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十二人の死にたい子どもたち 冲方丁 感想

評価:★★★★☆

  「小さな選択は、いわば結果の分からない、個々の、あるいは日々の選択です。未来がわからないまま行う選択です。これに対して、僕たちが今日ここでするのは大きな選択です」
(本文引用)
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 「何だ、面白いじゃん!」

 読みながら、真っ先にそう思った。

 「天地明察」「光圀伝」「はなとゆめ」を心ゆくまで堪能し、対談集「にすいです」をおおいに楽しみ(要するに冲方丁ファン)、さらにかの名画「十二人の怒れる男」に興奮した私としては、どうにも気になって仕方がなかった一冊。
 しかし、どうも評価が分かれていたので読むのをためらっていたのだが、このたび直木賞候補にあがったとのことで購入。
 
 読み終えた今は、「何だ、面白いじゃん! 買って良かった!」との結論を得た。めでたし、めでたし。
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 舞台は、まもなく取り壊される病院。現在は、誰もいない。

 そこに、順々に少年少女が入っていき、入った順番に数字を1つひとつ取っていく。
 数字は1から12までで、要するに12人の若者が集まる予定となっている。

 その若者たちには、ある共通点があった。それは「死にたいと思っている」ことだ。
 集まった彼らは、自殺を今すぐに実行するか、少し話し合う時間を持つかを話し合う。

 しかし、そこに思わぬ難関が立ちはだかる。13番目の少年――得体のしれぬ死体が、傍らのベッドに寝かせられていたのである。





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はなとゆめ 冲方丁

 もし人生に腹が立ってしょうがなくなり、ほんの僅かな間でさえ生き続けることが嫌になってしまったときでも、真っ白くて美しい紙と、上等な筆が手に入れば――。
(本文引用)
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 先日、こんな記事を見つけた。

 「清少納言は日本初の主婦ブロガー!? ―冲方 丁インタビュー」

 そう、私もこの作品を読みながら、まるっきり同じことを考えていた。
 清少納言は、日本屈指のアルファ・ブロガーであると。

 自尊心を満足させるには十分な華やかな世界、そこに渦巻く嫉妬と憎悪、出産や子育ての不安・・・。
 そんな「光強ければ、影もまた濃し」を地で行く日常を送っていた清少納言は、ストレス解消を兼ねて日々の出来事をつづっていく。 

 ところが気づけばブログは【拡散】。その人気は世紀を越え、総アクセス数は億をくだらない。


 インターネットのない時代どころか、まさか千年前の人物に、このようなことを思うとは・・・。

 「天地明察」「光圀伝」につづく、冲方丁の歴史小説第3弾「はなとゆめ」
 あの「枕草子」誕生に迫ったこの作品は、まさに花と夢のごとき「一瞬のこの世の春」を描いた平安絵巻である。
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 歌人・清原元輔の娘である清少納言は、ある日、内裏への出仕を命じられる。
 それは、一条帝の妃・藤原定子の女房として仕えること-。才媛であると見込まれての、思わぬ出世であった。

 彼女にとって、それは夢にまで見た世界であったが、その裏ではおぞましいほどの泥仕合が繰り広げられる。

 関白の座をねらう権力争い、敵を追い落とすための根も葉もない噂、駆け引き、そして犠牲になる命。
 
 宮中での存在感を増していくに連れて、その黒い渦に巻き込まれていく清少納言は、いつしか苦しい胸の内を白い紙につづるようになる。
 

紙の上では、わたしは自由でした。


 それが、あの『枕』の始まりであった。
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 この作品からまず伝わってくることは、清少納言の言葉を借りれば「言葉はそれ自体が面白い」ということだ。

 作中にはいくつもの和歌が登場する。相手の教養を試すもの、敵の嫌味をかわすもの、互いの気持ちを確かめ合うもの、気の利かない相手を暗にとがめるもの・・・。
 時に愛を、時に皮肉を、雅な言葉にたっぷりと込めてやり取りする様は、読んでいて実に愉快痛快。三十一文字で、これだけ機知に富んだコミュニケーションが素早くできるとは、貴族のたしなみとはいえ恐れ入る。

