このカテゴリーの最新記事

好きなようにしてください ~たった一つの「仕事」の原則~  楠木建

評価:★★★★★

  川の流れの中で、その時に自分が思い定めた自分の持ち場で真剣に力を尽くす。これが仕事をするということであり、世界経営に参画するということです。
(本文引用)
_________________________________

 芸能界の「テキトーな人」といえば高田純次さんだが、学術界の「テキトーな人」の代表格は、この楠木建氏であろう。

 「川の流れのように」+「時の流れに身をまかせ」=「川の流れに身をまかせ」て生きてきたと語る楠木氏。
 そんなテキトーぶりを、楠木氏は本書で惜しげもなく披露しているが、読みながら、改めてこんなことを認識した。
 
 テキトーな人、あるいはテキトーに見える人で、本当にいい加減で無責任でテキトーな人などいない。
 テキトーな人というのは、周囲の評価やくだらないプライドや定かでない未来といった余計なことに惑わされず、「今やるべきこと1つ」に集中し、その「やるべきこと」については決して疎かにしない人なのだ。



 そんなテキトーな人物・楠木建氏が答える人生相談は、至ってシンプル。
 就職、転職、昇進、結婚生活etc.・・・本書を読めば、自分がいかにどうでも良いことで思い悩み、人生を空回りさせているかがよくわかる。

続きを読む

戦略読書日記 楠木建

 仕事で本当にものをいう人間の能力は、定型的なスキルというよりも、センスとしかいいようのないものに根差している。スキルは取り換えがきく。センスこそが貴重である。
(本文引用)
_________________________________

 以前、ベストセラー「ストーリーとしての競争戦略」で、目からウロコの経営戦略の妙を次々と解明してくれた楠木建氏。
 今回は、その「『ストーリーとしての競争戦略』の原点」(帯引用)といえる楠木教授の読書日記。しかも骨の髄まで「戦略」という視点から語られる、異色の書評集である。

 なかには「どうせビジネス書ばかり紹介されているのだろう」と敬遠される方もおられるだろうが、ちょっと待った、異色なだけでなく彩り豊かであるのが楠木流。
 もちろんビジネス書の類は外せないが、本書には何と他に、歴史本やダイエット本、浮世草子から喜劇役者を描いた本まで幅広く紹介されている。
 それらがひたすら「成功する戦略ストーリー」の観点一本やりで評されているというのだから、面白い。
さて、その扉を開いてみると・・・。


____________________________________

 まず楠木氏は、「経営はスキルではなくセンスだ」と言い切る。
 しかし、スキルの身に付け方は何となくわかっても、センスと言われてしまうと生来のものという印象が強く、「もはや自分ではどうにもできない」とつい考えてしまうのが常ではないだろうか。
 そこで楠木氏は、そのセンスを身に付ける最良の手段として「読書」を挙げる。

 それはなぜか。
 まずセンスを磨くには、ある事象をただ漫然と受け止めるのではなく、常に「なぜ」を考え、「背後にある論理をつかむ」ことが重要である。
 そしてそれを続けるうちに、「因果論理の引き出し」が豊かになっていく。
 その引き出しを豊かにしてくれるものこそが、すなわち読書である、ということだ。

 よって本書では、様々な本の「因果論理」「物事の順序」すなわち「ストーリー性」を追い、その重要性を訴えているわけだが、そんな楠木氏の主張が特にわかりやすく伝わってきたのが、岡田斗司夫著「レコーディング・ダイエット 決定版」の章だ。

 楠木氏をして「全編これ戦略づくりのお手本ともいえる内容になっている」とまで言わしめるこのダイエット本は、「太る努力をやめる」という透徹したコンセプトのもと、緻密に計算されたスムーズなストーリーで、痩せるまでの経緯が明かされていく。

 この本の肝は、決して順序を変えても、一部分だけ抽出してもいけない点だ。

 そもそもこの「レコーディング・ダイエット」しかも「決定版」が出された理由は、楠木氏の解説によると、ベストセラー本「いつまでもデブと思うなよ」が、メディアによって断片的に取り上げられてしまったからだと言う。
 ストーリーを無視して、そのなかのひとコマだけが宣伝され、その挙句ダイエットに失敗する人が続出。


 これは断片だけを取り上げた側に問題があり、岡田氏には何ら責任はないのだが、この事態を鑑みて岡田氏は、この「決定版」を出したということだ。そう、改めて「レコーディング・ダイエット」というストーリー「全て」を提唱するために。

 この章だけでも、成功戦略には、「盤石な因果論理をもつストーリーがいかに大切か」ということが伝わってくる。しかも簡潔にして平易。素晴らしい戦略読書だ。

 また、本書は全編を通じて、戦略には「ロジック」と共に「パッション」が必要であることもしつこいほど説いている。

 経営者と経営学者の対談書「『日本の経営』を創る」を例にとりながら、楠木氏は、優れた戦略に不可欠なものとして「実行にかかわる人々の熱き心を刺激する」ことを挙げ、さらにそれをもって顧客等社外の人間まで納得させるには、強いロジックが必要であると述べる。

