「吃音」感想。本屋大賞ノンフィクション賞候補作。非吃音者が知るべき課題がここにある。

評価:★★★★★

「残り、時間が・・・・・・、少ないから、こそ、私は、訓練をしたいんです。死ぬ、までに、どうしても、思うように、話すという経験、を、してみたいの、です」
(本文引用)
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 吃音に悩んだ著者が、15年以上かけた取り組みの結実。

 「Yahoo!本屋大賞ノンフィクション賞候補作」で、今もっとも注目のルポといえるだろう。

 しかし手に取るのはやはり吃音者や、そのご家族が多いのだろうか。
 
 だとすれば問題だ。

 この本は、非吃音者こそ読むべき。

 非吃音者の対応次第で、吃音者の人生は天と地ほども差が出る。
 大げさではなく、生死を分けてしまうのだから。


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■「吃音」内容



 本書は、ある男性の飛び降り自殺から始まる。

 吃音を苦にして、公団住宅から飛び降りたのだ。

 しかし彼は一命を取り止め、現在は一人娘と暮らしている。

 著者は彼をはじめ、全国の吃音者および家族にインタビュー。
 
 そこに立ちはだかるのは「仕事」の壁。

 就職活動で筆記で好成績をあげても、面接でつまずく。 
 話さなくてよい技術職で実績を上げたものの、そのために管理職となり、会議やプレゼンが障害に。
 業務報告がうまくできず、上司に罵倒されつづけ、自死する者も・・・。

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 吃音者が安定した職につき、長く仕事を続けることがいかに困難か。

 数多くのインタビューから、「吃音をめぐる過酷な現実」をあぶりだす。
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■「吃音」感想



 恥ずかしながら、吃音の悩みがこれほど深く、つらく、苦しいものとは知らなかった。

 なぜ吃音がこれほどつらいか。

 本書を読むかぎり、最大の理由は「安定した収入を得られないこと」。

 吃音により電話をとれない、会議で発言できない、業務報告ができない、そもそも面接が通らない。

 本書に登場する方々は、総じて高学歴で、専門知識や高度な技術を持っている。
 しかし「電話」「会議」「面接」という「話すこと」が大きな壁となり、「安定した収入確保」が難しくなってしまうのだ。

 登場する吃音者のなかには、実際に命を絶った者もいる。

 吃音だからこそ人の役に立ちたいと、看護師になった男性。
 しかし彼は職場の無理解・パワハラが度重なり、部屋でひとり冷たくなっていた。

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 吃音で仕事がスムーズにいかず、周囲に責め立てられ、いつ辞めさせられるかもわからない。
 彼の自殺の原因は、非吃音者たちの無理解。

 つまり非吃音者の理解・対応は、吃音者の命の鍵を握っているのだ。

 だからといって、暗い話ばかりではない。
 職場全体をあげて、驚くほど吃音対策を徹底させてる組織もある。

 会話補助装置を導入し、吃音者の技術・経験を生かせる仕事に配置。
 そこで働きはじめた吃音者が、どれほど生き生きすることか。

 心が軽くなれば、吃音の症状が和らぐことも多いという。
 
 職場・非吃音者の対応によって、吃音者の人生は180度変わるのだ。

 だから本書は、非吃音者こそ読むべき。
 
 吃音者を死に追いやるか。
 吃音者に命を吹き込むか。

 吃音への理解・対応は、そのまま生命を左右する。
 本書は、そんな「事の重大さ・深刻さ」を世の中に知らせてくれている。
 
 もし読まなかったらと思うと、戦慄する。
 私は誰かを、死に追いやってしまうかもしれない。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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