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「農ガール、農ライフ」感想。職なし家なし、もう死ぬしかない・・・どん底女子奇跡の復活劇とは?

★「農ガール、農ライフ」は、こんな人におすすめ!

●人生史上最大に落ち込んでる人。
●どん底からの復活劇を読みたい人。
●田舎暮らし・農業に憧れてる人。

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 あっ、まだ笑えるぞ、自分。 
 だって一緒になって怒ってくれる人がいる。
 もう少しなんとか頑張ってみよう。

(本文引用)
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 「もうダメ」と落ち込んでるあなた。
 本を読む元気もないかもしれないが、一冊でも読む力があれば、本書がおすすめだ。

 女性が主役の小説で、ここまで地獄を見た本はない。

 職を失い、恋人も失い、家も失う「どん底劇」。 
 「最後はハッピーになるんだろうな~」と思いつつ、「ちょ、ちょっとホントに大丈夫?」と本気で心配になった。
 
 それだけにラストの痛快さは格別!
 人間、あきらめなければいくらでも復活できる。
 いくら崖っぷちに追いやられても、崖から落ちなければきっと何とかなる。


 「農ガール、農ライフ」は、「人生ツーアウトから」と心から思えるエナジー小説。
 今、立ち直れない痛手を受けてる女性は、ぜひ手に取ってみてほしい。

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垣谷美雨「うちの子が結婚しないので」。美しく年齢を重ねるコツが詰まった一冊!

評価:★★★★★

 ――あなたね、わざわざ店員を呼んでサンドイッチの中身を点検するなんてみっともない真似は、金輪際やめなさいよ。
 そう言ってくれる母親も兄弟姉妹も、あの女にはいないのだろう。

(本文引用)
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  「みっともない大人になりたくない!」

 そう思ったら、本書は必読。
 「無駄に年だけとっている」と言われないための処方箋が、本書にはギッシリ詰まっている。

 何しろ本書の中心人物は、「子どもの結婚を心配する人々」。
 それはつまり「子どもを通して、自分が査定されている人々」だ。

 世間ではいったい、どんな50代・60代が「好ましい」と思われているのか。
 「いい年をして・・・」「厚かましい」などと言われないためには、どんな心がけが必要なのか。


 「素敵に年を重ねたい」と思うなら、美容本よりも本書がおすすめ。

 親がそのまま評価される「親婚活」こそ、「素敵な大人像」を学べる最高の教科書なのだ。
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■「うちの子が結婚しないので」あらすじ



 主人公・千賀子には、28歳の娘がいる。

 千賀子の最近の懸念事項は、娘の将来。

 娘は結婚する様子どころか、恋人がいる様子もない。
 ふと「このまま娘は一生独身なんじゃ・・・。私たち夫婦が死んだら、娘は一人ぼっち?」と猛烈な不安に襲われる。

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 千賀子は夫と話し合った結果、親婚活を開始。
 しかし親婚活パーティーで、千賀子のプライドはズタズタに。
 
 息子の将来を案じる「エリート家族たち」は、千賀子に対し、やたらと上から目線。

 もはや絶望的な気持ちになりながら、千賀子は婚活を続けるが・・・?
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■「うちの子が結婚しないので」感想



 私はまだ「親婚活」をするほどの年齢ではない。

 しかし読めば読むほど、こんな現実にゾッとする。

 年齢を重ねると、世間の目が非常に厳しくなること。
 さらに、年齢を重ねると、「自分がみっともないという感性が鈍ってくる」ということだ。

 その現実を知らしめるのは、なかなか相手が決まらない親子。
 
 非常に狭い世界(地元で資産家、家族が高学歴等)のプライドで、やたらと居丈高な態度をとる保護者。
 「親しみ」と「なれなれしさ」の区別がつかない、妙に距離が近い保護者等々・・・。

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 本書を読むと「みっともない大人」というのは、「どんな人に対しても敬意を払う」という気持ちが、すっぽり抜け落ちた人だとわかる。

