「青い鳥」(重松清)感想。「いじめ加害者」の立場で悩んでいる人、新学期前にぜひ読んでみて!

評価:★★★★★

 「嘘をつくのは、その子がひとりぼっちになりたくないからですよ。嘘をつかないとひとりぼっちになっちゃう子が、嘘をつくんです」
(本文引用)
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 「いじめ」はいじめている側が、絶対的に悪い。
 「いじめられている側にも原因が」なんて言い訳は通用しない。
 
 交通事故はまだ、「被害者が急に飛び出した」など被害者に非がある場合もあるだろう。

 しかし「いじめ」だけは、加害者が悪い。
 他人の人生を根底から破壊する、「加害者が絶対的に悪い犯罪行為」なのだ。

 ではどうすれば、「いじめ」はなくなるだろう。

 もしかすると今、いじめている人のなかには「いじめをやめたい」と思っている人もいるかもしれない。
 でも「自分を大物に見せるため」「周囲の手前、引くに引けない」など色々な理由で、「いじめ」をやめられなくなっている人もいるだろう。


 もし、もしも「本当はいじめなんてしたくない」と少しでも思っているのなら、本書を読んでほしい。
 
 本書の主人公・村内先生の存在を知ったら、あなたの中の「悪魔」がスウッと消えてくれるかもしれない。
 「ああ、だから自分はいじめがやめられなかったんだ」と初めて気づき、生まれ変われるかもしれない。

 そして村内先生のように、自分に対してこう語りかけることだろう。

 

自分を。嫌いになる前に。間に合ったんだよ。きみは。



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■「青い鳥」あらすじ



 村内は中学校の国語教師。
 正規教員ではなく臨時教員として、各地の学校をまわっている。

 実は村内は言葉をうまく話せない。
 吃音のため、なかなかスムーズに言葉を伝えることができないのだ。

 生徒たちは戸惑い、なかには陰でからかう生徒も。
 
 しかしそんな村内を、恩師と慕う生徒たちがいる。

 彼らの多くは、心の深い傷・闇をもった者。
 教師をナイフで切り付けてしまった子、父親が線路で飛び込み自殺をした子、両親に虐待された子・・・。

 特に「いじめの加害者」の生徒に、村内は徹底的に向き合う。

 「みんなは、野口くんを、踏みにじった。野口くんの、くっくっ、苦しみに、きききっ、気づかないほど、あの子のこっ、こっ、ことを、かっ、軽くしか見てなかったから・・・・・・だだだだから、先生は、くっ、クラスでいちばん、あの子の、こっ、ことを、たたたっ、たいせつに、してやるんだ」

 「いじめ」で、一人の生徒の人生を破壊した加害者たち。

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 彼らの心に、村内の言葉はどう響くのか。

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■「青い鳥」感想



 本書の魅力は、まず「いじめを絶対に許さない」という視点から描かれていること。
 さらにそこから「いじめの根本的な解決策」が、しっかり書かれている点だ。
 
 村内が施す解決策は、懲罰などではない。
 「いじめをやめよう!」とスローガンを掲げることでもない。
 加害者と被害者を引き離すことでもない。

 村内は、ただただ加害者のそばにいる。
 絶対に加害者を、ひとりぼっちにはしないのだ。

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 こう書くと、まるで「村内は加害者を擁護している」ように思えるかもしれない。

 しかし加害者をひとりぼっちにしないことが、加害者の真の改心につながっている。
 被害者の無念、悔しさを加害者に気づかせ、「いじめ・からかい」がいかに愚かしいことか、いかに心貧しい行為であるかをわからせるのだ。

 特に「村内のすごさ」がわかるのが、最終話「カッコウの卵」。

 中学時代、生徒や教師に暴力行為を重ね、手が付けられなかった少年・松本。
 松本は村内に救われ、大人になって所帯をもっても、村内のことを忘れずにいる。

 ある日、松本は偶然村内を発見。
 ぜひ会いたいと、村内が勤務している中学を訪れるが、そこで在校生と衝突。
 
 その在校生は村内の吃音をからかったのだ。

 頭にきた松本が在校生にすごんだところ、後に「暴行・恐喝された」と冤罪をかけられる。

 他の教師は生徒の言うことを信じ、松本を警察に突き出そうとするが、そこで村内が驚きの発言をする。

 「二人とも信じればいいじゃないですか」

 どちらかが嘘をついてるに違いない-その状況で「二人とも信じる」とは、どう考えても無理だ。
 しかしその「二人とも信じる」ことが、「いじめ」の根本解決につながるのだ。

 加害者はなぜ嘘をつくのか?
 なぜ加害者は、親や教師の前では「良い子」を演じるのか?

 その真相を村内は「ひとりぼっちになりたくないから」と言い切り、二人を同時に守る。
 
 被害者からすれば、「加害者を守る」ことに納得はいかないだろう。
 その場ですぐに「加害者はウソをついている」と言い切ってくれたほうが、どんなにいいかと思うだろう。

 しかし二人を信じる、二人をひとりぼっちにしないと村内が言い切った後、果たしてどういう展開になるか。

 それを読めば、「いじめの根本解決」の芽が見えてくる。
 
 解決に加え、決して再発もしないであろう至高の策が、ありありとわかるのだ。

 冬休みに入り、年明け、また登校前に「悩む子」がいることだろう。

 もし現在、「本当はいじめなんてしたくないのに、いじめがやめられない」と悩んでいるなら、本書は必読。
 加えて、「どうやらうちの子はいじめをしているらしい・・・」と悩む保護者の方にも読んでほしい。

 「ああ、もっと早くからこうすればよかったんだ」と後悔するかもしれないが、今ならまだ間に合う。
 1人ひとりが村内先生になれば、きっとまだ間に合うのだ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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