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葉真中顕「ブルー」感想。児童虐待問題を平成から令和に受け渡す。

評価:★★★★★

 美味しいものも、布団で眠ることも、新しい服も、いらなかった。
 何か望みがあるとすれば、ただ一つ。母親に穏やかでいて欲しいということだけだった。

(本文引用)
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 今思えば、平成は児童虐待があらわになった時代かもしれない。
 本書を読みながら、そんなことを考えた。

 子育てはストレスがたまるもの。
 形は変遷してるかもしれないが、太古の昔から、児童虐待はきっとあっただろう。

 その実態、苛烈さが暴かれたついに時代が、平成時代。
 情報の流れるスピードが、昭和時代より何倍、何百倍、何万倍と早くなったため、一気に周知。

 ネット掲示板やSNSで、「もしかして私、放置子だったの?」「私がされていたことは、虐待だったのでは?」と思い当たる人も多いという。


 葉真中顕の「ブルー」は、平成史を振り返りつつ、児童虐待問題を真摯につづる情熱の書。

 子どもは親を選べない・・・その理不尽さを、これほど痛烈に感じさせる本もない。

 常に社会的弱者に目を向ける葉真中顕さんだ。
 そんな葉真中さんだから書けたであろう、胸震わせる一冊だ。
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■「ブルー」あらすじ



 時は平成半ば。
 ある家で、家族4人が惨殺される事件が発生。
 被害者のなかには、幼い子供も含まれていた。

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 凶悪事件ゆえ警察は懸命に捜査するが、突然、無理やり捜査打ち切りに。
 加害者の仕事が、国の重鎮たちに関わっており、暴かれると「まずい」らしい。

 時を経て、ある日、若い男女の死体が発見される。
 二人は子供を置き去りにして逃亡。

 しかしその先で、何者かに殺される。

 平成に起きた二件の惨殺事件。
 調べを進めるうち、次第に点と線がつながるように。

 そこにはあまりに悲しい、子どもたちの叫びが潜んでいた。
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■「ブルー」感想



 もし今、子どもにイライラしていたら、ゆっくりでもいいから読んでみてほしい。
 
 というのも私自身が、つまらないことで子どもにイライラ。
 本書を読むことで、どうにか気持ちを落ち着かせたからだ。

 「ブルー」では平成の世を振り返りながら、男女の出会い、性、子育て、そしてその放棄の実態を描いていく。

 戸籍のない子。
 行方不明の子。
 貧困で、衣食住も満足に与えられない子。
 生まれながらにして、存在を否定される子。
 
 どんなに時代が変わっても、経済が豊かになっても不況になっても、心の刃は「小さい子ども」に向けられる。

 それがいかに「おかしいこと」であるか、「卑怯なこと」であるかが、本書を読むと本当に、本当によくわかる。
 大人とは、なんて身勝手な生き物なのか。
 子どもは親を頼るしかないのに、親しか生きる術はないのに、親に嫌われたらどうしようと思ってるのに、大人は気分次第で子どもをいたぶる。

 一人の親として、人間として、「ブルー」を通して猛省した。
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 さらにこの物語、児童虐待を、惨殺事件の当事者だけにしまいこまないのが良い。

 警察官の女性が育児ストレスに耐えられず離婚。
 「自分は子どもを愛せない」という気持ちに愕然とし、親権を夫に引き渡す。

 その後悔、罪悪感を何年も引きずっては、虐待事件の捜査を継続。
 事件当事者だけでなく、警察官も「事件の背景」にからめている点に、思わず胸が熱くなった。

 誰だって、虐待の加害者になりうる。
 子どもを愛せる・愛せないは、仕事や生活からは決して計れないのだ。

 だから本書は、今、育児にもがき苦しんでる人に読んでほしい。
 きっと「私だけじゃない」と思えるはず。
 そして「このままだと殴ってしまうのでは」という恐怖から、解き放たれるはず。

 表紙に描かれるブルーの目が、育児中のあなたをきっと見守る。

 大丈夫、僕が命を懸けて守るから、と。
                                             
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葉真中顕「絶叫」はネタバレせずに映像化できるのか?

評価:★★★★★

 「だから、何一つ選べない。どんなふうに生まれるか、どんなふうに生きて、どんなふうに死ぬか。人は髪の毛一本の行く末さえ、自分で選ぶことなんてできない」
(本文引用)
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 本当に主人公と一緒に絶叫したくなる小説。
 
 社会派ミステリーは、主人公の転落ぶりが凄まじいほど面白い。
 しかし、その転落の描写があまりにリアルだと、面白いを通り越してシャレにならない心境になる。
気がつくと、主人公と一緒に四面楚歌の状況に陥り、主人公と抱き合いながら人生の坂道をゴロゴロゴロ・・・と勢いよく、果てもなく転がっていく。
 そんな気持ちにさせられるのだ。

 どこまで転がったら止まることができるのか。それを何としてでも見届けたくて、一気読みしてしまった。
 (※ネタバレにならないよう細心の注意を払っていますが、もしネタバレになっていたらすみません。)



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 ■あらすじ
 
 あるマンションの一室で、女性の死体が発見される。死体の周囲には、猫の死体も大量にある。
 どうやら女性が死んだあと、猫たちは女性の死体を食べて生きながらえようとしたが、それも尽きたらしい。
 そのため死体の損傷が激しく、他殺か自殺か自然死かもわからない状況だ。

 警察の捜査によると、死んだ女性の名は鈴木陽子。
 独身のようだが、陽子の戸籍を調べると、恐ろしい事実が次々と判明する。

 結婚の回数が異常に多い。しかもそれらの結婚相手のうち、生きているのは最初の夫だけ。
 つまり陽子は死別と再婚を何度も繰り返していたのだ。

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 いったい鈴木陽子とはどんな女性だったのか。
 鈴木陽子は、どんな人生をたどってきたのか。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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