 そしてついには、その情熱や揺るぎない誠実さをもって築いた強固なロジックの前には、表層だけなぞった安易な戦略は自滅する、とさえ言い切る。

 シンプルでありながら、何とも爽快で滋味豊かな結論だ。

 世の中の様々な「成功しているもの」・・・企業、商品、有名人、本、テレビ番組・・・の背後にはどれほどのパッションがあり、どんなロジックが練られ、積み重ねられているのか。
 今まで、その一部だけを見て評価してきたであろう自分にとって、本書は世の中の見方を一変させてくれた一冊といえる。

 そして気づく。この479ページ、21もの章とインタビューで構成された「戦略読書日記」という本全体が、強烈なパッションと論理で貫かれたストーリーであるということに。
 一部分だけ抜き出すのではなく、ぜひ全章通じて読んでいただきたい。断片だけでは気づかない珠玉の言葉やメッセージが、随所随所で発見できるはずだ。


詳細情報・ご購入はこちら↓

「ストーリーとしての競争戦略」

 「あなたの会社はどういう会社ですか?」という質問であれば、答は簡単です。(中略)いくつも答えが出てくるでしょう。
 ところが、「あなたの会社の戦略は?」となると話が少し変わってきます。答えにまごついてしまう人も多いのではないでしょうか。
 「違いをつくって、つなげる」、一言でいうとこれが戦略の本質です。


(本文引用)

_________________________________

 誰にでも、お気に入りの店というのがあるだろう。

 レストラン、書店、スーパー、ブティック、美容院・・・。そして実際に通うことはなくても、お気に入りのネットショップもあるかもしれない。

 そして、家族や友人にこんなことを話すだろう。

 「飲むときは、結局いつも、●●屋になっちゃうんだよな」
 「髪を切るときは、必ず▲▲に行くの」

 そして、嫌いな店については、こう考える。

 「あのカフェはタバコくさいからイヤ」
 「デザートはおいしいんだけど、メインがいまいち」
 「店員さんがなれなれしい」


 ・・・など、足が遠のく原因はいろいろあるだろう。
 そしてあなたは、「あんな店、誰が行くんだろう?」なんて思っているかもしれない。そう、その店が「あなたに嫌われたがっている」などとは露ほども知らずに・・・。

 経営学の本としては異例のベストセラーと話題となった、この「ストーリーとしての競争戦略」

 話題となった当初、私も手にとってみたが、まず印象としてはスポーツ(球技)の入門書のようだと感じた。
 球技の基本は、とにかく味方につないでつないで、ゴールにたどり着くということ。
 しかも、ただつなぐだけでは勝てない。敵の意表をつきながら、確実にパスをつなげる。

 そう、この「違いをつくって、つなげる」ことこそが本書が述べる戦略の本質。
 本書では、その原則から「戦略はストーリーである」という考え方を軸にして、成功企業の戦略を次々と、余すところなく解き明かしていく。

 本書の特色として挙げられるのが、その事例の豊富さだが、そこから浮き彫りにされる「成功戦略」として特に興味を惹いたのは、「成功している企業は常に時代や業界の常識に反するようなことをしてい」る-つまり多くの人に好かれること以上に、「だれに嫌われるようにするか」を考えている-ということである。

 たとえばスターバックスコーヒー。

 私も好きでよく行くが、周囲を見ると、学生、女友達同士、家族連れ・・・など、現時点で比較的時間に余裕のある人が集まっていることに気づく。
 つまりは、携帯電話を耳にあて、スーツケースと背広の上着を手に持ち、汗をかきかき、「時間がないから、ここでチャチャッとお腹を満たそう」といった様子の人間はみられない、ということだ。

 そう、実はスタバは、そういう(=「時間がないから、ここでチャチャッとお腹を満たそう」)ニーズからは、わざと外れるようにしている。
 そういうニーズをもつ人間からは「あえて嫌われるようにしている」ということなのである。

 一見、そんなことでは到底成功はおぼつかないように思える考え方だが、
 このように「いかにして、ある一定の人間に嫌われるか」を考えるということは、すなわち「本当のところ、誰に何を売っているのか」という「本質的な顧客価値」をすくいあげることなのである。
 それに沿って戦略を立てていけば、自ずと「筋のいいストーリー」ができあがる、というわけである。

 本書には、このような固定観念を底からそっくり覆すような事例がたっぷりと紹介されており、ページをめくるたびに目からウロコがポロポロと音を立てて取れていった。

 そしてこの本自体も、「違いをつくって、誰かに嫌われる」ようなストーリーに沿って作られ、大成功を収めたものといえるだろう。

 クリスマスで華やぐ街も、この本を読んだ日から風景が違って見えるかもしれない。

たまには、あなたの嫌いな店に入ってみてはいかがだろうか。

ご購入はこちら↓
【送料無料】ストーリーとしての競争戦略

【送料無料】ストーリーとしての競争戦略
価格:2,940円(税込、送料別)

プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告