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「絶望を希望に変える経済学」感想。コロナのことを書いてないのに「コロナ禍の今、必読」と唸った一冊。

根拠のない考え方に対して私たちにできる唯一のことは、油断せずに見張り、「疑う余地はない」などという主張にだまされず、奇跡の約束を疑い、エビデンスを吟味し、問題を単純化せず根気よく取り組み、調べられることは調べ、判明した事実に誠実であることだ。
(本文引用)
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 読みながら「コロナ禍で読むのに、ピッタリすぎる!」と手が震えた。
 帯にも
 「この夏に読むべき5冊」(ビル・ゲイツ)
 「なんとタイムリーな本の出版だろうか」(東大大学院教授・柳川範之)
 と書かれているが、まさにその通りだった。

 しかし本書には、新型コロナウイルスについては何も書かれていない。
 原著はコロナ以前に書かれたものなので、当然だ。

 にも関わらず、「コロナ禍の今、読むべき本」「タイムリーな本」と言われるのは、なぜなのか。

 その理由は、本書の底に流れる「メッセージ」にあり。


 本書では、「世の問題解決」を妨げる「人間の性向」をズバリと指摘。
 
 その「人間の性向」を読めば、「これってコロナにも当てはまるよね」と、思わず「ハッ」。
 
 だから本書は「今」こそ読みたい、読むべき一冊。

 本書を読んでも、新型コロナの撲滅は難しい。
 しかし本書を読むことで、新型コロナにまつわる不要なトラブル・必要以上の艱難辛苦は撲滅できるのではないか。

 ページを繰りながら、そんな光が胸に射した。

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「香港デモ戦記」感想。「タイトルそのまま」だからこそ「読む価値あり」と感じた一冊。

 「日本には民主主義があるが、香港にはない。だから、今、ぼくはここにいて戦っている」
(本文引用)
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 「タイトルそのまま」のまっさらな本。
 香港デモの様子を、余計な味付け(著者の思想等)なしで、ひたすら伝える本である。

 そう聞くと「物足りない」と思う人もいるかもしれないが、私は逆に「まっさらだからこそ読む価値があった」と感じている。

 香港デモに参加する若者の声を、シンプルにストレートに聞くことで、却って冷静に「では日本はどうなのか?」と考えることができた。

 これがもし「香港かくあるべし!」という、著者の思いが詰まった“熱い本”だったら、私も流されてしまったかもしれない。
 自分の本当の気持ちを見つめることなく「そうだ、そうだ! 香港はこうなるべきだ!」などと、香港の欠点にばかり目が行き、日本のことを棚に上げてしまっただろう。
 (井戸端会議で、誰かが誰かの悪口を言って盛り上がりだしたら、自分も「そーよねー」と言ってしまうような感覚。)

 しかし本書ではただひたすらに、「香港デモの様子と、参加者の生の声」を淡々とつづっていく。


 だから「悪口に思わず賛同」という心理状態に陥らず、「自国は果たしてどうなのか」と落ち着いて考えることができた。

 日本は本当に民主主義といえるのか?
 日本は本当に自由といえるのか?
 日本は本当に住みよい国といえるのか?

 「香港デモ戦記」は「香港」以上に、「自国を知る機会、自国について考えるチャンス」を存分にくれる一冊だ。

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「スタンフォード大学で一番人気の経済学入門」感想。ロックバンドがいちばん稼げるチケット代とは?

