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「歴史とは靴である 17歳の特別教室」磯田道史。「歴史が苦手」という人必読。人生180度変わります。

 はたして、偉人といわれる人たちのことだけが歴史でよいのでしょうか。(本文引用)
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 「歴史が苦手」「現代小説は読めても、歴史小説がなかなか読めない」

 本書は、そんな人におすすめ。

 なぜなら本書を読むと、「自分は歴史が苦手なわけがない」と思えるから。
 「歴史が苦手という人が、この世にいるわけない」と思えるから。

 「歴史が苦手」「歴史小説が読めない」というのは、すなわち「自分自身のことが苦手」「現代の出来事を読むことができない」ということになるからだ。

 現代随一の歴史伝道師・磯田道史氏。
 押しも押されもせぬ人気歴史家が、17歳の高校生に説く「歴史の実態」とは?。

  
 今まで「歴史が苦手」と思っていた人は、目からウロコが落ちて落ちて拾いきれなくなること必至。
 
 「歴史が苦手」といっていた自分を完全に忘れてしまう、人生を変える一冊だ。

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歴史が苦手な受験生必読!大人気歴史家・磯田道史著「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

評価:★★★★★

登りつめた坂はやがて下りになります。坂の上の雲がつかめないままに坂を下っていくと、下には昭和という恐ろしい泥沼がある。司馬さんは、この書名でそのことを言外に語っていると私は思います。
(本文引用)
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 磯田道史さんは、今や押しも押されもせぬ大人気歴史家。
 私は“歴女”というわけではありませんが、磯田さんの本はとにかく「ためになる」のでついつい読んじゃいます。

 司馬史観ならぬ磯田道史観は、家計から防災まで現代に役立つものばかり。
 そんな磯田さんが、いよいよ本丸を攻めるとばかりに「司馬遼太郎を語る」というのですから、これは放っておけません。

 結果、さすが磯田道史さん。
 司馬遼太郎の本から現代人は何をつかみ、何を活かし、何を次代につなげていくかを見事に切り取ってくれています。

 これだから磯田道史ファンはやめられません!



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 磯田道史さんは、司馬遼太郎さんと「歴史をつくる歴史家」と評します。

 歴史を物語として語りながら、読む人の心と体を動かし、次世代の歴史をも動かしていく。
 司馬遼太郎さんは作家であると同時に、そんな「歴史をつくる歴史家」だったと著者は語ります。
 
 司馬さんがなぜそんな存在となったのか。
 磯田氏はその理由として、司馬氏の戦争体験を挙げます。

 なぜこんな国になってしまったのだろう。
 
 司馬さんの作品にはその「Why?」があると、磯田氏は分析。

 磯田さん自身、

私は司馬さんの文章を読むとき、その出来事がなぜ起きたかという因果関係を彼がどのようにとらえているかを文脈から読み取るように心がけています。

と語ります。

 さらに磯田さんは、歴史を学ぶ意義として次のように主張。

そもそも私たちはなぜに歴史を学ぶのでしょうか。過去を例に、どうしてそうなったのかを知っていれば、現在や将来に似たような局面に出くわしたときに、役に立つからでもあります。



 磯田さんは、司馬さんの作品「花神」や「二十一世紀に生きる君たちへ」、「この国のかたち」などを紹介しながら、「司馬遼太郎を通して歴史をいかに生かすか」を丹念に解説していきます。
 
  


 この本の魅力は、ずばり「歴史は過去のものではなく未来につながるもの」と認識させてくれることです。
 
 歴史を学ぶというと、「過去の人間ドラマを楽しむもの」と思いがちです。
 そして歴史が苦手、歴史に興味がないという方はおそらく、「過去のことを学ぶこと自体に興味が持てない」のではないでしょうか。
 確かに「過去を学ぶこと」って、すなわち「暗記物」という気がして、めんどくさく感じてしまいますよね。

 でも本書を読むと、歴史に対するそんな偏見が吹き飛びます。

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 これから一歩でも未来を生きるのならば、一歩でも後の過去を学ぶことは欠かせない。
 過去を学ばなくても未来を生きることはできるでしょうが、過去を学ぶと学ばないとでは、未来を生きる姿勢が全く異なってくる。

