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「探検家とペネロペちゃん」感想。なぜ娘は好きな子に鼻くそをつけたのか?「パパはテンパリスト」な「おもしろ深すぎる」子育てエッセイ。

★「探検家とペネロペちゃん」は、こんな人におすすめ!

●「子ども」がいる人(特に娘さんがいるパパ)。
●「自分って親バカ? 周囲にひんしゅく買ってない?」と不安になってる人。
●「気がつくと子どもの話ばかり・・・。こんなことじゃいけないのかな」と悩んでる人。
●子育てイライラがMAXな人。
●妊娠中の人。

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 子供ができて思ったのは、どうしてこんな面白いことを、みんな教えてくれなかったのかということでもあった。(本文引用)
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 本書は出産祝いにおすすめ(特に、女の子が生まれた男性に)。
 きっと期待以上の内祝いがいただけるはずだ。
 
 実は以前、育休明けの同僚に「ママはテンパリスト」(東村アキコ作)を貸したところ、目が飛び出るほど豪華なスイーツをいただいた。
 「子育て中の気持ちがわかりすぎて、とーっても面白かった! ホンットウにありがとう!!」と、お礼を買わずにいられなかったそうだ。
 
 「探検家とペネロペちゃん」は、さながら「パパはテンパリスト」
 表紙に「子どもは極夜より面白い」と書かれているが、育児とはまさにその通り。

 自分も赤ちゃんだったはずなのに、何をどうしてよいかわからずテンテコマイ。
 子育てとは、太陽がいつ昇るかわからぬ真っ暗闇をさまようような、恐ろしくも面白い体験なのだ。

 「探検家とペネロペちゃん」は、そんな「育児という名の未知すぎる体験」を「戸惑い感満載」で公開。

 そして育児本史上、最大レベルの「親バカ感」が炸裂。

 探検家らしく、子どもに対する驚き・当惑・喜び、そして愛情を、ビッグバン級の壮大スケールで描いている。

 だから本書は、出産祝いにおすすめ。



 
 「子育てに悩んだり迷ったりするのは、自分だけじゃないんだ」
 「子どものことで頭がいっぱい。子どもの話ばかりしたくなっちゃうのは、自分だけじゃないんだ」
 「子どもは自分の思うようになるわけないんだ」
 「うちの子いちばんかわいいな、は真理なんだ」


 本書を読めば「子育ての閉塞感」、「社会から取り残され感」がスッと解消。
 「子どもの価値を、自分の価値とする過ち」も未然に防止。
 育児ストレスがみるみる軽減するはずだ。
 
 そして著者の「親バカぶり」を読み、ますます自分の子が愛しく思えてくるだろう。

 「何を!うちの子のほうが可愛いわい!」とね。

(※実際、私は本書を読みながら、ますますわが子が可愛く思えるようになった。
「うちの子のほうが可愛いもん!」と、勝手にライバル心を燃やしてしまったのだ。うちの子のほうがだいぶ大きいけど・・・。

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角幡唯介「旅人の表現術」感想。傑作ノンフィクションはこうして生まれる!アノ人気作家との対談も。

評価:★★★★★

 探検をしている間も、ジャングルの中をはい回っている最中に、自分で自分の行動を実況中継しているんです。「今、滑りそうな岩の上に右足をおいて、木をつかんで、折れないか確かめながら体を引き上げた」と、心の中で言葉にし直している。
(本文引用)
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 「ノンフィクションならこれを読め!」といわれる本がある。
 それなら本書は、「ノンフィクションを読むならこれを読め!」と言いたい本。
 
 角幡唯介「旅人の表現術」は、あらゆるノンフィクションを読む前に、一度は目を通しておくべき一冊だ。

 ノンフィクションおよび、事実をモデルにした小説はどのようにして生まれるか。
 冒険譚・探検をつづったノンフィクションは、過酷な状況の中、どのようにして書かれるのか。

 そして角幡唯介とは、探検家なのか作家なのか・・・。

 本書を読めば、角幡唯介やノンフィクションにまつわる疑問が次々氷解。
 時には「そうだったのー!?」と、雪崩のように一気にわかることも。 


  
 「角幡唯介の世界」および「ノンフィクションの世界」を知りたければ、脳から変な物質が出てきそうなほど満足・興奮できる一冊だ。

 そうそう、これから「極夜行」を読もうと思っている人は、事前に読んでおくのがおすすめ。
 「何だこりゃ!?」とのけぞるほど面白い「極夜行」が、さらに百倍楽しめるだろう。
 
 もちろん、すでに「極夜行」を読んでいる人にもおすすめ。
 極夜行誕生秘話のような感覚で読むことができ、あの傑作をしみじみ反芻することができる。
 (※「極夜行」のレビューはこちら