評価:★★★★★

音楽好きな人であれば、過去10年か15年のあいだに有名ミュージシャンのチケット価格が大きく上がったことを、実感できるのではないでしょうか。
(本文引用)
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 「こんな授業なら、そりゃ受けたいはずだよ!」
 読みながら、無意識にそう叫んでいた。

 本書のもとは、スタンフォード大学「最優秀講義賞」受賞講義。

 スタンフォード大学の最優秀講義などと聞くと、それだけですでに「ついていけない」と思ってしまう。
 入門とはいうものの、おそらく「どこが入門なの?」と怒りを覚えるぐらい難しいのだろう、と半ばあきらめ気分で手に取った。
 (※ではなぜわざわざ難しそうな本を買ったかというと、兄がかつてスタンフォード大学に留学し、勝手に縁を感じたからである。)

 ところがこれがホントにホントの“入門レベル”だった。
 そして何より面白い。

 昔、「経済ってそういうことだったのか会議」という本(大好き!)があったが、本書にはこんなサブタイトルをつけたい。


 「経済学ってこんなに面白かったのか講義」


(・・・あれ?ゴロ悪いですか?)


 “難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く”とはこういうことを言うんだなぁ~と、惚れ惚れ。




 コーヒー豆の価格が上がったら、カフェはコーヒーの値段を上げられる?
 ではタバコはどう? ついでに薬物は?
 お金が海の底に沈んでも、難なく取引できる島があるってホント?
 信条に反して、わざわざ「差別」を売りにする企業の真意とは?
 どうすれば貧困地域を、真に支援できる?

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 価格決定、格差、労働、そしてそもそも「お金とは何か」。

 本書は経済学をごくごく初歩から解説。
 小学校高学年の子でも、興味を身を乗り出して聴ける講義となっている。

 経済学を最速で頭にしみこませるなら、ピッタリの一冊だ。
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■「スタンフォード大学で一番人気の経済学入門」内容



 本書はミクロ編・マクロ編の二分冊。
 普通なら「マクロ編」から読むところだが、本書は「ミクロ編」から読むのが推奨されている。

 まずミクロ編では、私たち個々人の日々の活動から経済学を解説。
 そして企業、政府、世界の格差へと話を広げ、経済の動き・働き・今後の課題を説いていく。

 マクロ編では失業やインフレ、財政赤字、貿易など、よりグローバルに視野を広げた内容に。
 
 二冊合わせて、国内外が互いに及ぼす経済活動、そして「自分の何気ない行動・選択」と世界経済との関連性が見えてくる。

 さて私たちの購買・労働といった経済活動は、世界とどうつながっているのか。

 そして今後、世界はどうなっていくのか?
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■「スタンフォード大学で一番人気の経済学入門」感想



 本書はこんな人におすすめ。

 「経済学ってつまらない。でも学ばなきゃ・・・でもやっぱりつまらなそう」

 そんな風に立ったり座ったりして、結局座りこんでしまう人に、私は本書を手渡したい。

 なぜなら、純粋にストレートに「面白い」から。
 そして自分の行動と経済が、ピッタリくっついていることを実感できるから。

 経済なしでは自分は一歩も動けない。
 そして自分の行動・選択なしでは、経済もまた一歩も動けないことがよーくわかるからだ。

 そんな「当事者意識」を最も感じることができるのは、ミクロ編の価格弾力性。

 風邪薬やコーヒーは需要弾力性は高いが、糖尿病薬やタバコは非弾力的と本書は解説。

 これは「安い代用品があるか、その人にとってどれだけ必要か」による。

 風邪薬はより安い薬で代用できるし、コーヒーは他のお茶を飲んだり、家で飲んだりと切り替え可能だ。

 だがインシュリンとタバコはそういうわけにはいかない。

 インシュリンは患者にとって決して代用できない、大事なもの。
 そしてタバコはコーヒーよりはるかに依存性が高いので、価格が上がっても需要は変わらないのだ。
 
 さらに目先を変えると、世界的画家の絵画も当然、非弾力的である。

 と、ここまではわりと「よくある」価格弾力性の話だ。

 私が「確かに!」と手を打ったのは、ロックバンドのチケット代だ。

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 大物とまでは言えないバンドの場合、コアなファンがあまりついてないので、チケットの需要弾力性が高い。
 チケット代が安くなれば売れ、高くなれば売れないという、どことなく悲哀漂う結果となる。

