加納朋子「無菌病棟より愛をこめて」感想。こんなに元気になれる闘病記、他にない!
評価:★★★★★
突然、「あなたは白血病です」と告知されてしまった方々や、そのご家族、ご親戚、ご友人に。
そんな方々に、このあとがきだけでいいから、読んでいただきたいのです。そしてお伝えしたいのです。
決して絶望しないで下さい、と。
(「あとがき」より)
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著者は「七人の敵がいる」などで人気の作家・加納朋子さん。
(ちなみにご主人は、これまた人気作家・貫井徳郎さん)
2010年6月、加納氏は熱を出す。
てっきり夫の風邪がうつったのかと思ったが、事態は軽いものではなかった。
血液検査の結果、極度の貧血と言われ鉄剤を服用。
しかし一向に良くならず、倦怠感が強くなり、家で寝込むことが多くなる。
ついにはスーパーで座りこみ、店員さんに心配される事態にまで重症化。
さらに詳しく検査をした結果、加納氏の不調は貧血ではなく、鉄剤も意味をなさないものだった。
病名は急性骨髄性白血病。
このままだと余命は数ヶ月単位。
加納氏は中学校にあがったばかりの息子さんがいるなか、懸命の治療に取り組む。
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「内容」だけ読むと、ものすごくシリアスな本に見えるだろう(実際、事態は非常に深刻なものなのだが)。
しかし本書を数ページ読めば、イメージはガラリ。
電車のなかでは読めないぐらい、ブハッと笑える本なのだ。
抗がん剤で髪が抜け、テレビのなかの薄毛俳優と比べてみたり。
ワールドカップやアニメ、漫画を楽しみ、時に覆面作家のペンネームの謎に迫ってみたり。
外泊許可時には、家で「ハゲ」「励み」「励む」という表現を言葉狩りしたり。
「生ものはダメ」と言われたからアイスを控えていたら、「ハーゲンダッツならOK」と言われ、ひたすら食べたり。
入院中でも「きれいになりたいもん!」と美容体操や階段昇降を続けたり・・・。
不謹慎なのはわかっているが・・・まさか闘病記でここまで大笑いするとは思わなかった。
読むだけで免疫力がジャンプアップしそうだ。
しかし同時にその裏に、尋常ではない悲しみ・辛さ・悔しさ、そして押しつぶされそうな不安もズシリと感じられる。
医学部学生のちょっとした一言で、激しく傷つき、看護師さんに泣きついてしまったこと。
産毛がするりと抜け、髪が抜ける兆候に怯えたこと。
血液の数値を毎日緻密に見ながら、できること・できないことを考えること。
そして何かを見るにつけ、「来年の今ごろ、私はいないかもしれない」という思いがよぎること。
全くスベらないギャグ満載の筆致の陰に、もだえ、暴れ、地団駄をふむような苦悩・恐怖心が垣間見える。
それだけに、周囲の愛ある行動にグッとくる。
事態を受けて授賞式を欠席した夫、家のことを全てやってくれた義母、かぶりごこち最高の帽子を作ってくれた友人、そしていつも加納氏を誉め、気分を盛り立ててくれる看護師さんたち・・・。
著者は常に「死ぬかもしれない」「次の誕生日を迎えられないかもしれない」という恐怖や、自暴自棄寸前のイラ立ちを抱えながらも、周囲への感謝をそれはもう、心をこめてこめて描いていく。
それらのエピソードには、何度笑いながら泣いたことか。
まさにタイトルどおり、めいっぱいの「愛をこめて」書かれた闘病記なのだ。
さらに本書が秀逸なのは、「ドナー側の日記」まで載っていることだ。
骨髄移植のドナーは、著者の実弟。
彼は著者の入院を知った日から、健康管理を徹底。
検査の結果、あらゆる数値がマッチすることがわかり、骨髄移植に臨む。
本書には、その弟さんの日記も掲載。
内容からは、姉を思う気持ちや、白血病に関する並々ならぬ勉強のあとがうかがえる。
闘病記のなかで、ドナーの日記まで公開された本は、そうそうないのではないか。
その意味で本書は非常に貴重。
病に苦しんでいる人や、その家族にとって、これほど参考・励みになる日記はないだろう。
白血病の闘病という、大変な状況のなか、ここまで「人々を楽しませる日記」を著した、作家・加納朋子氏。
文筆業としてプロ中のプロであり、また、人間としてプロなのだと、ただただ敬服。
あとがきで何度も「ありがとう」「ありがとう」と書かれているが、読ませてもらったこちらから、心の底から強く言いたい。
ありがとう。
本当にありがとう。
突然、「あなたは白血病です」と告知されてしまった方々や、そのご家族、ご親戚、ご友人に。
そんな方々に、このあとがきだけでいいから、読んでいただきたいのです。そしてお伝えしたいのです。
決して絶望しないで下さい、と。
(「あとがき」より)
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池江璃花子選手が白血病を告白したニュースには、ただただ驚いた。
