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「風よ あらしよ」感想。恋愛小説に溺れるように没頭したいあなたに!

 私共の恋はずいぶん呪われました。が、空花ではありませんでした。
(本文引用)
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 時々、ドボドボに溺れるような恋愛小説を、読みたくなることはないだろうか。

 村山由佳著「風よ あらしよ」は、底なし沼のようにはまれる恋愛小説。
 
 「女だから」という殻を破りつづけた女性の、恋に生き、愛に燃え尽きた28年を描いたものだ。

 600頁超の大長編で、持ち歩くのも大変。
 電車で立った状態で読むのは、いささか苦痛を伴うだろう。

 しかしその厚さの分、ダイバーのごとく「恋」にどこまでもはまり込める。

 読書で「身を焼きつくすような恋がしたい」「誰にも、何にもとらわれず、心のままに恋愛に没入したい」と思うなら、きっと満足できるだろう。


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宮本輝最新刊「灯台からの響き」感想。人間の心とは、ここまで大きくなれるのか!

「俺を騙してまで、十五歳のときの誓いを貫きとおしやがって。お前はなんて凄いやつだろうなぁ」
(本文引用)
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 新刊が出ると必ず買っちゃう、宮本輝リン(←大好きなので、勝手にテルリンと呼んでます)。
 
 なぜ私は宮本輝作品が好きなのか。

 理由は、人間の心の雄大さ・・・それも「どこまで行っても見果てぬことのない、途轍もない広さ」を感じられるから。

 映画化された「草原の椅子」などは、その最たるもの。
 何の見返りも望まず、他人に対してここまで優しく、ここまで熱くなれるのか。
 舞台となったタクラマカン砂漠以上に、人の心は広いことを、「草原の椅子」は教えてくれた。
 
 そして最新刊「灯台からの響き」も同様。
 「灯台」というだけあり、「人間は海より広い、はるかに広い」と圧倒されてしまった。


 現在、人間不信に陥っている人や、「世の中がカリカリしている」「狭量となっている」と感じてる人は、ぜひ手に取ってみてほしい。

 人間って、自分が思っているよりはるかに、大きくて優しくて広いんだ。
 人間って、人間って、すごいぜ!

 そんな風に、人を信じられるようになる。

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半沢直樹最新作「アルルカンと道化師」感想。次のヒーロー登場の予感!あのイベントと関係は?

「絶体絶命の窮地で、半沢課長がどうするか、お前らはその目でしっかりと見ておけ」
(本文引用)
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 あーーーーー、面白かった!もう最っ高!!

 われらが半沢直樹が、またも見事に悪党成敗。
 今回の半沢さんは、もはや水戸黄門を通り過ぎて、桃太郎侍。
 「ひとつ人世の生き血をすすり、二つ不埒な悪行三昧・・・」とばかりに、敵をバッサリ。
  
 半沢直樹シリーズは、「オレバブ」「ロスジェネ」「銀翼」と全て読んできたが、この「アルルカンと道化師」で「半沢直樹の反撃力・破壊力」が頂点に達したのではないかと思う。

 (半沢直樹シリーズのレビューはこちら↓
 ●「オレたちバブル入行組」
 ●「オレたち花のバブル組」
 ●「ロスジェネの逆襲」
 ●「銀翼のイカロス」


 それというのも、この「アルルカンと道化師」、銀行内の悪党が、もうホンットーに「ワル」。
 浅野支店長、小木曾、宝田・・・悪者たちの思惑を目にするたび、「あなた・・・親がこんな姿を見たら泣くよ・・・?」と、耳元で「ふるさと」を歌いたくなった。

 ま、「アルルカンと道化師」がとんでもなく面白いのは、「悪党がとことん悪党」=「影が濃いぶん、光がまぶしい」からなんだけどね。

 ドラマも相変わらず絶好調の、半沢直樹シリーズ。
 さて最新作「アルルカンと道化師」では、半沢直樹がどんな倍返しを見せてくれるのか。
 
 そこには「ポスト半沢」を予感させる人物も・・・?

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「囚われの山」感想。八甲田山死の真相!なのに「山の話」ではないのが面白い!

