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「とん ことり」

最近、子供の友達が引っ越してしまうことが多い。

ご主人の転勤、ご両親との同居、マイホームの購入・・・。
実は私自身は3人兄弟の末っ子で、マイホームすごろくの最終地点で生まれたため、結婚するまで引越しを経験したことがなかった。
なので子供の頃は、引っ越していく友達を送り出したり、あるいは新しい友達を迎えたりするばかりであり、自分自身が、見知らぬ人ばかりの新しい世界に放り出されたという経験がない。

しかし、かすかに覚えている。
転入してきた友達と、初めての休み時間に一緒にドッジボールをしたときのこと。
帰国子女の友達が来て、せっかく仲良くなれたのに、またアメリカに引っ越してしまい、エアメールをもらったときのこと。
どの子も、日にちが経つに連れて教室での表情が明るくなってきたことを、まだ覚えている。

迎えるほうもドキドキしたものだが、迎えられるほうは、それ以上に緊張したことであろう。

さて、今回紹介する「とん ことり」は、そんな「引越し」をテーマとした絵本である。

お父さんの仕事の都合で、遠い町から引っ越してきた“かなえ”は、荷物の整理で忙しい両親を見ながら、家でポツンと過ごす。
新しい人、新しい風景、新しい幼稚園。
かなえは不安でいっぱいだ。
そんなとき、「とん ことり」という音が郵便受けから聞こえてくる。

見ると、そこにはスミレの花束が置かれていた。

「これは、あたしに・・・?いったい、だれから・・・?」

そして次の日も郵便受けから聞こえてくる。
「とん ことり」と。

次の日も次の日も聞こえてくる、「とん ことり」
その正体とは・・・?


この絵本、本当に本当に純粋に「良い本」だなぁと思う。
何度読んでもポロポロッと涙が出てくる。

新しい環境で生きていこうとするかなえちゃんの寂しさと不安と、そして強さ。
そしてそれ以上に、「とん ことり」の正体の優しさと勇気。

大人向けの小説ではなかなか味わえない、子供ならではの豊かさにあふれた一冊だ。

今夜もこの本を読むことになるであろう。
「とん ことり」。






「ぼく にげちゃうよ」

うちの子(3歳)は、いまだに私(母親)がそばにいないと眠れない。

万が一、目を覚ましたときに私がピッタリと隣にいないと大変なことになる。
「おかあたーん!!どこに行ったの!?」(1mも離れとらんわい)と、それはもう地球の終わりのような泣き叫びっぷりである。

なので、子供が寝ついた後、そうっと布団から抜け出し隣室で本を読んでいても、「ウッ」という声が聞こえたら、すぐさま盗塁王・福本豊のごとく布団の中にスライディングし、手をギュッと握る。

そうすると安心するらしく、また寝付いてくれる。・・・正直、疲れる。

いつになれば、目の前に私がいなくても安心してくれるようになるのだろう。
絶対に見捨てることはないのだから、ベッタリ密着していなくても眠ってくれるようにならないかなぁ
・・・と日々願うのであるが、ある絵本のおかげで、「まあ、いいか」と思えるようになった。

その救世主的存在ともいえる絵本とは「ぼく にげちゃうよ」である。

これは、うさぎの母子の話である。
ある日、少し成長したこうさぎは、母親にこう告げる。

「ぼく にげちゃうよ」

そして母親は答える。

「おまえがにげたら、かあさんはおいかけますよ。
だって、おまえは とってもかわいい わたしのぼうやだもの」
(本文引用)

と、ここから始まるのだが、こうさぎは巧みに、山の上の岩になったり、小鳥になったり、しまいには空中ブランコ乗りになってまで母親の手からすりぬけようとする。

そしてそのたびに、母親は、登山家になったり、止まり木になったり、軽業師になったりして、こうさぎのぼうやをつかまえようとするのである。

こんな風に親子で問答を繰り返していくゲームのような語りなのだが、これを読んでいると面白くも、ちょっと怖くなる。

いつか必ず、わが子も私の腕から巣立っていくだろう。
いや、巣立ってもらわないと困るのだが、早くもさびしい気持ちになってしまう。
いつまでも手元においておきたいような、でも自分の人生を歩かせなくては、と葛藤してしまう。

こんなことで、子離れ・親離れできるのだろうか。逆に考えすぎて子供と心が離れてはもっといけないし・・・。ページをめくるうちに、不安がどんどん膨らんでいった。

しかし、そんな心配は無用だった。

ページの最後にはきちんと、それを解決してくれるようなエンディングが待っていた。
「ああ、これでいいんだ」
そこにいる2匹のうさぎの姿が、私の心を軽くしてくれた。

「親」という漢字は「木の上に立って見る」という意味だそうだが、子供が手を離れても、私の手から飛び出していっても、物理的にそばにいなくても、「あなたには帰るところがある」と、いつまでも見守っていさえすればいい。

