角幡唯介「極夜行」。読む人生と読まない人生、絶対変わる超絶スゴ本!

評価:★★★★★

 私には地球にいるというより、宇宙の一部としての地球の表面に俺はいる、という感覚があった。(本文引用)
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 40ウン年生きてきて、それなりに、いやかなりの本を読んできた。
 このブログで紹介しただけでも1,000冊以上は読んでいる。
 おそらく今まで6,000~7,000冊は読んでるだろう。

 「極夜行」は、そのなかで間違いなくベスト1。

 胸震わせ号泣した本、とびきり元気が出た本、その時その時「この本最高!」と思ってきた。
 しかし本書は、それらの本をガツーンッ!!と抜き去ってしまったのだ。

 なぜ「極夜行」がそれほど魅力的かというと、世界が本当に違って見えるから。

 本書を読んだ後、外に出ると、昨日まで見ていた風景が全く違うことに気づく。



 太陽、風、草、花、土、気温、そして家族(特に子ども)。
 
 自分と関わる事物すべてが愛おしく、全身で受け止めたくなる。
 自分の感覚を総動員して、その事物が発する熱量をドーンと感じたくなる。
 
 そして夜になれば、星の瞬きを目でしっかり感じ、冷気を頬で受け止めたくなる。

 人工物だらけの街に住み、こんなことを言える立場ではないかもしれない。
 しかし本書を読んだ後、改めて・・・いや、初めてこう思えたのだ。

 私はこんなに美しい世界に住んでいたのか、と。

 さらに私にとって革命的だったのは、子どもへの見方が大きく変わったことだ。

 大人の道理が通じず、時にイライラさせる子どもが、こんなに美しい存在だったのか、と。
 大人の論理が通じず、感覚で生きているからこそ、子どもとはこんなに素晴らしい存在なのだ、と。

 私事で恐縮だが、本書のおかげで子どもへのイラ立ちが激減した。
 
 今現在、育児に悩んでいる人には、ぜひ一読をおススメする。
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■「極夜行」概要



 本書のタイトルにある「極夜」とは、白夜の逆。
 一日中太陽が昇らない状態で、極北地域では半年も続くという。

 本書の舞台は、そんな極夜地域シオラパルク。
 先住民が住む地域としては、世界で最も北にある場所だ。

 ノンフィクション作家・探検家、角幡唯介氏は、そこを起点に旅をスタート。 

極夜の世界に行けば、真の闇を経験し、本物の太陽を見られるのではないか-。

 稀代の探検家による、4ヶ月もの「極夜行」。
 果たしてその結末は?

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■「極夜行」感想



 本書は「本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作」。
 審査では圧勝だったそうだが、そりゃそうだろう。
 
 帯に「これ以上の探検はムリです」と書かれているが、読者としては「これ以上の本はムリです、読書はムリです。もう会えません」と言いたいぐらい。

 描く世界のバカデカさ、未知の世界に読者を誘う半端じゃない吸引力、絶対に想像では書けない「事実は小説より“メチャクチャ”奇なり」力、そして何度も「ブッ」と吹き出すユーモラスな文章。

 「この本が賞をとらなきゃ、何がとるのよ!」と、私の中のマツコ・デラックスが思いっ切りツッコミを入れてしまった。

 本書の魅力は、とにかく「先が見えない」ことだ。
 この本が出版されているということは、著者は健在であることはわかる。

 しかし読みながら何度も「実は角幡さんは死んでいて、遺稿なのではないか」「実は文章は現地からメールで送られていて、本人は未だ行方不明なのではないか」・・・そんなことを真剣に思っていた。

 何しろ月光だけが頼りの超大自然だ。
 
 あると思っていた氷がなくなり、テントの重みに命の危険を感じ、セイウチや狼が自分をねらう。

 なかでも大きな敵は、飢餓。

 本書いちばんの「読みどころ」は、食糧危機の場面だ。
 ドッグフード含め食糧を保管したデポが、ことごとく白熊に荒らされ、いよいよ命の危機に瀕することに。

 狩りをしようにも、「極夜」という環境が枷に。
 角幡氏も犬も日に日に衰弱。
 「犬を食べる」という妄想というか計画が、角幡氏の頭の中でどんどん明確になっていく。

 ああ、もはやこれまでか!?

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 結末は本書をお読みいただくとして、「大自然の驚異」をこれほどまでに生々しく伝える本は、ちょっとない。
 読むだけで寿命が20年ぐらい縮みそうだ。

 そう聞くと、「何だかこの本、怖い・・・」と思うかもしれないが、これがあにはからんや、実に楽しく読める。
 ユーモア満点な文章と、時おりさしはさまれる「ちょっと情けないエピソード」が、濃すぎる内容をうまくマイルドにしている。

 命がけの探検と、およそ同一人物が経験したとは思えないような「ナサバナ」。
 そのバランスが絶妙なので、とてつもなくヘビーな内容なのに「なにこれ、おもしろーい!」という感じでグイグイ読める。
 
 ただの「重たいノンフィクション」に終わっていないところがまた、本書のすばらしさである。

 ちなみにそんなエピソードで秀逸なのは、「犬は●●が大好物」という件。
 私が犬を飼ったことがないから、知らないのかなぁ?
 すみません、本書を読んだら「目に見える風景全て」が変わったが、いちばん変わったのは「犬」と「その飼い主」に対する見方かも・・・。

 探検・冒険・登山を書いたノンフィクションは結構読んできたが、これほど地球・宇宙の雄大さ・残酷さ・美しさをビシビシ感じた本は初めて。
 
 そして人間・・・特に「感覚で生きている子ども」が、とてつもなく美しく神々しく見えるようになった。
 本書を読んでから、我が子に対して優しくなれるようになったのは、意外な副産物だった。

 自分の中にも、今まで埋もれていた、見たことのない太陽が顔を出したようだ。 

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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