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花埋み 渡辺淳一

 「何故、女に生れたかと、そればかりが口惜しくて」
 (本文引用)
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 この小説は、何回読んでも感動と興奮が衰えない。
 これほどまでに、厚く高い壁がそびえ、荒波が次々と襲ってくる物語があるだろうか。
 これほどまでに、不可能を可能にした物語があるだろうか。

 日本初の女性医師・荻野吟子の生涯を描いた小説「花埋み」。凄絶な差別と偏見のなか医学を学んだ女性の物語は、読む者を骨の髄から奮い立たせる名作だ。
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 時は江戸時代後期。ある地方の名家に、一人の娘が帰ってくる。聞けば嫁ぎ先から戻ってきたとのこと。夫に業病をうつされたのだという。


 ぎんという名のその娘は、医師に病気を診てもらうのだが、そこにいるのは全て男性。業病を異性に診察され、恥辱に打ちひしがれたぎんは、ある決意をする。 

「お医者になろうと思うのです」

 同じ苦しみをもつ女性を救うべく、ぎんは立ち上がるが、「学問好きの娘は家門の恥」といわれる時代。そこには、想像を絶する苦難が待ち受けていた。
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光と影 渡辺淳一

 一方では天国をのぞきながら、一方では地獄をのぞく。一方では愛を肯定し、一方ではそれを否定する。一方では光をみ、他方では影の部分をみる。そんな矛盾した二つの眼差を相殺しながら一つの眼差になるのが、現代作家の眼なのだと私は思う。
(小松伸六氏による解説引用)
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 2014年4月30日、作家の渡辺淳一氏が亡くなった。テレビ欄等では「愛と性の巨匠 渡辺淳一氏死去」などと書かれていたが、私はあまりそうは思わない。
 
 なぜなら、私が夢中になって読んだのは、「失楽園」以前の作品だからだ。
 
 野口英世の人生を描いた「遠き落日〈上〉 (集英社文庫)」、日本初の女性医師荻野吟子の不屈の努力を描いた「花埋み (新潮文庫)」、簡単な手術のはずが、わずかに頭の位置が下がったために目を覚まさなくなった妻と夫の苦悩を描いた「麻酔 (講談社文庫)」等々・・・。
 どれもこれも、人の病気を治す「医学」というものに真正面から向き合った名作だ。なので、「失楽園」ばかりが注目され、何だか妙に助平な作家のように扱われているのを見ると、私としては違和感がある。

 (しかし、2013年の日本経済新聞「私の履歴書」を読むと、渡辺氏は「そちらの方」を望んでいたのかもしれないとも思う。)

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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