「さよならの儀式」感想。防犯カメラが人を狂わす!?宮部みゆきのSFは現実よりも現実的で戦慄。
評価:★★★★★
この世界で、俺はもう人間でいたくない。
(本文引用)
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本書は8編から成る短編集。
第一話「母の法律」は、母と娘の物語。
一美と二葉は血のつながらない姉妹。
二人はそれぞれ施設から引き取られ、優しい養父母のもと暮らしていた。
しかし養母が病気で死亡。
一美と二葉は「マザー法」という法律により、また施設に戻らなくてはならない。
愛情深い養母と別れ、落ち込む二葉のもとに、ある一人の女性が声をかける。
女性は二葉の実母を知っている、という。
そして「実母に会ってみないか」とも・・・。
施設の子と実母が会うのは、法律上許されない。
だが二葉の実母はたいへんな局面に遭っていた。
二葉は実母の愛に、ようやく触れることができるのか?
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SF・社会問題・近未来、この3つが融合すると「ここまで背筋凍る物語ができるのか・・・」と、目の覚める思い。
幼児虐待もイジメもプライバシー監視もSF要素が加わると、解決に本腰を入れたくなる。
「今うかうかしていたら、未来は本当にこうなってしまうかもしれない・・・」と、悶絶するような焦燥感に襲われるのだ。
特に強烈なのが、第二話「戦闘員」。
80代の男性は散歩が日課。
ある日、近所のマンションで気になる光景を発見。
小学生の男の子が、マンションの防犯カメラを棒で突つき、落とそうとしているのだ。
男性は少年を叱り、その場は事なきを得るが、徐々に周囲に異変が。
あんなところに防犯カメラ、あったっけ?と思うことが、明らかに増えているのだ。
そのうち、あの少年の真意が見えてきて・・・。
どことなくジョージ・オーウェル「一九八四年」を思い起させるストーリーだが、恐怖はそれ以上。
実際に、この物語のような現象は起きないだろうが、「目に見えぬ形で起きる可能性」は十分ある。
そしてその恐怖は、他の物語にも波及。
本書は一話一話独立しており、連作短編でも群像劇でもない。
しかし、それぞれの話が補う合うように「人間社会の恐怖」を指摘。
とある物語の
という結論に集結していくのだ。
やっぱり自分は人間でいたい、人間でいるしかない・・・と思うなら、本書はぜひ読みたい一冊。
「AIに乗っ取られる」と叫ぶ新書を選ぶなら、まずその前に「さよならの儀式」を。
人間という貨車がこのまま突っ込んでいったら、どんな事態に陥るか。
ベストセラー作家が鳴らすだけに、さすが胸にグイグイ迫る警鐘だ。
この世界で、俺はもう人間でいたくない。
(本文引用)
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SFは非現実だ。虚構だ。
なのに、「現実の問題」がより胸に迫る。
ルポやドキュメンタリーで読むよりも、「どうにかしなきゃ!」と猛烈に焦る。
SFなのにそう思うのは、宮部みゆきの本だからだろうか。
読み終えて一日経った今、ゾワワワワ・・・と「あの物語、現実に起こるかも」と震えが来ている。
「宮部みゆきの新境地」と話題の「さよならの儀式」。
SFということで確かに「新境地」だが、「今そこにある危機」を思わせる点は、さすが宮部みゆき。
ミステリーで社会に斬りこんできた宮部さんならではの、「ダブル超現実」(=現実を超えてるのに、非常に現実的)短編集だ。
なのに、「現実の問題」がより胸に迫る。
ルポやドキュメンタリーで読むよりも、「どうにかしなきゃ!」と猛烈に焦る。
SFなのにそう思うのは、宮部みゆきの本だからだろうか。
読み終えて一日経った今、ゾワワワワ・・・と「あの物語、現実に起こるかも」と震えが来ている。
「宮部みゆきの新境地」と話題の「さよならの儀式」。
SFということで確かに「新境地」だが、「今そこにある危機」を思わせる点は、さすが宮部みゆき。
ミステリーで社会に斬りこんできた宮部さんならではの、「ダブル超現実」(=現実を超えてるのに、非常に現実的)短編集だ。
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■「さよならの儀式」あらすじ
本書は8編から成る短編集。
第一話「母の法律」は、母と娘の物語。
一美と二葉は血のつながらない姉妹。
二人はそれぞれ施設から引き取られ、優しい養父母のもと暮らしていた。
しかし養母が病気で死亡。
一美と二葉は「マザー法」という法律により、また施設に戻らなくてはならない。
愛情深い養母と別れ、落ち込む二葉のもとに、ある一人の女性が声をかける。
女性は二葉の実母を知っている、という。
そして「実母に会ってみないか」とも・・・。
施設の子と実母が会うのは、法律上許されない。
だが二葉の実母はたいへんな局面に遭っていた。
二葉は実母の愛に、ようやく触れることができるのか?
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■「さよならの儀式」感想
SF・社会問題・近未来、この3つが融合すると「ここまで背筋凍る物語ができるのか・・・」と、目の覚める思い。
幼児虐待もイジメもプライバシー監視もSF要素が加わると、解決に本腰を入れたくなる。
「今うかうかしていたら、未来は本当にこうなってしまうかもしれない・・・」と、悶絶するような焦燥感に襲われるのだ。
特に強烈なのが、第二話「戦闘員」。
80代の男性は散歩が日課。
ある日、近所のマンションで気になる光景を発見。
小学生の男の子が、マンションの防犯カメラを棒で突つき、落とそうとしているのだ。
男性は少年を叱り、その場は事なきを得るが、徐々に周囲に異変が。
あんなところに防犯カメラ、あったっけ?と思うことが、明らかに増えているのだ。
そのうち、あの少年の真意が見えてきて・・・。
どことなくジョージ・オーウェル「一九八四年」を思い起させるストーリーだが、恐怖はそれ以上。
実際に、この物語のような現象は起きないだろうが、「目に見えぬ形で起きる可能性」は十分ある。
そしてその恐怖は、他の物語にも波及。
本書は一話一話独立しており、連作短編でも群像劇でもない。
しかし、それぞれの話が補う合うように「人間社会の恐怖」を指摘。
とある物語の
それより、俺はロボットになりたい。
この世界で、俺はもう人間でいたくない。
という結論に集結していくのだ。
やっぱり自分は人間でいたい、人間でいるしかない・・・と思うなら、本書はぜひ読みたい一冊。
「AIに乗っ取られる」と叫ぶ新書を選ぶなら、まずその前に「さよならの儀式」を。
人間という貨車がこのまま突っ込んでいったら、どんな事態に陥るか。
ベストセラー作家が鳴らすだけに、さすが胸にグイグイ迫る警鐘だ。