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「52ヘルツのクジラたち」あらすじ感想。子ども置き去り事件に照らし、嗚咽した一冊。

その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。
(本文引用)
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 東京・大田区で、3歳の女の子が、自宅に放置され亡くなった。
 力いっぱい泣いたのだろうか。
 叫びつづけたのだろうか。

 でもその声は届かず、あまりにも悲しい結果となった。

 今回の報道を聞き、大阪二児置き去り死亡事件を思い出した人も多いであろう。
 
 当該マンションでは、その後、住民同士が互いに気にかけあうよう努めているという。
 
 ただ加害者を責めるのではなく、その事件をもとに対策を練っていくという姿勢に、心を打たれた。

 
 「子ども置き去り事件」を聞くたびに、私自身も「声なき声」に耳を傾けねばならないな・・・と感じ入る。

 児童虐待に限らず、お年寄りの単身世帯等にも心を寄せ、「何かおかしい」とキャッチする力を養っておくべきだろう。

 そこでおすすめしたいのが、「52ヘルツのクジラたち」。
 タイトルだけ聞くと、「児童虐待とどう関係あるの?」と思うかもしれないが、このタイトルこそが「虐待の根深さ」を物語っている。

 苦しみ、悲しみ、寂しさ、絶望にあえぎ、力いっぱい叫びながら死んでいった子どもたち。
 
 本書を読むと、そんな子どもたちの心に、思いを馳せずにいられなくなる。

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「総理にされた男」あらすじ感想。もし自分が総理になったら?政治経済を学ぶのに最&高な一冊。

 「国民を騙すってことですよ」
 「毎日のようにあの芸を披露しているんでしょう。観客が多少増えるだけの話です」

(本文引用)
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 政治経済を学ぶなら、教科書の前にこの一冊!
 
 池上彰氏も解説で称賛。
 

小説ではあるのですが政治や経済を学ぶ入門書の役割も果たしています。


この本を読むことで、日本が抱えている数多くの問題を認識することになります。

と書いている。


 なぜ「総理にされた男」を読めば、「日本が抱える問題」を認識できるのか。
 なぜ「総理にされた男」は、政治経済を学ぶのに最適の小説なのか。

 理由は「自分が総理になったら」とシミュレーションできるから。
 読めば到底、「政治経済は他人事」なんて思えなくなる。

 だって「自分が総理になっちゃう」んだから、政治経済が頭に入らぬわけがない。
 時々クスリ、時々ハラハラ、時々「んなバカな!」とツッコミながら、気づけば「かなりの政治通」になってるはずだ。

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「プリズン・ドクター」感想。ちょっと驚くほど面白かった掘り出し物!ドラマ化してほしい!

「千歳刑務所の受刑者は、ある意味で全員、俺と同じなんだよ。だからどうしても、無視できない。適当に済ませられない」
(本文引用)
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 日経新聞で紹介されていたので購入。
 
 こんな言い方は失礼かと思うが・・・ちょっと意外なほど面白かった!
 
 主人公は刑務所の医師。
 刑務所で、受刑者の健康を気遣い、病を治し、死を看取る医者だ。

 患者はいずれも特殊な事情を抱えているだけに、「病気」も「死」も真相は藪の中。
 誰もが匙を投げかけた時、「わかったー!」とばかりに真相が明らかになる展開は、読んでいて実に痛快だった。

 「著者の岩井圭也さん、初めて読む作家さんだけど、これからどんどん読んでいきたいなぁ」

 
 「プリズン・ドクター」は本気でそう思わせてくれる、「ちょっと驚くほど面白い」一冊だった。 

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「土に贖う(あがなう)」感想。価格がつけられない魂激震小説。絶望と希望をわける生き方とは?