 そのように認識を新たにできます。
 
 夏休み、受験生の方は必死に勉強していることでしょう。
 
 暗記物よりも、自分で考える数学などのほうが得意で、ついつい歴史は後手後手になる人も多いのではないでしょうか。

 でも歴史を学ぶことって、一生を通じてとっても大切。
 勉強の息抜きに、ぜひこの「『司馬遼太郎』で学ぶ日本史」を読んでみてください。

 歴史が得意にはなれなくても、勉強や進路に対する姿勢が変わり、思わぬ収穫があるかもしれませんよ。
 
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忍者になりたかった人は必読!「歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ」磯田道史 

評価:★★★★★

 武士がちょんまげを結わないと、どうなるか。校則のきびしい学校のように頭髪検査があって𠮟られるのか。ふと、そんなことが気になった。
(本文引用)
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  磯田道史氏といえば、「武士の家計簿」で一気にスターダムに上がった歴史学者。
 磯田氏の著書はいずれも、今までありそうでなかった視点から書かれたものばかり。読めば必ず「歴史って面白い!」と踊り出したくなるような内容だ。

 この「歴史の愉しみ方」はその真骨頂といえる一冊。
 タイトルどおり、心から「歴史を愉しむ」ことを教えてくれる本だ。
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 本書の本編は、こんな言葉から始まる。

忍者の話をしたい。



 さらに次の次の章は、こんなフレーズから始まる。

忍者はどれぐらい危険な仕事だったのか。



 そう、本書はいきなり忍者の実像にグイグイと迫っていく。子どもの頃、誰もが一度はなりたいと思ったであろう「忍者」。

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 私も子どもの頃、腰にトイレットペーパーを巻き、地面につかないように走る練習をしたものだが(実話)、それぐらい忍者というものは人を惹きつける存在である。

 そんな忍者の正体を知ることができるなんて、と胸躍らせながら本書を読み進めてみるが、そこはさすが忍者。
 磯田氏ほどの歴史学者をもってしても、その研究は困難を極めたという。

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天災から日本史を読みなおす ~先人に学ぶ防災~ 磯田道史

 あの災害を生きのびた人は、一方的に助けられる被災者などではなく、むしろ、これから災害に直面する人を助ける重要な語り部であることを再認識させられた。(本文引用)
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 まず、一言、伝えておきたい。

 「磯田道史さん、このような本を出してくれてありがとうございます。本当に、本当に勉強になりました!」

 ・・・東日本大震災をはじめ広島での土砂災害等 自然の強大さを思い知らされる出来事が、毎年のように日本を襲う。いつ誰が被災して、命の危険にさらされてもおかしくはない。
 そんな時代のなかで、この本の果たす役割は計り知れないであろう。
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 本書は、タイトル通り、天災から日本の歴史を読みなおすものである。


 たとえば、豊臣秀吉と徳川家康の戦いの裏に、地震があったことをご存知であろうか。本書によると、大地震がなかったら、徳川家康は豊臣秀吉の軍に滅亡させられていたかもしれないという。

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日本人の叡智 磯田道史

 どんなに無名であってもどんなに不遇であっても、人間が物事を真摯に思索し、それを言葉に遺してさえいれば、それは後世の人々に伝わって、それが叡智となる。この叡智のつみかさなりが、その国に生きる人々の心を潤していくのではないか。(「はじめに」より引用)
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 磯田道史氏の本が好きだ。本から著者の熱意がまっすぐに、純粋に伝わってくるからだ。
 長い歴史のなかに埋もれた、小さくとも枯れることなく息づく人間の智恵。「武士の家計簿」しかり「無私の日本人」しかり・・・過去にこんな智恵を絞り、苦難を乗り越えた日本人がいたということを、磯田氏は静謐に、根気よく、そして情熱的に伝え続けてくれる。これを感謝せずして、何に感謝せよというのか。そう言いたくなるほど、磯田道史という歴史家を、私は尊敬している。

 さて今回ご紹介したいのは、そんな氏の熱意の結晶ともいえる一冊。磯田氏が「この人のことを人類は記憶しておくことが必要だ」と直感した人物、そして言葉をまとめた宝物のような本だ。


