井上荒野「ママがやった」感想。なぜママはパパを殺したのか。破綻した家族のハチャメチャな結末とは?

評価:★★★★★

こういう男は早死にするのかもしれない。いや、こういう男は、とっとと誰かが殺してしまうがいいのだ。
(本文引用)
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 「ママがやった」の副題は「MAMA KILLED HIM」
 聞いた瞬間、「ボヘミアン・ラプソディか!?」とツッコミを入れてしまった。(♪Mama~, just killed a man)。
 
 いえいえこちらは、ママが男を殺した話。
 QUEENは「ママ、僕は人を殺めてしまった」と嘆いているが、本書はママが人を殺める話。
 
 半世紀以上連れ添った夫を殺し、平然としているママと、とんでもない一計を案じる家族の物語である。

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■「ママがやった」あらすじ



 百々子は79歳、7歳年下の夫がいる。
 長女の手を借りながら、小料理屋を営んでいる。
 
 ある日、末っ子の創太が電話をすると、百々子は「ちょうど電話するところだった」という。

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 百々子の用件とは、夫を殺したこと。
 酔いつぶれていたところを窒息死させたのである。

 現場にはすでに、創太の姉二人も待機。
 呆然とした子どもたちを横に、百々子は平然とお米を研ぎ始める。

 そして百々子は言う。

 「ママはいいわよべつに、刑務所に入ったって」


 しかし娘たちは引き止める。
 当の母親はのんびりとした思案顔。

 いったいなぜ百々子は夫・拓人を殺すに至ったのか。
 
 そして家族が達した結論とは?
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■「ママがやった」感想



 まーーー、よくもここまで破綻した一族を描けるものだ!
 百々子の家族は家族そろって、良く言えば自由奔放、普通に言えば「だらしがない(特に「性」に関して)」。
 
 殺人は断じていけないが、何が起きても不思議ではない一家である。

 本書は8話からなる連作短編集。
 一話ごとに、百々子一家の歴史を遡り、「なぜママはパパを殺すにいたったか」をつぶさに追う。

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 はっきり言って、拓人をはじめ子どもも孫もかなりどうしようもない人間ばかり。
 
 長女は相手を変えては不倫と二股を続け、堕胎すること数回。
 ついには二人の男から同時に、堕胎手術のお金をせびる。

 次女は比較的まともだが、孫娘は周囲を顧みない気まぐれ娘。
 
 そして殺されたパパ・拓人は恋愛狂で、死ぬまで若い愛人を絶やさなかった。

 最終章では百々子と拓人のなれそめに触れているが、これも一悶着、二悶着ある衝撃のエピソードだ。
 
 私はかなり真面目に生きてきたほうなので、「こんな人いるの!?」と目玉が飛び出る思いで、時には反吐が出そうな思いで文字を追った。

 しかしこれが不思議と不快ではない。

 人格の破綻した者同士だからこそ、互いを信じ、許すような愛が感じられる。
 「普通」の感覚ならとうてい許されないであろう行動が、不真面目さゆえに、深い愛で許されている。

 理想的な生活ばかりが愛ではない。
 ぶっ壊れた生活のなかだからこそ、育める愛、許せる愛があるのだと、何だか妙に温かい気持ちで読むことができた。
 
 とはいえ、結果的にママはやってしまった。
 半世紀も目をつぶってきたのに、ママはやった。

 つまりは、どんな家族にも、どんな人にも「許せないもの・譲れないもの」があるということ。
 踏んではいけない地雷があるということ。
 どんなに破綻した人々にも、「最後まで残るまともさ、プライド」というのはあるものなのだ。

 しかしさすが井上荒野の作品。
 そうは問屋が卸さなかった。

 「何だ、案外まともなとこ、あるじゃん!」と思いラストに差し掛かった頃、百々子たちはとんでもない所業に・・・。

 小説としては面白いが、本当にこんな人がいたら・・・絶対関わりたくない!!

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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