 しかし熱狂的なファンが多い大物アーティストの場合、非弾力的。
 いくらチケット代が高くても、ライブに行きたい人が多いからである。

 そして価格設定側は、需要弾力性を見ながら適正価格を探っているという。

 これはもうロックファンとしては、膝を砕くほど納得の内容。
 「そうそう! そうなのよ! 東京ドームのライブとか米粒ぐらいしか見えないのに、なんでこんなに高いんだろうと思ってた!」と疑問が氷解した気分だ。
 そうそう、私の友人はX●APANのライブに1人3万出したらしい。その価格でも売れるとは、もはや有名画家レベルの「非弾力ぶり」である。

 (※ちなみにこのティモシー・テイラー氏、わりとロック好きなのか、マクロ経済の比喩でも「ロックバンドのライブが~」と話している。)

 このように本書では、豊富な事例をもとに「経済の謎」を易しく深く面白く解説。
 誰もが「そういうことだったのか!」と目がキラキラしてしまう内容となっている。
 
 その他、「そもそものお金の機能」についても興味深いエピソードで解説。

 ある島では、お金が海底に沈んでも、その「お金」で取引してるというが、そんなことは可能なのか?

 これは決して「頭の体操」ではない。
 お金本来の機能を考えれば、十分可能。
 ある意味、海底に沈んだお金で買い物ができるということこそ、お金本来の機能を生かした方法といえるのだ。

 どうだろうか。
 「なんだかオイラ、ワクワクしてきたぞ!」と思わないだろうか。

 ワクワクしなかった方、あるいはもっとワクワクしたい方は、ぜひ本書を実際に読んでいただきたい。

 「経済学って難しい」という固定観念が完全崩壊。
 「こんなに経済学って面白かったの!?」と目をむくことだろう。

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「高校生のための経済学入門」感想。高校生が勉強しなくなったのは市場メカニズムからみて当然だった。

評価:★★★★★

 大学入試という高校生の皆さんにとって重要な人生の節目も、見方を変えれば市場メカニズムという極めて経済学的な状況として解釈することができるのです。
(本文引用)
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 急きょ「若者向けの経済書」を読む必要に迫られ、本書をチョイス。

 読んで納得。
 これは確かに「高校生のため」だ。

 内容はハッキリ言って、大学生レベル。
 若者向けだからといって、むやみに易しくする等おもねたところは一切ない。

 にもかかわらずなぜ、「高校生向け」と言えるのか。

 それは「高校生」という微妙な年代・・・つっぱりつつも壊れやすい「ガラスの十代」(古くてすみません)に寄り添った内容だから。
 「大人の言ってることってホントなの?」という、なかば足蹴にされがちな反発心に、しっかり応える経済書だからだ。


 「政治経済の授業がつまらない」
 「経済学ってアレでしょ? 価格が上がれば需要が下がって・・・とか、見えざる手とか・・・も
 「大人の言うことは、いっつもおんなじ。もうわかってるって!」

 そう思っている人は、ぜひ本書を読んでみていただきたい。
 読みながら「えっ?何それ?」と身を乗り出すこと請け合いだ。
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■「高校生のための経済学入門」内容



 本書の対象は、タイトル通り高校生。
 
 授業で政治経済を勉強中。
 経済学部を志望。入学前に経済学をちょっと知っておこうかな。
 そもそも経済ってなに?