 そして恐ろしいことに、その高慢な思考・態度が「子どもの結婚を邪魔している」ということに全く気づかない。

 つまらないプライドで心と頭が固くなると、ここまで恥ずかしい大人になるのか・・・と戦慄。
 さらに恥ずかしい思いをするのは、本人だけに収まらない。
 子どもの人生も取り返しのつかないことになる。
 
 大切な家族まで巻き込むとなると、厚かましい・みっともない大人になることは、かなりの重罪である。
 
 そんな罪を背負わないためにも、40代・50代になったら本書は必読。
 
 クスリと笑えるストーリーを楽しみながら、「恥ずかしい大人」度をチェックできる。

 子どもがいてもいなくても、子どもが未婚でも既婚でも、「自分メンテ」のために繰り返し読みたい一冊だ。 
                                                                     
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垣谷美雨「後悔病棟」感想。明るく生きたければどんどん後悔すべし!

評価:★★★★★

 ああ、なんという空しい人生だろう。もしも人生をやり直すことができたら、絶対に残業はしない。
(本文引用)
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 「もし人生をやり直せるなら」などと考えるのはナンセンスかもしれない。

 後悔する暇があったら、自分の選択を最良にする努力をしたほうが・・・多分いいのだろう。

 しかし、本書を読むと、人生にとって最も大切なのは「後悔」なのではないかと思えてくる。
 今後の人生を少しでもハッピーなものにしたいなら、後悔するのも悪くない。

 いやむしろ、今すぐ後悔すべし!後悔万歳!
 垣谷美雨の「後悔病棟」を読みながら、自分の人生をうんと後悔してみよう。

 そうすればきっと明日に踏み出せる。
 明日を、今日よりもっと素敵な日にできるだろう。


 
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■「後悔病棟」あらすじ



 勤務医・早坂ルミ子には、ひとつだけ大きな欠点があった。
 
 それは、患者の気持ちがわからないこと。
 いや、「わからない」どころか「逆撫でしてしまう」のが、ルミ子の欠点。

 患者に対し、思い切り「安らかな気持ちでいける」などと口走り、周囲を凍らせてしまうのだ。

 ある日、ルミ子は一個の聴診器を拾う。
 その聴診器は、魔法の聴診器。
 
 患者の胸に当てると、患者の気持ちがありありと見えてくるのだ。

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 芸能界に入りたかったのに、女優のママが受けさせてくれなかった・・・。ママに相談しなければよかった。
 見舞いにくるたびに、お金の話しかしない妻。もっと家族と向け合えばよかった。
 独身を貫く一人娘。あの時、結婚を反対しなければよかった。
 友人がかぶった罪、俺が代わりにかぶればよかった。

 ルミ子は患者たちの「ああすればよかった」を明確に聴き取り、妄想のなかで人生をリセットすることに。

 さて、彼らは本当に人生の選択を誤っていたのか?

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■「後悔病棟」感想



 本書の効用は、後悔をうまく生かせるようになること。

 一見無駄に見える「後悔」だが、「後悔」を味方につけると、人生をどんどん好転させることができる。

 そんな「後悔の活かし方」を、本書は教えてくれるのだ。

 それを最も教えてくれるのは、第2話「family」。

 主人公は30代の若きパパ。
  「これから」という時に癌におかされ、すでに余命宣告も受けている状況だ。

 しかし、たまに見舞いに来る妻は、生命保険やら何やらとお金の話ばかり。
 そのうち、イケメン医師に色目を使うようになり・・・?

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 男性はルミ子とともに「後悔に旅」に出ることで、妻の本当の姿がわかってくる。
 初めて見つけた「妻の本当の姿」を知ることで、男性は「妻がいちばん幸せになる方法」を見つけ出していくのだ。

 この展開は非常に新鮮。
 「後悔っていいものだな」と、生まれて初めて思わせてくれた至高の物語だ。
 
 「ああすれば良かった、こうすれば良かった」とウンウン考えるのは、一見、不毛かもしれない。
 しかしつい「後悔してしまう」のは、自分の人生や愛する人の人生を、大切に思っている証拠。

