石田衣良「約束」感想。東大生・読書好きおすすめの理由とは?

評価:★★★★★

 世界の果てまでいって、最後の力の一滴がかれるまで生きよう。
(本文引用)
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 プレジデントファミリーで、東大生が薦めていたため読んでみた。
 別に東大生でなくても構わないのだが、読書量が豊富な人が薦めているとなると、がぜん読みたくなる。

 そして読み終えた今、読書好きおすすめの理由が、はっきりわかった。

 読書の効用は、「さまざまな人生を生きられること」と「生きる力を与えてくれること」。

 物語を通して、自分とは違う靴を履き、人生を踏み出すパワーを得られることが読書の楽しさだ。

 石田衣良の「約束」は、まさにその効果を得られる一冊。

 設定が全く異なる7つの物語を通して、「よし生きよう!」と心底思わせてくれる珠玉の短編集だ。


 
 もし生きるのがつらくなったら、本書を手に取ってみてほしい。
 自分だけの人生を、ボロボロになっても生ききろうと、心底思えるだろう。
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■「約束」あらすじ



 小4のカンタには、自慢の幼なじみがいる。
 幼なじみの名はヨージ。

 勉強の運動も人柄も抜群で、学校のスター的存在だ。

 しかしある日、二人は突然悲劇に遭う。

 カンタの目の前で、ヨージは通り魔に刺殺されるのだ。

 カンタは事件以来、不安定になり、校庭で砂を食べるといった行動に出る。

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 優秀なヨージではなく、自分が死ねばよかった・・・そう思っているのだ。

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■「約束」感想



 先述した通り、本書は7編からなる短編集。
 それぞれ登場人物も設定も、何もかもがガラリと違う。
 
 しかし一つだけ、大きな共通点がある。

 皆、「生きるのを放棄しかけていたこと」だ。

 親友が殺されたことで、「自分が死ねばよかった」と苦しむ少年。
 夫が不倫相手と事故死、次いで子どもが変調をきたし、疲弊する母親。
 人生に虚しさを覚え、不登校になる中学生。
 若くして夫をガンで亡くし、幸せの意味を問い続ける女性・・・。

 皆、人生のどん底を経験し、生きるのをやめようとしている。
 しかしそこから、彼らは静かに確実に再生。
 一度力尽きかけた人々が、新たに力を得ていく過程は、読むだけで生きる力がわいてくる。
 自分の心の泉に、まだこんなに水が残っていたのか・・・と驚かされるのだ。

 なかでもオススメなのは、第2話「青色のエグジット」。

 引きこもりだった息子は、列車事故に遭い片足を失う。
 
 自暴自棄になった息子は、手がつけられないほどわがままに。
 両親は息子の言いなりになる。

 そんなある日、息子はスキューバダイビングと出会う。
 片足がなくてもできるダイビング教室に通い、息子は変わっていくが・・・?

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 本書に収められた物語は、全て「登場人物の心の変化」が見どころだ。
 なかでも「青色のエグジット」は、変化が劇的。
 
 「もう生きていても楽しいことはないだろう」とあきらめていた家族が、思わぬ形で息を吹き返す姿には、ただただ涙。
 
 生きていれば、どんなに干からびても生きてさえいれば、きっと何か喜びがある。
 「青色のエグジット」は、そう心から信じさせてくれる物語だ。
 
 表題作「約束」もよいが、本書を手に取ったらまず「青色のエグジット」を読んでみてほしい。
 読み終えた頃には、心がエネルギー満タンになっていること間違いなし!だ。

 現役東大生や読書好きがすすめる、石田衣良「約束」。
 
 生きる力が枯れそうになっている、本を読む気力すらわかない・・・そう思っていたら、本書だけでも読んでほしい。
 
 もう一日だけでも生きてみよう、もう一歩だけでも踏み出してみようと、体の奥から思えるはずだ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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