「逃げ出せなかった君へ」感想。「会社を辞めたら行くところがない」と思ってる人、命を救うつもりで読んで!
評価:★★★★★
「鳥かごの中の世界だけしか見せず、外の広大な世界への恐怖を植え付けることで、逃げられなくする。彼らの常とう手段です。でもひとたび鳥かごから逃げ出してはばたけば、どこへでも行けます」
(本文引用)
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「人の命」がかかっているため、結論からまず書かせてもらう。
「自分はダメ人間」「クズだ」と思っていたら、絶対に読んでほしい。
「この会社を辞めたら、他にいくところがない」と思っていたら、絶対に読んでほしい。
「あの人、罵倒するときはひどいけど、褒めてくれるときもある」などと思っていたら、絶対に読んでほしい。
「今、この状況を変えることはできない」と、少しでもがんじらがめの気分になっていたら、絶対に絶対に読んでほしい。
あなたの命は、あなたにしか守れない。
まずは「逃げ出せなかった君へ」を読み、自分の命を守ってほしい。
「逃げ出せた君」となり、人生を謳歌してほしい。
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村沢、夏野、大友は、投資用マンション販売会社の新入社員。
夜中まで訪問販売をやらされ、毎日、社長に罵倒されつづけている。
3人は会社のやり方に疑問を持ちながらも、「3年続ければ・・・」「この1年を乗り越えれば」と日々我慢。
しかし異常な長時間労働と苛烈なパワハラで、身も心も破壊されていく。
ある日3人は、夜中にほんのひとときビールを飲む。
それは世界一、人生一おいしいビールだった。
ひとときの酒宴を境に、3人の思いは変わっていく。
大友は退社を決意。
その代わり、社長のパワハラの実態をレコーダーに収録。
自分と、他の二人を救うための決死の策だった。
しかし遅かった。
最も優しかった男が、「逃げ出せなかった」が故に、最悪の選択をする。
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本書は6編からなる連作短編集。
村沢・夏野・大友の3人を軸に、様々な人物が、自分の仕事・生き方を見つめていく。
もともと連作短編集は好きだが、本書を読み、改めて連作短編の面白さに開眼。
居酒屋のバイトリーダー、警察官、定年を迎えた男性、音楽の女性教師等々、一見3人組と関係なさそうな人物が、実は3人組とは切っても切れない者ばかり。
独立した話を思いきや、徐々に3人組との「意外なかかわり」が判明していく経緯は、思わずゾクッとする面白さだ。
しかも彼ら1人ひとりと、3人組とのかかわりだけではない。
それぞれの物語をまたぎ、「実はあの時あの現場で、二人は出会っていた、すれ違っていた」ことがわかっていく。
関係なさそうな物語が、実は見えない糸でつながっており、気づかぬうちに大輪の花を咲かせていく。
「逃げ出せなかった君へ」は、連作短編集というものの魅力・醍醐味を存分に打ち出している。
一言、「うまい!」。
そしてもちろん、構成だけでなく物語自体も素晴らしい。
世の中でいちばん大切なものは何か。
それは「自分の命」に他ならない。
しかし多くの人は、命を削ってでも、何かを守ろうとしてしまう。
プライド、忍耐、会社の信用、報奨・・・。
客観的かつ冷静に考えると、それがいかにばかばかしく、くだらないことか。
大きな悲しみをもたらすことか。
本書はさまざまな形で、そのメッセージを主張。
パワハラだけでなく交通安全や近隣トラブル、若いころの過ちまで通して、一貫して「生命・人生の尊さ」を描き出す。
ひとつのメッセージについて、これほど多様な物語が書けるのか・・・とただただ脱帽した。
もしも今、「自分がいる場所」が辛いなら、本当に読んでみてほしい。
職場に限らず、学校でも家庭でもよい。
「自分という人間が傷つけられていく、自信をそぎ落とされていく」と感じたなら、手に取ってみてほしい。
きっとあなたの命、人生を救う特効薬になる。
「鳥かごの中の世界だけしか見せず、外の広大な世界への恐怖を植え付けることで、逃げられなくする。彼らの常とう手段です。でもひとたび鳥かごから逃げ出してはばたけば、どこへでも行けます」
(本文引用)
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タッタッタッと走り寄り、「好きですっ!」と告白したくなる作家がいる。
私にとって安藤祐介さんは、そんな存在だ。
(ちなみに他には、木内昇さん等)