 なかでも清少納言が一時期、身を隠した際のこぼれ話には大笑いした。
 
 かつての夫・則光が、宮中で清少納言の居場所を聞かれ、それをごまかすために台所にあるワカメをどんどん口に含んでいったと言う。
 しかし、今にも話してしまいそうな則光の様子を見て取った清少納言は、則光にワカメをおくりつける。
 ところが当の本人は、彼女の真意をはかることができず、「なぜワカメなど贈って寄越したんだ?」とまくしたてる。
 これには、清少納言のみならず読者も口あんぐりといったところであるが、いよいよ頭にきた清少納言は、則光のボケに思い切り突っ込む和歌をおくる。

 このエピソードひとつとっても、清少納言のストレートでユーモアあふれる性格がうかがえるが、それ以上に「言葉の面白さ」が際立っている。
 自然現象、中国の古書、いわゆる駄洒落・・・これらを巧みに使い、持て余した心を伝え合う丁々発止のやり取りは、質量ともに現代のツイッター顔負けである。

 さらに本書を読みわかったことは、「枕草子」の人気の秘密である。
 清少納言の文を源経房がたいそう面白がり、リツイートとばかりに広げたことが事の発端であるが、なぜそこまで「枕草子」は支持を得たか。

 それは、ただの鬱憤晴らしではなく、読む人を喜ばせたいという気持ちにあふれていたからだ。

 「心ゆくまで戯けて楽しみ、機転を利かせたほうが」皇家に喜ばれると言い、大きな悲しみの後に「濡れた紙の花は、風に盗ませるに限る」と語る清少納言。
 恨みつらみは尽きませぬが、笑い飛ばして歩きましょうよ。本書には、そんな清少納言の「枕」にかけた清廉な情熱が、静かに、しかしほとばしるように描かれている。そしてそれは、この作品そのものの魅力にもなっている。そう、いつも美しい言葉で読者を楽しい気持ちにさせてくれる冲方さんこそが、現代の清少納言なのかもしれない(性別は違うが)。

 21世紀の人気作家に、千年前の希代のライターがのりうつった「はなとゆめ」。
 その花降るような文字の舞いは、まさに夢のような時間を与えてくれた。

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光圀伝 冲方丁

 正しい苦楽をもって、生をまっとうすること。
 そのすべこそ、大義なのである。

 (本文引用)
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 これぞまさしく光圀「伝」。言わずと知れた黄門様の一生を、隅から隅までズズズイーッと書ききった、圧巻の751ページである。

 はっきり言って、長い。でも面白い。目が離せない。でも長い。でもやめられない。

 そんな葛藤を続けながら何とか読み切ったが、読み終えた今、何だかひどく寂しい気持ちだ。

 「もう私は、光圀にはなれないのだな」

 目の前で今、光圀が歩き、語り、笑い、怒り、泣いている姿がありありと見えるような瑞々しい筆致は、読者を光圀に同化、いや光圀そのものにしてしまう吸引力があった。
 だから今、どうしようもなく寂しいのである。


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 徳川光國(後の光圀)は、水戸藩初代藩主・徳川頼房の三男として生を受ける。しかし長兄の重病と次兄の夭折のために、光國が世子として将来の藩主を約束される。
 しかしそれが、光國を悩ませた。

 なぜ、自分が世子なのか。

 幼い頃病に伏しながらも、その後生き続け、しかも聡明である長兄を差し置いて己が世子であることに、光國は戸惑いと重圧を覚える。
 そこで光國は、それに応える「義」を尽くすために、生きることを誓う。
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 この作品の魅力は、まず水戸光圀公というものを、前代未聞のレベルで丸裸に描いていることだろう。いわば「ハダカの光圀」である。
 
 冒頭の、7歳の光國が人間の頭部を持ち運ぶ場面にも度肝を抜かれたが、死体が流れる激流を猛り狂うように泳いだり、偽名を使って色街で遊んだり、男同士の意地の張り合いで、罪のない無宿人を斬りつけたり・・・。
 そしてついには、そんな素行の悪さを咎める文書まで作られ、それを途中まで読んだ光國は、ただ一言。