 今現在、自分の人生を後悔しているならば、それだけ「自分や周囲の人を愛している」ことになるのだ。

 「後悔しない人生を」などとしばしば聞くが、そんなことを考えていると、人生はプレッシャーばかり。
 結局、何をやっても後悔はあるし、頑張って頑張って億万長者になっても、後悔のない人生などない。

 ならばいっそ、「後悔」を前向きにとらえたほうが得策。
 「自分がこれだけ後悔しているということは、私は自分を、家族を、愛する人を、心から大切にしているから」と考えたほうが、ずっと豊かな人生になるだろう。

 今、「後悔したくないから」と頑張りすぎてる人は、「後悔病棟」を読んでみよう。
 「後悔ウェルカム!」の気持ちになれば、もっと人生が明るくなるはずだ。

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垣谷美雨「嫁をやめる日」は、「いい人」「頼れる人」「他人に操られる人」もやめられる一冊!

評価:★★★★★

「要はさ、夏葉子はつぶしてもいい人間なんだよ」
(本文引用)
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 いやー、面白かった!
 垣谷さんて、ミステリーでも一流なのね。
 (※あ、別に本書はミステリー小説ではありません。
 でもミステリー要素も十分あるので、敢えてこう書きます。)
  
 改めて「垣谷美雨」という人気作家の、凄まじい力量を見た思い!
 垣谷さん、これからもついていきますんで、今後ともよろしくお願い申し上げます(ペコリ)。
 
 「嫁をやめる日」なんて、いかにも面白そうなニオイがプンプンするタイトルですよね。

 でも物語は、そこから一歩も二歩も三歩もつっこんだ、実に深みのある内容。


  
 帯に「人生大逆転ストーリー」なんて書かれているから、「あ~、きっとああいう風に逆転するんだろうな~」なんて思っていたら、これが予想外の結末。 
 「こういう逆転だったのか! でも・・・こういう逆転のほうがずっと好き!」と、非常に明るい気持ちになれました。

 ちなみに「嫁をやめる日」がおすすめなのは、こんな人。
 
 ・「いい人」をやめたい人
 ・「何か他人に操られているような気がする」とモヤモヤしてる人
 ・甘え下手な人
 ・自分の気持ちを飲み込んでしまう人

 さあ、あなたも本書を読んで「いい人」をやめる一歩を踏み出してみませんか?
 「自分の本当の理想の姿」「自分が本当に楽でいられる姿」を見つけることができますよ。
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■「嫁をやめる日」あらすじ



 高瀬夏葉子は、ある日突然、夫・堅太郎を亡くします。

 でも夏葉子は悲しみがわきません。

 夫婦の仲は冷え切り、誕生日や結婚記念日には必ず夫は不在。
 
 しかも死んだ場所も、夫がいるはずのない場所。
 
 夫には女がいる・・・そう判断した夏葉子は、堅太郎が死んでせいせいしています。
 
 自由を手に入れた!・・・と思った夏葉子ですが、世の中そんなに甘くない。

 夫の死後、姑が無遠慮に夏葉子の家に来るようになり、ますます窮屈に。

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 しかも堅太郎の「女」の存在が、ついに発覚。
 
 夏葉子は夫の生前以上に、疲労困憊する日々を送るようになり・・・?
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■「嫁をやめる日」感想



 本書の感想を色々見ると、異口同音に「面白かった!」と絶賛絶賛。

 なぜ本書がそこまでウケるのかというと、たいていの人が「いい人」だから。

 自分の言いたいことを飲み込み、他人を優先させ、たまに自分の意見を言ったと思ったら、申し訳なくなり謝罪してしまう。
 しかも頭が良くてしっかりしてるから、みんなに頼られちゃう。

