宇宙エレベーター ―――その実現性を探る 佐藤実
評価:★★★★★
私たちの祖先が海や砂漠に挑んでいったように、広大な宇宙を前にした私たちは、たとえそこがどんなに過酷だろうと、挑まずにはいられないのです。
(本文引用)
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地球と宇宙とをケーブルでつなぎ、誰でも宇宙に行けるようにする夢の装置「宇宙エレベーター」。
一見、少年漫画に登場するようなトンデモ構想に思えるが、本書では技術やコスト、法律など様々な視点から、宇宙エレベーターの実現可能性を徹底分析していく。
いよいよ、厳しい宇宙飛行士試験を突破することなく、地球にいるのと同じ感覚で宇宙に行ける時代がやってくるのかもしれない!?
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本書は6章構成。宇宙エレベーターの定義づけから始まり、それを実現させるカギにとことん迫り、関係者へのインタビュー、宇宙開発の歴史、そして未来へとつながっていく。
なかでも読み応えがあるのが、第4章「特別インタビュー」。特にJAXA・向井浩子氏の話が興味深い。
向井氏は法学部出身で、宇宙開発にかかわる契約・法務の仕事に携わっている。
そんな向井氏との問答は、宇宙エレベーターを単なる夢物語で終わらせない、現実味に満ちている。
「宇宙エレベーターは地表の建築物なのか、宇宙の構築物なのか?」
「宇宙に関する国際的な法令や条約はあるのか」
「損害が発生した場合、賠償するのは誰なのか」
「もし宇宙で殺人事件が起きたら・・・?」
そんな、普通では思い至らない「宇宙エレベーターができた際の疑問」について、向井氏は詳しく解説していく。
地球であれ宇宙であれどこであれ、そこに多くの人間が存在する限り、契約や規則が必要である。そしてそれをきちんと決めるには、そもそもどこからが宇宙なのかを定める必要があり、国家間の取り決めも徹底的に詰めて考えておかなければならない。
宇宙エレベーターは、地球にいるのと同じような環境で、人間を宇宙に行かせてくれる夢のような装置だ。
しかしそれは要するに、「地球に人間がいること」と同じように考えなくてはならないということ。大きな夢の実現には、それをはるかに上回る大きな責任と緻密な整備が不可欠なのだ。
本書を読む限り、宇宙エレベーターの実現は未知数だ。数十年のうちにできるかもしれないし、永遠にできないかもしれない。
しかしいずれにしても、宇宙エレベーター構想は「宇宙に人間が行くこと、いることとはどういうことか」を根本からじっくりと考えさせてくれるものだ。
宇宙エレベーターについて知りたい方にはもちろん、「宇宙で一定期間過ごしてみたい」とお考えの方にも心からお薦めの一冊である。
私たちの祖先が海や砂漠に挑んでいったように、広大な宇宙を前にした私たちは、たとえそこがどんなに過酷だろうと、挑まずにはいられないのです。
(本文引用)
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「夢があるぅ!」
本書を読みながら、思わずこう叫んでしまった。
夢というのは具体的に語られれば語られるほど、ロマンチックで心弾むものになる。
ただボンヤリと「こんなこといいな、できたらいいな」と無暗に期待するよりも、具体的に「これを叶えるにはこの材料が必要だが、現在のところ、こうこうこういう理由でそれは難しい」と手厳しく言ってもらったほうが、より夢は膨らむ。
そういう意味で、本書ほど読者に夢を与え、心弾ませる本はなかなかないのではないか。
本書を読みながら、思わずこう叫んでしまった。
夢というのは具体的に語られれば語られるほど、ロマンチックで心弾むものになる。
ただボンヤリと「こんなこといいな、できたらいいな」と無暗に期待するよりも、具体的に「これを叶えるにはこの材料が必要だが、現在のところ、こうこうこういう理由でそれは難しい」と手厳しく言ってもらったほうが、より夢は膨らむ。
そういう意味で、本書ほど読者に夢を与え、心弾ませる本はなかなかないのではないか。
地球と宇宙とをケーブルでつなぎ、誰でも宇宙に行けるようにする夢の装置「宇宙エレベーター」。
一見、少年漫画に登場するようなトンデモ構想に思えるが、本書では技術やコスト、法律など様々な視点から、宇宙エレベーターの実現可能性を徹底分析していく。
いよいよ、厳しい宇宙飛行士試験を突破することなく、地球にいるのと同じ感覚で宇宙に行ける時代がやってくるのかもしれない!?
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本書は6章構成。宇宙エレベーターの定義づけから始まり、それを実現させるカギにとことん迫り、関係者へのインタビュー、宇宙開発の歴史、そして未来へとつながっていく。
なかでも読み応えがあるのが、第4章「特別インタビュー」。特にJAXA・向井浩子氏の話が興味深い。
向井氏は法学部出身で、宇宙開発にかかわる契約・法務の仕事に携わっている。
そんな向井氏との問答は、宇宙エレベーターを単なる夢物語で終わらせない、現実味に満ちている。
「宇宙エレベーターは地表の建築物なのか、宇宙の構築物なのか?」
「宇宙に関する国際的な法令や条約はあるのか」
「損害が発生した場合、賠償するのは誰なのか」
「もし宇宙で殺人事件が起きたら・・・?」
そんな、普通では思い至らない「宇宙エレベーターができた際の疑問」について、向井氏は詳しく解説していく。
地球であれ宇宙であれどこであれ、そこに多くの人間が存在する限り、契約や規則が必要である。そしてそれをきちんと決めるには、そもそもどこからが宇宙なのかを定める必要があり、国家間の取り決めも徹底的に詰めて考えておかなければならない。
宇宙エレベーターは、地球にいるのと同じような環境で、人間を宇宙に行かせてくれる夢のような装置だ。
しかしそれは要するに、「地球に人間がいること」と同じように考えなくてはならないということ。大きな夢の実現には、それをはるかに上回る大きな責任と緻密な整備が不可欠なのだ。
本書を読む限り、宇宙エレベーターの実現は未知数だ。数十年のうちにできるかもしれないし、永遠にできないかもしれない。
しかしいずれにしても、宇宙エレベーター構想は「宇宙に人間が行くこと、いることとはどういうことか」を根本からじっくりと考えさせてくれるものだ。
宇宙エレベーターについて知りたい方にはもちろん、「宇宙で一定期間過ごしてみたい」とお考えの方にも心からお薦めの一冊である。