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「無名」感想。沢木耕太郎の看護・介護エッセイ。親の脳から自分が消える苦悩と、どう向き合うか。

 成人し、文章を書く仕事を始めてからも、言葉の用法についてわからなくなったり、文学的な知識が必要になったりしたときは、父のところに電話を掛けて教えてもらうということがつい最近まで続いていた。
 その父が、いまこうして無力な姿で横たわっている。過剰に感傷的になる必要はないと思いながら、胸が痛むのをどうしようもなかった。

(本文引用)
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 夫が母の介護をしていることもあり、そして、ある程度の覚悟が要されている状況のため、自ずと「最期」にまつわる本が気になる。

 そこで手に取ったのが、沢木耕太郎著「無名」。

 沢木氏自身が体験した、実父への「看護・介護」の軌跡である。
 
 無類の読書家だった父。
 一流ノンフィクション作家の沢木氏が、仕事上のアドバイスを請うほど知性に満ちた父。

 その父の姿が、徐々に確実に消えていく・・・。

 本書では、その過程における沢木氏の戸惑い、葛藤を、静謐ながら熱のこもった筆致で書いていく。


 変貌していく父を見ながら、著者の胸に去来する「父への思い」とは?
 そして「父と家族が本当に望む、人生の閉じ方」とは・・・。

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沢木耕太郎『「愛」という言葉を口にできなかった二人のために』感想。名画には無駄なシーンはひとつもないとわかった。

 いずれにしても、『ローマの休日』のような、「愛」を口に出せなかった二人についての映画がいつまでも好まれるのは、いかに多くの人が「愛」を口にできなかった経験を持つかということを物語っている。
(本文引用)
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 映画を観た後、こう思うことはないだろうか。

 「あのシーンはいったい何だったのか?」
 
 どんなに感動した映画でも、1つぐらいは「あのシーンは必要だったのか?」と思う箇所がある。

 だが本書を読み、その疑問やモヤモヤ感は氷解した。

 実は映画・・・特に名画とされる作品には、無駄なシーンはひとつもない。

 なぜならそもそも人間は、愛を伝えようとすると、ものすごく無駄な動きをしてしまうから。
 「愛してる」と言えば2秒ですむのに、それを言おうとしないがために、一見「不要」と思える行動をとってしまう。


 しかしその「不要」「ムダ」と思える行動にこそ、愛が破裂しそうなほど詰まっている。

 名画が名画たる所以は、「人間は愛を伝えようとすると、余計な行動をたくさんとってしまう」ということを伝えてくれるから。
 その不器用さが、観客の胸を打つから、後世に残る名画となるのだ。

 沢木耕太郎氏の映画レビュー「愛という言葉を口にできなかった二人のために」は、そんな「愛を伝える映画の、真の魅力」を教えてくれる。

 さらに本書は、人間の赤裸々な姿をも気づかせてくれる。
 愛を伝えるのに、時間も労力も異常なまでにかかってしまう、人間の無様な姿を。
 そしてその無様さこそが、己を投げ捨ててでも愛する人を守ろうとする、無上の愛ということを。

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沢木耕太郎「檀」感想。今まで読んだ恋愛小説も泣いたラブソングも全部これ一冊で吹き飛んだ。

 憫れな人間同士であってみれば、なるべく仲良く一緒に、乗りかかった船とあきらめて、死ぬ迄信じ合って生きてゆきたいものですね。
(本文引用)
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 「泣ける恋愛小説が読みたい」「ラブソングを聞きたい!」・・・そう思うなら、何のことはない。
 「檀」一冊読めば、全ての願いは叶えられる。

 本書を読み終えた瞬間、私は雷に打たれたような衝撃で、「恋愛の本質」というものを知った気がした。
 知ってしまった気がした。

 「愛とは恋とは、こういうものか! いや確かに、よく考えればこういうものだ!こういうものだよ、うん!」と脳天が突き破られる勢いで認識し、涙、涙・・・(電車の中で読んでいたことに激しく後悔)。

 同時に「今まで読んだ恋愛小説、あの時泣いたラブソングは、いったい何だったの?」と、恋愛にまつわる芸術作品が全て吹き飛んでしまった。


 檀は「ダン」という響きの人であり、決して「まゆみ」という人ではなかった。
 檀を思い出すとき、まず脳裡に浮かんでくるのは、何かがあるとパッと立ち上がる瞬間の檀の姿だ。そのかすかな激しさをはらんだ挙措が、まさにダン、檀だったのだ。


 私にとって、この小説こそまさに“ダン”。
 例えれば、「弾丸」の「弾」だ。

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「旅のつばくろ」感想。最高にシンプルなのに、最高に幸せな人生を約束する「宝物」のような本。

 確かに、かつてのあの時だけが「時」だったのではなく、今も「時」なのかもしれない。
 いや、むしろ、ようやく訪ねることができた今こそが自分にとって最も相応しい「時」だったのではないだろうか。
 今が、時だ。

(本文引用)
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 人生に迷っている人。
 自分の選択に自信が持てない人。
 
 そして「幸せな人生を送りたい」と切に願ってる人。
 
 「旅のつばくろ」は、そんな人に心からおすすめの一冊だ。

 こんな言い方も雑で申し訳ないが、本書ほど「簡単・確実に幸せをつかめる本」を、私は知らない。

 つばめがスウッと空を舞うように、好きなように生きていい。
 たとえ後悔したっていいじゃないか、今、私自身は「こうしたい」と思ってるのだから。
 その時その時の、「自分の気持ち」に従えば、間違いなく「たったひとつの私の人生」は幸せになる。

 本書は、そんな「幸せの処方箋」。

 
 一日で読めるシンプルなエッセイ集だが、効果は一生続く「極上の幸せ指南書」である。

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これは最高!「春に散る」(沢木耕太郎)が新聞で大反響だったことに納得

評価:★★★★★

 おまえを信じよう。たとえそれが奈落への道であってもかまわない。そのあとのことは引き受けた。やってみるがいい・・・・・・。
(本文引用)
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 朝日新聞に連載中、大反響だったらしい。
 連載終了時には、「ここまで読み切ったのは、三浦綾子さんの『氷点』以来」という称賛の声もあったとか。

 書店で平積みにされているのを見て、気になってはいたのだが、その「読み切ったのは『氷点』以来」という言葉に突き動かされ、上下巻一気に買ってしまった。

 読み始めてすぐに、その「『氷点』以来」の意味がよくわかった。
 これは面白い、これは深い、これは優しい、これは素晴らしい、これは・・・もう称える言葉が見つからない!

 もともと「ボクシング小説にハズレなし」とは思っていたが、ここまで心をつかまれた小説は久しぶりだ。

 「読み切ったのは『氷点』以来」と語った、名も知らぬ誰かに、心からお礼を言いたい。

 あなたのおかげで、この名作を逃がさずにすんだ、と。




●あらすじ


 主人公の広岡仁一は米国に住んで40年。ホテル経営者として成功し裕福な生活を送るが、心にすき間を感じている。

 実は広岡は、かつて日本でプロボクサーとして活躍していた。
 しかし世界チャンピオンになれず、挫折して渡米。





 そこでも世界一の夢を果たすことができないまま、別の道を歩んでいた。

 

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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