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降霊会の夜 浅田次郎

 人間は、嫌なことを片っ端から忘れていかなければ、とうてい生きてはいけない。でもな、そうした人生の果ての幸福なんて、信じてはならないと俺は思う。
(本文引用)
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 生きている-それだけで、人はどれだけ罪を重ねるのだろう。そして私は今まで、知らず知らずのうちにどれだけ罪を犯してきたのだろう。
 読みながら、そんなことを思い総毛立った。

 ひょんなことから、過去の知人と再会を果たす一人の男。
 しかしその知人とは、いずれもこの世を去った者たち。彼岸と此岸とが対話する、謎の降霊会で男が気づいたこととは-。
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 主人公は、高原に住む年配の男性。幼少時代からのニックネームは「ゆうちゃん」だ。
 ある日、ゆうちゃんの住む地域一帯に雷雨が起こる。庭を見ると、ひとりの女が佇んでいる。


 雷の恐怖で動けなくなっている女性を、ゆうちゃんは招き入れるが、どうも女性の様子がおかしい。現世の者とは思えぬ雰囲気を醸し出しているのだ。
 そして女は言う。 

「会いたい人はいませんか。生きていても、亡くなっていてもかまいません」

 ゆうちゃんは、女に誘われるがまま、霊媒師のもとでかつての友人らに会う。
 父親に背中を押されダンプカーに巻き込まれた少年、離れた土地で自ら命を絶った女性・・・。
 彼らは皆、ゆうちゃんの心に住み着くことができぬ悲しみを抱えたまま、早逝した者たちだった。

 そして、ゆうちゃんの頭の中に、あの声が響く。 

――何を今さら。忘れていたくせに。


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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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