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「ロシア紅茶の謎」あらすじ感想。「そんなダイイングメッセージあり!?」でも面白いから仕方がない。

 これは純然たる偶然なのだろうが、その二本のラインは、地上で最も危険なある動物の名前を表わす文字をデザインしていた。
(本文引用)
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 「こんなに凝ったダイイングメッセージ、する人いる?」
 ・・・と思いつつも、「でもミステリーは『面白い』が正義だよね!」と感服。

 実現可能性とか人情とか余韻とか、そういうのは全部押し入れにしまって、「純粋に謎解き・ミステリーを楽しみたい」という人に、本書はおすすめ。

 「動物園の飼育係が遺した、動物だらけのダイイングメッセージとは?」
 「アパート家主だからできてしまった、驚きの符丁とは?」
 「雷の夜だからバレた、犯人の嘘とは?」
 「ロシア紅茶で毒殺。それ、危険すぎるでしょ!」

 外出自粛が解けても、まだ日常には戻れない今日この頃。
 「あ~、頭をスキッと目覚めさせたい!」「脳をビックリさせたい!」と思うなら、きっと満足できる一冊だ。

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有栖川有栖「こうして誰もいなくなった」は最高に楽しいミステリーの遊園地!あの誤植の意味は?

評価:★★★★★

「はは、こいつは思ったより面白い。出題者というのは愉快な立場ですな。自分だけが正解を握っているというのは優越感をくすぐられる」
(本文引用)
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 帯に「有栖川小説の見本市」と書かれているが、見本市というより宝箱、いや遊園地といったほうが良い。

 一瞬で終わるけど心臓バクバクのフリーフォール。
 最初から最後まで「どうなるんだろう?」とドキドキするお化け屋敷。
 夢か現かわからないイリュージョンの部屋・・・。

 2ページで終わるミステリーもあれば、100ページ超の奇怪な話も。

 短編集は「全て均質なものが望ましい」と思っていたが、本書を読んでガラリと変わった。

 量もタイプもバラッバラな短編集は、とてつもなく面白い。
 そしてとてつもなくお得感があるのだ。

 こういう短編集を見せられちゃうと、もうね、「やっぱり巨匠は違うな」とただただ拍手。
 超ベテラン作家だからこそできる、ミステリーの遊園地。

 
 無限に広がるミステリーの波で、一日中飽きるほど遊ぶことができた。
 幸せだぁ!
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 本書に収められてるのは、ミステリーばかり14話。

 日常のなかで「ありそうな謎」から、日常では「とうていあり得ない謎」まで、さまざまな謎が満開だ。

 なかでも私が好きなのは、第1話「館の一夜」、第11話「本と謎の日々」、第12話「謎のアナウンス」。

 「館の一夜」は、山中に迷ってしまう男女の物語。
 カーナビ通りに走って来たのに、二人はすっかり迷ってしまい、仕方なくホテルに泊まることに。
 恋人同士ではないため、別々の部屋に宿泊したが・・・?

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 「本と謎の日々」は、書店で起きる「納得できない謎」をつづったもの。
 同じ本を2冊買ってしまい、返品に来た客。
 しかし客は、店に「これから気をつけてね」とクレーム。
 なぜ客は、自分の不注意にも関わらずそんなことを言ったのか?
 またある日には、店のポップが次々紛失。
 書店には、実にいろんなお客様が来るようで・・・。

 そして「謎のアナウンス」は、ある男性がデパートに行くたびに、おかしいアナウンスを聞くことに。
 なぜ彼がデパートに行くと、おかしいアナウンスが流れるのか?

 どの物語も、読めば「あ~、なるほど納得!」と膝をバチン!
 日常生活は、人の数だけミステリーがあるんだなぁと思わず笑いがこみあげてくる。
 
 本書を読んでから、デパートや書店に行くと、風景が違って見えてくる。
 そして手に取った本を、隅から隅までグルッと観察したくなる。
 本好きにとっては、ますます本が好きになっちゃう「目の毒」のようなミステリーだ。

 さらに本書をおすすめしたいのは、「好きな人に振り向いてもらいたい人」。
 謎に巻き込まれるのは、「謎を知らない人」ばかりではない。
 自分で謎を作ってしまえば・・・(これ以上はネタバレなので略)。

 本書を「ミステリーの遊園地」と言ったが、本書を読めばきっと、好きな人と遊園地に行けるはず。
 そしてもっと仲が深まるはず。

 何しろ本書には、「人を一日中飽きさせないコツ」がギッチリ詰まっている。

 ミステリーを楽しみたい、日常を楽しみたい、そして好きな人を楽しませたい。

 そう切に願うなら、「こうして誰もいなくなった」はおすすめだ。

 ちなみに私、本書のなかで一箇所、誤植を見つけてしまった

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 これって初版ならでは?
 「本と謎の日々」を読者に実体験させる試み?
 
 あの書店に現れた客なら、「これから気をつけてくださいね」と言うところだろうか。
 私はむしろラッキーと思い、大切にとっておくつもりだが、本当のところどうなんだろう?
                                                                     
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「鍵の掛かった男」有栖川有栖  感想

評価:★★★★★

 ――密室が開いて、何が見えましたか? 私の人生のすべてが判ったと言うのであれば、死に際がどうであったかも承知していると?
(本文引用)
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 ミステリーの宝石箱か満漢全席か。ここまで心ゆくまでミステリーというものをお腹いっぱい味わったのは、久しぶり!
 もうしばらくはミステリー小説はいいや・・・と思いつつも、「やっぱりミステリーは面白い!」と、またミステリーに手を伸ばしたくなってしまう。そんな大作だ。
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 ミステリー作家・有栖川有栖は、高名な作家・影浦浪子から、ある依頼を受ける。
 それは、梨田という男性の死の真相を突き止めてほしいというものだ。

 梨田は、大阪の小さなホテルのスイートルームに5年も住み続けていたのだが、ある日、部屋で死体となって発見される。
 警察は自殺として処理したが、梨田を知る影浦は、どうにもその結論に納得がいかないという。



 有栖川は、友人の犯罪社会学者・火村英生と共に真相究明に乗り出すが、梨田は天涯孤独で過去も全くわからない。まるで、鍵の掛かった密室のような男だったのだ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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