実は私の知り合いにも、白血病だった人がいる。
再発し、一時は危ぶまれたが、発病から十数年。
今は元気に暮らしている。
池江選手が元気な姿で社会復帰されるのを、心から願っている。
そこで手に取ったのが、「無菌病棟より愛をこめて」。
人気作家による、ユーモアと慈愛がたっぷり詰まった「白血病闘病記」である。
実は私の知り合いにも、白血病だった人がいる。
再発し、一時は危ぶまれたが、発病から十数年。
今は元気に暮らしている。
池江選手が元気な姿で社会復帰されるのを、心から願っている。
そこで手に取ったのが、「無菌病棟より愛をこめて」。
人気作家による、ユーモアと慈愛がたっぷり詰まった「白血病闘病記」である。
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■「無菌病棟より愛をこめて」内容
著者は「七人の敵がいる」などで人気の作家・加納朋子さん。
(ちなみにご主人は、これまた人気作家・貫井徳郎さん)
2010年6月、加納氏は熱を出す。
てっきり夫の風邪がうつったのかと思ったが、事態は軽いものではなかった。
血液検査の結果、極度の貧血と言われ鉄剤を服用。
しかし一向に良くならず、倦怠感が強くなり、家で寝込むことが多くなる。
ついにはスーパーで座りこみ、店員さんに心配される事態にまで重症化。
さらに詳しく検査をした結果、加納氏の不調は貧血ではなく、鉄剤も意味をなさないものだった。
病名は急性骨髄性白血病。
このままだと余命は数ヶ月単位。
加納氏は中学校にあがったばかりの息子さんがいるなか、懸命の治療に取り組む。
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■「無菌病棟より愛をこめて」感想
「内容」だけ読むと、ものすごくシリアスな本に見えるだろう(実際、事態は非常に深刻なものなのだが)。
しかし本書を数ページ読めば、イメージはガラリ。
電車のなかでは読めないぐらい、ブハッと笑える本なのだ。
抗がん剤で髪が抜け、テレビのなかの薄毛俳優と比べてみたり。
ワールドカップやアニメ、漫画を楽しみ、時に覆面作家のペンネームの謎に迫ってみたり。
外泊許可時には、家で「ハゲ」「励み」「励む」という表現を言葉狩りしたり。
「生ものはダメ」と言われたからアイスを控えていたら、「ハーゲンダッツならOK」と言われ、ひたすら食べたり。
入院中でも「きれいになりたいもん!」と美容体操や階段昇降を続けたり・・・。
不謹慎なのはわかっているが・・・まさか闘病記でここまで大笑いするとは思わなかった。
読むだけで免疫力がジャンプアップしそうだ。
しかし同時にその裏に、尋常ではない悲しみ・辛さ・悔しさ、そして押しつぶされそうな不安もズシリと感じられる。
医学部学生のちょっとした一言で、激しく傷つき、看護師さんに泣きついてしまったこと。
産毛がするりと抜け、髪が抜ける兆候に怯えたこと。
血液の数値を毎日緻密に見ながら、できること・できないことを考えること。
そして何かを見るにつけ、「来年の今ごろ、私はいないかもしれない」という思いがよぎること。
全くスベらないギャグ満載の筆致の陰に、もだえ、暴れ、地団駄をふむような苦悩・恐怖心が垣間見える。
それだけに、周囲の愛ある行動にグッとくる。
事態を受けて授賞式を欠席した夫、家のことを全てやってくれた義母、かぶりごこち最高の帽子を作ってくれた友人、そしていつも加納氏を誉め、気分を盛り立ててくれる看護師さんたち・・・。
著者は常に「死ぬかもしれない」「次の誕生日を迎えられないかもしれない」という恐怖や、自暴自棄寸前のイラ立ちを抱えながらも、周囲への感謝をそれはもう、心をこめてこめて描いていく。
それらのエピソードには、何度笑いながら泣いたことか。
まさにタイトルどおり、めいっぱいの「愛をこめて」書かれた闘病記なのだ。
さらに本書が秀逸なのは、「ドナー側の日記」まで載っていることだ。
骨髄移植のドナーは、著者の実弟。
彼は著者の入院を知った日から、健康管理を徹底。
検査の結果、あらゆる数値がマッチすることがわかり、骨髄移植に臨む。
本書には、その弟さんの日記も掲載。
内容からは、姉を思う気持ちや、白血病に関する並々ならぬ勉強のあとがうかがえる。
闘病記のなかで、ドナーの日記まで公開された本は、そうそうないのではないか。
その意味で本書は非常に貴重。
病に苦しんでいる人や、その家族にとって、これほど参考・励みになる日記はないだろう。
白血病の闘病という、大変な状況のなか、ここまで「人々を楽しませる日記」を著した、作家・加納朋子氏。
文筆業としてプロ中のプロであり、また、人間としてプロなのだと、ただただ敬服。
あとがきで何度も「ありがとう」「ありがとう」と書かれているが、読ませてもらったこちらから、心の底から強く言いたい。
ありがとう。
本当にありがとう。