(うざい)



 およそ黄門様のイメージからは考えられないようなハチャメチャ・・・もとい奔放なエピソードが、それはもう生々しく描かれている。
 その悪童ぶりは、読んでいるだけで頭にくるやら呆れるやら・・・であるが、これが不思議と憎めない。
 それは、どの行動にも「世子」という重責を担うがゆえの狼狽、不満、悲哀が充満しているためであろう。気がつけば光國に同情、そして愛情すらわいてくる。

 それだけに、次第に光國が次代藩主にふさわしい人物となっていく成長ぶりが、実に嬉しい。

 史書に記された者たちから生きるべき道を学ぶべく、日々学問にいそしみ、
 「本当は生きていなかったかもしれない」衝撃の過去から、父のただならぬ思いを知り、
 人を愛し敬う喜びと、その愛し敬う人を失う悲しみを経て、まさに藩主に相応しい人物となっていくのである。

 しかし、不良少年時代も決して無駄ではなかった点が、また面白い。

 世を背負う人物として光國が魅力的なのは、驕慢な心を諌める気持ちをもっている点である。

 大名行列のために市民の通行が止められてしまうことを激しく嫌い、竹矢来を壊しながら歩く。
 子の妻として迎えた公家の姫が、田植えを「下人の遊び」と勘違いしたのを受けて、何と邸内に田んぼを作り、武家貴族自ら米作りをするよう命じる。
 そして君主の死に伴う殉死を、人々に厳しく禁じる。

 これはおそらく、かつて身分の低い者たちと遊び歩いていたが故に培われた感性であろう。

 そんな、いわば“育ちの良い不良”が名君となっていく様子は、愉快痛快。
 私は下人の身でありながら、思わず「光國殿・・・よくぞここまで成長された」と目頭が熱くなってしまった。

 さらにさらに、その姿に心打たれた少年が、後に光國のもとに現れるエピソードなどは思わず涙。
 こうして人の営み、美しい心とは受け継がれていくものなのかと、改めて歴史というスパイラルの奥深さに感慨を新たにした。う~ん、すごい。

 本作品では、繰り返し、書から先人の生き方を学ぶことの重要性、といったことが説かれているが、私は本書もそのひとつに数えたい。
 この書の中で、確かに徳川光圀は生きていた。そしてそのバトンは、私たちに渡された。そのバトンからはまるで、大義を果たすべく生きよと叫ぶ光圀の声が聞こえてきそうだ。

 そしていつか我々も、必ず光圀ら死者の列に加わる。
 その時までに、次のバトンを用意しておかなければならない。

今生の世を、未来に献ぐ。



 「光圀伝」の中で光圀は、命をかけてそれを教えてくれているのだ。

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 ※ちなみに「天地明察」を読まれた方は、面白さが倍増と思われる。

 光國と保科正之の、ある日の会話:

「いったい、その碁打ちに何をさせる気ですか?」
「暦を改めるのです」



 ・・・ね。


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にすいです。冲方丁対談集

富野 あなたの場合はペンネームを見たときに、もう拒否感を感じていましたしね。
冲方 えええっ!
富野 この漢字を「ウブカタトウ」と読ませるのか?そこまでヒネるのか?と。こういう作家は信用しちゃいけないと思いました。

(本文引用)
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 私は書店で、しばしば本をジャケ買いをしてしまうのだが、この本はAmazonでタイトル買いしてしまった。

 「にすいです。」

 この文字だけで、ピンときたのが運のつき。
 「沖」ではなく「冲」がつく名前のあの方の、「世にも刺激的な」(帯引用)対談集であった。
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 この対談集には、漫画家のかわぐちかいじ、井上雄彦、解剖学者・養老孟司、作家・夢枕獏、伊坂幸太郎、アナウンサー・中野美奈子(敬称略)・・・と様々なジャンルで活躍するトップランナーたちが登場する。


