このカテゴリーの最新記事

朱川湊人「なごり歌」感想。志村けんさんの訃報を聞き、涙しながら再読。

 「ゆっくり、ゆっくり・・・・・・全部ゆっくりでいいんですよ」
(本文引用)
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 志村けんさんが亡くなった。

 新型コロナウイルス肺炎は、「悪化するスピードが非常に速い」と聞いていた。
 しかし、まさかこれほどとは・・・。

 志村さんの訃報を聞き、猛烈な喪失感に襲われるとともに、改めて「新型コロナウイルス」の恐ろしさに戦慄した。

 そこで再読したのが、朱川湊人著「なごり歌」。
 「かたみ歌」とセットで語られる、亡き者を偲ぶ短編集だ。

 世の中に、故人を思う小説は数多ある。
 しかし「かたみ歌」と「なごり歌」ほど、「喪失の重み」を感じる小説は、そうそうない。

  
 気がつけばいつも、私たちを笑わせてくれた志村けんさん。
 幼稚園、小学校・・・そして大人になり子どもを持っても、笑いで支えつづけてくれた志村けんさん。

 そんな志村けんさんを喪い、茫然としている今、最もしっくりくる本が、この「なごり歌」。
 他の小説では、この喪失感を埋めることは、到底できないだろう。

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「オペレーションZ」あらすじ感想。真山仁は「アノ作家」に負けない予言者だった!?

 そして、我々は本当に後がなくなった――。(本文引用)
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 3月からドラマ放送されている「オペレーションZ」。

 半年前に読んでいたら、「こんなこと、起きるわけがない」とエンタメ気分で読んでいただろう。
 
 しかし、新型コロナウイルス感染拡大が止まらない今、とてもそんな気分で読むことはできない。
 「本当に起こるかも・・・」と、戦慄しながら読んでいる。

 「アノ作家」や真山仁ぐらいの巨匠になると、予知能力がつくのであろうか・・・。
 
 日本の経済が破綻寸前。
 社会的弱者が見殺しにされる政策。
 そしてアノSF作家が、小説で未来予測。

  
 新型コロナウイルスの「コ」の字もなかった時に書かれた小説だが、まるで今回の事態を見通したよう。

 世界経済が日に日に落ち込んでいる今、「今そこにある危機」として読んでおくべき一冊だ。

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「おっぱいエール」感想。若年性乳がんの女性3人組が日本にエール!控えめに言って最高の一冊。

抗がん剤の副作用も心配だし、それが無事終わったところで、その先にはまだ光すら見えなくて、たくさんの困難が待ち構えているに違いないのに-でも、その最中に、大切な人の笑顔に出会える瞬間があるのだとしたら、やっぱりそれは、「悔しいけれど、おもしろい」に違いない。
(本文引用)
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 今までこれほど元気が出た小説は、ない。
 
 その「元気」も、ただ「やるぞー!」という単純なものではなく・・・なんだろう?
 今後、どんなマイナスなことが起きても、とにかく生きるだけ生きていけるような、這ってでも生きていけるような、予想外の緊急事態に直面しても静かに笑顔をたたえていられるような・・・。

 何があっても自分を見失わず、人を貶めることなく、一個の尊厳ある人間として立っていられるような。
 何があっても、一筋の光に大きな希望を見出せるような。

 そんな「心の奥深くからの元気」を、本書は私に贈ってくれた。

 これほどの感動が、私の人生にまだ残っていたなんて。

 
 「おっぱいエール」、最高だ。
 どんなに控えめに言っても、最高としか言いようのない小説だ。

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伊与原新「月まで三キロ」あらすじ・感想。人生に疲れた人へ。科学こそ「生きるエネルギー」になる!