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■「旅人の表現術」内容



 本書は「探検家・ノンフィクション作家 角幡唯介」を様々な形で解剖。
 エッセイ、書評、対談などを通じて、「角幡唯介は探検と表現をどうとらえているのか」がわかる構成となっている。

 開高健の偉大さはどこにあるのか、沢木耕太郎らノンフィクション作家達は角幡作品をどう見つめているのか、角幡唯介が影響を受けた本は何か、なぜ角幡唯介は探検と表現にたゆまぬ挑戦を続けるのか。

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 角幡氏の自己凝視と、他者から見た角幡唯介。

 その両面から、稀代のノンフィクション作家・角幡唯介の姿がまざまざと見えてくる。
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■「旅人の表現術」感想



 「これぞ角幡唯介ファンブック!」と抱きしめたくなる一冊。
 
 まず本書を読めば、「角幡唯介にまつわる疑問」がスーッとわかる。

 たとえば私は、常々こんな疑問をもっていた。

 「角幡唯介は探検家なのか?ノンフィクション作家なのか?探検が先なのか?まず表現ありきなのか?」

 そんな疑問は、角幡氏自身のこんな言葉で解決できる。

 私の探検は社会の外に飛び出すことで、その社会に対して何か新しい視点を付けくわえてやりたいという気持ちがモチベーションになっているわけで、その身体的批評行為を文章で表現することはきわめて自然なことなのである。どっちが先でどっちが上ということもないわけで、最終的に何が書けるかという観点から、どこで何を探検するのかを決めるのは、逆に当たり前だとさえいえる。

 もし今、書くという手段を封印されても探検に行くのかと訊かれたら、行くかもしれないが、それは探検にはならないだろうと答えると思う。作品にして発表するという構想が、旅に出ようとする私の背中を強力に押している。

  さらに角幡氏は、作家・三浦しをん氏との対談でこんな言葉も語っている。

 角幡  たぶん物書きである僕らって、純粋じゃないんでしょうね。
 三浦  えー、そうですかね。
 角幡  見たいと思っている時点で、どこか不純なんだと思います(笑)。

 これらの部分を読み、私は妙に呆けたような安堵したような心弾むような・・・不思議な気分になった。

 ああ、これで安心して角幡作品が読めるんだな、心ゆくまで楽しんでいいんだな、と。
 
 実は私は角幡唯介氏の作品を読むのに、「何だか申し訳ないねぇ」という気持ちをもっていた。

 「もうどう考えても確実に死ぬ!」という危機を何度も乗り越えて、その末に本まで書いて、私たち読者に至福の時間をくれるなんて。
 「私たちのことはもういいから、とにかく安全に、好きなところに好きなように探検してきてください・・・」と、頭を下げてお願いしたい思いでいっぱいだったのだ。

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 しかし本書のエッセイや対談を読み、ホーーーーーッと脱力。
 角幡さん、ありがとう!!
 これからも読ませていただくね!と、思いっきり笑いかけたくなった。

 だから本書は角幡唯介ファンブック。
 もっと角幡作品が好きになる、角幡中毒にしてしまう「罪な本」なのだ。

 また本書は対談を通じて、「外から見た角幡唯介」を知ることができるのも魅力。
 
 沢木耕太郎氏との対談では、「えっ? これってダメ出し?」と思われる批評も赤裸々に掲載。 

沢木  最後にこういう書き方をする作品を二つ続けて出すのはまずいんじゃないかと僕は思ったんだけど。

 

沢木  表現としては、もうちょっと工夫できたんじゃないかな。

 巨匠ならではの視点で角幡作品を斬りまくる、沢木耕太郎。
 探検・紀行ノンフィクションの名手二人がやり合う丁々発止の対談は、今読んでおかないと損する貴重な一幕だ。
 
 一方、旧知の探検家との対談は和気あいあい。
 
 なぜ命がけの探検をしながら、傑作ノンフィクションを書き続けることができるのか。
 文才はもともと備わったものなのか、新聞記者の経験は活きているのか・・・等々について、角幡氏からスルスル答を引き出していく。

 まさに角幡唯介大解剖。 
 
 しつこいようだが、本書は正真正銘「角幡唯介ファンブック」なのである。

 ちなみに対談によって、角幡さんのテンションが異なるのも見どころ。

 対談によって、「あー、この対談は楽しくなかったんだな」「イライラしたんだろうな」といった様子がチラリと見える(あくまで私見だが)。

 逆に非常に楽しそうなのは、三浦しをんさんとの対談。

 あれほどの人気作家なのに、謙虚な人柄の三浦さん。

 角幡さんに対し、純粋な好奇心いっぱいの質問・話し方をされていて、たいへん好感がもてた。
 本書の対談を通じて、私は三浦しをんさんの作品だけでなく人間性まで好きになった。

 よって本書は、三浦しをんファンも必読だ。
 (※対談の題材となった「神去なあなあ日常」のレビューはこちら

 その他、本書には「今の角幡唯介」をつくり上げた「角幡の素」がいっぱい。
 今、いちばんのってるノンフィクション作家・角幡唯介を知るのなら、まずは「旅人の表現術」を読んでおこう!




