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「影踏み」感想。山崎まさよし主演で映画化!長編・短編両方味わえる超ぜいたくミステリー。

★こんな人におすすめ!

●とりあえず映画「影踏み」の原作を読みたい人。
●「ああ、『影踏み』? 原作面白かったよ」と誰かにに言いたい人。
●「ミステリーは長編も短編も楽しみたい!」という欲張りな人。
●「どんでん返し」「意外な真相」という言葉に弱い人。

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<本ボシが見えた>
≪何が?≫
啓二は真壁の呟きを聞き逃したようだった。
<これからもう一軒入る>

(本文引用)
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 11月15日映画公開の「影踏み」。
 原作を読めば「これ、どうやって映像化したの!?」と不思議に思うだろう。

 と同時に「これ、映画で観たら絶対面白いよね!」と公開が待ち遠しくなるはず。
 
 凄腕の泥棒が難事件を次々解決。
 
 それも「大きな事件」を追ううちに、「小さな事件」が神出鬼没。
 
 重厚な事件にうなりながら、「どんでん返し」や「意外すぎる真相」をポンポンポンポン「これでもか!」と楽しめる。

   
 「あ~、骨太なミステリーをじっくり読みたい」「でも隙間時間で、何度もビックリしたい」
 
 「影踏み」は、そんな願望をどっぷり満たしてくれる「ラグジュアリー感いっぱい」のミステリーだ。

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「ノースライト」感想。「だから横山秀夫は読みたくない!」と改めて思った傑作。

評価:★★★★★

 真相はすぐ隣にある。襖一枚隔てた向こう側にある。襖を開けばいい。ただそうすればいい。なぜそうしないのか。
(本文引用)
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 「だから横山秀夫の小説は、読みたくないんだよーーー!」
 本書を読みはじめてすぐ、心の中でそう叫んだ。

 なぜ「横山秀夫の本を読みたくない」のか。
 理由は「他の本がつまらなくなってしまうから」だ。
 
 「64」の時もそうだった。
 次に読んだ本が、「64」の直後に読んだせいですっかりかすんでしまった。
 世間一般で見れば、十分面白い本のはずなのに、必要以上に低評価になってしまった。



 これはいわば「欽ちゃんの仮装大賞」現象
 20点満点の仮装の次に登場した作品は、すっかりかすんで不合格となってしまう。

 それと同じで、横山秀夫作品を読んでしまうと、他の本が一気につまらなく思えてしまうのだ。

 風格・・・タネ明かしの深み・・・真相に隠された事実の重さ・・・心の機微を絶妙に描く、類まれなる表現力・・・(ちょっと横山秀夫風にしてみた)。

 すべてにおいて、他の小説と段違いの横山秀夫作品。
 今回もまた、見事にやってくれた。

 だから今現在、次に読む本を見つけられずに困り中。

 横山秀夫さん、何と罪深い作家であることか・・・。   
 
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■「ノースライト」あらすじ



 主人公・青瀬稔は一級建築士。
 小さな設計事務所に勤めている。

 ある日、青瀬のもとに不審な情報が入って来る。

 かつて設計した家が、どうやらもぬけの殻らしい。

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 施主・吉野家は、夫婦と子ども3人。
 青瀬に「どうしても」と設計を頼み、完成の際には、大喜びしていたあの家族。

 実際には住んでおらず、行方は杳として知れない。

 青瀬は事件のにおいを感じ、吉野一家の行方を追うのだが・・・?
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■「ノースライト」感想



 横山秀夫作品らしく、真相のボールが想定外の場所から飛んでくる。
 いや本書の場合、「真相の球が飛んでくる」というより、「真相の芽が突然出てくる」といったほうが良い。

 読者が気づかぬ間に、地中で真実がこっそり根をはり、終盤突然、ボゴッと飛び出してくるのだ。
 
 そして一度飛び出した真実のツルを引っ張れば、過去にタイムスリップするように全容がズルズル~ッと解明。
 
 「あの日から、あの時、あの時代からすでに事件は始まっていたのか!」と、ただただ驚愕する。

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 そして全貌がわかると、みっともないほど泣けてしまうのが横山ミステリー。