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 本書には数々の言葉が登場するが、その分野は実に幅広い。
 政治・経済、教養、ビジネス、人間関係、医療・衛生、生き方etc.と、多岐に渡り金言至言がピックアップされている。(ちなみに本書は、目次や各言葉の下に「仁政」「相場」「学問」「情緒」などとカテゴリーが書かれているため、即座に「何かの秘訣が知りたい」と思った時に便利な構成となっている。もちろん、全ページじっくりと読むに越したことはないが・・・。)

 たとえば生き方といおうか、心の持ち方については、こんな言葉がある。 

「当時、気味よきことは必ず後に悔やむことあるものなり。わが気にいらぬことが、わがためになるものなり」

 これは佐賀藩初代藩主・鍋島勝茂の父、鍋島直茂の言葉だ。この言葉のおかげで、息子・勝茂は切腹を免れ、佐賀藩鍋島家は後も長く存続しつづけることとなる。
 これなどは、単純なようで忘れがち、かつ耳の痛い名言である。
 自分が上り調子の時には、都合の良い言葉しか耳に入らなくなり、冷静な判断ができなくなる。確かに気運のようなものを捕まえるのも大事かもしれない。しかしそのような時こそ、自分にとって気に入らないことは排除していないか、物事を好き嫌いだけで判断していないか等を熟考することが大切だ。この言葉は、かように自らを律するのに有効だ。

 さらに、その気概に惚れ込みそうになる言葉もある。

「治療に臨んでは、一地球を一大国と定める」

 この言葉の持ち主は、水戸藩の天才外科医・本間玄調。「治療に臨む際には、薬や治療法等について地球上で一番良いと思われるものを選び、試みる」という気持ちから発せられた言葉だ。
 そして本間氏は、後に藩主から「救」の名が送られたという。人を治すこと、人を救うことへの並々ならぬ熱意が伝わってくるエピソードだ。

 また、何かに挑戦することに迷いがある場合は、こんな言葉もいい。

「知らないという事と忘れたという事は違う。忘れるには学問をしなければならない。忘れた後に本当の学問の効果が残る」

 随筆家・内田百閒の言葉だ。
 何かを学んだり挑戦したりしようとするとき、「果たしてこれは本当に役に立つだろうか」と悩み、足踏みしてしまうことは多いだろう。しかし、この百閒の言葉を聞くと、「よしやってみよう!」という気になってくるのではないだろうか。なぜなら百閒は、この言葉に

「はじめから知らないのと、知ったうえで忘れるのでは雲泥の差がある。学問がその人に効果を発揮するのは忘れたあと」

 という意味をこめているのだから。
 しかも百閒はつづけて、「すぐ役に立つかということばかり考えるのは堕落の一歩」とまで言っている。こうなるともう、四の五の言わずに動き出すしかない、と力がムクムクと湧いてくる。

 そして、私が最も気に入った言葉はこちら。

「運は『ハコブ』なりである。我身で我身を運んで行かなければ、運の神にあうことも運の神に愛せらるることもない」

 さらに、この言葉を遺した大実業家は言う。訓練なしに運はつかめない、と。

 本書には、このような名言が100近く載せられている。古くは慶長から、最近では平成まで。どれもこれも色あせることなく、現代でも十分心に沁みる言葉である。

 磯田氏は、本当に汗水たらして、これらの宝物を掘り起したのであろう。そして何としてでもこの宝を、私たちに授けたいと思ったのだろう。

 そんな、まさに無私の志をもつ磯田道史氏の言葉の中にも、きっと金言至言があるに違いない。
 そう思い、つい磯田氏の本は、一語一句もらすまいと時を忘れて読んでしまう。なかなか罪なお方である。

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無私の日本人 磯田道史

 地球上のどこよりも、落とした財布がきちんと戻ってくるこの国。ほんの小さなことのように思えるが、こういうことはGDPの競争よりも、なによりも大切なことではないかと思う。
(あとがき引用)
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 おとぎ話の世界には、「艱難辛苦に耐える善良な人が最後には幸せになる」という物語が多く、またそのようなストーリーが愛される。
 花咲かじいさん、小人と靴屋、シンデレラ・・・etc.
 そんな話が実際にあれば良いなと思いつつも、人はついつい「世の中そんなに甘くない」と諦め、低きに流れてしまう。