 日本は、そんな「いい人」が多い国。

 本書は「いい人の症状」と「いい人をやめる処方箋」がいっぱい。
 だから、多くの「いい人認定されてモヤッてる人」に受け入れられるんです。
 
 特に注目すべきは、夏葉子と妹・花純の対称性。
 夏葉子の母は、何かというと花純ばかり甘えさせ夏葉子は後回し。

 頭の出来がいまひとつで、頼りない花純ばかり良い思いをし、頭が良いしっかり者の夏葉子は理不尽な思いばかりしています。

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 これって非常に「あるある」なケース。
 「頭が良く、何でもそつなくこなし、性格の優しい『いい人』」は常に割を食い、「問題あり」の人ほど何だか人生楽しそう・・・そんな場面って多いですよね。

 なぜ「いい人」はイヤな思いをし、「問題あり」の人ほど幸せそうなのか。

 その理由は終盤、夏葉子の父の言葉で明確に。

 「だから私、一生懸命がんばってるのに人生面白くないんだ!」と思わず膝を打ちますよ。

 ラストで判明する、「堅太郎の過去」に関する急展開も見もの。
 
 それまでは「夏葉子の選択は正しい!」と思っていた読者も、「あれ?間違っちゃった?」と首をかしげること間違いなし。

 ミステリーチックな二転三転の展開に、「人生ってホントにわからない!」と思わず苦笑しちゃいます。 

 世の中の「いい人」さん、思い切って「いい人」をやめて、人生を変えてみませんか?
 ・・・なーんて言いたいところですが、そうとも言い切れないところがまた、本書の魅力。

 「いい人をやめた人」も「いい人をやっぱりやめられない人」も、本書を読めばスッキリ!
 「いい人でも、いい人でなくてもいいじゃん!」と自分を好きになれますよ。

 「嫁をやめる日」は、「いい人をやめる日」、さらに言うと「“自分のことはどうでもいい人”をやめる日」。
 自分がどんな人間であれ、自分をもっと大切にしたい・・・そう願う人に「嫁をやめる日」は超おすすめです!

※ドラマ化希望!勝手にキャスティング

高瀬夏葉子:吉田羊
高瀬堅太郎:佐々木蔵之介
姑:高橋惠子
実母:木の実ナナ
実父:吉田鋼太郎
花純:永作博美
工藤:内野聖陽
三沢:田中圭
サオリ:松雪泰子
千亜希:天海祐希

 
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垣谷美雨「子育てはもう卒業します」は育児ストレスをグンと減らす特効薬!

評価:★★★★★

 「子供のことはいくつになっても心配だけど、もう遠くから見守るしかないよね」
 「アデュー子育て、ボンジュール老後」

(本文引用)
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 「あー、面白い本読みたい!」と思ったら、まず手に取るのが垣谷美雨さん。
 
 「あるある!」と首がもげるほどうなずけて、ブハッと笑えて、読後は気分爽快!

 「難しい本を読んで教養を深めたい」と、しかめっ面をしている時には垣谷作品は向かないだろう。

 しかし「とにかく活字を素直に楽しみたい」とムズムズソワソワしてるなら、垣谷作品はおすすめ。
 本書は、特に「子育てや夫、実家や義実家にモヤモヤ」という女性に、ぜひ読んでほしい一冊だ。

 読みようによっては育児ストレスが倍増するかもしれないが・・・、将来の展望が開けてくるのは確かである。


 

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■「子育てはもう卒業します」あらすじ



 淳子、明美、紫は1950年代末生まれ。
 3人とも、首都圏の4年制大学を卒業している。
 
 当時、4年制大学に進む女性は少数派。
 しかも3人とも地方出身で、実家から離れて進学している。
 
 そんな彼女たちは、就職で辛酸をなめることに。
 

 「私たち、なんのために東京に出てきたんだろう」
 「なんのために大学に入ったんだろう」


 「すでに内定もらっている女子だって、これといった特技なんてないよ。単に自宅が東京にあっただけ。それか、もしくは短大生。または生まれつき男だっただけ」


 3人は己の境遇を呪いつづける。

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 その後、3人はそれぞれ家庭をもち、子育てに没頭することに。

 子供には自分のような人生を歩ませたくない・・・!