 そんな高校生に向けて、経済学のポイントを解説。

 通りいっぺんの説明ではなく、「経済学を肌で感じられる」内容となっている。

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 大学入試、文房具、食品、化粧品、高校生御用達のファーストフード、税率が上がりつづける消費税・・・。

 世の中のあらゆるものは、実は経済学で分析可能。

 高校生の身の回りで起きてる、経済学的現象とは?
 そして時として教科書と逆行する、意外なお金の廻り方とは?
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■「高校生のための経済学入門」感想



 本書を読み、まず強烈に感じたこと。
 それは「見た目とめちゃくちゃギャップがある」ということだ。

 「ちくま新書」という非常に真っ当な新書で、装丁も地味。
 見かけはハッキリ言って、「読んでると眠くなりそうな本」である。
 
 ところがあにはからんや、内容は驚くほどロック。
 
 筆致は真面目で丁寧だが、内容は尾崎豊もビックリの反骨精神あふれるもの。

 「ちびまる子ちゃんの花輪君に経済学はいらない」 
 「経済学的に見れば高校生が勉強しなくなるのも当たり前」
 「価格が高いと需要が低くなる・・・という定説とは、逆の現象あり」
 など、ドキリとする説がチョコチョコチクチク展開される。

 さらに高校生にいかにもありそうな行動を、経済学的視点から細かく解説。

 かぎられたお小遣い。
 前からほしかったTシャツを買うべきか、買わざるべきか。
 アイスクリームが10円値上がりした。これ買っちゃうと、和英辞典が買えなくなるなぁ。
 お父さんとお母さんは、どうやって家計をまわしてるの?

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 そんな疑問について専門家の目で、非常にわかりやすく解説。
 
 女の子なら「この化粧品、人気女優を使ってるから高いんだよね」なんて友達と話していると思うが、そこに潜む「経済学」にも焦点をあて説明する。

 終盤では今注目の、消費税増税について「驚きの論」を展開。
 「増税はいやだけど、う~んまぁ、そういう考え方もあるかぁ・・・」と、妙に納得してしまった。

 「高校生向け」のわりには、本書はやや難しいかもしれない。
 
 でも「肌で経済を感じたい」ならおすすめ。
 さらに「大人が言ってる経済理論、ホントかなぁ」と知的好奇心に満ちあふれてる人には、なおおすすめ。

 読めば政治経済の授業が、かなり違って見えるはず。

 そして「経済学って堅苦しいと思ってたけど、なんだ、面白いじゃん!」と思えちゃう。

 次の進路相談で「法学部志望でしたが、経済学部にします」と豪語し、周囲を驚かせるかも!?

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「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」で、私が本当に180度変わった理由とは?

評価:★★★★★

 そしてもうひとつ、政治信条を人々に刷り込む強力な方法がある。それが経済学だ。
(本文引用)
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「読み終えた瞬間、世界が180度変わって見える」


 表紙をめくると、飛び込んでくるこのコピー。
 
 読めばすぐに「誇張ではない」と納得。
 「・・・これは確かに180度変わるわ・・・」と、うなずかざるを得ない。

 「なぜ格差は生まれるのか」という少女の疑問に、元財務大臣のパパが答える経済書。

 本書を読み、今まで手に取っていた経済本が「いかに私を受け身にしてきたか」がわかった。

 
 金利が低いから高いから、好況だから不景気だから、そしてあの人は成功者でお金がたくさんあるから・・・。
 その環境・事実に、自分を合わせることが、賢い生き方・良い生き方と思い込んでいた。
 
 だが本書を読み、まさに180度変わった。
 私の達観は、私自身の考えではない。
 実は「他者の考えに操作されているだけだ」と気づいたのだ。

 こんな風に書くと、何だかヤバい本に見えるかもしれない。
 本書こそ、人を操作する本なのでは?と訝しく思うかもしれない。

 しかし本書はそういう「怪しい本」ではない。
 未来を作るのは君自身だ、それにはまず手始めに経済だ、ということにちょっと気づかせてくれるだけ。
 そしてまず手をつけるべき患部を、やんわりと示唆。

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 それだけで、私にとっては間違いなく革命的な本。
 未来を作る子どもたちに、ぜひ読ませよう・・・そう固く心に誓った。
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■「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」内容



