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いじめで「死にたい」と悩む君へ。鴻上尚史「青空に飛ぶ」をお願いだから読んでほしい。

評価:★★★★★

 ホームにもう一度立ち、「ここから飛び込もうか」と一瞬、考えた。青空ではなく、線路に飛ぶ。
 「それもいい」と、頭のどこかで答える自分がいた。
 でも、この本を読んでからにしよう。

(本文引用)
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  「お前に自分の気持ちなど、わかるわけない」
 そう言われるかもしれない。

 「本一冊で、自分の苦しみがなくなるわけない」
 その訴えも、もっともだ。

 でも私は伝えたい。
 いじめで「死にたい」と悩んでる君へ。

 ひとつだけ、どうしてもお願いがある。
 鴻上尚史著「青空に飛ぶ」だけは読んでほしい。

 凄惨ないじめで自死寸前の少年は、一冊の本で人生を変えた。
 消え入りそうな命の炎を、再び照らすことができた。

 「青空に飛ぶ」は、あなたにとってそんな一冊になる。


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■「青空に飛ぶ」あらすじ



 萩原友人は中学2年生。
 学校で凄惨ないじめを受けている。

 「死のう」と何度も思い、ビルの屋上や駅のホームにたたずみ、足を踏み出そうとする毎日だ。

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 彼はある日、ひとりの人物と一冊の本に出合う。

 その人物とは佐々木友次。
 神風特攻隊として9回出撃し、生き返ってきた「不死身の特攻兵」だ。

 実は友人は学校で、特攻隊を模したいじめも受けていた。
 「花と散れ」と命令され、命にかかわることをさせられていた。

 友人は「特攻隊さえなければ」と佐々木を一瞬恨むが、その後、ふと疑問が。

 なぜ佐々木は、死ぬように命じられた特攻隊で生き抜いたのか。

 友人は特攻隊に関する本と、佐々木との対話で、本当の自分の気持ちに気づいていく。

 「生きたい」と。
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■「青空に飛ぶ」感想



 本書を読むと、ある重大なことに気づく。

 それは、いじめによる自殺は「自ら選んだ死ではない」ということ。

 自殺ではない。
 強制的に死を選ばされる、「他殺である」ということだ。

 特攻兵だった佐々木は、なぜ生き抜いたのか。
 確かに「運」もあっただろう。
 
 しかし佐々木が生きて帰ってきた理由は、ひとつ。
 「特攻は強制的な死である」と認識していたからだ。

 戦死は一見、自ら死んだように見える。
 お国のために戦い、自分から花のように散ったと言われ、あたかも「自ら死を選んだ」かのように見えるだろう。

 だが佐々木は違った。
 寿命や人生を、他人には決して決めさせない。
 たとえ「お国のため」という大義名分があったとしても、己の命を他人にゆだねない。

 そう固く決心していたことが、「9回もの生き帰り」につながったのだ。
 
 本書を読んでいると、特攻隊も「いじめ」も、自ら死を選ぶよう仕向けるマインドコントロールとわかってくる。

 そう考えると、「いじめられる方が悪い」「勝手に自殺した」なんてことは絶対に言えない。
 いじめをする人間は、人に対して死ぬよう仕向ける、立派な殺人犯なのである。

 佐々木との対話を通し、「なぜ自分の命を他人に預けなきゃならないのだ?」と気づいた友人。
 
 「死のう」と思っていたことが、実は特攻隊のマインドコントロールと通じていたことに気づいた友人。

 さて友人は最後、どんな動きに出るか。

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 ラストを読み、ぜひ「自分の生命は自分で決める」勇気をもってほしい。
 
 いじめている人間に、自分の生命を預けないでほしい。

 友人と一緒に、未来に羽ばたいてほしい。

 死なないで。

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「青空に飛ぶ」は「不死身の特攻兵」の小説版。
ぜひ「不死身の特攻兵」も併せてお読みください。



「不死身の特攻兵」のレビューはこちら

「孤独と不安のレッスン」。夏休み明け、誰にも絶対に死んでほしくないから感想を書きます。

評価:★★★★★

 「一人であること」が苦しいのではありません。「一人はみじめだ」という思いが苦しいのです。
(本文引用)
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 夏休みになると、いつも願う。