 3人が子供に求めたことは?
 そして実際、子供たちはどう育っていったのか?
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■「子育てはもう卒業します」感想



 子育てとは何とままならぬものか。
 そして、そんなままならない子育てとは、何と面白いものか。

 本書を読んでいると、「思い通りにならないからこそ子育ては楽しい」と心から思える。

 とにかく「よかれ」と思ったことが裏目裏目に出る3人。
 そして時には「最悪!」とため息をついていたことが、思わぬ幸運をもたらすことも。

 「人間万事塞翁が馬」を地で行く展開に、続きが気になって気になって読む手が止まらなかった。

 たとえば紫の夫レイモン。
 フランス人の彼は、フランス流の独特な考えを持っており、時おり紫を心底うんざりさせる。

 娘・杏里の成長や働き方についても、とにかくのんびり。
 旧家に育った紫にとっては、「ん、もう!」と言いたくなることばかりだ。

 ところがこのレイモン、言うことがいちいち「わりと正論」だから面白い。
 レイモンの言動を読んでいると、読んでいる私まで「何で私、子どものことでこんなにカリカリしてるんだ?」と苦笑いが出てくる。

 子育て・孫育てにキュウキュウとする登場人物のなかで、一服の清涼剤となっているレイモン。
 彼の日本人離れした(当たり前だが)思考と、紫一家の予想外の展開には大注目だ。

 本書を読んでいると、育児ストレスが9割方なくなっていくのを感じる。
 いわば「育児の断捨離(!?)」。
 
 自分の育児をよくよく見つめてみたら、「あれもいらない、これも余計」と捨てられるものばかり。
 固定観念や世間体、見栄などをゴミ袋に全て詰めて捨て、子どもそのものをまっさらな気持ちで見つめたら、イライラが消えてダイヤモンドが見えてくる・・・本書はそんな気持ちにさせてくれる魔法の書だ。

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 垣谷さんの「プチギャグ」満載の筆致も、ストレス解消にピッタリ。
 (※ラジオ英語講座マーシャ・クラッカワーのくだりには思わずコーヒーを吹いた。本書を電車の中で読むのはやめましょう。)
 
 「何で私、子育てでこんなにイライラしてるんだ?」と、自分で自分がわからなくなってる方に本書はおすすめ。

 子育てを卒業する年齢でなくても、淳子・紫・明美の奮闘から学ぶところは大きいはず。
 「思うようにならないからこそ人生も子育ても面白い!」と、嘘のように心が軽くなるだろう。
 
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垣谷美雨「避難所」(「女たちの避難所」)はセクハラを考えるうえで欠かせない一冊。

評価:★★★★★

 思えば今までの人生で変化の起点になったのは、悲しみが怒りに変わる瞬間だった。
(本文引用)
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 最近、セクシャルハラスメントや女性専用車両、性的虐待など「性」にまつわる様々な問題が浮き彫りになってきています。

 男性の被害者もいるとは思いますが、やはり大半は「女性が被害者」。

 それらの事件・問題に共通していることは、「加害者男性が驚くほど無自覚」ということです。

 もちろん、たいていの男性は非常にまとも。
 女性の性的被害について、女性と同じぐらい怒りを露わにし、男女共に快適に生きられる社会を望んでいます。

 でもまだまだ、女性に対し高圧的で、性に関して恐ろしいほど鈍感な男性がいることも確か。



 先日、女性の権利を考える講演を聴きに来ていた男性が、終了後、講演者の女性と写真を撮りたがり、「肩を抱いちゃおうかな」と言ったとか・・・。
 講演者の女性は「話が伝わってなかったのかな」とやや諦め模様でした。

 こういう話を聞くと、「性的問題の加害者および加害者予備軍は、他人の不快感を想像する感性があきれるほど鈍い」と思わざるを得ません。

 そんな現実にため息をついていた時、たまたま手に取ったのが「避難所」(※文庫版では「女たちの避難所」)

 東日本大震災の避難生活が克明に描かれているので、震災に関する小説かと思いきや、問題は別のところにある様子。

 女性として、そして人間として、心の底から怒りにブルブル打ち震えながら一気に読みました。
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■「避難所」(「女たちの避難所」)あらすじ