 横山秀夫の小説は、決して不義理を許さない。
 本書では、その律義さが主人公を困らせることになるわけだが、「こんな義理の通し方もあるのか」と号泣。
 
 人は人なしでは生きていけない。
 誰かを思い、愛し、慈しみ、守る・・・そんな気持ちを持ちつづけるからこそ、人は生きていけるんだと再認識した。

 だから「ノースライト」は、半落ちが好きな人におすすめ。

 アッと驚くミステリーと、しみじみとしたヒューマンドラマ、両方をどっぷり心ゆくまで堪能できる。

 それにしても、次に読む本どうしよう・・・。

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64 ロクヨン  横山秀夫

 一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。
(本文引用)
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 すでにこの作品の評判は、聞き飽きるほど聞いていた。
 「警察小説の金字塔」「桁が違う」「この作品が読めただけで十分お釣りがくる一年」・・・etc.

 横山秀夫7年ぶりの新刊という期待に加え、「このミステリーがすごい 2013」での1位獲得、そして絶賛の嵐。
 これは読まないわけにはいかないだろう!と思いつつ、読んでしまうと他の作品が読めなくなってしまうのではないかという恐怖感が募り、昨年から書棚にしまったままだった。
 しかし、とうとう意を決して読んだ。

 そして思う。

 やはり読まなければ良かった。読んではいけなかった。
 こんな小説を読んでしまったら、他が読めないじゃないか!

 ・・・嫌なような嬉しいような予感は、まんまと的中したのであった。
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 主人公は、某県警で広報官を勤める男、三上。
 社会への窓ともいえる広報は、日夜、事件事故の情報をどこまでマスコミに開示するかに頭を悩ませている。

 実名か、匿名か。
 被害者と加害者、そしてその家族。
 彼らの人権と、実名で報道することの意義とを秤にかけて、警察と記者クラブとの間を往復する毎日だ。

 そんなある日、警察庁長官がある事件の遺族宅を視察するという。



 
 その事件とは「ロクヨン」。
 昭和64年・・・昭和最後の年に起きた誘拐殺人事件だ。
 未解決とはいえ、風化しかけているこの事件。
 10年以上の月日を経て、なぜ今さら警察庁トップによる訪問なのか。

 実はその裏には、にわかには信じがたい思惑があった。

 三上は、広報官として、警察の人間として、そして現在行方不明中の娘をもつ父親として、全身全霊でこの事態に臨むのだが・・・?
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 とにかく、密度が濃い。

 実は私は、横山秀夫の文体に若干苦手意識がある(巧みすぎて頭がついてかない)のだが、もうそんなことは言っていられない。
 文体が皮膚だとすれば、内容は血、骨、内臓。
 この小説の骨と内臓の強靭さ、そして流れる血の濃さは尋常ではない。
 そしてそれらは本という体から飛び出し、強烈な握力をもって読者の内臓を引きずり出し骨抜きにする。
 読み終えた瞬間、私は体中の力がダランと抜けて、しばらく動けないほどであった。

 さり気なく、実にさり気なく張られたいくつもの伏線。
 緻密に書き込まれた人物像、他人を慮る者、陥れる者、怖気づく者、立ち向かう者、懐柔される者、されない者。
 大量の油の中に水を投げ込んだような、職業人としての誇りをかけた激しいぶつかり合い。
 そして・・・。

 「このミステリーがすごい 2013」でのインタビューにおいて、横山氏は「面白さは青天井」という言葉を用いて、作品に取り組む姿勢を語っておられたが、この小説の面白さはまさに青天井。
 序盤から終盤までその面白さが緩められることはなかったが、最後の最後に明かされた真実には、思わず「ええっ?」「ええっ?」「ええーーーーーーっっ!!」と何度も叫んでしまった。
 そして同時に、私はその真実に隠された事件当事者の心を思い、涙が止まらなかった。
 人間ドラマとミステリーの融合、ここに極まれり、だ。

 そんな緊張と緩和の大波が間断なく襲ってくる647ページを、難破することなく読み終えることができ、今、私は心から幸福感に浸っている。

 横山秀夫先生、本当に本当にどうもありがとうございました。

 (それにしても次、何読もう?)

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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