「天国までの百マイル」(浅田次郎)感想。大晦日に1年分泣きました。
評価:★★★★★
俺は破産者で、一文なしで、女房子供にも愛想をつかされたろくでなしなんだ。頭の中がごちゃごちゃで、何をしているのかもよくわからない。ただ、おかあちゃんを殺しちゃならないと、そればかりを考えている。
俺、変かな。
(本文引用)
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そこでこの年末、読んだのが「天国までの百マイル」。
「親孝行を考えるのにいいかなあ」と、軽い気持ちで読んだのだが・・・これがもう、軽い気持ちで読めるようなもんじゃなかった。
とにかく泣ける、どうしようもなく泣けて泣けて仕方がない。
顔中の水道管が破裂したかと思うぐらい、涙で顔がグシャグシャになってしまった。
浅田次郎さんは「平成の泣かせ男」と言われているそうだが、ホント、そのとおり。
しかし本書は、ただのお涙頂戴小説ではない。
本書では、人間のとてつもなく悪い面も容赦なく描いている。
人間不信になりそうなのど、嫌な部分も膿を出すように描き切っている。
なのにこれほどまでに泣ける「天国までの百マイル」。
猛烈に泣ける秘密は、どこにあるのだろうか。
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主人公の城所安男は、現在一文無し。
かつては不動産業で贅沢な暮らしをしていたが、バブル崩壊で会社は倒産。
今は安月給を、別れた妻子に全て渡し、食うや食わずの生活を送っている。
そんななか、母親の狭心症が悪化。
主治医からも見放され、安男の兄姉たちもろくに見舞いにも来ない状況だ。
しかし安男だけはどうしても、母親を見捨てることができない。
そこで安男は一念発起。
「神の手」を持つ外科医のもとに、母をこっそり運び出す。
距離はざっと百マイル。
職場の車にマットを敷き詰め、命をかけた旅に出る。
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本書がどうにも泣けるのは、ただ「母の命を助ける」という物語ではないからだ。
この物語の素晴らしさは「誰もが皆、胸いっぱいの愛を秘めている」という点だ。
羽振りの良かった頃は、母親の容体に見向きもしなかった安男。
養育費をむしり取るような生活をする前妻。
悪魔のような高利貸し、ふがいない安男に手を焼く社長、そして浮草のように暮らす安男の恋人・マリ。
誰も彼も、本当に悪い人などいない。
「人生の良い時」に気づかなかった愛に、「最悪の時」に気づき、胸いっぱいの愛を開花させる。
その経緯がどうしようもなく泣けるのだ。
さらにその人間の不器用さを知るように、「愛」を受け止める母の姿勢が胸を打つ。
本当に相手を喜ばせる、幸せにするとは、何と難しいことなのか。
実は私も親を喜ばせているようで、「本当の喜び」にはまだ一マイルも進んでないのかもしれない。
来年は、夫や子ども、親兄弟、友人やお世話になっている方たちが「本当に嬉しいと思うこと」を、不器用ながら探していきたい。
一年後には、せめて一マイルぐらいは進んでいますように・・・。
俺は破産者で、一文なしで、女房子供にも愛想をつかされたろくでなしなんだ。頭の中がごちゃごちゃで、何をしているのかもよくわからない。ただ、おかあちゃんを殺しちゃならないと、そればかりを考えている。
俺、変かな。
(本文引用)
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年末年始になると、どうしても親のことを考えてしまう。
その理由は実家に帰省するから。
毎年毎年、「一緒にお正月を過ごせるのは、あと何回なのだろう」・・・そんなことを考えてしまう。
私の母は、末っ子の私が結婚した時、「ああ、これで安心して死ねる」と思ったらしい。
その後15年近く経ち、幸いは母元気だが、年も年なのでいつ何があってもおかしくない。
「一つでも多く、嬉しいことを報告したい。楽しいことを伝えたい」
そんな思いで、私の子どもや私自身、夫についてのあれこれをメールや電話でちまちま報告している(本当はLINEにしたのだが、なぜかLINEには抵抗があるらしい・・・)。
その理由は実家に帰省するから。
毎年毎年、「一緒にお正月を過ごせるのは、あと何回なのだろう」・・・そんなことを考えてしまう。
私の母は、末っ子の私が結婚した時、「ああ、これで安心して死ねる」と思ったらしい。
その後15年近く経ち、幸いは母元気だが、年も年なのでいつ何があってもおかしくない。
「一つでも多く、嬉しいことを報告したい。楽しいことを伝えたい」
そんな思いで、私の子どもや私自身、夫についてのあれこれをメールや電話でちまちま報告している(本当はLINEにしたのだが、なぜかLINEには抵抗があるらしい・・・)。
そこでこの年末、読んだのが「天国までの百マイル」。
「親孝行を考えるのにいいかなあ」と、軽い気持ちで読んだのだが・・・これがもう、軽い気持ちで読めるようなもんじゃなかった。
とにかく泣ける、どうしようもなく泣けて泣けて仕方がない。
顔中の水道管が破裂したかと思うぐらい、涙で顔がグシャグシャになってしまった。
浅田次郎さんは「平成の泣かせ男」と言われているそうだが、ホント、そのとおり。
しかし本書は、ただのお涙頂戴小説ではない。
本書では、人間のとてつもなく悪い面も容赦なく描いている。
人間不信になりそうなのど、嫌な部分も膿を出すように描き切っている。
なのにこれほどまでに泣ける「天国までの百マイル」。
猛烈に泣ける秘密は、どこにあるのだろうか。
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■「天国までの百マイル」あらすじ
主人公の城所安男は、現在一文無し。
かつては不動産業で贅沢な暮らしをしていたが、バブル崩壊で会社は倒産。
今は安月給を、別れた妻子に全て渡し、食うや食わずの生活を送っている。
そんななか、母親の狭心症が悪化。
主治医からも見放され、安男の兄姉たちもろくに見舞いにも来ない状況だ。
しかし安男だけはどうしても、母親を見捨てることができない。
そこで安男は一念発起。
「神の手」を持つ外科医のもとに、母をこっそり運び出す。
距離はざっと百マイル。
職場の車にマットを敷き詰め、命をかけた旅に出る。
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■「天国までの百マイル」感想
本書がどうにも泣けるのは、ただ「母の命を助ける」という物語ではないからだ。
この物語の素晴らしさは「誰もが皆、胸いっぱいの愛を秘めている」という点だ。
羽振りの良かった頃は、母親の容体に見向きもしなかった安男。
養育費をむしり取るような生活をする前妻。
悪魔のような高利貸し、ふがいない安男に手を焼く社長、そして浮草のように暮らす安男の恋人・マリ。
誰も彼も、本当に悪い人などいない。
「人生の良い時」に気づかなかった愛に、「最悪の時」に気づき、胸いっぱいの愛を開花させる。
その経緯がどうしようもなく泣けるのだ。
さらにその人間の不器用さを知るように、「愛」を受け止める母の姿勢が胸を打つ。
愛とは何とややこしいものなのか。(貧乏なおまえに助けて欲しくはない。金持ちのおまえに見捨てて欲しい。おかあさんはたぶん、そう思っている)
本当に相手を喜ばせる、幸せにするとは、何と難しいことなのか。
実は私も親を喜ばせているようで、「本当の喜び」にはまだ一マイルも進んでないのかもしれない。
来年は、夫や子ども、親兄弟、友人やお世話になっている方たちが「本当に嬉しいと思うこと」を、不器用ながら探していきたい。
一年後には、せめて一マイルぐらいは進んでいますように・・・。
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