 福子、遠乃、渚は、ともに東日本大震災で被災した女性。

 もともと面識はなく、年齢も生きてきた背景も違う3人ですが、避難生活を通して親交を深めていきます。

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 3人に共通しているのは、家族の男性に虐げられていることです。

 仕事をせずパチスロばかりしているのに、プライドだけは高い暴言夫。
 美人の嫁が夫を亡くしたことをいいことに、都合よくモノにしようとする舅と義兄・・・。

 そこへきて、避難所のリーダーである男性がまた、無神経で高圧的。
 「家族同然」「絆を深めよう」という言葉で、わざと仕切りを作らず、女性のプライバシーを侵害します。

 家族、避難所のリーダー、避難所に侵入してくる男性・・・皆、女性を何だと思っているのか。

 3人の怒りは頂点に達し、いよいよ動き出すのですが・・・?

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■「避難所」(「女たちの避難所」)感想



 本書はずばり、「性」の問題を真っ向からとらえたもの。
 女性1人ひとりにも意志、誇り、人生があることなど、まるで思い至らない男たちを描いた「怒りの物語」です。

 現在どんどん暴露されているセクハラ事件は、どれも女性1人ひとりの人権を無視したもの。
 
 加害者は皆、自分が自由に生きられるように、女性も自由に生きられるということがわからない人ばかりです。

 現在、その事実に気づいた女性たちが「Me too」と声を上げ始めています。
 
 この「避難所」はまさに「Me too」小説。

 先っぽが見えないほど根が深い「セクハラ問題」を、地割れと共にゴッソリ掘り起こしてくれています。

 本書を読んでいると、まず「女性が男性に対し声を上げるのが、いかに難しいか」を痛感させられます。

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 性的被害の事件が報道されると、しばしば「本当に嫌なら抵抗できたのでは」などというコメントが出てきます。

 でも女性は、男性に対しなかなか抵抗できません。

 どんなにひ弱に見える男性でも、やはり男は男。
 女性は本能的に「何だかんだ言って男性は、女性より腕力が強い」と思っています。

 だから相手が幼児や小学生でもない限り、どんなに優しい男性に対しても「殴られるかもしれない」とビクビクし、固まってしまうんです。
 
 本書は、そのような女性の心理を実にうまくすくい取っています。
 
 女性のプライバシーより男性の欲望を優先させ、仕切りひとつ作ろうとせず、しまいには性暴力を許容するような頓珍漢な政策を打ち出す男性リーダー。
 勝手に女性の人生を意のままにしようとする夫、舅、義兄等々。

 そんなポンコツ男1人に対しても、女性が反抗し主導権を得ようとすることがどれだけ困難か。
 どれだけ勇気がいることか。

 性暴力の事件を聞き、「抵抗できたのでは」と言ってしまうような男性は、本書に目を通すべきでしょう。

 物語終盤はやや駆け足のように感じましたが、「女性の怒りと悲しみ」、「ごく一部の男性の恐るべき鈍感さ、無神経さ」、そして「女性が男性に声を上げることの難しさ」・・・この3つをじっくり考えることができた点で大満足。

 セクハラや性暴力の根源について、深く考えたい人はぜひお手に取ってみてください。

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老後の資金がありません  垣谷美雨

評価:★★★★★

 お金を使うのはなんと難しいことだろう。
(本文引用)
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  もう最高っっ! どうして、こんなに胸のすくような小説を書けるのか。著者の頭の中を見てみたい!
 垣谷美雨の小説は、一気読み必至の面白さということはわかっている。わかってはいるのだが、ここまで愉快痛快だとは思わなかった。

 老後の不安を抱える人たちを臨場感たっぷりに描き、読者の不安をさんざんかきたて「何かもうさっさと死んじゃいたい」と思わせながらも、言葉の端々に現れるハイセンスすぎるギャグで、最終的には「やっぱり生きてるっていいよね」と思わせる。

 これは、ちょっとやそっとじゃできない達人技。垣谷美雨作品のストーリー展開は、もはや芸術の域といえるものなのだ。


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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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