「サピエンス全史」上巻読み中。常識も善悪も覆えり、メカラウロコがボロボロ。

評価:★★★★★

 もくろみが裏目に出たとき、人類はなぜ農耕から手を引かなかったのか? 一つには、小さな変化が積み重なって社会を変えるまでには何世代もかかり、社会が変わったころには、かつて違う暮らしをしていたことを思い出せる人が誰もいなかったからだ。
(本文引用)
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 2017年に話題となった本で、「サピエンス全史」は欠かせないでしょう。

 刊行当初から注目されていましたが、「アメトーーク!」の読書芸人でさらに人気に火がつき、書店でもずーっと平積み。
 年末になっても売れ行きは落ちないようで、近所の書店で残り二冊だったところを購入。

 現在上巻をほとんど読んだところですが、あまりにも面白いので下巻も買っちゃいました!
 
 なぜそれほどまでに惹きつけられるのかというと、この「サピエンス全史」、本当に固定観念がゴロッと覆されます。



 いえ、覆されるのは固定観念や常識だけにとどまりません。

 自分の中にある「善悪の判断・善悪の基準」まで大きくぐらついてきます。

 また、「世界を救ったもの」と思い込んでいたものが、実は人類にとって後戻りできない大失敗だったことも・・・。

 「サピエンス全史」は、そういう意味で「読書の醍醐味」を与えてくれる本。

 「今まで疑いもしなかったこと、今まで自分が正しいと思っていたことが根底から粉砕されるって、こんなにワクワクして爽快なんだ~! だから本って面白い!」
 心からそう思える一冊です。

(※面白すぎて付箋貼りまくり!)
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■「サピエンス全史」上巻概要



 「サピエンス全史」上巻では、人類の誕生から、帝国の成立までが書かれています。
 
 本書は人類の歴史を、「認知革命」「農業革命」「科学革命」の3段階に分けて話を進めていきますが、上巻ではそのうち「認知革命」と「農業革命」をとりあげます。

 認知革命は、思考・言語によるサピエンス生き残り術を指し、農業革命は狩猟から農耕への変化を解説していきます。

 東アフリカで生まれ、ネアンデルタール人や他人種をことごとく絶滅に追いやったホモ・サピエンス。

 いわばサピエンスは、私たち(ほぼ)全員の祖先と言えるわけです。

 でも、いったい彼らはどうやって他人種を絶滅させたのか。

 サピエンスと他人種の違いは、いったいどこだったのか。

 驚くべきサピエンスの生存技と、人類が繰り返してきた成功と失敗の軌跡とは?
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■「サピエンス全史」上巻感想



 「サピエンス全史」上巻を読み、驚いたのは次の3つです。

 ●噂話は最高のサバイバル術
 ●目に見えるものだけでは生き残れない。
 ●小麦は人類の失敗作。

 著者はサピエンスが繁栄した理由として、「情報共有ができていた」ことを挙げます。

 その情報とは、危険回避のための警告(「ライオンがいるから気をつけろ」といったもの)ではありません。

 「噂話」です。

 私たちにとって社会的な協力は、生存と繁殖のカギを握っている。個々の人間がライオンやバイソンの居場所を知っているだけでは十分ではない。自分の集団の中で、誰が誰を憎んでいるか、誰が誰と寝ているか、誰が正直か、誰がずるをするかを知ることのほうが、はるかに重要なのだ。


 そう、噂話やゴシップは立派なサバイバル術。
 誰が信用できず、誰が信用できるのかをつかんでおくことは、集団にとって絶対必要なことなんです。

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 著者はさらに、噂好きな人を、集団を守るジャーナリストと称賛。
 本気とも冗談ともつかないような説を主張しますが、読めば読むほど、「確かにそうだ。その通りだわ」と思えてきます。

 もし身近に噂好きな人がいたら、「この人は私たちの集団を守ってくれる重要人物なんだ」と思うようにしましょう。(自分が敢えてその役を買って出る必要はありませんが・・・)

 著者はさらに、神話や偶像崇拝の重要性も熱弁。
 人類の発展と聞くと、「火を起こす」とか「道具を使う」といった「目に見えるもの」を思い浮かべますが、実は「目に見えないもの」が何倍も重要なんです。
 
 本書を読むと、宗教や伝承などの見方がガラッと変わりますよ。
 
 そして最も驚いたのが、「小麦は人類を救うものではなかった」ということ。
 著者は、人類は農耕を始めたばっかりに、様々な不都合が生じるようになったと主張。
 
 特に小麦の登場と、小麦がチヤホヤされる状況に大胆な異論を唱えます。

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 小麦を育てる農耕は、サピエンスの体に多大な負担をかけます。
 また乳児にお粥を食べさせるようになることで母乳を飲む量が減り、子どもの死亡率も上昇・・・と、悪い点ばかり。
 

より楽な暮らしを求めたら、大きな苦難を呼び込んでしまった。


 とまで断じます。

 ここまで小麦を悪者にしている本は、低糖質ダイエットの本か「サピエンス全史」ぐらいなのではないか。

 そう言いたくなるほど、本書では小麦による弊害を説いていきます。

 たいてい、小麦の登場により「人類は救われた」「国家は繁栄した」「この民族だけは生き残った」という展開になりそうですよね。

 でも「サピエンス全史」は、その説に真っ向から反論していくんです。
 
 別に小麦の健康被害を訴える内容ではないので、小耳にはさむ程度で読めば良いと思います。
 すぐさま「私、パンを食べるのをやめる!」などと思う必要はありません。

 ただ歴史を紐解いていくと、今まで常識・正義と考えていたものは、あっさりとひっくり返ってしまうんだなぁ・・・。

 心ゆくまでそう思えることが、本書のたまらない魅力。
 
 サピエンスの成功・繁栄、そしていつの間にかやってしまっている「失敗」の数々からは目が離せません。

 「教科書では絶対に教えてくれない歴史を知りたい」という方に、非常におすすめの本です。

 さて、いよいよ大晦日。

 年をまたいで下巻を読んでいくつもりです。

 皆さま、よいお年をお迎えください。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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