「グッド・フライト、グッド・ナイト パイロットが誘う最高の空旅」感想。そうか、だからパイロット飲酒問題は重罪なのだ!

評価:★★★★★

「二度と一緒に飛ぶことがなかったとしても、忘れてしまいたくはないからね」と機長は言った。
(本文引用)
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 「くらしのきほん」編集長の松浦弥太郎氏が推薦していると聞き、購入した。

 それ以前に、装丁がいい。

 読めばきっと心がスーッと洗われ、人として大事な「何か」がグッとつかめそう・・・。
 
 そんな優しさ、知性、気高さを備えたオーラが、本書にはある。
 「この本は間違いない」と、ピンとこさせる凛々しさが、本書にはある。

 つまり私は「ジャケ買い」したわけだが、こういう勘はホントに当たる。


 
 「グッド・フライト、グッド・ナイト」の素晴らしさは、予想をはるかに上回るものだった。

  「これ、本当に人間が書いたの? 空の妖精が書いたんじゃないかしら?」と思うほど美しくてロマンチック。

 それでいて本書はやはり、人間にしか書けない内容。
 パイロットならではの知識・技能および、人を和ませる明るさ・優しさ・知性が文章からあふれている。

 サン・テグジュペリ「夜間飛行」に匹敵する名エッセイと言われるのも納得。
 
 「夜間飛行」同様、後世にわたり読み継がれるであろう極上エッセイだ。
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■「グッド・フライト、グッド・ナイト」内容



 著者マーク・ヴァンホーナッカーは国際線のパイロット。

 前職は経営コンサルタントだった。

 本書では著者の幼少時代やパイロットになった経緯、パイロットならではの考え方や物の見方、仲間との絆、夜間飛行の魅力などについて綴っていく。

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 パイロットになる前はわからなかったこと、見えなかったこと、予想もつかなかったこと、そして地上の人々に伝えたいこととは?
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■「グッド・フライト、グッド・ナイト」感想



 本書の大きな魅力は2つある。

 1つはシビれるほど詩的で知的なことだ。

 「ニューヨーカー」誌は本書について、「科学者の脳と詩人の心で書かれた本」と絶賛しているが、まさにそのとおり。

 飛行機が飛ぶメカニズムを、空気のとらえ方から詳しく解説。
 腕を伸ばし風を受けるだけで、旋回のしくみがわかる実験まで紹介されている。
 
 またパイロットでないと経験できない思考技術も、みっちり説明。 

 パイロットは手動で山頂高度に“寒冷用修正”を加えなければならない。一万フィートの山の上を飛ぶときは、だいたい一万二〇〇〇フィートで通過したいところだが、外気温が非常に低いときは山が一万二〇〇〇フィートにのびたように扱い、一万四〇〇〇フィートで通過する。冬になって山頂の岩が成長したかのように処理するのだ。パイロットの頭のなかでは、寒さが大地を覆う頃、山は空に向かってのびる。そして春になると縮むのである。


地球を空から見たら、どんなふうに見えるのだろう。パイロットになる前にこういう質問をされたなら、やはり地方出身者らしく、住んでいる場所や旅行した場所など、自分が見てきたものを中心に応えただろう。

 

だが、今はちがう。パイロットとしては、地表の大部分には人が住んでいない、と答える。


 その他、飛行機全体の重量が飛行時間・距離にどれほど影響を及ぼすかも、細かく説明(本書を読めば荷物の重量制限に、めちゃくちゃ敏感になるはず!)。
 
 実に科学的な解説が随所にされている。

 その一方で、本書はうっとりするほどロマンチック。
 特に「Night」の章は、読むだけで夜景の美しさに吸い込まれそう・・・。

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 流れ星やオーロラ、車のライトが連なる帯、必要最小限の光から見える「地上の真実」・・・。

 「Night」の章は、さながら空の「極夜行」。
 読むうちにどんどん、昼よりも、漆黒の夜が好きになっていきそうだ。

 そして本書の魅力2つめは、「仕事をするうえで最も重要なこと」がわかる点。
 
 その「最も重要なこと」とは、「信頼」だ。

 第7章「Encounters:出会い、遭遇」では、パイロットたちの絆について書かれている。

 空の仕事の特徴は、メンバーが流動的な点だ。
 
 国や空港によって、一緒に仕事をする人はその都度異なる。

 相手の姿が見えない状態で、連携プレーをとることもある。

 そこで著者はこう語る。

 パイロットになる前に、こんなにも短い出会いと別れを繰り返す職業だと知っていたら、それは空を飛ぶ代償だと思ったかもしれない。しかし仕事仲間の顔や名前がわからないからこそ、親切が身に染みることもある。


 そしてパイロットらはフライトの後、次のパイロットのためにコックピットをきちんと整えるという。

 孤独な夜間飛行を始めるとき、冷たい器材に囲まれた無人のコックピットで、そうした心遣いに出迎えられるのはいいものだ。


 パイロットのなかには、共に仕事をした人について、その都度日記に書き留める人もいるという。
 常に一期一会の気持ちで、空の安全を守っているのだ。

 そこでふと思い出した。
 昨今問題となっている、パイロットの飲酒問題だ。
 
 パイロットの飲酒は、乗客の命を脅かすもの。
 絶対にあってはならないことだ。

 しかし本書を読み、やや認識が変わった。
 乗客の命を脅かすことに加え、仕事仲間の信用を無惨に裏切る行為なのだ。

 本書を読むかぎり、飛行機が無事に飛べるのは、互いの信頼あってこそ。
 初対面や、姿の見えない人との仕事も多いため、「絶対の信頼」がないと到底仕事にならないのだ。

 私は航空業界の人間ではない。
 よってパイロット飲酒問題について、「乗客の命を奪う危険性」以外考えられなかった。

 だが本書を読み、さらに問題の根深さ・罪の重さがわかった。
 規定違反の飲酒は、空の仕事をするメンバーシップ、チームワークを破壊するもの。
 仕事そのものを底から崩壊させる行為なのだ。

 「グッド・フライト、グッド・ナイト」では、パイロットらの規定違反等については書かれていない。
 パイロットら職員たちが、いかに信頼しあい、快適な飛行に心を砕いているかがよくわかる。

 それだけに、昨今のパイロット飲酒問題が残念でならない。

 多くの真面目なパイロットからの、極上の空旅と夜景。
 そのプレゼントを汚さぬためにも、改善を見守りたいところである。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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