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エウレカの確率 ~経済学捜査員とナッシュ均衡の殺人~  石川智健

「経済学の理論に当てはめることで客観化し、まんまと逃げおおせたと思っている犯人を捕まえるんです」伏見は、口の端を微かに上げる。
 「僕は、勝ち逃げは100%許しませんから」
(本文引用)
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 どうやら私は、このシリーズのファンになったらしい。(第1弾「エウレカの確率 ~経済学捜査員 伏見真守~」のレビューはこちら
 謎解きという面でいえば、もっと巧い作品はあるだろう。しかし何というかもう、この「何がなんでも行動経済学をねじこんでくる」作者の情熱に惚れた。
 
 警察が事故と片づけても、独特の視点で真実を追究していく経済学捜査員・伏見真守。
 その低い体温と冷静な頭脳と浮世離れした価値観が、蛇のように犯人を追いつめていく感覚はきっとクセになる。
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 舞台は、とある製薬会社の研究所。そこに怪文書が送り付けられたことから、事件は始まる。

 その文書は、人体実験を告発するものだった。社内では、コンプライアンス課が中心となって送り主の特定を急ぐが、そんななか、容疑者のひとりが自宅で遺体となって発見される。
 警察は「事件性なし」と判断するが、経済学捜査員・伏見真守はどこか釈然としないものを感じる。
 事件なのか?事故なのか?そして、怪文書を送ったのは誰なのか?

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エウレカの確率~経済学捜査員 伏見真守~ 石川智健

 「極端な言い方をすれば、犯罪だって、一般の消費者選択理論と同じですから」(本文引用)
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 日本経済新聞「目利きが選ぶ今週の3冊」(2014/03/19)で興味をもち、即購入した一冊。
 実際の事件でもサスペンスドラマでも小説でも、殺人事件には動機が重要だ。それはわかっている。わかっているのだが、この小説を読み、私は今まであまりにも「動機というものを簡単に考えていたのではないか」と震えが来た。

 誰だって、自分にとって不都合なものは取り除きたい。しかしその不都合なものが人の命となると、たいていの人は我慢をする。いざ実行して「得るもの」よりも、「失うもの」の方がはるかに大きいことはわかっているからだ。
 それでも実行してしまうとき――それは、「失うもの」よりも「得るもの」のほうが大きいとき――。


 そんな殺人動機を経済学的視点から解き、真犯人に迫っていく「エウレカの確率」は、新感覚ながら「人はなぜ罪を犯すのか」という原点に立ち返らせてくれる傑作だ。
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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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