 本書の著者は、ギリシャの元財務大臣。
 経済学者でありながら、「経済学者だけに経済をまかせておいてはいけない」という信念を持ち、本書を上梓。
 
 「経済学は科学」という説に抗い、哲学的な視点から経済に迫っていく。

 経済といえばお金、お金といえば、やはり気になるのが「富裕と貧困」。
 
 なぜ人類には格差があるのか。
 なぜ高価な産着を着られる赤ちゃんもいれば、ミルクも母乳も満足に与えられない赤ちゃんもいるのか。

 従来の経済学では解明できなかった「格差の秘密」を、本書はビシッと解説。

 人類と文明から経済を眺めれば、理不尽の理由がありありと・・・。

 果たして「格差」が生まれる理由とは? 
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■「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」感想



 経済学と聞くと「難しそう」と怖気づいてしまうかもしれない。

 しかし本書は、とりあえず弥生時代を知っていればOK。
 「弥生時代になると貯蔵が始まり、財産の多寡によるヒエラルキーが発生した」ということさえ知っていれば、スッと入り込める内容だ。

 農作物の貯蔵ができるようになると、余剰というものが生まれる。
 さらに余剰を記録するために文字が生まれ、債務や、通貨の流通、通貨に必要な「信頼」を付与する国家が形成。
 徐々に、余剰の偏りに伴う格差が発生し、いわゆる庶民たちは首を傾げるようになる。

 そこで本書のキモが登場。
 「支配者だけが国を支配する権利を持っている」と「庶民に信じさせる」ことで、格差が生まれると解説。

 つまり格差が生まれる理由は、商売上手云々ではなく「洗脳である」と、著者は主張する。

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 ではその洗脳を解くには、つまり格差をなくすにはどうすればよいか。

 答は「外の世界から世界を見る」こと。

 人を支配するには、物語や迷信に人間を閉じ込めて、その外を見させないようにすればいい。だが一歩か二歩下がって、外側からその世界を見てみると、どれほどそこが不完全でばかばかしいかがわかる。


 と著者は語る。

 そこが私が、「180度見方が変わった」と思った所以。
 自国の経済に対し、今まであまりに受け身だったこと、何の疑問も持たずに暮らしてきた愚かさを痛感。

 格差の上部にいる人は「国家の中枢にいる人・商売上手な人・もともと資産家だった人」ということで、完全に納得していた。
 疑うことすらしなかった。

 だが本書を読み、自分がそういった思い込みをさせられていることを、ハタと認識。

 世の貧困問題も「仕方がない」と受け止めていたが、それが「洗脳による産物」だとわかってしまったのだ。

 そうとわかれば、自ずとエネルギーがわいてくるもの。
 「経済は、未来は自分の手の中にある」「もう騙されない」と元気がわいてくる。

 本書は「子どもに話している本」でありながら「子どもには難しい」と言われているが、やはり「ぜひ子どもにぜひ読ませたい」一冊。

 自分が生きる社会を、泣く元気もない赤ちゃんのいる世界にするか。
 泣けばたっぷりとミルクを飲める、赤ちゃんのいる世界にするか。

 本書で、「己が住む社会を客観視する術」を身につければ、子どもたちはきっと後者の世界を作るだろう。
                                                                     
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「未来をはじめる 人と一緒にいることの政治学」感想。この講義こそ世界を変える一歩だ!

評価:★★★★★

自分が自分らしくありながら、他人とつながるにはどうしたらいいか。自分が自分のボスでありながら、同時に周りの人とも意味のある関係を保っていくにはどうしたらいいのか。これこそ、すべての人にとって重要な課題であると同時に、政治が本質的に抱える課題なのです。
(本文引用)
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 「この本こそ、この講義こそ世界を変える一歩だ!」
 読みながら、私は叫んだ。

 本書は豊島岡女子学園で行なわれた、政治学の講義である。
 
 政治といっても、日本や世界だけには限らない。
 家庭や教室等さまざまな場の「政治」をとりあげていく。

 人が周囲とつながる時、必ず対立・衝突・すれ違いが起こる。
 ならばどうすれば、他者との違いを受け入れながら、自分らしく生きることができるのか。

 本書では中高生への講義を通して、「人と一緒にいること」「人と共に生きること」を徹底討論。
 
 次代を担う若者たちができることとは?