 そして角幡唯介に限らず「ノンフィクションとは何か、どうやって生まれるのか」を知りたい人にもおすすめ。
 「命を賭けて体で感じたものを、命を賭けて文字で表現する人」の頭の中を、そっくりのぞくことができる。

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角幡唯介「探検家の日々本本」感想。ブックガイド最高峰の面白さ!本好きの人は読んだら危険。

評価:★★★★★

 この際だからはっきりと言っておこう。人生をつつがなく平凡に暮らしたいのなら本など読まないほうがいい。しかし、本を読んだほうが人生は格段に面白くなる。
(本文引用)
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 本好き危険!
 読んだが最後、全ての本を買いたくなり、気づけば家計は火の車となるだろう。

 冒頭に挙げた引用部分を借りて、私はこう進言する。

 この際だからはっきりと言っておこう。
 人生をつつがなく平凡に暮らしたいのなら「探検家の日々本本」は読まないほうがいい。
 しかし、「探検家の日々本本」を読んだほうが人生は格段に面白くなる。


 「極夜行」で一気に脚光を浴びた角幡唯介氏。
 彼はどんな本に影響され、どんな本を探検先に持ち込んでいるのか。


 書籍代で懐がスッカラカンになる覚悟がある人、あるいはお金がありすぎて困ってる資産家の人は、ぜひ読むべき。
 節約中の人は、読んだら人生最大の危機の陥るかもしれない。

 何しろこのブックガイド、メチャクチャ面白いんだから!
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■「探検家の日々本本」要約



本書は探検家・角幡唯介氏による、読書エッセイ。
 
 どんな本と出会い、探検家になったのか。
 どんな本に影響され、あの探検・行動に至ったのか。
 探検中、どんな局面であの本・この本を読んだのか。
 そして、探検をやめられないのは、どんな本を読んだせいなのか・・・。

 読書履歴からまざまざと現れる、探検家・角幡唯介の「頭ん中」「心ん中」、そして「人生観」とは?

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■「探検家の日々本本」感想



 本書はブックガイドとしては、あまりに異色すぎる存在だ。
 
 だって感動した本を、読んだ後、焚火にくべちゃうのだ。

 雪男捜索中に、あれほど夢中で読んだ本。
 その本の著者の作品を、もう二度と読まないと言いきっちゃうのだ。

 さらに周囲が「えっ?」と眉をひそめる行動を、本のせいにしちゃうのだ。

 読めば読むほど「ンなアホな」と言いたくなる行動が、あっちこっちにある。

 だからこそ、本書は麻薬のような魅力がある(麻薬を吸ったことないけど)。
 紹介された本を、超猛烈に読みたくなる。

 なかでも印象的なのは、次の3冊。
 金原ひとみ著「マザーズ」、サマセット・モーム著「月と六ペンス」、中島京子著「小さいおうち」だ。

  


 まず「マザーズ」と「月と六ペンス」の書評からは、探検家・角幡唯介の「核」が見えてくる。

 人生の三大北壁「就職・結婚・育児」を乗り越えて、なぜ角幡氏は探検をやめないのか、やめられないのか。

 「普通の生活」という圧力から、探検をやめる者が多いなか、なぜ角幡氏はなおも探検を続けるのか。
 
 その理由を角幡氏は、「マザーズ」と「月と六ペンス」を挙げながら告白する。
 
 こう書くと、「探検家ってやっぱかっこいいー!就職や結婚でやめた探検家って、なんか弱いって感じっすよね」と言いたくなるかもしれない。
 
 しかしそう思うのは早計だ。

 はっきり言って、角幡氏が言う「探検をやめない理由」は無茶苦茶だ。
 「本を紹介しながら、自分の行動を正当化しているだけじゃないか!」と憤りすら覚える。

 だからこそ、本書は強烈に面白い。
 「本って、ホントに人生を狂わせちゃうんだ!」と心底思え、ますます本が好きになる。
 紹介された本を、どれも読みたくなってしまうのだ。

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 中島京子「小さいおうち」の書評も秀逸。
 探検家の手にかかれば、探検とはほど遠い小説も「探検小説」なってしまう。

 戦時下という状況にあっても、おうちのなかでは、戦争を感じさせない小さな幸せや、小さないざこざがある。
 その「大状況」と「小状況」のズレを、角幡氏は己の「雪崩体験」と重ねていく。

