「ソロモンの偽証」そして「知の逆転」

 今年最後に読む作品を、何にしようか考えていたのだが、結局この作品に彩られることとなった。

 今年の秋以降、ずっと書店の平積みコーナーで重厚な輝きを放っていた3冊。
 宮部みゆき「ソロモンの偽証」全3巻である。

 クリスマスに夫にプレゼントされてから読み始め、読了まで1週間と予想以上に時間がかかってしまったが、何と幸せな1週間だったことか!
 
 この本読みたさにいつもより2時間早起きし、通勤電車では誰とも一緒にならないように出社・帰宅時間を調節し、読めない時間も頭から離れず、仕事中は「ソロモン~!」と心の中で叫び、子供と公園で遊んでいる時は「ソロモン~!」と本当に叫んでいた(怪しい・・・)。


 まさに寝ても覚めても「ソロモンの偽証」漬けの日々。
 こんなに充実した年末を過ごせて、私はこの上ない幸福感に包まれている。
 そしてそれが終わってしまい、何と寂しいことか。
 
 ストーリーは、各メディアで紹介されているので今さら言うまでもないであろうが、念のため。
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 クリスマスの日の朝、ある中学校で男子生徒の死体が発見される。
 警察は早々に自殺と断定したが、そこに「彼は殺された」という謎の告発状が。
 そこで殺人犯として挙げられているのは、地域で知らない人はいない札付きの不良少年の名前だった。

 さあ、男子生徒は殺されたのか?それともやはり自殺なのか?
 今、裁判が開かれる。
 全て中学生の手による、学校内裁判が・・・。
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 こう書くと、あっさりしたストーリーに思えるが、何といっても2000頁超にもなる大巨編。この事件の周囲には、一見関係のなさそうな、いくつもの事件が蜂の巣のように存在するのだ。
 男子生徒の自殺(あるいは他殺)事件を中心とし、働きバチが各部屋を行き来しながら、それらの事件を緻密に緻密につなぎ合わせていく。
 その作業を中学生たちがやってのける様は、「ちょっと優秀すぎやしないか?」とある種不気味さすら感じるが、そんな大人の戯言は、彼らの正義感の前では紙クズ同然だろう。
 真実を追究する手を緩めない少年少女達の姿には、ただただ敬服だ。

 そして宮部氏の「とにかく読者を楽しませよう」という気合も、最後の最後まで全く緩められることはなかった。
 もう最高!
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 しかしこんな小説を読んでしまったら、これからの自分の生き方を改めて考えてしまう。
 何かひどく間違った方向に行ってしまっていないか。
 そしてこれは非常に個人的なことだが、自分の子供を誤った方向に行かせてしまわないか、と。

 そこで幸いにも手にしたのが、この「知の逆転」
 「銃・病原菌・鉄」のジャレド・ダイアモンドやオリバー・サックス等「学問の常識を逆転させた」人々に、サイエンスライター吉成真由美氏がインタビューをした新書だが、この本が傍らにあって本当に、本当に良かった。

 「人生に意味はあるのか」
 「いじめにはどう対処すべきか」


 といった、「ソロモンの偽証」を読んでいたら必ずぶつかるであろう問いに、この一冊は答えてくれる。

 その答のひとつは、インタビュアーの吉成氏のまえがきに記されていた。

 「全くこの世で生きるのは難儀だが、たとえわずかでも強く心に残る出会いがあれば、それでけっこうやっていけるような気もする」
 (まえがき引用)

 この「知の逆転」は、インタビューを受けている各界著名人の言葉も素晴らしいが、私としては誰よりも吉成氏の言葉が心に響いた。
 決して堅苦しくなく、読む人全てを包み込むような穏やかな言葉で、この本をまとめた気持ちをつづっているのだが、その読者に対する優しさと愛情に大変心打たれた。そしてそれに裏打ちされた信念にも。

 「ソロモンの偽証」を読み、人生に迷ったら、ぜひ「知の逆転」を。

 そして、来年も素晴らしい出会いがありますように。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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