 

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■「未来をはじめる 人と一緒にいることの政治学」内容



 本書では、中高生とともに「政治」について考えていく。

 日本と世界はどのように変化してきたか。
 グローバリズムの進行と衰退。
 資本主義と社会主義のメリット・デメリット。
 今後の労働・雇用。
 女性が活躍する社会とは?
 教室から見える「人とのつながり」。
 選挙制度の問題点等々・・・。

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 政治学者・宇野重規氏が生徒たちの意見を丁寧に拾い上げながら、講義を進行。

 生徒たちの忌憚のない意見から、「未来を始めるヒント」が徐々に見えてくる。
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■「未来をはじめる 人と一緒にいることの政治学」感想



 本書最大の魅力は「政治」について「ホンネ」で考えられること。
 読みながら、「私ならこんな政治がいい!」「こんな社会はイヤ!」と、むき出しの気持ちで考えられることだ。

 たとえば面白いのが、ロールズの「正義論」を題材にした講義。
 米国の政治哲学者・ロールズは、かつて「最も恵まれない人に最大限の利益が与えられるべき」と唱えたという。
 社会的・経済的に不平等が生じるのは、ある程度仕方がない。
 しかし「最も恵まれない人の利益最大化」が大前提。

 公正な社会をつくるには、「最も恵まれない人の利益を最大化する」ことが必要だ、とロールズは主張する。

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 本講義では、そのロールズの主張に関して議論が白熱。
 
 ・身体的なハンディがある場合は仕方がないが、自業自得の場合は?
 ・努力不足で「恵まれない人」になった場合と、そうじゃない場合をどうやって見分けるの?
 ・教育なら全員受けられるようにしないといけないけど、自分でやらかした人もいるだろうし・・・。
 ・給料がみんな同じだったら、頑張ってる人の士気が下がるのでは?
 
 生徒たちは口々に、ロールズの主張に対し意見を述べていく。

 多くの生徒が「最低限の生活・教育は保障されるべき」と思いながらも、「自業自得の人」と「仕方のないハンディがある人」との区別が難しい、と主張。
 
 そこから「税負担の公平性の難しさ」にまで、講義は進展。
 日本人の、税に対する「謎の思考」が露呈されていく。

 このロールズの主張に対する討論には、心底シビれた。
 ビリビリきた。

 まさにこの講義・討論こそが、未来を作るのだ。

 ただ挙手や多数決で民意をはかるのではなく、本音で意見を交わしていく。
 共通意思や「場の空気」に押し流されることなく、自由に主張し、それを受け入れながら他者とつながっていく。

 大人からすれば「そんなこと言っちゃっていいの?」とハラハラするような言葉が多いが、それこを「未来を始める原動力」となるのだ。

 本書の講義・議論を読み、自分がいかに思考停止していたかがよ~くわかった。
 「よく考えたら、この制度、おかしくない?」という気づきをたくさん得られた。

 宇野先生と豊島岡女子学園の生徒たちの「ホンネの議論」は、人々の意識を変え、日本を変え、世界を変える起爆剤となるだろう。

 巻末の「放課後の座談」も必読。

 政治ってなんだかめんどくさい、LINEでポチッだけにしたい。
 でもいざ、クラスで話し合いがまとまらなかったら、どうする?

 そんな小さな「政治」について、生徒たちは実感たっぷりに話してくれる。いや~、実に面白い!

 こんな講義・座談会を読んじゃったら、選挙に行きたくなること必至。

 「投票に行くこと、政治に参加することこそが、自分が自分であることなんだ!」
 
 そう思いながら、スキップで投票所に行っちゃうかも。

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後藤謙次著「10代に語る平成史」感想。歴史的瞬間を生で見てきた人物だから語れる、「日本の30年」とは?

