角幡唯介「極夜行」。読む人生と読まない人生、絶対変わる超絶スゴ本!
評価:★★★★★
私には地球にいるというより、宇宙の一部としての地球の表面に俺はいる、という感覚があった。(本文引用)
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太陽、風、草、花、土、気温、そして家族(特に子ども)。
自分と関わる事物すべてが愛おしく、全身で受け止めたくなる。
自分の感覚を総動員して、その事物が発する熱量をドーンと感じたくなる。
そして夜になれば、星の瞬きを目でしっかり感じ、冷気を頬で受け止めたくなる。
人工物だらけの街に住み、こんなことを言える立場ではないかもしれない。
しかし本書を読んだ後、改めて・・・いや、初めてこう思えたのだ。
私はこんなに美しい世界に住んでいたのか、と。
さらに私にとって革命的だったのは、子どもへの見方が大きく変わったことだ。
大人の道理が通じず、時にイライラさせる子どもが、こんなに美しい存在だったのか、と。
大人の論理が通じず、感覚で生きているからこそ、子どもとはこんなに素晴らしい存在なのだ、と。
私事で恐縮だが、本書のおかげで子どもへのイラ立ちが激減した。
今現在、育児に悩んでいる人には、ぜひ一読をおススメする。
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本書のタイトルにある「極夜」とは、白夜の逆。
一日中太陽が昇らない状態で、極北地域では半年も続くという。
本書の舞台は、そんな極夜地域シオラパルク。
先住民が住む地域としては、世界で最も北にある場所だ。
ノンフィクション作家・探検家、角幡唯介氏は、そこを起点に旅をスタート。
果たしてその結末は?
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本書は「本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作」。
審査では圧勝だったそうだが、そりゃそうだろう。
帯に「これ以上の探検はムリです」と書かれているが、読者としては「これ以上の本はムリです、読書はムリです。もう会えません」と言いたいぐらい。
描く世界のバカデカさ、未知の世界に読者を誘う半端じゃない吸引力、絶対に想像では書けない「事実は小説より“メチャクチャ”奇なり」力、そして何度も「ブッ」と吹き出すユーモラスな文章。
「この本が賞をとらなきゃ、何がとるのよ!」と、私の中のマツコ・デラックスが思いっ切りツッコミを入れてしまった。
本書の魅力は、とにかく「先が見えない」ことだ。
この本が出版されているということは、著者は健在であることはわかる。
しかし読みながら何度も「実は角幡さんは死んでいて、遺稿なのではないか」「実は文章は現地からメールで送られていて、本人は未だ行方不明なのではないか」・・・そんなことを真剣に思っていた。
何しろ月光だけが頼りの超大自然だ。
あると思っていた氷がなくなり、テントの重みに命の危険を感じ、セイウチや狼が自分をねらう。
なかでも大きな敵は、飢餓。
本書いちばんの「読みどころ」は、食糧危機の場面だ。
ドッグフード含め食糧を保管したデポが、ことごとく白熊に荒らされ、いよいよ命の危機に瀕することに。
狩りをしようにも、「極夜」という環境が枷に。
角幡氏も犬も日に日に衰弱。
「犬を食べる」という妄想というか計画が、角幡氏の頭の中でどんどん明確になっていく。
ああ、もはやこれまでか!?
結末は本書をお読みいただくとして、「大自然の驚異」をこれほどまでに生々しく伝える本は、ちょっとない。
読むだけで寿命が20年ぐらい縮みそうだ。
そう聞くと、「何だかこの本、怖い・・・」と思うかもしれないが、これがあにはからんや、実に楽しく読める。
ユーモア満点な文章と、時おりさしはさまれる「ちょっと情けないエピソード」が、濃すぎる内容をうまくマイルドにしている。
命がけの探検と、およそ同一人物が経験したとは思えないような「ナサバナ」。
そのバランスが絶妙なので、とてつもなくヘビーな内容なのに「なにこれ、おもしろーい!」という感じでグイグイ読める。
ただの「重たいノンフィクション」に終わっていないところがまた、本書のすばらしさである。
ちなみにそんなエピソードで秀逸なのは、「犬は●●が大好物」という件。
私が犬を飼ったことがないから、知らないのかなぁ?