 「新学期に、自ら死を選ぶ子がいませんように」と。

 「学校が嫌だなあ」と思っていい、友達なんていなくていい、学校に行かなくてもいい。

 せめて、せめて死なないで。
 いつかきっと、今の状況は変わるから。
 「死ななくてよかった」と思える日がくるから。

 毎年、そう願うのだ。

 今回は、その願いをどうしても届かせたくて、この本を紹介する。

 
 鴻上尚史著「孤独と不安のレッスン」。

 友達がいない、クラスで浮いてる、誰かとつながってないと怖くてスマホが手放せない、暴力をふるう恋人から逃げられない。
 
 そんな悩みがあるなら、今すぐ本書を手に取ってほしい。

 「死ぬ」ことを1ミリでも考えるなら、本書を読むことに2ミリでも5ミリでも心を割いてほしい。
 
 あなたが感じているつらさや不安は、恥ずかしいことではない。
 人が生きていくうえで必要なことを、誰よりも早く深く学んでいる最中なのだ。
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■「孤独と不安のレッスン」内容



 本書は孤独と不安を楽しみ、共生するための練習帳。

 ここでいう「孤独」とは、「本当の孤独」。
 「本当の孤独」とは、他者とつながりを断ち、完全にひとりの時間をもつこと。

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 たとえ一人でいても、スマホでメッセージをやり取りしているのは「ニセモノの孤独」。

 完全に他者とのつながりを断つ「本当の孤独」をもった時こそ、人は成長する。
 「一人でいるのはみじめ、恥ずかしい」と思わず、「一人でいてもいい」と思った瞬間に、楽で豊かな人生が待ち受けているのである。

 そして本書でいう「不安」とは、「前向きな不安」。

 先々のことを考え、ただ「どうしよう、どうしよう」とうろたえるのは「後ろ向きな不安」。

 「前向きな不安」とは、先々のことを考え、何か壁を予感した時に、「さてどうするか」と対策を練ること。
 そして、今現在の苦しみを「どう解消していくか」を考えること。

 著者は演出家という立場から、「前向きな不安」の持ち方を指南。
 何年も前から準備をし、どんなトラブルが起こるかわからない「舞台の世界」を例にとり、不安と建設的に向き合う術を伝授する。
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■「孤独と不安のレッスン」感想



 本書の魅力は、矛盾するようだが「一人でいること」を称賛しつつ、「一人でいない方法」も教えてくれること。

 やや一足飛びに言うと、「あなたはあなたのままでいい」ということだ。

 他人に無理に合わせるぐらいなら、一人でいたほうがいい。
 一人でいることを恐れず、本当の孤独な時間をもつことで、人生はうんと楽に豊かになる。

 ならば人間は、ずっと一人でいるべきなのか?
 本書は、そんな極論を言っているわけではない。

 「一人でいることを恥じない、恐れないあなた」に合う人が、必ず1人はいる。

 30人に1人ぐらいは、「あなたの本当の孤独との闘いを支援してくれる人が現れます」と、著者は語る。

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 だから「みんながあなたを嫌ってる」だの「周囲から浮いてる」だのという心ない指摘は、気にする必要なし。

