このカテゴリーの最新記事

勁草 黒川博行

「板子一枚下は地獄やった」
(本文引用)
___________________________________

 先日、日本年金機構のパソコンがサイバー攻撃を受け、年金受給者の個人情報が大量に流出したことが明らかになった。
 新聞によると、その後「日本年金機構職員」をかたる詐欺電話が相次いでおり、今後さらに拡大していくことが懸念されているという。(日本経済新聞2015/6/10「迫真」より)

 そんな暗澹たる気持ちのなか、書店に入るとこの本が。
 世の中の「悪」、それも「極悪」を書かせたら天下一品の黒川博行氏。そんな氏の新作のテーマは、タイムリーにも「特殊詐欺」-「オレオレ」「架空請求」「融資保証」「還付金」詐欺等-だという。

 電話一本で大金をだまし取る、詐欺グループの驚くべき手口とは?
 そして、そうでもしなければ生きていけない者たちの末路とは?

続きを読む

文福茶釜 黒川博行

 「素人に贋物を売るのは詐欺やけど、道具屋に売りつけたら勲章やで」(本文引用)
_______________________________

 まるで、名人の落語を聞いているような作品だ。
 黒川作品ならではのテンポの良さももちろんだが、その裏にある飽くなき腹の探り合いがもう最高。さらに最後の一言が、あきれるほどピリッと効いている。
 各編、読み終えるたびに思わず拍手をしてしまった。舞台のそでに引っ込む落語家を、いつまでもいつまでも称えつづけるように。

 狐と狸が化かしあい、そこにトンビがやってきて餌をさらうかと思いきや、横からカラスが奪い取り、そのおこぼれをハゲタカが貪って・・・。
 そんな、騙し騙されの世界を描いたミステリー「文福茶釜」
 古美術に群がる金の亡者たちの生存競争は、いかにして行われるのか。

続きを読む

二度のお別れ 黒川博行

 犯罪いうのは割に合わんもんやとつくづく思う。
(本文引用)
____________________________________

 ページをパラリと開くと、そこには「THE SECOND GOODBYE」の文字。どことなくレイモンド・チャンドラーを思わせるオープニングだ。
 しかし内容は、掛け合い漫才のような会話が機関銃のごとく飛び出す、ベッタベタな関西刑事もの。一見、しゃれたタイトルが似合わないような気がするが、終幕に近づくにつれ、どんどん物語とタイトルの距離が縮まっていく。
 そしてそれが完全に一致した時、魂が震えるような感動が一気に、血が湧きあがるがごとく押し寄せる。

 現在「後妻業」が話題の、黒川博行氏のデビュー作は、強盗誘拐事件を追う刑事たちの追跡劇。史上稀なる知能犯を、彼らは捕まえることができるのか?


続きを読む

後妻業 黒川博行

 若いやつらは鵜飼の鵜や。どいつもこいつも薄らボケの甲斐性なしやけど、たまには魚をとってきよる。
 (本文引用)
_______________________________

 今年いちばんのイッキ読み!
 いっや~~~~~~~~~~~~~~~~、面白かった。
 そして、
 いっや~~~~~~~~~~~~~~~~、世の中には悪い奴がいるものだ。

 実はこの本、無性に「徹底的な悪」というものを読みたくなり、書店で手に取ったのだが、これが大当たり。
 キン肉マンの額に「肉」と書かれているように、もう誰も彼もが、おでこに「悪」という文字が刻みこまれているような小説で、期待をはるかに上回る極悪ぶりだった。
 しかし、ただ“悪い”だけでは、ここまで面白くはない。
 この物語の“悪”は、とにかく頭脳派。彼らのような悪事を働くためには、「良心のなさ」以上に、「頭の良さ」が必要なのだ。
 法律の隙間をかいくぐり、法律の強固さを逆手にとった遺産強奪作戦。その、蛇のように標的にからみつく悪者たちの手口とは?そして、最後に笑うのは誰なのか?

続きを読む

プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告