「雪男は向こうからやって来た」(角幡唯介)感想。雪男より面白い動物、それは・・・。

評価:★★★★★

わたしは自分でも何かを見てみたくなってしまっていた。雪男が本当に現れて、これまでの世界観が壊されたらどうなるのか。
(本文引用)
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 いきなりネタバレになるが、本書は「雪男を発見する物語」ではない。

 「雪男を発見した人間たちの物語」だ。
 
 「なーんだ」とガックリするかもしれないが、まぁそう言わずに読んでみてほしい。

 雪男そのものよりも「雪男をめぐる人間たち」を見たほうが、ずっと面白いことに気づくはず。

 何度も現場に足を運び、ついに帰らぬ人となった者。
 世にも美しい「足跡写真」を撮った者。
 「聞いて聞いて!」とばかりに、雪男体験を話す世界的登山家。
 そして、「雪男? なんだそりゃ?」とキョトンとする現地の人々・・・。

 誰も知らない知られちゃいけない、世界の七不思議のひとつ「雪男」。



 しかし実態は、我々人間のほうがよっぽど、奇々怪々でロマンあふれる生き物なのだ。

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■「雪男は向こうからやって来た」概要



 著者・角幡唯介は、チベット奥地ツァンポー峡谷を制覇するため、新聞社を辞める。
 
 ところが退社を聞きつけたある人物が、「待ってました」とばかりに角幡に声をかける。

 その誘いは何と「雪男の捜索」だった。

 「雪男なんているわけない」と思う角幡だが、気がつけば雪男捜索隊のメンバーに。

 まずは証言集めに奔走するが、有名登山家らが次々と「雪男を見た」と証言。

 著者のスタンスは徐々に揺らいでくるのだが・・・?

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■「雪男は向こうからやって来た」感想


 
 本書は新田次郎文学賞受賞作だ。

 「雪男捜索なんて本が、新田次郎文学賞?」と、私は最初首を傾げた。

 しかし読んで納得。

 本書は「雪男発見」を通し「人間発見」ができる本。
 
 日常生活では到底お目にかかれない、「人間の側面」がみえる一冊なのだ。

 角幡氏も緻密な証言集めや現場取材を通し、こう語っている。 

雪男にも興味はあるが、おそらくわたしはその正体よりも、雪男を見た時の人間の反応に興味があったのだ。

 続けて著者は、雪男を見てしまった時、自分のなかで大きな変化が起きるのでは、と書いている。
 その筆致には、どこか恐怖心を感じさせる。
 まるで「自分の知らない人間の姿を見てしまう、人間の扉を開けてしまう」のを怖れるかのような・・・。

 ネッシー、河童、天狗、ツチノコ等々、なぜ人間は未確認動物を見つけたいと思うのか。
 なぜ命を賭けてまで、UMAを追ってしまうのか。
 そしてなぜ「いてほしいような、いないでほしいような」不思議な感覚にとらわれるのか。

 雪男の捜索は、いわば人の心の捜索。
 本書を読む前と読んだ後では、人の見方が全く変わってくるだろう。
 毎日顔を突き合わせてる「あなたの家族」も、もしかすると「とんでもないこと」を考えているかもしれない。

 雪男よりもツチノコよりも面白い動物、それは「人間」なのだ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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