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「あぶない法哲学」感想。コロナ被害の支援、本当に重要なことはこの一冊に詰まっている。

あなたは自分が飼い犬よりも自由だと言えますか?
(本文引用)
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 10万円給付、休業補償、学習支援・・・コロナにまつわる支援対策が、連日報じられている。
 
 その報道を知るたびに、私は「何かモヤモヤするな~」「本当にそれでいいのかな?」と思っていた。

 本書を読み「モヤモヤ」の理由がわかった。

 新型コロナ支援策において、人は「決まり」に飼い慣らされ、「環境」に振り回されているのではないか。

 国・自治体が定める「決まり」に該当し、「環境」が整っている人しか助けを求められないのではないかと、気づいたのだ。
 
 だってコロナにまつわる支援策は、こんな環境が整ってこそ、ようやく完遂できるもの。


 家にパソコン・タブレット等を2台以上持ち、プリンターで印刷もできて、スマホでオンライン予約とかもスイスイできて、世帯主がたくさん稼いで、一方の親が自宅で子どもの勉強も見ることができて・・・。

 つまり「支援が急務でない人」こそ「支援をスムーズに受けられる」という矛盾が発生。

 まるで国に「手続きが迅速にできるよう、各家庭・個人で環境を整いておいてね」とせっつかれているようだ。

 でも「そのような環境を整えることができない人」にこそ、今すぐ対策が必要。
 国・自治体が提唱する支援策や手続き法は、「本当に耳を傾けるべき小さな声」が聞こえてないように思える。

 まあ、こんな偉そうなことを書いているが、そんなことに気づけたのは本書のおかげ。

 国家を「強盗団」と呼び、お人好しな国民に「正しい支配と思いこませている」と断言しちゃう劇薬本。
 しかし今、生活の危機・生命の危機に瀕する人々を考えるうえで「本当に大切なこと・必要なこと」が見えてくる、愛あふれる一冊だ。

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「検察の正義」補足。検察庁法改正、今国会断念で恐れてること。

 昨日、「検察の正義」の感想とからめて、「検察庁法改正案」に関する感想を書いた。

 記事アップ直後、「今国会での改正断念」という展開となったが、まだ気は抜けない。
 
 事実上の「先送り」となった場合、「国民がいなかったことにされる可能性」があるからだ。

 現在、コロナ禍で政府への関心が高まっていることもあり、国民の声を無視できない状況だ。

 しかし「コロナ後」、もし潮が引いたように「国民の声」が鎮まってきた時、検察庁法改正案が提出されたら・・・「国民の声がなかったことにされるのでは」と不安になる。

 そう思ったのは、ある「いじめ」の記事を読んだからだ。

 ある小学6年生の少年は、5年生の頃から、同級生Aにいじめ・暴力を受けていた。

 後ろから、Aに物を投げられる。
 それが教壇にまで届いていたにも関わらず、5年生の担任は「見えていなかった」と無視。

 6年次、再度Aと同じクラスになり、度重なる暴力に少年は耐えられなくなり不登校に。

 新担任は熱心に対応してくれたが、卒業文集作成時、こう言ったという。

 少年は、文集で「いじめの事実」について書こうとした。
 だが教師たちは「過去のことではなく、未来の希望について書いた方が良いのでは」と指導。

 少年は、ここで心が折れた。
 他の子は、過去のことを書いているのに、なぜ自分だけ無理やり未来のことを書かねばならないのか。

 「自分という存在が、なかったことにされた」と、打ちひしがれたというのだ。

 この記事を読んだ時、私には衝撃が走った。
 「いじめ」そのものも、もちろんつらい。
 だがそれ以上につらいのは、「自分がなかったことにされること」なのだ、と気づかされたからだ。

 ここで検察庁法改正案に戻る。

 検察幹部が、政府の判断により、「役職定年」を過ぎても幹部に留まれるという改正案。

 先送りで再審議となった際、「2020年5月に起きたことは過去」という発想で、法案が通ってしまわないか不安だ。

 万が一そうなった場合、国民の多くは「自分の存在がなかったことにされた」と感じるのではないだろうか

 それは「検察への政治介入」どころではない、大問題である。

 コロナ収束後、もし「検察庁法改正案」を押し通そうとするのなら、その時こそ今回以上に市民に問うべき。

 法案に対する賛否両方を含めて、「2020年5月に、人々が声を挙げたという事実」を忘れず、真正面から国民に問うていただきたい。
 

「検察の正義」感想。検察庁法改正は、なぜ危ないと思うのかがわかった。

私はかねがね、一罰百戒は「一罰一戒百戒」でなければいけないと言ってきた。
(本文引用)
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 検察幹部の定年を、政府の判断で延長可とする「検察庁法改正案」。
 安倍首相は「検察人事への政治介入はない」と答弁しているが、多くの人が「信用できない」と言っている。

 そこで読んでみたのが、「検察の正義」。
 本書は検察庁法改正について、触れた本ではない。

 しかし本書を読んだことで、今回の検察庁法改正の「真の問題点」を見た思い。

 首相は「政治介入はない」と言い、国民は「そんなの信用できない」と言う。
 そのような「信頼性の齟齬」が起きていることに、大きな問題があるのではないかと感じた。
 
 定年延長そのものも、確かに問題かもしれない。


 しかし本書を読み、それ以上に問題なのは「市民に、検察は不透明と思わせてしまう」ことだと、はっきり悟ったのだ。

 検察は、ひと一人の人生を大きく変えてしまう。

 「不透明な、疑わしい組織から、自分の人生を大きくゆがめられてしまったら・・・」
 「不当なことをしていそうな人々に、家族まで滅茶苦茶にされたら・・・」

 そんな猜疑心を抱きながら、人は安心して生活することはできるのだろうか?
 