「赤ん坊の月は、地球のそばにいるじゃないですか。幼いころは、無邪気にくるくる回って、いろんな顔を見せてくれる。うれしい顔、悲しい顔、すねた顔、楽しい顔、さびしい顔、全部です。でも、時が経つにつれて、だんだん地球から離れていって、あんまり回ってくれなくなって、とうとう地球には見せない顔を持つようになる」
(本文引用)
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 現在、「生きているのがつらい」と感じている人は、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。
 本当に、だまされたと思って、第一話だけでも読んでみてほしい。

 「生きるのがつらい」と悩む人に、こんなお願いをするのは傲慢かもしれない。
 「あなたに私の何がわかる」と誹りを受けるかもしれない。

 でも「月まで三キロ」に綴られる文字を、登場人物たちの思いを、悲しみを苦しさを寂しさを追ってみてほしい。

 そして同時に、本書を読みながら「人間の悲喜こもごもに関係なく活動をつづける自然界」に、そっと目を向けてみてほしい。

 
 今まで、あらゆる美辞麗句で「人生って楽しいよ」と言われても動かなかった心が、何か「変わる」。

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「パレートの誤算」あらすじ感想。正義のケースワーカーはなぜ殺された!?意外すぎる真犯人に妙に納得。

 「言うなれば、生保は自分の力で生きていけない人の-社会的弱者と呼ばれている人たちの最後の命綱だ。その命綱を、悪用する奴らを俺は許せない」
(本文引用)
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 3月からドラマ放送される「パレートの誤算」。
 
 読めば思わず「さっすが柚月裕子!」と言いたくなる。

 揺るぎない正義感、ギリギリまで犯人がわからない展開に、一気読み必至の傑作だ。

 役所のケースワーカー・山川が、火事の焼け跡から死体で発見。
 しかし山川は火事の前に、殺されていたことが発覚。

 誰よりも熱心で、誰よりも社会的弱者に寄り添っていた山川が、なぜ殺されたのか。

 聡美、小野寺ら同僚たちが真相究明に乗り出すが・・・? 


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「雲を紡ぐ」あらすじ・感想。親子げんか防止に必読!こんな言葉が子を追い詰める。

「自分はどんな『好き』でできているのか探して、身体の中も外もそれで満たしてみろ」
(本文引用)
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 突然の学校休校。
 わが家も該当しており、子どもは学校から大量の荷物を抱えて帰宅。
 
 「症状の軽い若年層が、気づかないうちに感染拡大を助長してしまう」と聞けば、家で静かに過ごすのが、せめてもの責務であろう。

 とはいえ、反抗期真っ最中のわが子。
 親子一緒にいる時間が長いと、つまらないことでケンカも起きがち。

 加えて「休校」ということで生活習慣が乱れ、つい「早く寝なさい」「もうゲームは終わり!」などあれこれ口を出してしまう。

 時おり、みっともないほどヒステリックに怒ってしまい、子どもに諭されることも。
 我ながら情けない・・・実に情けない。

 
 そんな私を救ったのが、今回紹介する「雲を紡ぐ」。
 
 子どもに声を荒らげそうになる瞬間、本書の場面が脳裏によみがえると、怒りがスーッと消えていく。

 「雲を紡ぐ」を読んでいなかったら、親として、人として、どれだけ恥ずかしいことをしてしまったことか。
 想像するだけで戦慄する。

 休校で、親子ゲンカが増えそうな人、すでにイライラが貯まってきている人、とり急ぎ「雲を紡ぐ」を読んでみてはいかがだろうか。
 
 昼食の準備など色々大変なことと思うが、その合間に、ぜひ読んでみてほしい。

 今回の異例の事態が、あなたのお子さんにとって、非常に価値ある時間となるだろう。

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小松左京「復活の日」あらすじ感想。東京五輪の年に書かれた予言的名著。感染症はなぜパニックを引き起こすのか。

  人間は永遠に手いたい試行錯誤によってしか、物事を知ることができないものなのだろうか?
(本文引用)
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 「初版あとがき」を読み、思わず「ウソッ・・・!」と叫んだ。 

 「昭和三十九年八月      小松左京」


 昭和39年は、東京五輪が開かれた年。
 奇しくも、感染症で世界中がパニックに陥る小説が「東京五輪開催年」に出版されていたのだ。

 人気俳優の死を皮切りに、各地で突然死が続発。
 その真相は、全身麻痺を起こす細菌だった!

 小松左京著「復活の日」は、感染症によるパニックを緻密に描いたSF小説。

 しかし読めば読むほど、とてもフィクションとは思えない。
 
 なぜ「フィクション」とは思えないのか。

 
 それは今、実際に起きている“新型コロナウイルス・パニック”と、ゾッとするほど似ているからだ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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