憲法ガール 大島義則

 たった1行で事実を評価しておしまい、ではなく、畳みかけるように説得的に論証することが大切だな。
(本書内「レミ先生のワンポイントアドバイス」より)
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 今年の夏以降、大学生協などで売れに売れていると聞き、これは見過ごせない!と手に取ってみた。

 噂によると、どうやら司法試験対策の本らしい。しかも憲法の事例問題の解き方を教えてくれるとのこと。ほほぉ。
 とはいえ、今さら司法試験を受けるわけでもないのに読んで意味があるのだろうか?と思いつつページを開くと・・・「面白いじゃないか!」

 そう、この本、意外なほど(と言っては失礼だが)楽しめるのだ。
 「司法試験答案の書き方」などと聞けば、受験者でもないかぎり、役にも立たず面白くもないと思われるかもしれない。しかしこの本は、そんな狭量なものではない。
 「法に囲まれたこの世の中で、私たちはどう生き抜くべきか」をも考えさせてくれる、誰にとっても有用な一冊なのだ。


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 さてこの本、「憲法ガール」というタイトルどおり、憲法が非常に得意な赤い髪の女の子が登場する。
 その他、弁護士を目指す「僕」や、大学在学中に司法試験に合格する銀髪男子、「僕」の答案を破り捨てるコスプレ法学者、凶暴なフランス人の女の子など、法曹の世界を志す多種多様な人間たちが、1つひとつの事例と向き合いながら交錯していく。

 その造作は何ともファンシーで可愛らしいのだが、中身は超骨太。
 「あなたが団体Aの訴訟代理人として訴訟を提起するとした場合、訴訟においてどのような憲法上の主張を行うか」
 だの、
 「被告側の反論を想定しつつ、述べなさい」
 だの、いきなり一般読者をはねつけるような表現が襲いかかってくる。

 しかし、ここでちょっと深呼吸。
 落ち着いて読めば、非常に身近で、「あるある」と大きくうなずきたくなる問題ばかりであることに気づく。

 たとえば、第1問めはこうだ。

 「ある団体が、市民会館で講演会をしたいと申請した。しかしその団体の活動に反対する他団体が、その講演会を妨害する可能性がある。そうなると、周辺住民の生活が脅かされる恐れが出てくる。ゆえに、市は講演会申請を不許可とした。この処分は違憲か?合憲か?」(本文要約)

 この問題に対し、主人公の「僕」はとりあえず答案を書いて見せ、指導者にケチョンケチョンに言われるのだが、それはさておき、いざ自分が「市民として」この問題にぶつかったものと仮定して考えてみたい。
 基本的人権である「集会の自由」とは何か?周辺住民の混乱など、どれほど予見できるものなのか?そもそも市民会館というのは、どういう性格のものなのか?

 こう考えていくと、日頃は意識もしていない1つひとつの行動が、がぜん違って見えてくる。
 その新発見のひとつとして挙げられるのは、「市民会館」というものの位置づけ。おそらく公共物というものに、ここまで考えをめぐらせることは日常ないだろう。
 そういった点から、我々はいかに無意識的に、「法律」および「憲法」というものと折り合いをつけて活動しているかが見えてくる。

 その他、本書には多くの事例が紹介されているが、特に興味を惹かれたのが「インターネットの特定地図検索システム」にまつわる問題だ。
 グーグル・ストリートビュー訴訟を例にとり、憲法の「表現の自由」とはどこまでを許すのか、それとプライバシーとでは、どちらを優先させるのか。
 またさらに突っ込んで、個人識別情報とはどこまでを指すのか、個人の権利を損害する情報とはどのようなものなのか、洗濯物は?家具は?宗教にまつわる偶像物は?・・・等について考えていく。
 これは非常にデリケートな問題であり、かつ個人によって捉え方も異なってくるため、わが身にひきつけて大変興味深く読んだ。
 我々が実際に体で受ける感覚と、法律と、憲法とでは、どこにズレがあるか、そしてそこからどこに妥協点を見出し主張していくか。
 そのプロセスを読んでいくうちに、先述したように「法に囲まれたこの世の中で、私たちはどう生き抜くべきか」が徐々に見えてくる。

 本書はあくまで、司法試験の解答例と、そこに至るまでの考え方が書かれているため、事の是非を問うているわけではない。
 自分が原告もしくは被告の代理人となった場合に、どのように主張すると説得力があるかが焦点であり、ここで示されている解答が「正義」や「真実」というわけではない。

 しかし、法律および憲法と共生していかなければならない身であるかぎり、「訴訟ではこのように考える」ということを知っておいても損はない。「いざ」という時に、思わぬ活躍をしてくれるかもしれない。
 そんな救急箱のような「憲法ガール」。一家に一冊どうぞ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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