 私ならできない。

 犯罪などしていなくても、どんなに善良に生きていても、そんな社会は怖い。

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「誰のために法は生まれた」感想。事件に巻き込まれたくない人必読!不法行為には「ある共通点」があった!

評価:★★★★★

 そうだ! 君は決定的なことを言った。窃盗はなぜいけないかというと、必ずグルなんだよ。
(本文引用)
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 「本当だ! どの事件にも“あの”共通点がある!」
 
 本書を読んでから、新聞やニュースの見方がガラリと変わった。

 実は「犯罪=不法行為」には、大きな共通点があることが判明。
 本書で「犯罪の共通点」を知ってから、事件報道を改めて見るとゾクッと震撼。

 いじめ・暴行・詐欺・賄賂・・・どれもこれも「不法行為の共通点」と合致していることに戦慄する。

 だからこそ本書は、誰もが一度は読むべき本。
 
 「犯罪の共通点」を知ることは、いわば最強の護身術。


 あなたにかける「甘い言葉」も、あなたを傷つける罵詈雑言や暴力も、「不法行為の共通点」をハッと思い出せば「これは犯罪」と断定可能。

 深刻な事態に陥る前に、身を守ることができるのだ。

 事件に巻き込まれたくないなら、「誰のために法は生まれた」は必読だ。

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逃げ恥「恋ダンス」はなぜ違法!?萩谷麻衣子「知らぬは恥だが役に立つ法律知識」レビュー

評価:★★★★★

 YouTube「歌ってみた」って合法?
(本文引用)
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 「逃げ恥」の「恋ダンス」、昨年末大ヒットしましたね。
  「恋ダンス」の「踊ってみた」動画は、大使館の方まで投稿するなどもはや国際レベルのブームとなりました。

  ところが最近、星野源さんの所属レーベル側から動画削除のお願いが。

 「恋ダンス踊ってみた」動画を、可能な限り公開中止・削除するよう呼びかけています。
 
 さて、ここで気になるのが「恋ダンス」にかぎらず投稿されている「歌ってみた」「踊ってみた」動画。




 恋ダンスの「踊ってみた」がNGなら、たとえばONE OK ROCKの「The Beginning」の「歌ってみた」動画もNGではないのか?(すみません、ワンオク大好きなので。この動画、いい味出してて好きです。)



 三代目のランニングマン「踊ってみた」動画はどうなの?(これ、上手いよね↓)


 そんな疑問が次々とわいてきます。

 そこでおすすめするのが「逃げ恥」ならぬ「知らぬは恥だが役に立つ法律知識」

 テレビで人気の萩谷麻衣子弁護士が、小さな疑問から大きなトラブルまで一挙解決!

 本書を読めば、痴漢を疑われてまさに「逃げ恥」になるような事態を避けることができますよ。

 タイトルはライトですが、一家に一冊置いておきたい本格派法律本です。
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■「知らぬは恥だが役に立つ法律知識」概要



 本書は6章構成。

 まずは痴漢冤罪、自転車事故、LINEによるストーカー、SNSへの子ども画像など旬の話題からスタート。
 YouTube「歌ってみた」「踊ってみた」動画についても、第1章に書かれています。

 その他、金銭、不倫、いじめ、住まいなど身近なトラブルを採り上げ、最適な解決方法を解説。
 弁護士への依頼方法や、最低限知っておきたい法律知識なども書かれているので、裁判を起こすのが得策か否かも判断することができます。

 「ちょっと困ってるんだけど、これって違法なの?」
 「自分のした行動が違法だなんて、知らなかった。今すぐやめなくちゃ!」

 本書を読めば、「うっかり100万円罰金!」などという事態を避けることができます。
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■「知らぬは恥だが役に立つ法律知識」感想



 本書の魅力はタイトル通り、本当に役に立つ内容が書かれていることです。

 YouTube「歌ってみた」動画は世間にあふれているのに、「恋ダンス」の「踊ってみた」動画は削除要請がされる。
 本書でその違いを知れば、もっと快適にネット投稿を楽しむことができます。

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 いくら楽しくても「これって違法かも」「これって逮捕されるのかな?」なんてヒヤヒヤドキドキしながら投稿するなんて、イヤですよね。

 でも法律知識を身に着ければ、晴れやかな気持ちで投稿できます。
 法律は自分を窮屈にするのではなく、より自分を自由にしてくれる道具である・・・本書を通して法律との付き合い方がわかると、生き方の幅が広がりますよ。