そんなことを穏やかに静かに伝えてくれる絵本である。

「ぼく にげちゃうよ」

そう言い出すまで、布団にスライディングしつづけてあげよう。


※余談だが、この絵本はうちの子の大のお気に入り(大の10乗ぐらい)である。
どうやら、この絵本のセリフをまねて母親と問答できるのが楽しいらしく、毎晩やっている。

例:
「ぼく キティちゃんになっちゃうよ」
「おまえがキティちゃんになったら、お母さんはジュエルペットになっておまえと宝石に囲まれて仲良く暮らしますよ」
「おかあたんが・・・だったら(←ここがうまく言えないらしい)、ぼくは仮面ダー(仮面ライダーのことらしい)になるよ」
「仮面ダーになったら、お母たんはショッカーになって世界征服をして、おまえを意のままにしますよ」(←本から何も学んでいない私)
など・・・。

うちの子はだいたい、キティちゃん、仮面ダー、プリキュアの3パターンぐらいで回しているようだ。(時々、消防車の「ぱんぷくん」などのスペシャルゲストあり)

各ご家庭で、さまざまなバージョンの「マイ『ぼく にげちゃうよ』」を作ることをおすすめする。





「エリカ 奇跡のいのち」

 すぐ近くのふみきりで、村の人たちが汽車がとおりすぎるのをまっていて、わたしが汽車からなげだされるのを目撃しました。お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。(本文引用)
___________________________
 
 人は、絶望を確信したとき、何をするだろうか。
 たとえば、会社の経営破綻、死の宣告・・・。

 やはり希望を見つけ出そうとするだろうか。ひとすじの希望を見つけ出そうとあがくだろうか。
 それとも静かに受け止めるだろうか。
 あるいは、絶望からも希望からも逃げ、自暴自棄になるかもしれない。

 しかしここに、

 まったく希望の見えない絶望のなか、
 静かに受け止めることもできない不合理な絶望のなか、
 逃げることも許されない絶望のなか、

 大きな希望に賭けた人がいた。

 そして、その希望は花開いた。
 花の名は「エリカ」。
 ユダヤ人の女の子である。


__________________________

 エリカは両親の名前も顔も、自分の誕生日も、そもそも「エリカ」という名なのかもわからない。
 ただ確かなのは、1944年、第二次世界大戦中に生まれたということだけらしい。

 第二次世界大戦中、ユダヤ人・・・ときけば、おわかりになるだろう。
 エリカの家族は、ナチス政権の下、全員アウシュビッツ強制収容所行きの列車に乗せられたのだ。
 当時、エリカはまだ生まれて間もない赤ん坊だった。

 片道運行の列車。もう二度と戻らない列車。
 何の罪もない人々が、「死」という切符を握らされて、牛を運ぶ貨車にギュウギュウ詰めに押し込められたのである。

 発車して数時間後、列車がスピードを少しゆるめた瞬間、

 「今だ!」

 ・・・とばかりに、毛布に包んだ小さなエリカを、列車の小窓から外に放り投げたのである。


 ・・・線路脇の草むらに投げ出されたエリカは、その後、温かく勇気ある人たちの手で育てられ、立派な大人になり、優しい男性と家庭を築くことになる。


 エリカの両親が、その後どうなったのかはわからない。
 過酷な強制労働や途方もない屈辱のなか、、死んでしまったのかもしれない。
 何とか生き延びることができたのかもしれない。

 しかし、この世とも思えない地獄を味わったことは確かであろう。

 エリカの母親は、何としてもエリカを助けたかった。
 その気持ちが、絶望の糸にみっちりと編みこまれた未来に、自ら裂け目を作り、わが子をその裂け目から希望に向かって投げる行動につながったのである。


 私は、この母親の行動を、手放しで賞賛するわけではない。
 列車から投げられたことでエリカが死んでしまったかもしれないし、親切な人に拾われたかどうかもわからない。
 愛情が深かったから助かった、などというつもりもない。

 しかし、人が簡単に「絶望」という名を口にするとき、
 それは本当に絶望なのだろうか。
 あきらめていいのか。
 何か希望は見出せないか。

 ということを、この本は考えさせてくれる。

 絵本の装丁をとり、本自体は薄い作品ではあるが、内容はとてつもなく重厚な一冊である。
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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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