「記憶はウソをつく」榎本博明。「言った」「言わない」の原因はどこからくる?

評価:★★★★★

本人はウソを言っているつもりなど毛頭ないのに、事実と違うことを言っていたりする。ある意味では、ウソをついているつもりがないだけに、始末が悪い。
 そうなると、事実というのは一体どこにあるのだろうか。

(本文引用)
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 本書は、加計学園の参考人招致でとりあげられていた一冊。

 「記憶にない」という証言について、本書の著者榎本博明さんがコメントを寄せていたため手に取りました。

 ところがその後、さらに「記憶の危うさ」を感じさせる大ニュースが。

 日大アメフト部の危険タックル問題です。

 もはや言った言わないで泥沼化していますが、私個人としては、日大の選手が一人で顔を出して謝罪会見をしたことに、心から敬意を表したいです。

 会見前の弁護士さんの話から、20歳そこそこの学生さんが「一人で顔を出して」謝罪会見をすることがどれほど危険であり、どれほど精神的に負担になるかがうかがえました。


 
 事実がどうあれ、「顔を出さない謝罪はない」と大きな決断をされた選手と保護者の方には・・・もうこれ以上辛い思いをしてほしくないと思います。
 逃げずに勇気を出して会見をした若者に、明るい未来が開けることを心から祈ります。

 さて本題。
 本書「記憶はウソをつく」は、人のウソを暴く本ではありません。
 ずばり「記憶のウソ」を暴く本。

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 虚言壁のある人間でなくても、どんな人間でも容易に「事実をねじまげて発言してしまう」ことを、様々な実験から明らかにした本です。

 本書を読んだら、もう恐ろしいぐらい、全てが疑わしく見えてきます。
 「人を疑いたくない」という純粋な方は読むのをやめましょう。

 一方、どんな証言・言葉・行動も、鵜呑みにするのは危険と考えている人には絶対おすすめの一冊。
 本書を読むと、有名コラムニストや各界の泰斗たちの言葉も全て疑わしく聞こえてきますが、それはそれで実に味わい深い日々を送ることができますよ。(人生を振り返る記事とか、もう突っ込みまくりながら読めて面白いのなんの・・・。)
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 「記憶はウソをつく」は様々な実験で「記憶のいい加減さ・危うさ」を暴き、捏造や冤罪の原因を追究していきます。

 「記憶のいい加減さなんて、どうやって暴けるの? 誰も真実を知らないのに」とお思いでしょう。
 
 方法は簡単。
 すでにあった記憶を探るのではなく、新たに記憶を作ってしまえばいいんです。

 本書の実験で特に面白いのは、「ショッピングモール実験」。

 仕掛人は、まず被験者から、「実際に経験したこと3つ」を作文にしてもらいます。
 
 そこに仕掛人が、「被験者が体験していない出来事」をこっそり1つプラス。

 その1つとは「ショッピングモールで迷子になり、泣いているところを老人に保護され、家族と再会する」というエピソード。

 実は被験者たちはショッピングモールで迷子になった経験などありません。 
 その事実を家族に確かめたうえで、仕掛人はわざと「迷子になったというエピソード」を追加します。

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 仕掛人はその後、被験者と面談。
 「被験者の子どもの頃のエピソード」として、「被験者が実際に体験したこと」+「実際に体験していない迷子エピソード」の計4つを読み上げます。

 そして被験者に、この4つのエピソードで思い出すことを記入してもらいます。

 結果は驚くべきもの。

 被験者たちは、ショッピングモールで迷子になった経験がないのに、迷子になった時のことを真実味をもって語り出したのです。
 
 記憶の捏造が、見事に行なわれた瞬間です。

 このショッピングモール実験をもとに、著者は記憶の危うさの歴史を次々と紹介。
 
 たとえば米国で、4年前と支持政党を変えた人だけを抽出し「支持政党を変えたかどうか」を聞いたところ、何と9割の人が「支持政党を変えていない」と答えたとか。
 「いやいや、変えてるじゃん!」と光の速さで突っ込みたくなりますが、それだけ記憶というのは怪しいものなんです。

 本書ではその他、イメージによる記憶の捏造にも言及。
 イメージが固定されると、ひ弱な女性が犯人なのに、屈強な男性が犯人にされる可能性も十分すぎるほどあるんです。

 作中で著者も言っていますが、本書を読んだら、1分1秒もアリバイの無い状況が作れなくなります。
 私なんて、本書を読んだら怖くなって、レシートとか全部取っておくようになりましたよ。

 記憶の捏造がわが身に忍び寄ってきたらと思うと、夜寝ているときもアリバイが欲しくなります・・・。
 読んでよかったけど読まなきゃよかった、なんて複雑な心境です。
 
 ちなみに本書を読んでいる最中、ある著名人が新聞でこんなことを書いていました。

 「●●のニュースが飛び込んできた時、母親が僕を叩き起こしたことを今でも覚えています」

 「叩き起こす」なんてこと、本当にあるのかな?と、疑いの目で読んでしまいました。
 どうでもよいことですが。

 日大の危険タックル問題も、記憶の危うさが焦点になっています。
 ケガをした学生さん、そしてケガをさせてしまった学生さん、2人の若者の将来のためにも、複数の目を通して真相が明らかになることを切に望みます。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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