「退却することも勇気だと誰も言わなかったところに、逆に軍隊の弱さがあるんです」
(本文引用)
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 個人的に「山岳小説にハズれ無し」と思っている。
 また著者が伊東潤さんということで、「骨太本格小説」というのは確実。
 
 テーマ・著者、どちらから見ても「読むしかない」と判断。
 買って正解。
 謎が謎呼ぶ展開で、ページをめくる手を止められず・・・購入した日に一気読みしてしまった。

 しかしこの「囚われの山」、「思ってたんと違う」のが正直な感想。
 「山岳小説」と思って読んでいたら、実は「山の話」ではなかった。
 いや、まぎれもなく「山の話」なのだが、真のテーマは「山の話ではない」。


 なぜ私が「山の話なのに、山の話ではない」と思ったのか。
 あらすじと共に述べていきたい。

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「首里の馬」感想。「孤独・ぼっちが怖い人」に本気でおすすめしたい一冊。

自分の宝物が、ずっと役に立たずに、世界の果てのいくつかの場所でじっとしたまま、古びて劣化し、消え去ってしまうことのほうが、きっとずっとすばらしいことに決まっている。
(本文引用)
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 芥川賞受賞作は、たいてい不思議な浮遊感がある。

 「この物語はどこから来て、どこに向かい、どう着地するんだろう?」と。

 「首里の馬」も同様。

 「この物語はいったいどこに向かうのだろう?」とフワフワした感触があった。

 しかし「首里の馬」は、他の芥川賞受賞作とは一線を画すものを感じた。

 「いったいどこへ行くんだろう?」というフワフワ感がありながらも、最後まで見届けないと気がすまないような握力・引力がある。

 そしてラストでは「ああ、最後まで見届けてよかった」と安堵。

 読み終えた瞬間、心にサッと清涼な風が吹き、人生が豊潤にふくらんでいくのを感じた。

 うん、いいな、こういう話、好き!

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「凍てつく太陽」感想。日本推理作家協会賞・大藪春彦賞W受賞作だけど・・・それだけでいいの?

 「案外、服みてえなもんかもしれねえよ、国だの民族だのってのは」
(本文引用)
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 2018年度・大藪春彦賞、2019年度・日本推理作家協会賞受賞。
 そんな栄誉に輝いた本であるが、実際に読むと、正直「ええっ?」という印象。

 「凍てつく太陽」は、そんな賞では到底収まらない超大作。
 いや、決して大藪春彦賞や日本推理作家協会賞を「小さい賞」と思っているわけではない。

 海外出版されて、国内外でもっと大きな賞をもらっても良いのでは?と思ったのだ。

 「犯人と真相を追う」という意味では、確かに「日本推理作家協会賞」がふさわしいかもしれない。
 潜入捜査、破獄等々の場面も多く、ハードボイルド・冒険小説ともいえるだろう。

 
 しかし本書には「推理・冒険」なんていう枠をポーンと超えている。
 
 「誰が犯人で、誰がどうしたこうした」なんていうレベルで語れない、「全人類レベルの大問題」が描かれている。
  
 だから大藪春彦賞・日本推理作家協会賞だけでは勿体ない。
 さらに言うと、日本に閉じ込めておくのも勿体ない。

 本書のメッセージではないが、国も民族も越えて出版・評価されて良い傑作だ。

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「泣くな道真」感想。「半沢直樹になりたきゃ勉強しなさい!」と心に活を入れた一冊。

 (ひょっとしたら道真さまはこの地でようやく、真に右大臣にふさわしいお方になられたのかもしれぬ――)
(本文引用)
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 読んだ瞬間、「これは平安時代の半沢直樹だなぁ」と思っていたが、そう思う人は多い様子。

 「泣くな道真は、平安時代版半沢直樹!」と書いている記事もチラホラ。
 そもそも「菅原道真=半沢直樹」と結びつけて捉える記事もあった。

 いやもうホント、本書は「平安時代版・半沢直樹」。
 しかも渡真利忍も森山君も大和田常務も白井亜希子(っぽい人)も登場。

 もし本書をドラマ化するのなら、ぜひ「半沢軍団」でキャストをそろえ、お正月に放送していただきたい(大ウケすると思う)。

 世の中、能力が高い人が順調に出世するとは限らない。

 
 能力が高すぎるがゆえに、邪魔者扱いされることも。
 そのうえ人格が高潔だと、ますます「不当人事」の憂き目にあうことも少なくない。

 しかしだからといって、「己を磨くのは無駄」ということには決してならない。

 「泣くな道真」を読めば、結局「己を磨いた人が勝つ」ということがよくわかる。
 倦まずたゆまず学びつづけ、真面目に生きる人だけが、心晴れやかな「本当に幸せな人生」にたどり着ける・・・本書は、そんなことを教えてくれるのだ。

 だから私は本書を読み、自分に活を入れた。

 「半沢直樹になりたきゃ勉強しなさい!」
 「スカッとした人生を送りたければ、とにかく学びつづけなさい!」と。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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