黙示 真山仁
「物事を二極化して、対立構図で考えるのは愚行だよ。そもそも反対や否定からは、何にも生まれないだろ」
(本文引用)
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レイチェル・カーソンの「沈黙の春」を思わせるこの作品は、「食の安全」と「化学技術」、そして世界的な食糧危機から企業提携までをも多角的に描いた、盛りだくさんの骨太小説だ。
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ある茶畑で、ラジコンヘリの農薬散布による曝露事故が起こる。
高濃度の農薬を吸い込んだ子供たちは痙攣を起こし、一時は意識不明の重体に。
その一報を聞きつけ、散布していた農薬の開発者・平井は現場に駆けつける。
皮肉なことに、その被害者の中には平井の息子が含まれていたのである。
事故の責任は明らかに使用者側にあったにも関わらず、平井はマスコミに追い詰められ、会社でも家庭でも居場所を失っていく。
その一方で、養蜂業を営む元戦場カメラマン・代田は、ミツバチの大量失踪の問題と向き合っていた。
「農薬反対の急先鋒」のように世間で持ち上げられる代田だが、そんな扱いに彼は日々疑問と不満を募らせる。
そしてその間に霞ヶ関では、日本の、いや世界の食糧危機に備えて様々な動きがとられていた。
彼らは未来に向けて、どのような判断を下すのか?
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この小説の面白いところは、とにかく考え方が柔軟である点だ。
たとえば、農薬を一概に「否」としてよいのか。
それを「否」とするのなら、農薬を使わなくても育つ遺伝子組み換え作物なら「是」なのか。
農家の人たちの負担は?後継ぎ問題は?消費者の財布は?
農業と化学技術、人間と地球との共生について、いくつもの観点からグルリと描かれる展開は、まさに圧巻。
不勉強な自分にとっては痺れるほど嬉しく、衝撃的なものであった。
そして、上滑りな知識だけで「これは○、これは×」と安易に判断する危険性をひしひしと感じた。
さらに驚くべきは、今そこにある「食糧危機」。
毎日気軽に食料品を買い、休日にはレストランに行き、何もしたくなければインスタントやお惣菜だってある。
そんな毎日のなかで「食糧危機など完全に他人事」と思っていたが、本書を読み、それはとんでもない間違いであることに気づいた。
金持ちニッポンは、もはや幻想。
皮を一枚はがせば、輸出入に頼らざるをえない脆弱な貧乏国ニッポン。
凡庸な生活者の視点からだけではわからなかった、世界レベル、地球レベルでの視野を提供してくれた本書との出会い・・・。
これは私にとって、もはや革命的ともいえる出来事であった。
そんな思考の大革命、大転換が起きたのは、おそらく読者だけでなく登場人物たちも。
ある考え方に固執していた者たちが、徐々に考え方を柔らかくしていく様子は、読んでいてとても爽快。
その人間ならではのやわらかさが、登場人物たちに尋常ならざるリアリティをもたせているのだろう。
読みながら、ついついキャスティングをしてしまったのも無理はない。
こうなったら、ぜひドラマ化して、土曜夜9時の「ハゲタカ」枠で放映していただきたい。
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蛇足ながら最後に。
いちばん怖いのは、農薬でも遺伝子組み換えでも米国でも中国でもなく、「女」・・・なのかも。
(本文引用)
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久しぶりに、読みながらキャスティングをしてしまった。
「平井は上川隆也さんでしょ、湯川は浅野和之さん。
代田は小澤征悦さんなんてどうかな。さおりはモデルの春香さん!
・・・土屋は室井滋さんかなぁ(映画「OUT」の影響?)。
一恵は麻生祐未さん、早乙女議員はやっぱり蓮・・・(これはさすがにダメか)」
こんな風に「もしこの小説がドラマや映画になったら」と考えながら読むのは、最高に楽しい。
そして、こんな風に考えながら読むことができる小説というのは、間違いなく「面白かった」と思える作品である。
真山仁の新刊「黙示」、原タイトルは「沈黙の代償」-。
「平井は上川隆也さんでしょ、湯川は浅野和之さん。
代田は小澤征悦さんなんてどうかな。さおりはモデルの春香さん!
