このカテゴリーの最新記事

クランクイン  相場英雄

評価:★★★★☆

 「一体全体、どうなってるんだ」
(本文引用)
______________________________

 騙されないぞ~と構えていると、騙される。そう思い、騙されないぞ~と構えず自然でいるよう努めると、やはり騙される。
 もう、これから本を読む時はどうすればいいの?何を信じて生きていけばいいの?

 「震える牛」や「ガラパゴス」等で社会の裏側を濃厚に描き切ってきた相場英雄氏だが、ここへきて突然の方向転換!?
 思いっきりエンタメ色満載の新刊は、私の読書人生を狂わせてしまうかもしれない快作、いや、怪作だ。

 騙されないように何重にも気をつけてたんだけどなぁ・・・う~ん、悔しい!
__________________________

 主人公の根本崇は広告代理店に勤めている。



続きを読む

ガラパゴス  相場英雄

評価:★★★★★

「運が悪けりゃ、人間として扱ってもらえない世の中にしたのは誰だよ」
(本文引用)
________________________________

 日本経済新聞(2016/2/28)に、こんな特集が載っていた。

「日曜に考える ブラック企業なくすには」

 先日起きた軽井沢のバス事故等を例にとり、過酷な労働を強いる「ブラック企業」について考える記事だ。
 熾烈な価格競争のなか、材料費や人件費を削った末に、取り返しのつかない犠牲を出してしまう現在の労働環境。
 その異常性を、日頃は見て見ぬふりをして生きているが、この小説を読んでしまったら、誰もが見過ごせなくなり怒りを覚えるだろう。
 普通に人間らしく生活することがこんなに大変な世の中なんて、ちょっと、いや、あまりにもおかしいぞと。
__________________________

 警視庁の田川は、ある日、警察の資料のなかに不審な点を見つける。
 練炭自殺で亡くなったとされた男性の写真を見て、実は毒物による他殺ではないかと田川は疑う。
 その真相を探るうちに、田川は日本の労働事情の異常さを知っていく。

 男性を殺したのは、人なのか、それとも国なのか。
__________________________

 上巻の帯に「これは本当にフィクションなのか?」と書かれているが、本当にそう言いたくなる。





続きを読む

御用船帰還せず  相場英雄

評価:★★★★☆

 「あんなでかい船が沈んじまったら、また米の値が騰がる。たまんねぇや」
 人垣の中で、若い職人風の男が吐き捨てるように言ったとき、重秀は雷に打たれたような感覚に襲われた。

(本文引用)
___________________________________

 「ルパンⅢ世」か「スパイ大作戦」、はたまた漫画の「有閑倶楽部」などが好きな人に、思いっきりお薦めしたい一冊。
 「震える牛」の著者による時代小説なんて、いったいどんなものだろう?と見当もつかない思いで恐る恐るページを開いたが、これが何とも痛快で一気に読んだ。

 では、単純に「相場英雄は時代小説も書ける器用な作家ですよ」という結論になるのかというと、そういうわけではなさそうなのがまた良いところ。

 時代小説であっても、社会に何かを投げかけるジャーナリスティックな要素と、周りの誰もが怪しく見えるミステリーチックな要素が存分に盛り込まれており、「相場英雄らしくないのに相場英雄にしか書けない」作品になっている。



 嫌味な器用さがなく、題材が何であれ「サスペンスフルなストーリーで、社会に一石を投じるのだ」という気概がひしひしと感じられ、たいへん好感が持てた。相場英雄さん、好きです!

続きを読む

ドラマ「震える牛」 6月16日(日)スタート!

 いよいよ来月16日(日)より、ドラマ「震える牛」が放送される。

 池井戸潤氏の「空飛ぶタイヤ」等と同様、イヤでも或る特定企業を思い浮かべてしまう内容なので、

 「こりゃ、ドラマ化は難しいのでは・・・」

 と思っていたが、そういう作品ほど本だけにとどめておきたくない、皆に知ってほしい、と願ってしまうもの。

 そこで今回も、WOWOWがその願いを叶えてくれた。(WOWOWさん、いつもありがとう。)
 これを喜ばずして、どうしろというのか!