評価:★★★★★

 平成の時代は竹下氏が指摘したように、日本人が見失った目標を手探りで探し求めた時代だったのかもしれません。
(あとがき引用)
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 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とは、本書のためにある言葉だ。

 平成日本を、これほど肌で感じる本はない。

 何しろ著者は、平成の歴史を至近距離で伴走してきた人物だ。 

先輩記者から呼び出しの電話を受けて首相官邸に向かいながら深い感慨が湧いてきたのを今も思い出します。
 「いよいよ昭和が終わるんだ」
 そして首相官邸記者クラブに入ると、すでに小渕官房長官が官邸に到着していました。


 

元号懇の8人のメンバーが深刻な顔つきで旧首相官邸の大食堂と呼ばれた会議室に消えていく光景は今も鮮明に覚えています。


 平成を最初から最後まで、ここまで間近で見つめてきた人はそうそういない。
 
 そんな人が書いた本だから、「10代に語る平成史」には圧倒的な「生身感」がある。
 「日本に何が起こったか」がグサグサと感じられ、次代、自分はどう生きるべきかを真剣に考えたくなる。

 本書を読みはじめたが最後。
 読了後、「平成の次の世をどうするか」について、誰かと熱く議論を交わしたくなるだろう。
 
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■「10代に語る平成史」内容



 本書は白鴎大学の「特講・平成政治史」をまとめた本だ。

 講師は政治ジャーナリスト・後藤謙次氏。

 「平成」という元号が決まった経緯に始まり、消費税導入、バブル経済、沖縄の苦悩、日韓・日中・日朝関係、そして自然災害等、あらゆる面から平成を語っていく。

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 この30年で、日本は果たして進歩したのか。
 それとも・・・?
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■「10代に語る平成史」感想



 本書の筆致は、ひたすら静かだ。
 しかし「歴史的瞬間」を間近で見てきただけあり、静謐さの影に「熱さ」がある。

 選挙制度改革とリクルート事件、崩壊危機を見て見ぬふりしてきたバブル経済、証券業界の歪み、在日米軍・米兵による事件・事故等々について解説しながら、日本の課題を浮き彫りにしていく。

 読むうちに、「技術がこれほど進歩したのに、日本が全く進歩していない」という事実にただただ驚く。

 本当は欠陥だらけなのに、現状で甘い蜜を吸っている者たちが壁となり、なかなか改革できない。

 特定の人が利益を得ているから変えなければならないのに、その特定の人のせいで変えられない。

 既得権益を突き崩す難しさを、本書からはヒシヒシと感じる。

 だから本書は、今読むべき本。
 日本という船が沈みかけているのを、何が何でも食い止める。
 そのためには「10代に語る平成史」で、「30年間何も変えられなかった」という残酷な事実を知るべきなのだ。

 また本書は、ジャンルを越えた視野で書かれているのも魅力。

 平成はとにかく自然災害に見舞われた時代。
 津波対策など今後の課題は多いが、忘れてはならないのが「少子化」。

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 災害国・日本が超高齢化社会に向かうことは、避難・復旧に大きく響くことは明白だ。

 そして国際問題でも、著者は「広い視野」を存分に発揮。
 2018年の冬季五輪から日韓関係を見つめ、今後の国際問題を考えていく。

 本書を読んでいると、どんなニュースも漫然と眺めていてはいけないな・・・と猛省させられる。

 何気なく「あんなこと、こんなことあったなぁ~」とボンヤリ見ていたニュースは、全て「日本の今後」につながっていく。

 情報の洪水にただ流されるのではなく、そこから「自分が生きる社会」を考えていかねばならないなぁ・・・と背筋が伸びる思いだ。

 タイトルだけ見ると「10代向け」と思ってしまうが、全世代におすすめ。
 平成の次の時代を、1年でも2年でも生きる予定の人は、まず読むべき一冊である。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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