 「29人の人に無視され、嫌われたとしても、あきらめることはない」と、著者は主張する。

 そう聞くと、「一人でいい」と言われる以上に心が楽になる。

 確かに「一人でいる時間」は自己凝視ができる時間なので、豊かだ。
 しかし一生一人、というわけにはいかない。

 それに「ずっと一人でいるしかないのか?」と思うと、心が折れそうになる。
 みんなが楽しそうにしてるのに、なんで自分が・・・という気持ちにもなるだろう。

 本書は、そんな裏腹な気持ちを実にみごとにすくいあげ、「あなたはあなたのままでいい」と言ってくれる。

 一人でいるのは恥ずかしいことではない。
 そして他にも、「一人でいるのは恥ずかしいことではない」と毅然とした人が必ずいる。

 そんな人がいる確率は、せいぜい30人のうち1人ぐらい。
 
 「友達100人つくる」なんて作業は、却って己を苦しめるだけ。

 30分の1の「本当の孤独を応援してくれる人」「あなたらしくいられる人」に出合えれば、人生万々歳なのだ。

 今、人間関係で悩んでいる人、いじめに遭っている人、新学期が来るのがつらくて仕方がない人は、「30人に1人もいないよ」と思うかもしれない。

 「1クラスに1人でもいれば、こんなに悩んでないよ」と自暴自棄になるかもしれない。

 でも家族含め世の中全体を見渡してみれば、きっと「30分の1さん」はいる。
 噂に耳を貸さず、一人でも背筋をピンと伸ばし、凛とたたずむ人が必ずいる。

 「そんな人、いるわけない」と思わずに、「前向きな不安」をもって、目を見開いて「30分の1さん」を見つけてみてはいかがだろうか。

 見つける作業のタイムリミットは、人生が自然と終わるまで。
 
 全人生かければ、かならず「30分の1さん」は見つかる。

 だからお願い。
 「30分の1さん」が見つかる前に、人生を終わらせないでほしい。

 世のなかにきっと、「本当の孤独を知るあなた」との出会いを待つ人がいる。
 
 その人のためにも、その人と出会うチャンスを逃さないためにも、生きてほしい。

 それがこの本を紹介し、感想を書いた、私のたったひとつの願いである。

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鴻上尚史「あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント」。話を面白くする「3つの輪」とは?

評価:★★★★★

 日本人のスピーチがつまらないと言われる一番の原因は、内容ではなく、輪がずっと同じだからだと僕は思っています。
(本文引用)
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 あなたの身近に、こんな人はいないだろうか。

 「あの人が話しはじめると、みんながワクワクした顔をする」
 「飲み会に、あの人が来ると盛り上がる」

 どこにでも一人は、「あの人が来てくれると嬉しいな」と思われる「人気者」がいるものだ。

 そのような「人気者」は、いったいどこが違うのか。

 秘密は本書を読めばよくわかる。
 
 「あの人が来ると楽しいな」の「あの人」は、本書が言う「3つの輪」を使って話しているのだ。


 一方、なぜか話していてつまらない・・・と感じる人は「輪が1つ」。

 さて、その「3つの輪」とは何なのか?
 
 本書で「輪」の謎がわかれば、きっと「話が面白い人」「来てほしいと思われる人」になれるはず。

 さらに「輪」のスキルを会得すれば、飲み会どころか、スピーチやプレゼンで聴衆を引き付けることもできるのだ。

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■「あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント」内容



 本書は「4つの面」から、「自分の魅力を引き出すコツ」を紹介。
 「4つの面」とは「感情・声・体・言葉」だ。

 自分をより魅力的にするには、己の感情をどう見つめ、コントロールすればよいか。
 「話していて楽しい」「人として魅力的」と思われるには、どのように発声すればよいか。
 
 思わず「素敵」と見とれてしまう人は、どんな「体」をしているか。
 そして「話が上手な人」は、どんな言葉を使い、どんな話し方をしているか。

 メイクやダイエット本では得られない「あなたの魅力を確実に引き出す秘訣」を、読んだ人限定で特別公開!
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■「あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント」感想



 よく「人間は脳を半分しか使っていない」という。
 そして「もう半分を使えれば、天才になれるかも」なんて想像してニンマリ。

 そしてさんざん妄想した挙句、結局「ああ、自分は脳を半分しか使わず、天才になれないまま一生を終えるんだろうなあ」と落胆。
 誰しも、そんな経験があるのではないだろうか。
 
 しかし本書を読むと「落ち込むことはない」と、ムクリと力が湧いてくる。
 なぜなら「私の能力、もう半分、使うことができる!」とわかるからだ。

 「脳半分しか使ってない説」の真偽はわからない。
 ただ本書を読めば「自分を自分自身を、半分しか使いこなしていない」ことにハタと気づく。

 そして本書のメソッドどおりに動けば、「自分の残り半分」が目覚め、自分の魅力が何倍にも上がるのだ。

 たとえば「声」の項では、「自分が限られた声しか出していない」ことに気づかされる。

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 魅力的な声とは、アナウンサーのような美声ではない。
 表情のある声だと、著者は言う。
 
 ちょっとした挨拶や日常のおしゃべり、プレゼンテーション等でも、「自分の持つ声のバリエーション」を最大限に生かせば、うんと魅力的になる。
 
 そこで著者は、「あなたの声の見つけ方」を伝授。
 頭に手を置いて・・・というメソッドは、さすが演劇のプロ!