 また、最近問題になっているのが、痴漢を疑われて線路に逃げる事件です。
 なかには逃走した挙句、ビルから転落死した人も。

 痴漢で線路に逃げるのはデメリットしかないと、多くの人はわかっています。
 でもいざ自分が巻き込まれたらと思うと、強固に「そんなことをしちゃいけないよ!」とも言いにくいものです。

 ではもし痴漢を疑われたら、どうすればよいのか。
 萩谷麻衣子弁護士は、「痴漢冤罪の正しい対処法」を詳しく伝授。
 (※線路に逃走した人は、冤罪かどうかはわかりませんが・・とりあえず)

 何と萩谷弁護士は、いきなりこう言います。

「走って逃げるのではなく、堂々と立ち去れる状況なら立ち去るのがベスト」です。

 これって意外な解答ですよね。
やっていないのなら、そこにとどまり、きちんと警察なり呼んで無罪を主張したほうが良いのでは?と考えそうです。

 でも「法律のプロ」は考え方が違います。

 いかに日常生活に支障をきたすことなく、トラブルを解決するか。

 結果ももちろんですが、そのプロセスを非常に重視するんです。

 立ち去らず、やってもいないのに一時的にでも「逮捕」となったら、その痛手は甚大。

しかも冤罪でも、「一般人でも現行犯逮捕できる」ケースも十分考えられます。

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 萩谷弁護士は「逮捕」できる可能性の意外な広さと、「逮捕」が与えるダメージの大きさを熱く解説。 

最終的に不起訴になったり、裁判で無罪になったりしても、その後の社会生活を考えると簡単に逮捕されるわけにはいかないのです。

 と語ります。

 ならばやっぱり、線路に逃走したほうがいいのか?と言えば、それはやはり大間違い。

 自分にとっても周囲にとっても、いちばん痛手のない解決法を、萩谷弁護士は示してくれています。
 これは知っておいて、決して損はないです。

 いざ自分がトラブルに巻き込まれたら、冷静に行動できるかどうかはわかりません。
 でも「知らぬは恥だが役に立つ法律知識」、知らないのは恥ではないかもしれませんが、知っておけば恥が少なくなるのは歴然。

 一見、些細と思える出来事でも、法律知識がなかったばっかりに人生が壊れる場合もあるんです。

 本書で紹介されているトラブル回避法や法律知識は、大過なく人生を全うするための強力な武器となるでしょう。

 とりあえず、「歌ってみた動画」と「恋ダンスを踊ってみた動画」の法律的違いを、本書で学んでみてください。

 法に照らして眺めてみると、ネットの意外な素顔が見えてきて、いっそう動画が楽しめますよ。

詳細情報・ご購入はこちら↓

岩波新書「裁判の非情と人情」を読んで裁判を身近に感じよう!

評価:★★★★★

  裁判官は、出した紅茶も飲んでいかない変な人たちだと思うかもしれないが、そこのところは、十分理解してもらいたいものだ。
(本文引用)
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 SNSなどで、しばしば見かけるのが「納得のいかない裁判」のニュース。

 「あんなことを引き起こしたのに、懲役3年なんて・・・」
 「なぜ執行猶予がつくの?」
 「犯人の1人が、法曹界の重鎮の子どもらしいよ」

 等々、世間が思っていたよりも軽めの判決が下されるとSNS上は怒号の嵐。
 真偽のほどがわからない噂や憶測もくっついて、怒りが膨張するにつれて、「裁判」や「裁判官」に対する信用はしぼんでいきます。
 そんな今、おすすめなのが「裁判の非情と人情」



 長年にわたり刑事裁判に携わった裁判官・原田國男さんによる、「裁判官」としてのエッセイです。
 様々な裁判を通して、裁判官に怒りを感じているならば、ぜひこの本を読んでみてください。

 人間が人間を裁くとは、どれほど厳しいものか。そして、その裏にどれほどの温かさが隠されているのか。

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 本書を通してそれを知ることで、カッカとした頭をクールダウンさせることができるでしょう。
 そうして頭が落ち着けば、噂や憶測に惑わされず、より事件・裁判の本質に迫った判断を自分なりに下すことができることでしょう。

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自白の心理学  浜田寿美男

評価:★★★★★

 常軌を逸した状況のなかで、被疑者はごく正常な心理として「犯人になる」ことを選ぶ。
(本文引用)
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  今月24日、刑事司法改革関連法案が成立した。
 これは取り調べの録音・録画(可視化)の義務化および、司法取引制度の導入や通信傍受の対象拡大などを柱としたもので、犯罪捜査の手法が大きく変わるものと言われている。施行は、公布後3年以内の予定だ。

 そこで今回読んでみたのが、「自白の心理学」
 出版されたのは15年前で、まだ袴田事件の袴田巌さんが釈放される前の本だ。しかしだからといって、「古い」と捨て置ける本ではない。
 
 今回の法案成立で、どんなに犯罪捜査が透明化されたとしても、「冤罪」を考えるうえでは普遍的な価値をもつ一冊だと思う。
 何しろ、自分が「不利になる」うその自白をしてしまうのには、捜査の可視化以上に深い心理が働いているのだから。



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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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