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14歳の水平線  椰月美智子

評価:★★★★★

かっこつけて気持ちを隠しているうちに、どれが本当の気持ちかわからなくなって、硬い鎧を脱げなくなっていた。
(本文引用)
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  多くの私立中が、入試問題に本書を採りあげているらしい。それを聞き、私は不安になった。
 
 受験生が試験中に、泣いてしまうのではないかと。
 
 私が受験生だったら、胸が熱くなりすぎて問題を解くどころではなくなってしまうかもしれない。

 冷静さが求められる入試に出すには、ちょっとこの小説は良すぎるんじゃないの?なんて思ってしまうが、一方で、この小説を出題したくなる気持ちもよくわかる。
 先生方は心の底から、試験を受ける子どもたちが幸せになることを願っているのだ。自ら人生を切り開き、人を心から愛せる人間になってほしいと願っているのだ。
 だから、この小説を出題するのであろう。この文章を読ませるのだろう。



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恋愛小説  椰月美智子

 二人は若く、野蛮で、頼りなく、頑固で弱く、ひたむきだった。
(本文引用)
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 しばしば、夫と「面白かったテレビドラマ」の話になる。そこでノミネートされるドラマに共通しているのは、「登場人物が優等生でない」こと。
 登場人物が、下品、野蛮、反秩序であればあるほど、ドラマの魅力は増してくる(なかでも最高なのは、稲森いずみ主演「年下の男」。まともな人間が1人いるかいないかという、とびきりアナーキーな恋愛ドラマ。とにかく面白いので、ご覧になっていない方はぜひ。)

 そういう意味で、この「恋愛小説」にものめりこんでしまった。
 わんさか出てくる登場人物たちは、いずれ劣らぬ「下品・野蛮・反秩序」ぶり。なかには、読みながら吐き気を催す人もいるかもしれないが、ラストに近づいていくうちに、泥が濾されて砂金が出てくるので、ぜひ最後まで読んでみていただきたい。
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 主人公の美緒は、痩せていて顔が小さく、誰からも「かわいい」と言われる容姿をしている。さらに美緒は、猫のように人の懐に入ってはスルリと出ていくような態度が身についており、余計に男性からはモテてモテて困っちゃうといった状況だ。

 そんな美緒には、健太郎という恋人がいる。結婚もするつもりで付き合っており、すでに双方の実家も了承済みで、お金を出し合って車まで買った。
 にも関わらず、何と美緒は、健太郎と共通の友人サスケのことを好きになってしまう。いや、気持ちよりも先に行動をしてしまう。





 その後に美緒は、サスケへの思いをどんどん募らせていくのだが・・・。さて、美緒はどっちを選ぶのか?

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しずかな日々 椰月美智子

 人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく。
(本文引用)
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 「テーマパークだの旅行だのと、子どもをあちこち連れて行く必要はない。子どもは何もかもが“初めて”で、何もかもが新鮮なのだから」
 以前、そんな話を聞いたことがある。
 子どもの話に耳を傾けてみると、確かにそうだ。
 遠くまで旅行に出かけ「どうだ、楽しいだろう!」と子どもに胸をはったところで、子どもが絵日記に描くのは、町内会で線香花火をした思い出。高価なおもちゃを買ったところで、子どもがいちばん好きなのは雨で湿った土や、小さなバッタ。だいたいそんなものなのである。

 そんな子どもの感性を、憎らしいほど瑞々しく描きだしたのが、この「しずかな日々」


 どうやら今、中学入試問題で最も採りあげられている作品らしいが、もし出題された時は、解答を忘れないよう注意すべし。鉛筆を握ったまま、この作品世界に惹きこまれ、試験中であることを忘れてしまうかもしれないからだ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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