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若竹七海「殺人鬼がもう一人」感想。途中で犯人がわかっちゃうミステリーはイヤ!という人に超おすすめ。

評価:★★★★☆

 「要するに、殺人鬼はもう一人いるじゃない。まあ、この大惨事だから、整合性を取るのは大変そうだけどしょうがない。なんとかするよ」
(本文引用)
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 若竹七海のミステリーを読むと、誰も信じられなくなってくる。

 「何であの人が、こんなことを?」「そんなまさか、あの人が!」とゾクリ。

 警察は完全にノーマーク。
 「絶対安泰、悪いことするわきゃぁない!」と思われている人が、深く静かに重罪を犯すのが「若竹流」なのだ。

 さらに本書の「人間不信力」は筋金入り。
 住民はならず者ばかり。
 警察まで犯罪者スレスレ。(しかもすでにやっちゃってる犯罪も)

 いわば舞台は、名探偵コナンの米花町。
 誰が人を殺めても、金品を盗んでもおかしくない。

 「こんな警察官は嫌だ!」「こんな隣人は嫌だ!」と、叫びたくなる話ばかりなのだ。


 
 だから「殺人鬼がもう一人」は面白い。

 「途中で犯人がわかっちゃうミステリーだけはイヤ!」という人には本当におすすめだ。

 人間不信になるけどね・・・。
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■「殺人鬼がもう一人」あらすじ



 舞台は東京郊外・辛夷ヶ丘。

 辛夷ヶ丘にくる警察官は、ろくでもない人間ばかり。

 火事が起きてもボーッと見てるだけ。
 どんな重大事件が起きても、地元名士の軽微事件だけ取り扱う。
 時には事件を「なかったこと」にするため、捜査員同士でお金を山分け。
 
 辛夷ヶ丘は住民も警察も倫理観が破滅した街なのだ。

 ある日、老婆がひったくりに遭い、60万円取られたという。
 老婆は街一番の大金持ち。

 多数の不動産を有し、家賃徴収に歩き回っていたところを狙われたという。

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 犯人はすぐにつかまったが、どうも老婆の話と食い違う。

 警察は老婆と話すうちに、ある疑いをもちはじめる。

 街で起きた「あの事件」「この事故」、もしかして・・・?
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■「殺人鬼がもう一人」感想



 本書は6編からなる連作短編集。
 
 資産家の金銭トラブル、窃盗、盗聴器探し、結婚式当日の大トラブル、葬儀の裏に隠された陰謀・・・。

 一見、フツーの人々がフツーの事件に巻き込まれているように見える。

 しかし登場人物は、誰も彼も驚くほど「フツーじゃない」。
 そこが「殺人鬼がもう一人」の大きな魅力だ。

 事件の犯人は、まるで闇夜のカラス。
 みんな異常だから、異常者がわからない。
 「この人が犯人かな?いやいや、この人かも」と思っているうちに、深い闇から本当のカラスが現れるのだ。

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 しかも現れるのは、最後の5行あたり。

 さんざん推理をめぐらせていた読者ほど、ガツンと来ること間違いなし。

 最初からあきらめて、著者に種明かしを求めるのが、精神衛生上良いであろう。
 
 もしかしすると、いつも柔らかな笑みをたたえている「あの人」が、とんでもない凶行を計画しているかもしれない。
 もしかすると、いつも悪行ばかり働いている人が、「良い人」に陥れられているのかもしれない。

 さあ、最後まで犯人不明のミステリーを堪能するか。
 人間不信にならないことを選ぶか。

 「殺人鬼がもう一人」を読むか読まないかは、あなた次第!

詳細情報・ご購入はこちら↓

静かな炎天  若竹七海

評価:★★★★★

「大きな象が目の前にいるのに、自分がその象をなでているかどうかもわからない。それほどその象がばかでかくて、複雑に動き回っている・・・・・・わかります?」
(本文引用)
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 「アメトーーク! 2016読書芸人」で、カズレーザー氏が推薦した本。書店で見つけて、その「ただ者じゃない感じ」を孕んだオーラ(ここではレーザーとすべきか)に心を射抜かれ、思わず買ってしまった。

 で、これが本当に途轍もないほどただ者じゃなかった!

 ミステリーの短編集なのだが、本書を読み、今まで自分がいかにいい加減な気持ちでミステリーを読んできたかを痛感させられた。

 推理小説というのは、一言一句、いや一文字一文字も見逃してはならない。瞬きしていたら、アッという間に真実はすり抜けてしまう。



 誰かが放つ小さな一言、空気中にただよう小さな塵ひとつでも蔑ろにすると、真相は永遠に闇の中に隠れてしまう。
 この本に収められている短編は、そんな緊張感にあふれている。ミステリーを読む心構えというものを、改めて教えてくれる一冊だ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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