 「新しく作るべきものが見えたとして、磨かれるべきものと自覚できたとして、それを成す力が、技術が自分になかったら、俺は、どうしたらいいんだろう」
(本文引用)
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 久しぶりに「価格をつけられない本」に出会い、読了後1日経ってもドキドキしている。
 自分の足元というか全身というか、魂レベルで揺さぶられる「自分史上最強の激震小説」だった。

 新田次郎文学賞受賞とのことだが、「本書が何かしら賞を獲るのは当然、獲らなければおかしい」とすら思う。
 
 北海道の産業の、栄枯盛衰を描いた短編集。
 養蚕、ハッカ、羽毛、レンガ・・・。

 自分の体が動くかぎり、この仕事があるかぎり、幸せは続くと思っていた者たち。
 自分の体が動くのに、「食べられなくなる日が来る」なんて、夢にも思わなかった者たち。

 未来が闇と化した時、人はどこまで人でいられるか。
 絶望のままの人生と、希望を見出す人生は、どこが違うのか。


 地獄を見そうになった時、さて、自分ならどうするか。
 
 「自分」という人間、そして「自分の人生」を試されるような一冊だった。 

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「銀花の蔵」あらすじ感想。だから遠田潤子さんは読みたくなかったんだよ!と再確認した一冊。

 「人を責めるのが好きなやつがいた。人がどんな罪を犯したかなんて問題やない。ただ、自分が安心したいから、自分が気持ちよくなりたいから人を責めるんや」
(本文引用)
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 私にとって禁断の「遠田潤子作品」を、手に取ってしまった。
 
 なぜ「禁断」なのかというと、読むと生活が破綻するから。
 遠田作品を1ページでも読んでしまうと、蟻地獄のようにはまり込み、家事も仕事も寝食も忘れてしまう。
 
 そしてこの「銀花の蔵」も・・・ほらやっぱり、没頭して一気に読了。
 おかげで洗濯物を取り込むのが遅くなった。

 ああ、だから遠田潤子作品は読みたくなかったのである。(でも読んで良かった)

 ダークな小説では「圧倒的に日本トップ」といえる、遠田潤子さん。
 最新刊の物語は、醤油蔵の後継ぎとなる女性の半生。


 性格に難がありすぎる人に囲まれ、理不尽に苦しめられた女性は、どうやって幸せをつかむのか。

 主人公の人生が気になって気になって、最後まで目が離せない、離させてくれない握力の強い一冊だ。

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「ロシア紅茶の謎」あらすじ感想。「そんなダイイングメッセージあり!?」でも面白いから仕方がない。

 これは純然たる偶然なのだろうが、その二本のラインは、地上で最も危険なある動物の名前を表わす文字をデザインしていた。
(本文引用)
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 「こんなに凝ったダイイングメッセージ、する人いる?」
 ・・・と思いつつも、「でもミステリーは『面白い』が正義だよね!」と感服。

 実現可能性とか人情とか余韻とか、そういうのは全部押し入れにしまって、「純粋に謎解き・ミステリーを楽しみたい」という人に、本書はおすすめ。

 「動物園の飼育係が遺した、動物だらけのダイイングメッセージとは?」
 「アパート家主だからできてしまった、驚きの符丁とは?」
 「雷の夜だからバレた、犯人の嘘とは?」
 「ロシア紅茶で毒殺。それ、危険すぎるでしょ!」

 外出自粛が解けても、まだ日常には戻れない今日この頃。
 「あ~、頭をスキッと目覚めさせたい!」「脳をビックリさせたい!」と思うなら、きっと満足できる一冊だ。

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「夏の災厄」あらすじ感想。医療従事者の方々に心から感謝したくなる、迫力の一冊。

 「たとえばさ、極端な話なんだけど、この患者さんが実は伝染病だったとしたら、どうするの? 教えてもらえなかったここの診療所は、汚染されていたりするわけでしょ」
(本文引用)
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 「夏の災厄」を読み、ハタと気づいた。
 
 新型コロナ肺炎が「今までにない病」とわかるまで、医療従事者の方々は患者と接していたということ。
 
 まだフェイスシールドやビニール幕もない状態で、「ただの風邪」と思い病院に来た患者を、親身に診察・看護。
 
 中には、患者から感染・重症化し、「この病気はいったい何? 今までと何か違う・・・」と苦しんだ医療従事者もいるであろう。

 今、医療従事者の方々に対する感謝の言葉が上がっている。
 しかし振り返れば、本当に本当にごくごく初期から、医療従事者の方は命がけで、人々を救いつづけてきたのだ。


 篠田節子著「夏の災厄」は、徹底的に医療関係者の立場から書かれたエピデミック小説。

 特に看護師の視点から描かれているのが、本書の特徴。
 医師と市民を結ぶ「看護師」ならではの鋭さで、疫病の本質に斬り込んでいく。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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