 そして内容はというと、ベストセラー「天地明察」に傾きがちか・・・と思いきや、人気漫画誕生の裏側やプライベート、かくも愉快な江戸時代、現代政治の問題点、そして表現者としての矜持にまで話が広がっていく。
 そして最後は、平安文学者・山本淳子氏によって暴かれる「清少納言の真実」へ。
 「光圀伝」で黄門様の知られざる素顔を世に出した冲方氏だが、そんな冲方さんですら「ええっ!」と驚くような歴史上の真実(含噂話)が、この対談で次々と明かされる。
 (※現在、冲方さんは清少納言を主人公とした小説「はなとゆめ」を連載中。)

 まさに「世にも刺激的な」対談集で、電車の中で読みながら、何度もビックリしたりニンマリしたり。
 ふと顔を上げると、向かいの席の人がやや訝しげな顔をしており、非常に恥ずかしかった。

 それはさておき、この対談集、読んでいてとても「良いな」と思ったのは、対談する相手の人物像がクッキリと浮かび上がってくる点だ。
 
 年齢、性格、信条、生まれ育った環境・・・。

 冲方さん自身が、幼少時代を海外で過ごしたことから得た視点、そしてコンプレックスなどを率直に話すせいか、ゲストの方も自分自身をどんどんさらけ出していく。

 なかでもアニメーション映画監督・富野由悠季さんなど、いきなり冲方さんのペンネームを否定するところから始まり、最初はどうなるかと思ったが、気がつけば非常に馬が合っている様子で話す、話す。
 ついには対談連載となり、クリエイターの視点から、日本が全体主義に向かう危険性をじっくりと語り合う。
 その真剣さは読み応えたっぷり。
 第一印象の悪かった者同士が結婚し、ともに人生を語り合う伴侶へと変わっていく・・・そんな「人と人との化学変化」を目の当たりにしたような、熱い熱い感動が胸に押し寄せてきた。

 さらに、同じ作家という意味で夢枕獏氏と伊坂幸太郎氏とを比較すると、これまた世代の違いが出てきて面白い。
 原稿は手書きで、「変わったって言われても、書いてから30年経ってるし」と語る超ベテラン作家と、押しも押されもせぬ人気作家とはいえまだ瑞々しい伊坂さんとでは、見えている景色や時間の捉え方がかなり違う。

 二人のベストセラー作家の素顔を、ここまですんなりと引き出してしまうとは・・・これはある意味、安井算哲より素晴らしい偉業かも。
 僭越ながら、思わず冲方さんの人間性に拍手をしてしまった。パチパチパチ!
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 これがやりたかった、これを夢見ていた、そのためにはこの技術が必要だった、時間が必要だった・・・そして今・・・。

 ひとかどの人物たちが語る過去・現在・未来、そして「産みの苦しみ」ならぬ「産みの楽しみ」を存分に堪能できる対談集「にすいです。」。

 もう「にすいです。」と説明する必要がなくなった頃に、第二弾を出されることを切に希望する。

「天地明察」

 「星はときに人を惑わせるものとされますが、それは、人が天の定石を誤って受け取るからです。正しく天の定石をつかめば、天理暦法いずれも誤謬無く人の手の内となり、ひいては、天地明察となりましょう」
 (本文引用)
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 ロマン、ただただロマンである。
 
 それほどまでにロマンを感じさせるのは、題材が宇宙ゆえ、というだけではない。
 この作品にこぼれんばかりに溢れる生命の輝きと不撓不屈の情熱・・・これが、読む者に壮大なロマンを抱かせてくれるのだ。
 ああ、この小説と出会えた幸せをどう伝えれば良いのだろう。己の貧しい語彙が呪わしい。
 なかなか「明察」と思えるほどの言葉が出てこない。

 そう、その小説とは、2010年に本屋大賞を受賞し、今年9月にいよいよ映画が公開される「天地明察」
 天と地を結ぶ「暦」を変える、という大事業を描いた宇宙規模の時代小説である。


