利休にたずねよ 山本兼一
-利休殿は、美を支配していたのではないのか。
支配していたのではなく、美におびえていた-。
(本文引用)
____________________________________
駄々っ子秀吉、意地悪三成、誇り高き忠興、気の優しい宗陳、そして利休をめぐる女たち・・・。
どの人物も、表情や声色までありありと浮かぶように書かれており、私は読みながら何度も腹を立てて毒づいたり、同情して涙ぐんだり、時に怒鳴りつけたりしていた(心の中でである。念のため)。
かように登場人物にどっぷり感情移入できる作品であるがために、「なぜ、ああしたのか」「どうしてこうしなかったのか」という「一個の人間としての質問」が次々と浮かんでしまうのである。
そんな名作「利休にたずねよ」であるが、この小説、何といっても構成が面白い。
まず物語の中心となるのは、小さな壺。
利休が常に懐に忍ばせ、どんなに金を詰まれても決して手放そうとしなかった香合の壺を中心に、話はどんどん逆回転していくのだ。
利休切腹当日からスタートし、前日、15日前、1か月前、3年前、21年前・・・そして青年の日の利休・・・。
さらに、各章ごとに主人公も変わる。
切腹当日は利休、前日は秀吉、堺に追放される前日は宗陳、切腹三か月前には妻の宗恩、そして時にはクリスチャンの司祭や織田信長等々、時をさかのぼる構成ならではの人物も登場。数々の証言から一枚一枚帯が解かれるように、小壺の謎が次第に明かされていく。
それはまるで供述調書が次々と出てくるミステリー小説のようで、史実に基づく歴史小説ということをしばし忘れてしまう。
そうして読むうちに、仙人のような茶聖・利休像はガラガラと崩れ去り、意外と向う見ずでハチャメチャな利休が浮かびあがってくる。
おかげで、
「この頃までは、仲良かったのにねぇ」
「あっ、今『俺ってすごい』って思ったでしょ」
「いやいやいやいや、そんなことしちゃダメだって!」
・・・こんな言葉を利休に投げかけながら、非常に楽しく「千利休という男」の人生をたどることができ大満足。
何だか長い長いタイムスリップをしてきたような・・・そんな気分にさせてくれる壮麗な歴史エンタテインメントだ。
(それにしても、これが映画になるなんて・・・想像するだけでも体の底からゾワゾワッと震えが起こる。これはぜひとも観たいぞ!)
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最後に。
「利休はパッションの人」-山本兼一氏はそう語る。
そう、この小説に描かれている利休はまさしく「情熱の人」である。
しかし私は、いち読者としてこう言いたい。
「利休は残酷な人」である、と。
完璧な美を追求してやまないその情熱は、時に刃を向き、理不尽な死を-自分、そして他人の死をも-招いてしまった。そういえないだろうか。
もしどこかでまた討論会が開かれたら、山本氏を通して、ぜひ利休にそう尋ねてみたいものである。
支配していたのではなく、美におびえていた-。
(本文引用)
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友人から漫画「へうげもの」を全巻借りたことに加え、今年12月に映画公開されることもあり、再読。
2009年第140回直木賞受賞作品である。
本作品は何と韓国、台湾、フランスでも出版され、韓国版は初版売り切れにより増刷。
著者の山本兼一氏は、釜山の大型書店から講演の依頼まで受けたという。
(2012/12/12 日本経済新聞夕刊 「プロムナード」より)
本記事によると、その講演会、何とほとんど質疑応答形式の討論会だったという。「兼一(失礼!)にたずねよ」といったところか。
会は大盛況、多くの参加者から手が挙がり、「利休の侘びとはどういうものか」と質問した10歳の少年までいたらしい。
たしかに本作品を読むと、著者による一方的な講演会よりも、読者も交えた討論会のほうがふさわしいように思える。
たとえば私なら、何を聞くだろう。
「秀吉は、なぜこれほどまでに利休を嫌ったのか」
「理不尽な切腹の命令をあえて受けたのは、やはりあの過ちへの償いなのか」
「利休が最も『美しい』と感じていたのは、結局、何だったのか」・・・etc.
聞いてみたいことはあれやこれやと浮かぶが、これは小説が説明不足だからではない。
2009年第140回直木賞受賞作品である。
本作品は何と韓国、台湾、フランスでも出版され、韓国版は初版売り切れにより増刷。
著者の山本兼一氏は、釜山の大型書店から講演の依頼まで受けたという。
(2012/12/12 日本経済新聞夕刊 「プロムナード」より)
本記事によると、その講演会、何とほとんど質疑応答形式の討論会だったという。「兼一(失礼!)にたずねよ」といったところか。
会は大盛況、多くの参加者から手が挙がり、「利休の侘びとはどういうものか」と質問した10歳の少年までいたらしい。
たしかに本作品を読むと、著者による一方的な講演会よりも、読者も交えた討論会のほうがふさわしいように思える。
たとえば私なら、何を聞くだろう。
「秀吉は、なぜこれほどまでに利休を嫌ったのか」
「理不尽な切腹の命令をあえて受けたのは、やはりあの過ちへの償いなのか」
「利休が最も『美しい』と感じていたのは、結局、何だったのか」・・・etc.
聞いてみたいことはあれやこれやと浮かぶが、これは小説が説明不足だからではない。
駄々っ子秀吉、意地悪三成、誇り高き忠興、気の優しい宗陳、そして利休をめぐる女たち・・・。
どの人物も、表情や声色までありありと浮かぶように書かれており、私は読みながら何度も腹を立てて毒づいたり、同情して涙ぐんだり、時に怒鳴りつけたりしていた(心の中でである。念のため)。
かように登場人物にどっぷり感情移入できる作品であるがために、「なぜ、ああしたのか」「どうしてこうしなかったのか」という「一個の人間としての質問」が次々と浮かんでしまうのである。
そんな名作「利休にたずねよ」であるが、この小説、何といっても構成が面白い。
まず物語の中心となるのは、小さな壺。
利休が常に懐に忍ばせ、どんなに金を詰まれても決して手放そうとしなかった香合の壺を中心に、話はどんどん逆回転していくのだ。
利休切腹当日からスタートし、前日、15日前、1か月前、3年前、21年前・・・そして青年の日の利休・・・。
さらに、各章ごとに主人公も変わる。
切腹当日は利休、前日は秀吉、堺に追放される前日は宗陳、切腹三か月前には妻の宗恩、そして時にはクリスチャンの司祭や織田信長等々、時をさかのぼる構成ならではの人物も登場。数々の証言から一枚一枚帯が解かれるように、小壺の謎が次第に明かされていく。
それはまるで供述調書が次々と出てくるミステリー小説のようで、史実に基づく歴史小説ということをしばし忘れてしまう。
そうして読むうちに、仙人のような茶聖・利休像はガラガラと崩れ去り、意外と向う見ずでハチャメチャな利休が浮かびあがってくる。
おかげで、
「この頃までは、仲良かったのにねぇ」
「あっ、今『俺ってすごい』って思ったでしょ」
「いやいやいやいや、そんなことしちゃダメだって!」
・・・こんな言葉を利休に投げかけながら、非常に楽しく「千利休という男」の人生をたどることができ大満足。
何だか長い長いタイムスリップをしてきたような・・・そんな気分にさせてくれる壮麗な歴史エンタテインメントだ。
(それにしても、これが映画になるなんて・・・想像するだけでも体の底からゾワゾワッと震えが起こる。これはぜひとも観たいぞ!)
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そう、この小説に描かれている利休はまさしく「情熱の人」である。
しかし私は、いち読者としてこう言いたい。
「利休は残酷な人」である、と。
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