戦慄!荻上チキ「ウェブ炎上」は「あの事件」を見事に予想していた!?
評価:★★★★★
法に触れるようなことをした人を私刑し続けるという態度は、実はまったく法的な態度ではなく、新たな暴力を生み出します。
(本文引用)
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いったい何がどうしてこうなった?と首をかしげるばかりでしたが、本書を読み、理由がわかりました。
自分に似た考えを持っている人だけで集まると、それが世の中の一般常識のように見えてしまう。
するとその「自分だけの考え」がスタンダードを通り越して「正義」(のようなもの)に変身。
「正義に反しているのだから何をしてもいい」ということになり、激しいバッシングへ。
炎上元を完膚なきまでに叩きまくることになります。
荻上チキさんは、そんなウェブの特性をエコーチャンバーと表現。
本書のおかげで、私はようやく知人の炎上の原因を突き止めることができました。
自分の考えと似た人だけで集まり、自分の都合の良い言葉だけを選び、同調しあう。
だから小さな炎がどんどん大きくなっていくんです。
それはSNSの大きな罠になります。
荻上チキさんはその罠について、こんな解説をしています。
この解説、どこかの事件を思い出しませんか?
先日、ツイッターの「死にたい」という言葉が、前代未聞の大量殺人を引き起こした「あの事件」です。
いったいなぜ、あんな事件に発展してしまったのか。
当事者以外の人間にとっては、「信じられない」「なぜ?」と言いたくなる事件ですが、荻上チキさんの解説を読むと、起きても全くおかしくない事件であることがわかります。
本書は10年前、2007年に発行された本なので、あの事件に基づいて書かれているわけではありません。
でも荻上チキさんは、SNSの問題点を通して、「あの事件」を予想するような解説をキチッとしていたんです。
これにはさすがに戦慄しましたが、要するに、猟奇的事件を予想できるぐらいSNSの罠は陥りやすいということ。
SNSは人間心理から考えて、暴走を用意に予想できる構造になっているんです。
本書は、誰もが見て見ぬふりをしていたウェブ・SNSの「危険な側面」を鋭く指摘。
よって本書は、SNSが発端となった事件を防ぐために必読と言えます。
また「個人情報をめぐる騒動」や「自走するハイパーリアリティ」では、あおり運転事件を彷彿とさせる問題点を解説。
要するに、個人情報がからむデマが暴走・拡散していく問題を解説しているわけですが、これは「関係ない人を犯人に仕立てあげ、個人情報をさらして叩きまくる」現象ですよね。
それはまさに、あの「あおり運転事件」を思い出させるもの。
たまたま犯人と同じ苗字で同じ地域に住んでいるというだけで、関係のない人がウェブで個人情報をさらされ、強烈なバッシングを受け生活に支障が出るというものでした。
これも「何でこんなことになるの!?」と憤慨と疑問がないまぜとなる出来事でしたが、本書を読めば、起こるのも納得。
同じ価値観・意見・思想をもつ人間だけで集まり、自分にとって気分の良い、都合の良い言葉だけを飲みこんで暮らしていれば、それぐらい簡単に起こってしまうんです。
そして起こした人は、反省も疑問もなく逃亡。
被害者の身も心も生活もズタズタにして、ウェブの波に消えてしまいます。
「ウェブ炎上」を読むと、炎上はもちろん、特定の個人の人生を壊すことなどいともたやすいことがわかります。
ではどうすれば、無辜の市民を傷つけることなくウェブ・SNSを楽しむことができるか。
本書には、そのヒントも書かれています。
デジタルネイティブの世代には、必読の書と言えるでしょう。
10年前にこれほど警鐘が鳴らされていたのに、まさに怖れていたことが起きている昨今。
今後、どこまでSNSの闇は深くなり、牙が鋭くなっていくのか非常に危険を感じます。
傷つけられる被害者にならないためにも、傷つける加害者にならないためにも、「ウェブ炎上」は一家に一冊、置いておきたい良書です。
法に触れるようなことをした人を私刑し続けるという態度は、実はまったく法的な態度ではなく、新たな暴力を生み出します。
(本文引用)
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ちょっと前、知っている人が炎上していたので読んでみました。
ちなみに知人の炎上は、とても燃えるような発言とは思えない些細なもの。
「こんなので炎上するんだったら、もっと問題発言している人がたくさんいるのに・・・」と驚くとともに、非常に辛かったです。
知人の炎上の、一連の流れを見ていると、「炎上」ってまさに火災なんですよね。
小さな種火や高熱で、少しでもポッと炎が出たら一気に爆発。
そうなるともう手がつけられず、ついには何が発端だったかわからないほど炎は広がることに。
さんざん焼けた後、炎上祭に参加した人は何食わぬ顔で元の生活に戻りますが、炎上元の人の心が焼きつくされてしまいます。