・・・土屋は室井滋さんかなぁ(映画「OUT」の影響?)。
一恵は麻生祐未さん、早乙女議員はやっぱり蓮・・・(これはさすがにダメか)」
こんな風に「もしこの小説がドラマや映画になったら」と考えながら読むのは、最高に楽しい。
そして、こんな風に考えながら読むことができる小説というのは、間違いなく「面白かった」と思える作品である。
真山仁の新刊「黙示」、原タイトルは「沈黙の代償」-。
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」を思わせるこの作品は、「食の安全」と「化学技術」、そして世界的な食糧危機から企業提携までをも多角的に描いた、盛りだくさんの骨太小説だ。
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ある茶畑で、ラジコンヘリの農薬散布による曝露事故が起こる。
高濃度の農薬を吸い込んだ子供たちは痙攣を起こし、一時は意識不明の重体に。
その一報を聞きつけ、散布していた農薬の開発者・平井は現場に駆けつける。
皮肉なことに、その被害者の中には平井の息子が含まれていたのである。
事故の責任は明らかに使用者側にあったにも関わらず、平井はマスコミに追い詰められ、会社でも家庭でも居場所を失っていく。
その一方で、養蜂業を営む元戦場カメラマン・代田は、ミツバチの大量失踪の問題と向き合っていた。
「農薬反対の急先鋒」のように世間で持ち上げられる代田だが、そんな扱いに彼は日々疑問と不満を募らせる。
そしてその間に霞ヶ関では、日本の、いや世界の食糧危機に備えて様々な動きがとられていた。
彼らは未来に向けて、どのような判断を下すのか?
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この小説の面白いところは、とにかく考え方が柔軟である点だ。
たとえば、農薬を一概に「否」としてよいのか。
それを「否」とするのなら、農薬を使わなくても育つ遺伝子組み換え作物なら「是」なのか。
農家の人たちの負担は?後継ぎ問題は?消費者の財布は?
農業と化学技術、人間と地球との共生について、いくつもの観点からグルリと描かれる展開は、まさに圧巻。
不勉強な自分にとっては痺れるほど嬉しく、衝撃的なものであった。
そして、上滑りな知識だけで「これは○、これは×」と安易に判断する危険性をひしひしと感じた。
さらに驚くべきは、今そこにある「食糧危機」。
毎日気軽に食料品を買い、休日にはレストランに行き、何もしたくなければインスタントやお惣菜だってある。
そんな毎日のなかで「食糧危機など完全に他人事」と思っていたが、本書を読み、それはとんでもない間違いであることに気づいた。
金持ちニッポンは、もはや幻想。
皮を一枚はがせば、輸出入に頼らざるをえない脆弱な貧乏国ニッポン。
凡庸な生活者の視点からだけではわからなかった、世界レベル、地球レベルでの視野を提供してくれた本書との出会い・・・。
これは私にとって、もはや革命的ともいえる出来事であった。
そんな思考の大革命、大転換が起きたのは、おそらく読者だけでなく登場人物たちも。
ある考え方に固執していた者たちが、徐々に考え方を柔らかくしていく様子は、読んでいてとても爽快。
その人間ならではのやわらかさが、登場人物たちに尋常ならざるリアリティをもたせているのだろう。
読みながら、ついついキャスティングをしてしまったのも無理はない。
こうなったら、ぜひドラマ化して、土曜夜9時の「ハゲタカ」枠で放映していただきたい。
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蛇足ながら最後に。
いちばん怖いのは、農薬でも遺伝子組み換えでも米国でも中国でもなく、「女」・・・なのかも。
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↓「黙示」を読み、約20年振りに「沈黙の春」を再読してしまった。
併せて読むと、
「変わったもの」と「変わらないもの」、「妥協したもの」と「譲れないもの」とが明確にわかり、
より味わい深い。
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併せて読むと、
「変わったもの」と「変わらないもの」、「妥協したもの」と「譲れないもの」とが明確にわかり、
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