 さっそく私もやってみたが「自分に、こんなにいろんな声が秘められていたなんて」と驚いた。
 それに気づいて以来、家族との会話がより弾むようになった。
 
 「半分しか使ってこなかった自分の声」を「もう半分使うこと」で、生活の質が上がったのだ。
 
 そして本書で最も衝撃を受けたのは、「3つの輪」。
 魅力を上げる「話し方」のヒントだ。

 「輪」のひとつめ、「第一の輪」は「自分に話す言葉(=ひとり言)」
 「第二の輪」は「相手と話す言葉」。
 「第三の輪」は「みんなと話す言葉」だ。

 たいていの人は、どれか一つの輪に偏りがち。
 「第一の輪」を相手に話すと、いわゆる「察してちゃん」状態に。
 言われた方は真意がつかめず、どうしてよいかわからずイライラ。
 言った方は「伝えたつもり」が「伝わっていない」とわかりイライラ。
 あまり良い結果を生みださない。

 またありがちなのが、相手の相談に対し「第三の輪」で返しちゃうこと。
 一般論や正論で返答してしまい、全く「相手が求める答」にならない。
 これまたあまり良い結果を生まない。

 重要なのは、ここで「第二の輪」をからませること。

 営業トークでも校長先生のお話でも、「あなたに話している」とわかる「第二の輪」を入れれば、気持ちの良いコミュニケーションがとれる。

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 本書で挙げている「話の上手な校長先生」の例を読めば、なるほど納得!

 「3つの輪」を全てきちんとミックスさせれば、「相手が体を乗り出す話し方」ができるのだ。
 (売れっ子司会者は、その「3つの輪」の使い方が非常にうまい、と改めて認識。
  特に「さんま御殿」での、明石家さんまさんの「トーク運び」は、まさに「3つの輪」を実践している。)

 「自分は話下手」「相手に伝わらずイライラする」・・・もしあなたが、そんな悩みを持っているなら、今すぐ「輪が偏っていないか」をチェック!

 「3つの輪」のバランスをちょっと心がけるだけで、トークが劇的に変わるはず。
 「自分」「世間」にもうひとつ、「あなた」という視点を加えることで、魅力は倍増するだろう。


 本書が説く「魅力をアップする方法」は、お金のかからないものばかり。

 「今まで気づかなかった、自分の『もう半分』」を引き出すことで、魅力をアップできるのだ。
 
 そうとわかれば今すぐ実践!
 今日、あなたに会った人はきっと「あれ? 今までよりもっと素敵になったな」と思ってくれるだろう。
                                                                     
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日大アメフト部の事件と驚くほど酷似・・・!「不死身の特攻兵」(鴻上尚史)感想。

評価:★★★★★

 ――帰ってきて怒られるのが嫌だから、帰らないように無理して突っ込んだという人もいたみたいなんです。
「そういう人いますよね。詰まってしまって、気持ちも行動も詰まってしまって、行き場がなくなるんですよ」

(本文引用)
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 「あの事件と特攻が、ここまでピッタリ当てはまるとは・・・!」

 「あの事件」とは、日大アメフト部の危険タックル問題である。

 日経新聞のコラムで件の事件がとりあげられた際、本書が紹介されていた。
 アメフトの事件と特攻には、共通するものがあるという。

 そこで私は早速、「不死身の特攻兵」を注文。
 売れているらしく、届くまで数週間待ったが、その甲斐はおおいにあった。

 予想以上に、特攻と「アメフト事件」は共通していたのだ。
 あまりの酷似ぶりに背筋がブルッと震えたほど。



 基本的に、立場が下の者は上の者には逆らえない。
 「ぶつかってこい」「死んでこい」と言われると、判断力・思考力を失い、とんでもない行動に出てしまう。
 事件後、指示を出した側は事実をねじまげ、責任を曖昧にする。
 たとえ責任を認めても、気がつけば「指示を出した人物」ではなく、所属チームや団体・組織全体が総懺悔をする。

 全部、全部全部全部、恐ろしいほど符号しているのだ。

 これが震撼せずにいられるだろうか。

 本書は、9回出撃して帰ってきた特攻兵へのインタビュー等を通し、特攻の問題点を追究。

 人間爆弾に走った心理、走らせた心理・原因、病巣はどこにあるのか。
 そして生きて帰ったきた人物は何を思い、「死んでこい」の命令に背き続けたのか。

 劇団のリーダーとして、一人の人間として、鴻上尚史が出した答とは?
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 本書では、様々な資料やインタビュー等から神風特攻隊をつぶさに語っていく。
 散った兵士が家族に宛てた手紙、特攻兵の多くが知らされなかった秘密、特攻や戦争継続に反対した士官の文書etc.
 
