクトフルネス)が、本書のねらいである。

 「事実なら毎日、新聞やニュースを見てるから知ってるよ」と言うかもしれない。
 しかしそこが落とし穴。

 実は連日報道されるニュースも、ファクトフルネスを妨げる要因。

 非常にまれな残酷な出来事に、目を奪われてはいないだろうか。
 それらの報道に、無暗に不安をあおられてはいないだろうか。
 そしてその陰に、もっと目を向けるべき“緊急事態”が隠れていることに、意識を向けたことがあるだろうか。

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 ファクトフルネスが養われないと、本当に助けなければならない人を助けることはできない。

 正しく恐れ、正しく自分の身を守るためには、ファクトフルネスを鍛えることが不可欠なのである。
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■「ファクトフルネス」内容



 本書の著者ハンス・ロスリングは医師。
 公衆衛生の専門家で、スウェーデンの「国境なき医師団」を立ち上げた人物であり、剣飲み芸人でもある。

 実は著者は、大学での講義の最後に剣飲みを披露する。

 それは「常識にとらわれない発想」を生徒に教え、ファクトフルネスを示すためだ。

 イメージや思い込み、古い知識、物事を二極化・分断化する思考、グラフはまっすぐ直線を描くという決めつけ・・・著者は「世界に対する固定観念」にメスをブスリ。

 なぜ人々は「間違った知識」を身につけてしまうのか。
 なぜ頭脳自慢のエリートたちが、シンプルな三択問題で、「チンパンジーのボール投げ」より低い正答率を出したのか。
 
 著者は数値から、世界の動きを緻密に分析。
 イメージや常識にとらわれず、本当に困っている人・助けねばならない問題をあぶり出していく。
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■「ファクトフルネス」感想



 「これぞ脳内革命!」と、思わず叫んだ一冊。
 世界の見え方が、目が回るほどグルリと変わる。

 「低所得国の女子、初等教育を修了してるのは何%?」
 「世界の30代男性は平均10年学校教育を受けている。さて女性は何年?」
 「2100年には今より人口が40億人増。その最大の理由は?」
 「世界中の1歳児。何らかの予防接種を受けているのは何%?」etc.

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 さまざまなクイズから、世界の経済・医療・教育事情を解説。
 解答と解説を読むうちに、自分が世界に対して「とてつもなく間違った認識・偏見・差別」を持っていることに気づかされる。
 それはもう、立ち直れないほど衝撃的なものだ。

 ではなぜ、人々はこれほど世界をわかっていないのか。

 本書ではその原因・対策を10個挙げるが、どれも心底納得できるものばかり。
 「ファクトフルネスを鍛える対策、やるなら今でしょ!」と居ても立ってもいられなくなる(と、このような焦りもファクトフルネスを妨げる原因なのだが・・・。)
 100万部超のベストセラーで、ビル・ゲイツが大卒の希望者全員にプレゼントしたというのも大いにうなずける。

 しかし数値で実態を暴き、真実を伝えようとする本は、本書だけではないだろう。
 
 ではなぜ「ファクトフルネス」は、世界的に受け入れられているのか。
 その理由は分析の緻密さや問題提起の鋭さ・・・もあるが、それ以上の魅力が本書には、ある。

 すべて著者の経験・失敗に基づいて書かれているのだ。
 
 たとえば著者はかつて、誤った知識で人を殺しかけたという。
 そしてその誤った知識で、のべ6万人の命が奪われたという。

 誤った知識とは、乳幼児のうつぶせ寝だ。

 著者が医学部を出たばかりの頃、赤ん坊はうつぶせ寝が推奨されていた。
 それは戦場の兵士が、あおむけ寝よりうつぶせ寝のほうが生存率が高かったから。
 あおむけだと吐しゃ物で窒息することがあるが、うつぶせならその不安がなかったからである。

 それを、母乳やミルクを吐き出しがちな赤ん坊に適用し、「乳児のうつぶせ寝」が推奨されるように。

 著者はその知識をもとに、ベビーカーであおむけに寝ている赤ちゃんを、わざわざうつぶせに直したのである。

 その後、赤ん坊はあおむけの状態で吐いても、反射神経で横を向けることが判明。
 うつぶせの方が気道を確保できず、危険であることがわかったのだ。

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 著者はその経験を述べながら、「思考のパターン化の危険性」を提示。

 「ひとつの集団の例をほかの集団にあてはめていないかを振り返る」

 (※この場合の「ひとつの集団とは“兵士”、ほかの集団は“赤ん坊”だ。)

パターン化の行き過ぎが、善意の陰に隠れて見えなくなってしまったのだ。

と語る。

 本書は他にも、著者の失敗談から「人間の思いこみ・誤った知識を持ってしまう原因」を解説。
 いずれも「あるある」と言いたくなるものばかり。
 よって、自分のこととして「誤った知識・偏った認識を持ってしまう危険性」を顧みることができる。

 さらに本書では、知識不足故の「いちゃもん」「炎上」にも言及。
 
 たとえば今、貧困の子どもを救う活動に対し「貧しい子を助けたら、人口が増えすぎて地球が滅ぶ」という発言をする動きがあるらしい。

 そのような発言について、著者はグゥの音も出ない分析でバッサリ撃退。

 「貧しい子供を助けると、人口はひたすら増え続ける」という主張は正しいようで正しくない。実際は、貧しい子供を助けないと、人口はひたすら増え続ける。

と主張する。

 その種明かしは、至極単純なもの。
 でもその単純なことに気づかないのが、人間の不思議なところ。

 「何でこんな簡単なことがわからなかったのか!」と、思わず頭をボコボコ。
 私の「脳みそ」史上、最大の革命が起こってしまった。
 まだ、剣飲みの芸を見た方が衝撃は少なかっただろう。

 実は今、私は子どもと「世界の貧困」について話し合っている。
 本書がまあー、役立つこと役立つこと。
 
 図やグラフ、写真なども豊富なので、家族で「世界の正しい味方」について学ぶことができる。

 一家に一冊置いておいて、決して損はない。
 10年後、20年後に本書を開いた時、果たして世界と本書はどう合致しているか、はたまた違っているか。

 今から非常に楽しみである。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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