 しかしこの本を読むと、そんなおとぎ話も夢ではない、ということがわかる。

 私利私欲を捨て、自分の命を投げ出してでも、皆の幸せを願う者がいた。
 逆にどんなに富を持っていても、保身に走り、己の幸せのみを願う者もいた。


 結果、前者が勝利し、その功績は200年以上も語り継がれている-そんなことが実際にあるのだ。

 史実を忠実になぞりながら江戸の人々を鮮やかに描く、稀代のストーリーテラー・磯田道史氏。
 「無私の日本人」は、そんな大人気歴史学者による、珠玉のノンフィクション小説である。
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 本書には3つの話が収められており、それぞれ聡明で無私な人物が登場する。
 そのなかで最も多くのページが割かれているのが、穀田屋十三郎の物語。
 貧困にあえぐ小さな宿場町を、仲間と共に立て直した大人物である。
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 時は江戸。
 宮城県は仙台に程近い吉岡宿は、他の宿場町に比して不当に貧しかった。
 故に住民たちは次々と出て行き、住まう人々も、明日をも知れぬ命という状態であった。

 そんななか、吉岡宿屈指の豪商の子である穀田屋十三郎は、裕福な身でありながら、何とかして町の人々を救いたいと日々悩んでいた。

 そこで考えたのが、利子で稼ぐという方法。

 皆で集めたお金を殿様に貸し、その利息を町の人々に配るというものであった。
 一介の町民が、お上にお金を貸すなど前代未聞。あくまで前例主義を通そうとする役人たちは、当然のごとく十三郎達の訴願を次々とはねのける。
 
 しかし、構想から8年。ついに思いが報われる時がくるのであった。
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 磯田道史氏が本書を上梓したきっかけとなったのは、現在、その吉岡に住む男性からの一通の手紙であったという。
 江戸時代に亡びるところだった吉岡は、平成の今もなお残っている。それを支えた十三郎達の功績を、本にして後世に伝えてくれないか、という内容だった。その依頼がきっかけとなり磯田氏が執筆、この本は実現したという。
 
 手紙を出した男性自身、「涙なくしては語れない」と書いているが、この話は本当に涙なしでは読めない。
 世の中に、これほど無私になれる人物がいるのか、これほどまでに全てをかなぐり捨てて他者の幸せを願うことができる人物がいるのか、そしてこれほどの知恵と意志、そして行動力をもつ人物がいるのか・・・十三郎はじめ9人の篤志家たちの情と賢さに、私は終始圧倒されっぱなしであった。

 とりわけ十三郎の生家・浅野屋の人々の心には、ただただ涙。
 浅野屋は吉岡のなかでも突出した財力をもっていたが、計画実行のおりには衣類・家財等すべてを売り払い、しまいにはこれ以上お金を出しては家族が死んでしまうと農民たちに止められるほどに。しかし彼らは、それでも出資をやめなかった。
 
 それには、一族に通じるこんな思いがあった。

「手の及ぶかぎり、貧家孤独の人を恵んで助けよ」


 十三郎の父親が、死ぬ間際に遺した言葉だ。

 さらに父親は、こうも語っていたという。

「どうかたのむ。ここに年来、ためてきた浅野屋の銭は、ほかのことには使わないでほしい。(中略)何代かかってもよいから、この志をすてぬよう。どうか、吉岡の宿がたちゆくよう、この金をつかって動いてほしい」


 実は父親もまた、吉岡宿を助けるために十三郎と同じことを考え、毎日コツコツと小銭を貯めていたのだ。

 その心持ちと気迫は、私腹を肥やそうとする狡猾な者達を畏れさせた。そして難攻不落の行政という山を、とうとう突き崩したのである。事実は小説より奇なり、人間、やってやれないことはない。歴史の教科書に載らないのが不思議なほどの偉業である。

 またこの物語、磯田氏による解説が随所に入っているのが非常にありがたい。
 特にいわゆる「お役所仕事」の説明が秀逸。
 手続きの煩雑さ、タテ割り組織、横の連携の不備等、今問題となっている「官」の問題点がすでに露呈しており驚くばかり。
 民と官を阻む障害も、これほど歴史が深いと、そりゃ風通しが悪いはずだと妙に納得(いいのか?)