ちなみに知人の炎上は、とても燃えるような発言とは思えない些細なもの。
「こんなので炎上するんだったら、もっと問題発言している人がたくさんいるのに・・・」と驚くとともに、非常に辛かったです。
知人の炎上の、一連の流れを見ていると、「炎上」ってまさに火災なんですよね。
小さな種火や高熱で、少しでもポッと炎が出たら一気に爆発。
そうなるともう手がつけられず、ついには何が発端だったかわからないほど炎は広がることに。
さんざん焼けた後、炎上祭に参加した人は何食わぬ顔で元の生活に戻りますが、炎上元の人の心が焼きつくされてしまいます。
いったい何がどうしてこうなった?と首をかしげるばかりでしたが、本書を読み、理由がわかりました。
ウェブやSNSは、自分に似た意見・考えを持った人「だけ」で集まりやすいんです。膨大で多様な情報が掲載されているウェブ上では、自分と同じ考えや気分、思想を持つ者とたやすくつながることが可能になりました。
自分に似た考えを持っている人だけで集まると、それが世の中の一般常識のように見えてしまう。
するとその「自分だけの考え」がスタンダードを通り越して「正義」(のようなもの)に変身。
「正義に反しているのだから何をしてもいい」ということになり、激しいバッシングへ。
炎上元を完膚なきまでに叩きまくることになります。
荻上チキさんは、そんなウェブの特性をエコーチャンバーと表現。
エコーチェンバーとは、音の反響効果を人工的に作り出す部屋や装置のことです。仮に小さなつぶやきであっても、あるいはとうてい人に聞き取れないような囁きであったとしても、自分に都合のよい言説を選択し、多くの人と同調しあうことでその声を大きくすることができるのです。
本書のおかげで、私はようやく知人の炎上の原因を突き止めることができました。
自分の考えと似た人だけで集まり、自分の都合の良い言葉だけを選び、同調しあう。
だから小さな炎がどんどん大きくなっていくんです。
それはSNSの大きな罠になります。
荻上チキさんはその罠について、こんな解説をしています。
ネット自殺はその象徴的な例でしょう。特定の世界観、同じ目的を持った者同士が簡単に集まることができるウェブは、「死にたい」という極限的な気分の人を見つけて意気投合することもたやすく可能にするのです。
この解説、どこかの事件を思い出しませんか?
先日、ツイッターの「死にたい」という言葉が、前代未聞の大量殺人を引き起こした「あの事件」です。
いったいなぜ、あんな事件に発展してしまったのか。
当事者以外の人間にとっては、「信じられない」「なぜ?」と言いたくなる事件ですが、荻上チキさんの解説を読むと、起きても全くおかしくない事件であることがわかります。
本書は10年前、2007年に発行された本なので、あの事件に基づいて書かれているわけではありません。
でも荻上チキさんは、SNSの問題点を通して、「あの事件」を予想するような解説をキチッとしていたんです。
これにはさすがに戦慄しましたが、要するに、猟奇的事件を予想できるぐらいSNSの罠は陥りやすいということ。
SNSは人間心理から考えて、暴走を用意に予想できる構造になっているんです。
本書は、誰もが見て見ぬふりをしていたウェブ・SNSの「危険な側面」を鋭く指摘。
よって本書は、SNSが発端となった事件を防ぐために必読と言えます。
また「個人情報をめぐる騒動」や「自走するハイパーリアリティ」では、あおり運転事件を彷彿とさせる問題点を解説。
要するに、個人情報がからむデマが暴走・拡散していく問題を解説しているわけですが、これは「関係ない人を犯人に仕立てあげ、個人情報をさらして叩きまくる」現象ですよね。
それはまさに、あの「あおり運転事件」を思い出させるもの。
たまたま犯人と同じ苗字で同じ地域に住んでいるというだけで、関係のない人がウェブで個人情報をさらされ、強烈なバッシングを受け生活に支障が出るというものでした。
これも「何でこんなことになるの!?」と憤慨と疑問がないまぜとなる出来事でしたが、本書を読めば、起こるのも納得。
同じ価値観・意見・思想をもつ人間だけで集まり、自分にとって気分の良い、都合の良い言葉だけを飲みこんで暮らしていれば、それぐらい簡単に起こってしまうんです。
そして起こした人は、反省も疑問もなく逃亡。
被害者の身も心も生活もズタズタにして、ウェブの波に消えてしまいます。
「ウェブ炎上」を読むと、炎上はもちろん、特定の個人の人生を壊すことなどいともたやすいことがわかります。
ではどうすれば、無辜の市民を傷つけることなくウェブ・SNSを楽しむことができるか。
本書には、そのヒントも書かれています。
デジタルネイティブの世代には、必読の書と言えるでしょう。
10年前にこれほど警鐘が鳴らされていたのに、まさに怖れていたことが起きている昨今。
今後、どこまでSNSの闇は深くなり、牙が鋭くなっていくのか非常に危険を感じます。
傷つけられる被害者にならないためにも、傷つける加害者にならないためにも、「ウェブ炎上」は一家に一冊、置いておきたい良書です。