 そして、9回出撃してなおも生き残った「不死身の特攻兵」・佐々木友次さんへのインタビューだ。

 佐々木さんが生き残った理由とは、爆弾を切り離して落とすことを徹底的に貫いたからだ。
 
 実は佐々木さんには、日露戦争から生還した父親がいた。
 父親は佐々木さんに、こう伝えていた。

 「人間は、容易なことで死ぬもんじゃないぞ」

 常日頃からこの言葉を聞かされていた佐々木さんは、体当たりには頑として反対。
 「死んでこい」「体当たりしてこい」と言われても、爆弾を落とすことのみに集中。

 「いろいろ言われますが、船を沈めりゃ文句ないでしょう」

 人懐っこい顔でそう言い、体当たりすることなく奇跡の生還を果たすのである。
 
 さてこれだけ聞くと、件の日大アメフト問題が「選手の責任」のように思えてしまう。
 佐々木さんのように、監督の指示に背きつづけ、「要するに勝てばいいんでしょう」と笑顔で言えば良かったのではないかと思うかもしれない。

 しかし本書を読めば、とても「指示を受けた側」を責める気にはなれないだろう。
 
 「志願」という名の「強制」。
 上官による洗脳。
 未来ある若者が体当たりで(あたかも自発的かのように)死んでいくことで、対戦国への憎しみを煽り、天皇の戦争責任をそらし、日本国民一丸となって戦うよう仕向ける。
 
 もはや「戦争に勝つこと」ではなく「死ぬこと」が完全に目的となっている状況で、「死なない」選択ができるだろうか。

 絶対的な権力を持つ上位者が、弱い立場の者に「精神論的」な命令・指示を出し続けることは、それほど危険なことなのだ。

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 どうだろう。
 特攻と日大アメフト部の問題は、非常に似ていると思わないだろうか。 

 さらに鴻上氏は、「責任をあいまいにすること」「責任を他者になすりつけること」を徹底批判。

 敗戦に対する「一億総懺悔」。
 戦争を終えた後、「命令した側」が「死人に口なし」とばかりに、「すべての特攻は志願だった」と発言したこと(特攻隊全員が志願したなら、上官の責任は免除されるのだ!)。
 
 責任があるのは、あくまで「命令した側」であるはずなのに、何が何でも責任逃れをしようとする上官たち。
 そして、赤ちゃんにまで謝罪をさせ、命令の所在をあいまいにする「一億総懺悔」。

 鴻上氏は、このような無責任さ・思考の停止に対し、怒りをあらわにする。
 
 もう何から何まで、驚くほど「特攻」と「日大アメフト部」の事件は酷似している。
 さらに言うと、この「上位者による洗脳」「下位者の苦悩・諦め」、そして「責任をあいまいにする・なすりつける思想」は、パワハラやセクハラにも当てはまる。

 今現在、日本は戦争をしていないものの、精神構造は変わっていないのかもしれない。
 「もうあんな過ちはしない」と固く誓っても、今起きている問題をよく見つめてみると、また特攻兵が体当たりしてもおかしくはないのである。

 そのような事態に陥らないようにするためにも、私は本書を何度も読み返すだろう。
 特に268~269ページにかけての、小沢郁郎氏の5箇条は胸に留めておきたい。

 最後に、鴻上氏が「おわりに」で綴った印象的な言葉を記しておく。

 21歳の若者が、絶対的な権力を持つ年上の上官の命令に背いて生き延びることを選んだ。それがどんなに凄いことなのか。
 僕が21歳の時にそんなことは絶対にできなかっただろう。間違いなく挫けて、諦めて、絶望していただろう。


 
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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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