「人工知能に哲学を教えたら」感想。AIと人間って違わない気がしてきた。

評価:★★★★★

人間のみが独創性をもち、人工知能は模倣しかできないと考え、人間と人工知能を分断するような近代的な発想は、そろそろ限界がきているのではないでしょうか。
(本文引用)
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 日経新聞「目利きが選ぶ3冊」で紹介されていたので、購入。
 読んでいる最中、偶然にも「人間とAI」を考えさせるニュースが。
 
 「EU、AIに倫理指針 ~人種や性別 差別防ぐ~」(2018年11月6日・日経新聞朝刊)。

 現在、融資や人事試採用にAIを活用する動きが出てきている。
 しかし大きな問題が。
 AIが人種・性別差別にかかわる偏ったデータを読み込み、差別的分析をする恐れがあるというのだ。

 そこで欧州連合は、AIの倫理指針を策定。
 「AIが判断に使ったデータなどの情報開示制度を創設」
 「AIの透明性などを監査する機関を設置」等の案が盛り込まれる予定という。



 こんなニュースを聞くと、一見「やっぱり人工知能は人工知能。人間が1つひとつ教えてあげないと、何もできないのよねぇ」などと思ってしまう。

 しかし本書を読んだら、そんな考えはひっくり返ってしまった。

 それは本書掲載の「トラックにワンワン!と叫んだ幼児」の話を読んだから。
 
 もしかすると人間のAIに違いなどないのでは?
 あるとすれば、受精卵から生まれてきたか否か・・・それぐらいしかないのではないか?
 そう思えてきたのだ。

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 人間とAIは絶対に違う!
 人間のほうが優れている!

 そう思う人は、一度、本書に目を通して見てほしい。
 「おやおや?」と、途端に自分の考えに自信がなくなってしまうだろう。

 ま、私のことなのだが・・・。
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■「人工知能に哲学を教えたら」概要



 本書では「人間はこう考えるけど、人工知能はどうなの?」と聞きたくなる疑問を徹底検証。

 「1人と5人、どっちの命をとる?」のトロッコ問題。
 自動運転の事故はどこに責任がある?
 AIに芸術はわかるの?
 AIに美人は判断できる?
 AIにとって幸福とは?

 そして終盤になると、今いちばん知りたいことへ。
 AIは本当に仕事を奪うのか、引いては「AIは人類を滅ぼすのか?」という疑問も検証。

 人間は人工知能に脅かされるのか。
 どうにも気になる「あんなこと・こんなこと」に哲学者がじっくり答えていく。

 果たしてその結果は?
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■「人工知能に哲学を教えたら」感想



 本書の魅力は「人間と人工知能の違いがわからなくなること」だ。

 昔から、人間とコンピュータの違いとなると、「人間は自分で考えることができるけど、機械は人間が教えてあげないといけない」と言う。
 私も当然、そう思っていた。

 だが、本書を読んだら、途端にその考えが揺らいだ。
 いや揺らぐどころか、底からぶち壊された。

 たとえば本書で紹介される「子どもは『ワンワン』をどうやって知るか?」のエピソード。
 1歳の男児を連れた母親が、犬のいる家の前を通るたびに「ワンワンだよ」と教えていた。
 
 しばらくして、男児はその家の前を通る時、「ワンワン!」と言うようになる。
 母親は子どもの成長を喜んだ。
 
 ところがある日、男児はトラックを指さし「ワンワン!」と叫んだ。
 トラックの周辺には犬もおらず、トラックに犬の絵が描かれているわけでもない。
 さて、なぜ男児はトラックを指さし「ワンワン!」と言ったのか。

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 答えは本書に書かれているが、このエピソードを読み、「あれ?じゃあ人間も人工知能もスタート地点は同じってことじゃない!」と膝を打った。

 その「認知の規則」に当てはめると、AIに差別排除の倫理規定を設けるニュースも、違って見えてくる。
 
 そもそも人間が差別をしていたから、AIも差別をするのだ。

 人間も、差別をしないように教育を受け、脳をプラグラミングされていれば、差別しない人間に育つ。
 しかし親や教師など、身近な大人が差別主義者だと、そこで育った人間は差別主義者となる。
 そんな差別主義者の思考がまざったデータをAIが読み取っているから、差別する恐れがある。
 差別排除の倫理規定を設ける。
 AIは差別しなくなる。
 
 「ワンワン事件」を当てはめると、このような循環が見えてくる。
 つまり人間も人工知能も、脳・思考回路の作られ方は同じ。

 「人間がコンピュータより上」とか「人間は自分で考えることができるがコンピュータはできない」というのは、極端に言うと「誤り」なのである。

 ではそこに生命が絡むとどうなるか。
 「そりゃ、人間とコンピュータでは、人間の命のほうが大事に決まってる」と思うだろう。
 
 しかし本書を読んでいると、その考えすら揺らいでくる。
 人間主体の目線から人工知能主体へと目線を変えた時、果たして命に順位はつけられるのか?
 
 「人間の生命のほうが大事なのは当然」という考えは、本書の第1章を詠み終えた頃には崩壊しているだろう。

 こういう本を読むと、つくづく「読書って面白いな」と感じ入る。
 今まで何の疑問ももたなかった「頑ななまでの自分の考え」が、見事に突き崩される。 
 
 そんな爽快感をくれた著者に、心からお礼を言いたい。
 
 ちなみに本書では、「人工知能と経済の未来」「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の対立構造についても言及。

 一緒に読むと、さらに深く楽しめるだろう。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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