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額賀澪「ウズタマ」がドカンと泣けて一気読み。ミステリーとしても秀逸。ぜひドラマ化を!

評価:★★★★★

「どうしてこの人、俺の母親を殺さなきゃならなかったんだろう」
(本文引用)
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 「ウズタマ」は、SNSであまりに評判が良いので買ってみた。
 いや~、期待の1万倍以上良かった!
 
 「額賀澪さんってこんなにすごい作家だったっけ?(失礼!)」と、読みながらフンッフンッ!と興奮してしまった。

 実は今まで、額賀澪さんの小説は「惜しい」と感じていた。

 いい話なんだけど、すごくいい話なんだけど、どこかパンチというか爆発力が足りないというか。
 「泣き」という意味では、重松清や浅田次郎のような破壊力がもう一つだなぁと思っていた。
 
 ところがこの「ウズタマ」で、一気にキタ。
 作家・額賀澪の臨界点が打ち破られ、一躍「新時代の泣かせ作家」に浮上。


 
 しかも泣かせるだけでなく、ミステリーとしても名手。
 「思い込み」が1つひとつひっくり返され、幕が開くように真相が暴かれる展開は見事。

 さらにラストでは「まさか」の急展開も。
 しつこいようだが、「額賀澪って、こんなにすごい作家だったんだ!」と認識を改めた。

 平成が終わる今、次代のホープは額賀澪!
 本好きなら今から、Amazonでフォローしておくのがおすすめだ。
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■「ウズタマ」あらすじ



 松宮周作は28歳のサラリーマン。
 シングルマザーの紫織と交際しており、結婚は秒読み段階。

 しかし父親が脳梗塞で倒れ、入籍を延期している状態だ。

 周作は父一人子一人で育った。
 物心ついた時に母はいなかった。

 それにしても不思議なのは、母親の写真が一枚もないこと。
 しかも誰かが周作のために、お金を振り込み続けていたことが発覚。

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 周作は新しい家族を築く前に、自分の来し方を知ろうと決意。
 そこには松宮家をめぐる、あまりにも意外な過去があった。

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■「ウズタマ」感想



 「ウズタマ」は、主人公・周作の「心の核」を表すもの。

 幼かった周作に、最も寄り添った「誰か」が、ウズラの卵入り野菜ラーメンを作ったからだ。

 その「誰か」とは、周作の疑問のカギを握る人物。

 なぜ母親の思い出がいっさいないのか。
 なぜ周作は新しい家族を作るのが怖いのか。

 周作の謎を解き明かすうえで、「誰か」の存在は欠かせない。

 本書がまず優れているのは、その「誰か」を追い、真相を暴く過程が実によく練られているからだ。

 「誰か」は悪人なのか善人なのか。
 もし悪人だったとしたら、なぜ「あんなこと」をしたのか。
 逆にもし善人だったとしたら、なぜ「あんなこと」をしたのか。

 「誰か」の正体を追いながら、周作の過去がゆっくり紐解かれていくプロセスは読み応えたっぷり。

 ミステリー小説とは書かれていないが、ミステリーとしても今年のベスト10にラクラク入る巧みさだ。

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 ラストもとにかくうまい!

 感動の大団円を迎えホロリと涙を流していたら、次には涙が引っ込むことに。
 予想外のアクロバティックな展開で、さらに面白さはジャンプアップ。

 ここまで自然な流れで、「まさか」の急展開を描いちゃうとは恐れ入る。
 額賀氏の超絶技巧ぶりに、「う~ん、やられた!」と思わずうなった。

 キャラクターの魅力、ストーリーの巧緻さ・・・全てにおいて「ウズタマ」は百点満点。
 
 ハートウォーミング好き、ミステリー好き、どんでん返し好き、ちょっと危険な恋愛好き等々・・・「ウズタマ」はどんな読者も満足させてくれるだろう。

 そうそう、メディア関連の皆さま、ぜひぜひぜひ「ウズタマ」の映像化を(絶対大ヒットすると思う!)。

 勝手にキャスティングしておくので、ご検討いただければ幸いです。
 
 ●松宮周作:三浦春馬
 ●松宮将彦:松重豊
 ●松宮由美子:高岡早紀
 ●皆瀬悟:西島秀俊
 ●紫織:貫地谷しほり
 ●山田:水川あさみ

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屋上のウインドノーツ  額賀澪

「人って、いっつもいっつも自分より弱い人を見つけて、その人を笑ったりいじめたり、助けてあげたりして、自分がその人より高いところにいるって確認して安心してるのかなって」
(本文引用)
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 「『自分はダメ』高校生7割」

 週末の朝、日本経済新聞(2015/8/29)をのんびりと眺めていたら、こんなタイトルが目に飛び込んできた。
 記事によると、「『自分はダメな人間だ』と思うことがある」という日本の高校生は7割を超え、アメリカ・中国・韓国と比べて突出して高いとのこと(国立青少年教育振興機構調べ)。
 逆もまた然りで、「自分には人並みの能力がある」と答えた生徒の割合は、他国と比べて相当低いことがわかった(米国・中国は9割、日本は5割強)。

 う~ん・・・もうこうなったら、この小説を薦めるしかない。
 本書は、「自分はダメだ」と思い続ける女子高生の成長物語。かと言って、ポジティブシンキングや自己肯定感をひたすら主張するものではない。それどころか、自己否定の経験を歓迎しているとすら思える。



 もし現在、「自分はダメな人間だ」と思っているのなら、この物語と共にとことん自己否定を追求してみてはいかがだろうか。
 自己否定感のある人にしか、決して見つけられない希望と幸福が、必ず見つけられるだろう。
 そして気がつけば、常に自信に満ち溢れている人に引け目を感じてしまったり、逃げ出したくなったりする気持ちが雲散霧消していることだろう。

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ヒトリコ  額賀澪

強いて言うなら、全員悪い。そして全員、可哀想だった。
 それなら私は、ヒトリコでいいの。

(本文引用)
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 小中学校時代を思い出し、時々、ギュッと目をつぶったり、地面にひれ伏したくなったりすることはないだろうか。

 私には、ある。それは、「いじめ」に加担してしまったことだ。

 ある日、クラスのリーダー格の女子が「あの子、言葉がキツくて嫌いだから無視しようよ」と言い出した。そして翌日から、「あの子」は無視された。私も巨大勢力に逆らえず、無視をしてしまった。
 何日かして、その状態に耐え切れなくなり、友だちと一緒に「あの子」に話しかけた。その後、中学を卒業するまで家を行き来するほど仲の良い交流を続けた。

 
 しかし、そんなことで私の罰が消えるなんて決して思わない。女子が教室でおしゃべりをするなか、机でポツンと爪をかんでいた「あの子」の姿は、振り払っても振り払っても消えない。そして彼女の受けた心の傷は、一生、死ぬまで残り続けるだろう。
 今でも、もし「あの子」に会う機会があったら、床に頭をこすりつけてでも謝りたい。そんなこともあり、中学時代を思い出す時、私はしばしばギュウッと目をつぶってしまうのだ。

 前置きが長くなったが、本書はそんな体験を思い切りフラッシュバックさせる小説。
 ふさがっていたはずの心のカサブタをベリッと剥がす残酷物語かもしれないが、ぜひそこをグッとこらえて読んでみてほしい。
 今まで目をそらしてきた、過去のあやまちや癒えない傷を直視し、根本的に治療する機会となるかもしれない。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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