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大人の友情  河合隼雄

評価:★★★★★

 友情を支える互いに共有するものが、目的や理想でないとすると、それは「生きていること」とでも言いたくなってくる。「お前も生きているのか、俺も」と言いたいような感じ。「お互い、生きててよかったな」というものが伝わってくる。
(本文引用)
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  「友情って何だろう? 友だちって何だろう?」ふと、そんな疑問を持つ人は多いのではないだろうか。

 私も、学生時代の友人や、大人になってから仲良くなった人と心地よい時間を過ごすたびに、「友だちって嬉しいな、楽しいな。・・・ところで友だちって、友情って何だろう?」と小首をひねってしまう。

 なかでも、疑問の針が最大に振れるのは、自分が友だちを不愉快にさせた可能性があるときだ。
 長年付き合っていると、そんなことが互いに一度や二度はある。それでもなお、私はかけがえのない友人と、四半世紀以上も友だち関係を継続できている。果たして、それはなぜなのか。
 そして、もしこれから友だちに対して憎悪の感情を持つときが来たら、どのように対処すればよいのか。



 本書では、多種多様な友情の形を通して、真の友情を長続きさせるための“ちょっとしたコツ”を伝授していく。

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こころの処方箋  河合隼雄

評価:★★★★★

「運命」を嘆いてみたり、何とか変えられないかと無謀なことをしたりするよりは、いかにそれを歌いあげるかを考える方が得策のようである。(本文引用)
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 先日、乾ルカ著「願いながら、祈りながら」を読み、「いつか」といえる悩みを持つことがいかに幸せであるかを知った。

 そこで、今回久しぶりに手に取ったのが、河合隼雄著「こころの処方箋」。
 河合先生の本は、ハイセンスなギャグも手伝って非常に心が軽くなるものだが、そのなかでもこのコラム集は絶品。心を軽くするだけでなく、温かく柔らかく、そしてキリッと引き締めてくれる、一生の心の友となってくれる名著である。

 本書のキーワードは、「ふたつよいことさてないものよ」だ。
 これは、ひとつ良いことがあると、それとバランスをとるように悪いことがあり、世の中良いことずくめにはならないようにできているという意味だ。



 これは例えば「お金をたくさん稼げばその分税金を払わなければならない」といったようなものだが、裏返せば「悪いことの影には良いことがある」ことにもなる。
 河合氏は苦難や障害、心配事があるおかげで、夫婦の結束が固まった例などを挙げながら、その考え方について説いていく。

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河合隼雄の幸福論  河合隼雄

 幸福ということが、どれほど素晴らしく、あるいは輝かしく見えるとしてもそれが深い悲しみによって支えられていない限り、浮ついたものでしかない、ということを強調したい。恐らく大切なのはそんな悲しみの方なのであろう。
(本文引用)
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 子どもが小学校に上がってから、しばしば「幸福」について考えるようになった。
 それは、自分の幸福についてではない。子どもの幸福について、だ。

 しかしそれは厄介なことに、己の身勝手な幸福観(「勉強ができれば幸せな人生を送れる」等)に基づくものである。
 これは子どもにとっては、たまったものではない。親とはいえ別人格の人間に、勝手に幸福観を押し付けられても、それに従えるはずなどない。
 よって私の幸福は満たされず、子どもに苛立つという悪循環に陥る。

 これはいけないと思っていた時に、出会ったのがこの本。
 いつもほがらかな笑顔と巧みなボケツッコミの話術で、読者の心を魅了してしまう河合隼雄さんの本だ。それも内容は「幸福論」だ。何か大きなヒントがあるに違いない。


 そして読み終えた今、私は自分の「本当の幸福の素」に気がつき呆然としている。私に幸福をくれたのは、私を支えてくれたのは、学歴等の類ではない(勉強は必要だけど)。もっとうんと身近な、子どもの頃から本当に好きだったものにあったとわかったのである。

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こころの読書教室 河合隼雄

 本を読むというのは、なにか。
 それは、「自分の心の扉を開いて」、自分の中から、「自分の心の深いところ」に出ていくことである。

(解説引用)
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 なぜだろう。涙があふれて止まらない。読書案内を読んで泣いたことなんて、生まれて初めてだ。
 
 臨床心理学の第一人者・河合隼雄氏が「こころに関するよい本」を紹介し、パッションとユーモアをもって解説していく「こころの読書教室」
 人間の自我の外にある声と、心でも体でもない「魂」の存在から数々の名作を読み解く本書は、名作の名作たる所以を教えてくれる。
 
 人はなぜこの文学に心打たれるのか、なぜ長く読まれ続けているのか。そして自分はどんな本にのめりこみ、どんな本に涙し、どんな本に納得できず、理解できなかったか・・・。そんなことを思い出しながら読むと、今まで気づかなかった“自分”に出会うことができる。涙は、その衝撃と興奮のせいだろう。


 これほど「ああ、もっと本が読みたい」と思わせてくれる読書案内も、なかなかない。
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小学生に授業 河合隼雄/梅原猛

 僕は教育の本質は、「憧れに憧れる」という構造だと思っています。それは、先生の側に何かすごく憧れているものがあって、その情熱の矢があまりにすごい勢いで飛んでいるものだから、子どもたちがそれに沿って、一緒に矢になって飛んでいくということなんですね。
 (齋藤孝氏による解説引用)
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 「知的興奮」という言葉を時々聞くが、それがいったいどのようなものなのか、今ひとつわからずに生きてきた気がする。
 
 しかしこの本を読み、わかった。
 ああ、これが「知的興奮」というものなのか、と。

 この本に収められているのは、タイトルのとおり小学生への授業。
 場所は、京都市内のとある小学校5・6年生の教室だ。
 
 しかし教えるのは、その小学校の先生ではない。
 何と国際日本文化研究センターの教授陣。
 日本のことを外国の人々に知ってもらうために、日本の文化を日々研究している「知の巨人」たちである。

 そんな彼らが行った授業は、熱くたぎるような知的興奮を呼び覚ますものだった。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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