すみません、本書を読んだら「目に見える風景全て」が変わったが、いちばん変わったのは「犬」と「その飼い主」に対する見方かも・・・。
探検・冒険・登山を書いたノンフィクションは結構読んできたが、これほど地球・宇宙の雄大さ・残酷さ・美しさをビシビシ感じた本は初めて。
そして人間・・・特に「感覚で生きている子ども」が、とてつもなく美しく神々しく見えるようになった。
本書を読んでから、我が子に対して優しくなれるようになったのは、意外な副産物だった。
自分の中にも、今まで埋もれていた、見たことのない太陽が顔を出したようだ。
私には地球にいるというより、宇宙の一部としての地球の表面に俺はいる、という感覚があった。(本文引用)
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40ウン年生きてきて、それなりに、いやかなりの本を読んできた。
このブログで紹介しただけでも1,000冊以上は読んでいる。
おそらく今まで6,000~7,000冊は読んでるだろう。
「極夜行」は、そのなかで間違いなくベスト1。
胸震わせ号泣した本、とびきり元気が出た本、その時その時「この本最高!」と思ってきた。
しかし本書は、それらの本をガツーンッ!!と抜き去ってしまったのだ。
なぜ「極夜行」がそれほど魅力的かというと、世界が本当に違って見えるから。
本書を読んだ後、外に出ると、昨日まで見ていた風景が全く違うことに気づく。
このブログで紹介しただけでも1,000冊以上は読んでいる。
おそらく今まで6,000~7,000冊は読んでるだろう。
「極夜行」は、そのなかで間違いなくベスト1。
胸震わせ号泣した本、とびきり元気が出た本、その時その時「この本最高!」と思ってきた。
しかし本書は、それらの本をガツーンッ!!と抜き去ってしまったのだ。
なぜ「極夜行」がそれほど魅力的かというと、世界が本当に違って見えるから。
本書を読んだ後、外に出ると、昨日まで見ていた風景が全く違うことに気づく。
太陽、風、草、花、土、気温、そして家族(特に子ども)。
自分と関わる事物すべてが愛おしく、全身で受け止めたくなる。
自分の感覚を総動員して、その事物が発する熱量をドーンと感じたくなる。
そして夜になれば、星の瞬きを目でしっかり感じ、冷気を頬で受け止めたくなる。
人工物だらけの街に住み、こんなことを言える立場ではないかもしれない。
しかし本書を読んだ後、改めて・・・いや、初めてこう思えたのだ。
私はこんなに美しい世界に住んでいたのか、と。
さらに私にとって革命的だったのは、子どもへの見方が大きく変わったことだ。
大人の道理が通じず、時にイライラさせる子どもが、こんなに美しい存在だったのか、と。
大人の論理が通じず、感覚で生きているからこそ、子どもとはこんなに素晴らしい存在なのだ、と。
私事で恐縮だが、本書のおかげで子どもへのイラ立ちが激減した。
今現在、育児に悩んでいる人には、ぜひ一読をおススメする。
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■「極夜行」概要
本書のタイトルにある「極夜」とは、白夜の逆。
一日中太陽が昇らない状態で、極北地域では半年も続くという。
本書の舞台は、そんな極夜地域シオラパルク。
先住民が住む地域としては、世界で最も北にある場所だ。
ノンフィクション作家・探検家、角幡唯介氏は、そこを起点に旅をスタート。
稀代の探検家による、4ヶ月もの「極夜行」。極夜の世界に行けば、真の闇を経験し、本物の太陽を見られるのではないか-。
果たしてその結末は?
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■「極夜行」感想
本書は「本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作」。
審査では圧勝だったそうだが、そりゃそうだろう。
帯に「これ以上の探検はムリです」と書かれているが、読者としては「これ以上の本はムリです、読書はムリです。もう会えません」と言いたいぐらい。
描く世界のバカデカさ、未知の世界に読者を誘う半端じゃない吸引力、絶対に想像では書けない「事実は小説より“メチャクチャ”奇なり」力、そして何度も「ブッ」と吹き出すユーモラスな文章。
「この本が賞をとらなきゃ、何がとるのよ!」と、私の中のマツコ・デラックスが思いっ切りツッコミを入れてしまった。
本書の魅力は、とにかく「先が見えない」ことだ。
この本が出版されているということは、著者は健在であることはわかる。
しかし読みながら何度も「実は角幡さんは死んでいて、遺稿なのではないか」「実は文章は現地からメールで送られていて、本人は未だ行方不明なのではないか」・・・そんなことを真剣に思っていた。
何しろ月光だけが頼りの超大自然だ。
あると思っていた氷がなくなり、テントの重みに命の危険を感じ、セイウチや狼が自分をねらう。
なかでも大きな敵は、飢餓。
本書いちばんの「読みどころ」は、食糧危機の場面だ。
ドッグフード含め食糧を保管したデポが、ことごとく白熊に荒らされ、いよいよ命の危機に瀕することに。
狩りをしようにも、「極夜」という環境が枷に。
角幡氏も犬も日に日に衰弱。
「犬を食べる」という妄想というか計画が、角幡氏の頭の中でどんどん明確になっていく。
ああ、もはやこれまでか!?
結末は本書をお読みいただくとして、「大自然の驚異」をこれほどまでに生々しく伝える本は、ちょっとない。
読むだけで寿命が20年ぐらい縮みそうだ。
そう聞くと、「何だかこの本、怖い・・・」と思うかもしれないが、これがあにはからんや、実に楽しく読める。
ユーモア満点な文章と、時おりさしはさまれる「ちょっと情けないエピソード」が、濃すぎる内容をうまくマイルドにしている。
命がけの探検と、およそ同一人物が経験したとは思えないような「ナサバナ」。
そのバランスが絶妙なので、とてつもなくヘビーな内容なのに「なにこれ、おもしろーい!」という感じでグイグイ読める。
ただの「重たいノンフィクション」に終わっていないところがまた、本書のすばらしさである。
ちなみにそんなエピソードで秀逸なのは、「犬は●●が大好物」という件。
私が犬を飼ったことがないから、知らないのかなぁ?
すみません、本書を読んだら「目に見える風景全て」が変わったが、いちばん変わったのは「犬」と「その飼い主」に対する見方かも・・・。
探検・冒険・登山を書いたノンフィクションは結構読んできたが、これほど地球・宇宙の雄大さ・残酷さ・美しさをビシビシ感じた本は初めて。
そして人間・・・特に「感覚で生きている子ども」が、とてつもなく美しく神々しく見えるようになった。
本書を読んでから、我が子に対して優しくなれるようになったのは、意外な副産物だった。
自分の中にも、今まで埋もれていた、見たことのない太陽が顔を出したようだ。