「本のエンドロール」を読んだときの衝撃を、私は一生忘れない。
「こんなに面白くて温かい物語を書ける人が、世の中にいるのか!」と、私はドカンと打ちのめされた。
「作家とは、本を通して人々を幸せにする仕事なんだ。人々を笑顔にする職業なんだ」と、強く認識した。
そして今作「逃げ出せなかった君へ」。
本書は「本を通して幸せにする」どころではない。
「本を通して、人の命を救おうとしている」のだ。
私にとって安藤祐介さんは、そんな存在だ。
(ちなみに他には、木内昇さん等)
「本のエンドロール」を読んだときの衝撃を、私は一生忘れない。
「こんなに面白くて温かい物語を書ける人が、世の中にいるのか!」と、私はドカンと打ちのめされた。
「作家とは、本を通して人々を幸せにする仕事なんだ。人々を笑顔にする職業なんだ」と、強く認識した。
そして今作「逃げ出せなかった君へ」。
本書は「本を通して幸せにする」どころではない。
「本を通して、人の命を救おうとしている」のだ。
「人の命」がかかっているため、結論からまず書かせてもらう。
「自分はダメ人間」「クズだ」と思っていたら、絶対に読んでほしい。
「この会社を辞めたら、他にいくところがない」と思っていたら、絶対に読んでほしい。
「あの人、罵倒するときはひどいけど、褒めてくれるときもある」などと思っていたら、絶対に読んでほしい。
「今、この状況を変えることはできない」と、少しでもがんじらがめの気分になっていたら、絶対に絶対に読んでほしい。
あなたの命は、あなたにしか守れない。
まずは「逃げ出せなかった君へ」を読み、自分の命を守ってほしい。
「逃げ出せた君」となり、人生を謳歌してほしい。
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■「逃げ出せなかった君へ」あらすじ
村沢、夏野、大友は、投資用マンション販売会社の新入社員。
夜中まで訪問販売をやらされ、毎日、社長に罵倒されつづけている。
3人は会社のやり方に疑問を持ちながらも、「3年続ければ・・・」「この1年を乗り越えれば」と日々我慢。
しかし異常な長時間労働と苛烈なパワハラで、身も心も破壊されていく。
ある日3人は、夜中にほんのひとときビールを飲む。
それは世界一、人生一おいしいビールだった。
ひとときの酒宴を境に、3人の思いは変わっていく。
大友は退社を決意。
その代わり、社長のパワハラの実態をレコーダーに収録。
自分と、他の二人を救うための決死の策だった。
しかし遅かった。
最も優しかった男が、「逃げ出せなかった」が故に、最悪の選択をする。
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■「逃げ出せなかった君へ」感想
本書は6編からなる連作短編集。
村沢・夏野・大友の3人を軸に、様々な人物が、自分の仕事・生き方を見つめていく。
もともと連作短編集は好きだが、本書を読み、改めて連作短編の面白さに開眼。
居酒屋のバイトリーダー、警察官、定年を迎えた男性、音楽の女性教師等々、一見3人組と関係なさそうな人物が、実は3人組とは切っても切れない者ばかり。
独立した話を思いきや、徐々に3人組との「意外なかかわり」が判明していく経緯は、思わずゾクッとする面白さだ。
しかも彼ら1人ひとりと、3人組とのかかわりだけではない。
それぞれの物語をまたぎ、「実はあの時あの現場で、二人は出会っていた、すれ違っていた」ことがわかっていく。
関係なさそうな物語が、実は見えない糸でつながっており、気づかぬうちに大輪の花を咲かせていく。
「逃げ出せなかった君へ」は、連作短編集というものの魅力・醍醐味を存分に打ち出している。
一言、「うまい!」。
そしてもちろん、構成だけでなく物語自体も素晴らしい。
世の中でいちばん大切なものは何か。
それは「自分の命」に他ならない。
しかし多くの人は、命を削ってでも、何かを守ろうとしてしまう。
プライド、忍耐、会社の信用、報奨・・・。
客観的かつ冷静に考えると、それがいかにばかばかしく、くだらないことか。
大きな悲しみをもたらすことか。
本書はさまざまな形で、そのメッセージを主張。
パワハラだけでなく交通安全や近隣トラブル、若いころの過ちまで通して、一貫して「生命・人生の尊さ」を描き出す。
ひとつのメッセージについて、これほど多様な物語が書けるのか・・・とただただ脱帽した。
もしも今、「自分がいる場所」が辛いなら、本当に読んでみてほしい。
職場に限らず、学校でも家庭でもよい。
「自分という人間が傷つけられていく、自信をそぎ落とされていく」と感じたなら、手に取ってみてほしい。
きっとあなたの命、人生を救う特効薬になる。