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 時は江戸時代前期。囲碁の家元・安井家に生を受けた渋川春海こと安井算哲は、碁打ち衆という職分で四代将軍家綱に仕えている。暦術や算術にも長ける多趣味ぶりと、そののんびりとした性格ゆえか、春海は城内で可愛がられる。

 そんなある日、老中・酒井忠清から途轍もない依頼を受ける。

 「北極星を見て参れ」

 なぜ太陽の熱で月が燃えないのか、宇宙はどれほど広いのか-かねてからそんな疑問を持っていた酒井氏は、その謎を解く役として、春海に白羽の矢を立てる。

 しかし、その酒井氏の依頼は、後に日本を大転換させる、ある大事業に通じるものであった。


 その頃、名君の誉れ高い会津藩主・保科正之は、武ではなく文によって泰平の世を開きたいと考えていた。
 そこで生み出された策が、改暦であった。

 当時、長きにわたり日本で使われていた暦には、実は限界がきていた。
 800年もの時を越えて、夏至や冬至、そして日月の蝕がずれる事態が生じていたのである。
 そこで正之は、北極出地の業績を見込んで、春海にその大事業を命ずる。

 しかし、暦を変えるということは、生活そのものをひっくり返すに等しいこと。
 保守的な公家や朝廷を始めとした大変な反発が、春海を襲う。

 さあ、彼らに挑む、いや宇宙に挑もうとする春海の挑戦の行方は・・・?
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 いやもう、「素晴らしい」の一言である。
 
 この小説は、実話をもとにして書かれている歴史小説であるが、匂いたつような人間ドラマが大変味わい深く描かれており、歴史や教養といった枠を超えて、心の底から楽しめ、そして感動できる。

 無限の宇宙との勝負は、まさしく自分との戦い。
 その戦いを続ける春海の姿が本作品の見所だが、それ以上に心を揺さぶられるのが、春海を囲む仲間たちの姿だ。

 ともに北極出地に赴き、互いに切磋琢磨しながらも、若い春海の心を思いやる算術の先輩たち。
 世の平和を思い、自分の政治生命を賭して春海を支えようとする藩主や老中、副将軍たち。
 春海の一生の師であり恩人である、和算の祖。
 そして春海と共に壮大な夢を追いかける妻・・・。

 この、春海を支える者たちの姿が、本作品の最も伝えたいことだったのではないかと、私は思う。
 己の信念を貫き、夢に向かって純粋に努力する者は、決して相手を貶めたり羨んだりしない。そして懸命に生きる者に対しては、身分の上下なく、どこまでも寛容だ。

 なかでも印象的だったのが、酒井忠清が春海にかけた、以下の言葉だ。

 「算哲の言、また合うもあり、合わざるもあり」

 蝕を当てるのに失敗するという大失態をおかした、春海にかけた一言である。

 この失態は、ある意味、酒井氏の社会的立場まで危うくするものだ。
 にも関わらず、酒井氏は怒鳴りつけることもなく、沈黙の後、穏やかにこの言葉を放つ。
 
 何という寛大さ、何という人間の大きさだろう。

 物語中には、このような場面がいくつも見られ、そのたびに春海は成長していくのだが、そんな彼らの一挙手一投足に、私は涙が止まらなかった。
 陳腐な表現だが、仲間とは、人間とは、何て素敵なものなのだろうと、心から思わせてくれる。そんな小説だ。
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 私は思い出すだろう。星を見るたびに、日蝕や月蝕を見るたびに、夏至や冬至が来るたびに、春海とその仲間たちのことを。
 そして、ちっぽけながらもそんな人間がここにいることを、作者の冲方 丁氏と渋川春海夫妻に知ってもらえたら、このうえなく幸せである。
nisshoku2.jpg




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 「月刊 碁ワールド」9月号にて、
映画「天地明察」監督の滝田洋二郎氏と吉原由香里さんの対談が読めます!
 撮影の裏話はもちろん、映画のワンシーンや人物相関図等も載っていて、
読み応えたっぷりです!
 私はこのページのためだけに「碁ワールド」を買いました・・・。
 (あ、もちろん他のページも読みましたよ!)

プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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