____________________________________

 この「震える牛」、以前書いたレビューのように、ミステリーも社会派ドラマも両方楽しめる逸品。
 離れた点と点が、見事に線へとつながる謎解きも面白いが、何といっても郊外の商店街の生々しい描写が見もの。

 大型ショッピングセンターの進出、さびれゆく街、汚される食卓・・・。

 そんな、今、目を背けることのできない数々の問題が、著者・相場氏の使命感と共に存分に練りこまれている。

 読むべき、そして観るべき一冊であることは間違いないであろう。
 来月が待ち遠しいかぎりだ。



「震える牛」 相場英雄

「彼らは言葉巧みに地方に進出する。遊休地から固定資産税が徴収できる、地元の雇用を確保できると地方の有力者を誘惑する。いざ大型商業施設ができれば、地元商店街から客を根こそぎ奪う。しかし、儲からなくなった途端、別の土地を探すんだ」(本文引用)
________________________________

 この2月~3月にかけて、新聞のベストセラーランキングに必ずランクインしている小説がある。そしてその本は、書店の平積みコーナーで、ひときわ目を引く存在感を放っている。

 表紙には、牛の頭蓋骨のレントゲン写真と思しき少々グロテスクな画像。
 タイトルは、その名も「震える牛」である。
__________________________

 東京・中野の居酒屋で、男性2人が殺された。
 当初は店の売上金目当ての強盗とみられ、運悪くその場に居合わせた客2人が刺された事件と片付けられた。


 しかし捜査を進めるうちに、別の事件像が浮かび上がってきた。
 この2人は偶然殺されたのではない。
 その場に居合わせるように、おびき寄せられたのではないか。

 その頃、1人の女性ジャーナリストがある巨大企業を追っていた。
 日本一のショッピング・センター、オックスマートだ。
 法律の網をかいくぐる強引なやり口でライバル店を潰しにかかり、街に根付く中小小売業をも破滅させ、次々とシャッター通りを作り出す。

 殺人事件を追う2人の刑事と女性ジャーナリストがたどり着いた先は、「食」にまつわる目を覆いたくなる現状だった。

 少しでも安く売るために、「雑巾」肉を成形し、添加物で刺激的に味付けをする流通業者。
 そしてそれを、喜んで買い求める消費者。
 さらに、その隙間に入り込もうとする反社会的組織。

 東京の繁華街、車のスクラップ工場、さびれた地方都市、東北の農場、流通業界を牛耳る大企業の一室・・・地道に捜査を続けるうちに、被害者は、このいびつなトライアングルに巻き込まれて命を落とした疑いが濃厚になってくる。

 しかし、殺されるほどの事情がなかなかつかめず、刑事たちの苛立ちは募る。
 そんなとき、被害者の手帳に記された、ある書き込みが目に留まる。
 「M105」、「M108」

 被害者が遺したこの記号に、いったい何が隠されているのか?

__________________________________

 「2012年 ミステリーベスト1 早くも決定」

 この本の帯にはそう書かれているが、果たしてそうだろうか?
 ミステリーとして不出来だと言っているわけではない。
 ミステリーという範疇におさまらない、いや、おさめてはいけない社会的使命を背負った小説だと感じたからだ。

 ストーリー中、捜査で出向く地方都市郊外の衰退ぶりや、主人公の刑事が信頼できる精肉店で牛肉を買い求める姿が事あるごとに細かく描かれている。
 単なるミステリーなら、この描写にそこまでスペースを割く必要はないだろう。

 しかし、この小説はそうではない。
 その何気ない情景を生々しく描くこと、そこからは、

 「一個の人間として、どうしてもこれが書きたい」

 という著者・相場英雄氏のほとばしるような情熱が見て取れる。
 
 これをミステリーと一言で片付けてしまうのは、あまりにもったいないのではないだろうか。

 「利益優先の市場原理」と「食の安全確保」。
 いわばトレードオフの関係ともいえるこの2つを、われわれ消費者はどう考えていかねばならないか。
 決して無視してはならない問題であるのだが、安易な快楽を求めるあまり、気がつけば目を背けてしまっている事柄だ。

 世間にそこはかとなくはびこるこの大問題を、殺人事件を絡めたミステリーでグイグイ読ませ、意識の喚起を促した著者の熱意と筆力には心から敬意を表したい。

 そして真相を明かすだけでなく、国と警察と民間をめぐる駆け引きや社会的影響まで考えて事件の処理がされている点は、丹精こめて育てられた一輪の花のような温かさを感じさせる。
 欲深い人間たちのおぞましい姿が描かれているにも関わらず、だ。

 純粋にミステリーを味わいたいのなら、証拠の裏づけや自供の点など少々物足りないかもしれないが、それを圧倒的に上回る収穫がある一冊といえるだろう。

ご購入はこちら↓
【送料無料】...

【送料無料】...
価格:1,680円(税込、送料別)

プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告