 最後に、この十三郎らの功績は、現地では今なお語り継がれている。
 そして磯田氏が、その十三郎の子孫を訪ねたところ、家族の方々は多くを語ろうとしなかったという。
 磯田氏がその理由を聞くと・・・

「昔、先祖が偉いことをしたなどというてはならぬと言われてきたものですから」


 浅野屋の志は、しっかりと受け継がれているのであった。


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武士の家計簿 磯田道史

 激動を生きたこの家族の物語を書き終え、人にも自分にも、このことだけは確信をもって静かにいえる。まっとうなことをすれば、よいのである・・・・・・。
(あとがき引用)
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 恥ずかしながら、学生時代、あまり歴史を勉強しなかった。
 「なぜ歴史を学ばなければならないのか」がわかっていなかったのだろう。今となっては「何と愚かだったことか」と後悔しきりである。

 その気持ちは、この本を読んでいっそう強くなった。

 「武士の家計簿」

 タイトルだけ見ると、単に、ある武家の財政状態を分析したに過ぎない書物に思えるが、とんでもない。

 「歴史を知ることは、未来を知ること」


 それを全身全霊で教えてくれる歴史書・・・いや未来の書なのである。
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 舞台は金沢(加賀)藩。主人公は、藩の御算用者を務めた猪山家、なかでも八代目・直之に焦点を当てている(2010年に公開された映画では、堺雅人さんが演じている)。

 代々優秀な算術の能力・技術をもつ猪山家は、算術を非常に重要視していた加賀前田家に重用された。
 しかし、藩での位が上がるほど、出るお金も多くなる。
 直之の先代・信之が「加賀百万石の買物係」として江戸詰になった途端に、国との二重生活等から猪山家の財政は逼迫した。
 
 地位が上がり俸禄は増やされても、「由緒」がものいう禄高の世界で、その点が心もとない猪山家は借金地獄に陥ってしまうのだ。

 そこで一大決心をした猪山家。借金を整理すべく家計簿をつけ、所持品を売り払い、買いたい物は我慢をし・・・と徹底的な家計管理を始める。
 
 そして時代は、流れ流れて明治維新へ。
 猪山家はどうなっていくのか?そして他の士族たちは・・・?
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 まず、この本の良いところは、限りなく真面目な内容であるだけでなく、表現がユーモラスで大変わかりやすいという点だ。

 なぜ武士の間で、算術に長けた人材が不足していたのか。そしてそのような能力に秀でていた者がいる場合、身分制度とどう折り合いをつけていくか。
 そしてなぜこれほどまでに藩、武家たちが貧乏になってしまったのか。

 なかでも、猪山家を現代にタイムスリップさせて「年収250万円の家庭が住み込みの召使を2人雇っている状況」と表現し、逆に私たちを江戸時代の金沢城下にタイムスリップさせた部分などは秀逸。
 読みながら思わず「・・・それは大変だねぇ」などと、私まで青息吐息になってしまった。

 さらに、マニアックな知識も実に豊富。
 財布を引き締めるなかでも、武家の格を保つために最低限欠かせないものとはいったい何か。
 江戸時代の“意外な”結婚と離婚の実態、今でも見ることができる “加賀藩、節約の痕跡”等々。

 もちろん映画でも描かれた「絵に描いた鯛」も登場し、思わず人に話したくなる“歴史ネタ”が満載。
 「江戸時代が、歴史がこんなに面白いなんて!」と、ページをめくりながら、ついつい興奮してしまう。

 ・・・実はこの本、面白すぎて私の実家から夫の母まで含めて回し読みをしたのであるが、そのように、みんなで楽しんで読んでほしい本。
 もちろん1人でムフフと楽しむのも良いが、何人かで読み「江戸時代って、ああいう風に考えてたんだねー」などとワイワイ意見や感想を語り合うのがオススメ。
 ついでに本郷あたりで「武士の家計簿ツアー」などを催行すれば、なお良しかもしれない(すでに行った方もおられるかもしれないが)。

 そして最後、いかにして士族たちは時代に翻弄されたか。何が残り、何が亡んだか。
 その結論は、それまでコミカルに語られていた雰囲気から一転、私たちに「未来は過去の延長上にある」という、厳しくも揺るぎのない現実を突き付ける。

 しかし、その結末を読むことで、改めて「この本を読んだことの意味」を知り、「この本と出会えたことの幸運、幸せ」を心から感じることであろう。

 間違いなく「良書」といえる一冊である。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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