三浦しをん「ののはな通信」感想。読むのをやめそうになったけど読み切ってよかった!
評価:★★★★★
もともと、私たちはなにも持っていないのよ。この体と、心以外は。だったら、それが発する声に従って生きるほかないじゃない?
(本文引用)
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三浦しをん初の往復書簡型物語。
それは武者小路実篤さながらの、友情大河小説である。
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野々原茜(のの)と牧田はな(はな)は大の仲良し。
お嬢様学校の同級生で、日々のあれこれをお互い手紙で伝えあっている。
そのうち、ののとはなは互いの思いを吐露し、愛を深め合っていく。
一生離れないと信じあったののとはな。
しかし成長するにつれて、二人は別の地へ。
もっと深い「自分の心の声」に耳を澄ませるようになり・・・?
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「ののはな通信」を読み、まず驚いたのは作家・三浦しをん氏の筆力である(今さらだが)。
ののとはなのやり取りは、1984年から2011年までの27年間続く。
人として女性として、ライフスタイルが激変する27年間を、三浦氏は驚くほど緻密に描いていく。
いつもふざけ合っていた高校時代、先の見えない進路の悩み、抑制と暴走の間で迷う性への関心、結婚、夫婦としてのありかた・・・。
幼稚だった少女が、少しずつ少しずつ思慮を深め、自分の道をしっかり見つめていく。
その心の過程が臨場感たっぷりに描かれているため、私は本書がフィクションであることを忘れ読みふけった。
完全に、ノンフィクションを読んでいる気持ちでのめりこんでしまったのである。
フィクションをノンフィクションと思わせるということは、それだけ作者・三浦しをん氏の筆力が優れているということである。
改めて、人気作家の凄みというものを感じた。
また本書を読み、往復書簡小説というジャンルが途轍もなく好きになった。
最初は往復書簡小説に対し、偏見を持っていた。
「そんな他人の心のうちだけ読まされてもなー」と斜に構えた気持ちでいたのだ。
しかし本書を読むうちに、認識がガラリと変わった。
手紙こそ、最高の小説なのだ。
「相手にこれを伝えたい」「この気持ちを伝えるには、どんな言葉を選べばよいのか」
そんな熱意でいっぱいの「手紙」という文書こそが、至高の小説と言えるのだ。
本書の終盤、ののとはなの「人間としての成長」ぶりには涙、涙。
「心から信じられる友を持つことは・・・良いものだな・・・」
素直にそう思えるラストだった。
娘が高校生ぐらいになったら、ぜひ読ませたい一冊だ。
もともと、私たちはなにも持っていないのよ。この体と、心以外は。だったら、それが発する声に従って生きるほかないじゃない?
(本文引用)
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三浦しをんさんの新刊ということで、さっそくワクワクしながらページを開いた。
しかし最初は、なかなか読む手が進まず挫折しそうになった。
三浦さんの作品はたいてい読みやすいため、「あれっ? こんなはずでは」と猛烈な不安に・・・。
やや独特な世界観(あくまで私にとっては、だが)に心がついていけず、もう少しで他の本に手が伸びそうになった。
しかし読むうちに、グイグイ引き込まれていった。
ページから放たれる「友情」という名の輝き、きらめきに打たれ、「これは最後まで読む価値がありそうだ」と判断。
448ページを読み終え、「ああ、読んで良かった」としみじみ感じている。
しかし最初は、なかなか読む手が進まず挫折しそうになった。
三浦さんの作品はたいてい読みやすいため、「あれっ? こんなはずでは」と猛烈な不安に・・・。
やや独特な世界観(あくまで私にとっては、だが)に心がついていけず、もう少しで他の本に手が伸びそうになった。
しかし読むうちに、グイグイ引き込まれていった。
ページから放たれる「友情」という名の輝き、きらめきに打たれ、「これは最後まで読む価値がありそうだ」と判断。
448ページを読み終え、「ああ、読んで良かった」としみじみ感じている。
三浦しをん初の往復書簡型物語。
それは武者小路実篤さながらの、友情大河小説である。
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■「ののはな通信」あらすじ
野々原茜(のの)と牧田はな(はな)は大の仲良し。
お嬢様学校の同級生で、日々のあれこれをお互い手紙で伝えあっている。
そのうち、ののとはなは互いの思いを吐露し、愛を深め合っていく。
一生離れないと信じあったののとはな。
しかし成長するにつれて、二人は別の地へ。
もっと深い「自分の心の声」に耳を澄ませるようになり・・・?
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■「ののはな通信」感想
「ののはな通信」を読み、まず驚いたのは作家・三浦しをん氏の筆力である(今さらだが)。
ののとはなのやり取りは、1984年から2011年までの27年間続く。
人として女性として、ライフスタイルが激変する27年間を、三浦氏は驚くほど緻密に描いていく。
いつもふざけ合っていた高校時代、先の見えない進路の悩み、抑制と暴走の間で迷う性への関心、結婚、夫婦としてのありかた・・・。
幼稚だった少女が、少しずつ少しずつ思慮を深め、自分の道をしっかり見つめていく。
その心の過程が臨場感たっぷりに描かれているため、私は本書がフィクションであることを忘れ読みふけった。
完全に、ノンフィクションを読んでいる気持ちでのめりこんでしまったのである。
フィクションをノンフィクションと思わせるということは、それだけ作者・三浦しをん氏の筆力が優れているということである。
改めて、人気作家の凄みというものを感じた。
また本書を読み、往復書簡小説というジャンルが途轍もなく好きになった。
最初は往復書簡小説に対し、偏見を持っていた。
「そんな他人の心のうちだけ読まされてもなー」と斜に構えた気持ちでいたのだ。
しかし本書を読むうちに、認識がガラリと変わった。
手紙こそ、最高の小説なのだ。
「相手にこれを伝えたい」「この気持ちを伝えるには、どんな言葉を選べばよいのか」
そんな熱意でいっぱいの「手紙」という文書こそが、至高の小説と言えるのだ。
本書の終盤、ののとはなの「人間としての成長」ぶりには涙、涙。
「心から信じられる友を持つことは・・・良いものだな・・・」
素直にそう思えるラストだった。
娘が高校生ぐらいになったら、ぜひ読ませたい一冊だ。