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物語ること、生きること 上橋菜穂子/瀧晴巳

 いまの自分をどうにかしたいな、と思うことがありますか? あるなら、いっぺん、「靴ふきマットの上でもそもそしているな! うりゃっ!」と、自分の背中を蹴っ飛ばしてみてください。
(本文引用)
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 自分が何かを作りたい、いや、作らなくても、何者かになりたい。そんな夢をもっている人には、最高の一冊ではないだろうか。
 2014年に、児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受けた上橋菜穂子氏。「鹿の王」で本屋大賞を受賞したことでも、その名を知られる大作家は、どうやって作家になったのか?
 本書は、一人の少女が「靴ふきマット」での足踏みから飛び出し、大きな夢を叶えるまでの道程を追ったものだ。
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 幼少期から、物語を読むことが大好きだった菜穂子少女は、いつしか漫画家か作家を志すようになる。
 授業中でもいつでもどこでも、書いて書いて書きまくっていた少女は、そのうち「書き終える」ことの難しさに目覚め、大学時代についに原稿用紙千枚の小説を書きあげる。

 それは「守り人」シリーズの原型となるが、プロへの道は険しい。
 大学院博士課程で文化人類学を学んでいた菜穂子は、作家の道を諦め、研究者になることを宣言する。
 そんな時、以前持ち込んだ出版社の編集者から連絡が来る――。
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 読みながら、人生とは何と楽しく美しいものかと、心が震えた。ただしそれは、「夢を持ちつづければ」の話だ。



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鹿の王 上橋菜穂子

 他者の命を奪おうとするもの、他者の命を支えて生きるもの、雑多な生き方がせめぎ合い、交じり合い、流れていく、このすべてが、生きる、ということなのだろう。
(本文引用)
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 私は、なるべく多種多様な本を読むよう努めているのだが、ひとつだけなかなかなじめない分野がある。それはファンタジー。
 とにかく魔法とか超自然とか幻想的なムードといったものが苦手で、つい「現実に存在しないものを読んでも仕方ない」と気持ちが覚めてしまうのだ。
 あと、登場人物の名前が覚えにくいのも、その一因。小さい「ッ」とか「ファ」とか「ミ」「レ」とかが入ると、途端に覚えられなくなる。これが「佐藤」「鈴木」「高橋」などであれば、だいぶ読む気が起こるのだが、それだとファンタジーっぽくなくなるであろう。
 そんなわけで、私はファンタジー小説が読めないまま、ファンタジー小説が似合わない年になってしまった(もう20年ぐらいすれば、逆に似合うようになるかもしれないが)。

 しかしこの小説は、ちょっと違った。
 ファンタジー小説なのに「今、ここにある現実を見つめよ」と主張している。やや極端に言えば、ファンタジー小説でありながらファンタジーを否定していると言えるのだ。

 よって、私は非常に面白く読めた。登場人物の名を覚えるのに四苦八苦したのは相変わらずだが、ストーリーには大きくうなずけるものがあった。
 それはおそらく、著者上橋菜穂子氏がこのような思いで執筆していたからだろう。 

「書き始めて、つくづく悟ったのですが、この発想を、異世界を舞台にして書くというのは、大変な作業でした」

 (あとがき引用)




 そう、この物語は、揺るぎない事実を幻想世界に取り込んだ物語。非現実を舞台にしながらも、「人の体と人間社会は、異物との共生・排除を繰り返す」という現実を鋭く描き切った傑作なのである。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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