 「小さいおうち」は私も大好きな小説だが、まさか「雪崩体験」と重ねる人がいようとは・・・!
 探検家ならではの視点に、私は風邪で寝込んだ布団のなかで「う~ん、これはすごい!」と悶絶しながらうなった。

 私はますます探検家・ノンフィクション作家、そして読書家・角幡唯介氏が好きになった。
 そして本書の言葉をそのまま、角幡氏に贈りたい。
 

私のような凡庸な人間が持っている物差しで理解できるような人物ではない。

 

いいなあ。天才って。


 
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「雪男は向こうからやって来た」(角幡唯介)感想。雪男より面白い動物、それは・・・。

評価:★★★★★

わたしは自分でも何かを見てみたくなってしまっていた。雪男が本当に現れて、これまでの世界観が壊されたらどうなるのか。
(本文引用)
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 いきなりネタバレになるが、本書は「雪男を発見する物語」ではない。

 「雪男を発見した人間たちの物語」だ。
 
 「なーんだ」とガックリするかもしれないが、まぁそう言わずに読んでみてほしい。

 雪男そのものよりも「雪男をめぐる人間たち」を見たほうが、ずっと面白いことに気づくはず。

 何度も現場に足を運び、ついに帰らぬ人となった者。
 世にも美しい「足跡写真」を撮った者。
 「聞いて聞いて!」とばかりに、雪男体験を話す世界的登山家。
 そして、「雪男? なんだそりゃ?」とキョトンとする現地の人々・・・。

 誰も知らない知られちゃいけない、世界の七不思議のひとつ「雪男」。



 しかし実態は、我々人間のほうがよっぽど、奇々怪々でロマンあふれる生き物なのだ。

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■「雪男は向こうからやって来た」概要



 著者・角幡唯介は、チベット奥地ツァンポー峡谷を制覇するため、新聞社を辞める。
 
 ところが退社を聞きつけたある人物が、「待ってました」とばかりに角幡に声をかける。

 その誘いは何と「雪男の捜索」だった。

 「雪男なんているわけない」と思う角幡だが、気がつけば雪男捜索隊のメンバーに。

 まずは証言集めに奔走するが、有名登山家らが次々と「雪男を見た」と証言。

 著者のスタンスは徐々に揺らいでくるのだが・・・?

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■「雪男は向こうからやって来た」感想


 
 本書は新田次郎文学賞受賞作だ。

 「雪男捜索なんて本が、新田次郎文学賞?」と、私は最初首を傾げた。

 しかし読んで納得。

 本書は「雪男発見」を通し「人間発見」ができる本。
 
 日常生活では到底お目にかかれない、「人間の側面」がみえる一冊なのだ。

 角幡氏も緻密な証言集めや現場取材を通し、こう語っている。 

雪男にも興味はあるが、おそらくわたしはその正体よりも、雪男を見た時の人間の反応に興味があったのだ。

 続けて著者は、雪男を見てしまった時、自分のなかで大きな変化が起きるのでは、と書いている。
 その筆致には、どこか恐怖心を感じさせる。
 まるで「自分の知らない人間の姿を見てしまう、人間の扉を開けてしまう」のを怖れるかのような・・・。

 ネッシー、河童、天狗、ツチノコ等々、なぜ人間は未確認動物を見つけたいと思うのか。
 なぜ命を賭けてまで、UMAを追ってしまうのか。
 そしてなぜ「いてほしいような、いないでほしいような」不思議な感覚にとらわれるのか。

 雪男の捜索は、いわば人の心の捜索。
 本書を読む前と読んだ後では、人の見方が全く変わってくるだろう。
 毎日顔を突き合わせてる「あなたの家族」も、もしかすると「とんでもないこと」を考えているかもしれない。

 雪男よりもツチノコよりも面白い動物、それは「人間」なのだ。

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「極夜行」と一緒に読みたい!角幡唯介「空白の五マイル」は生きるエネルギーがわいてくる一冊。

評価:★★★★★

 冒険は生きることの意味をささやきかける。だがささやくだけだ。答えまでは教えてくれない。(本文引用)
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 「極夜行」と併せて読みたい一冊。
 
 「併せて読む」というより「比較して読む」と言ったほうがよいかもしれない。

 同じ人間の冒険譚でも、ここまで色合いが異なるものかと驚愕する。

 「極夜行」はひたすら旅の様子を描いた、紀行文の色合いが強い。

 一方、「空白の五マイル」には、角幡氏の「生き様・哲学・美学」が全て詰め込まれている。

 「なぜ自分は探検をするのか」
 「自分にとって価値ある探検とは、どんなものか」
 「探検は自分に何をもたらすか」etc.



 遭難のニュースが入るたびに、「なぜ山なんか登るのだろう」「なぜ探検になんか行くのだろう」と不思議に思う人は多いだろう。
 しかし本書を読めば、「なぜ彼らは探検なんかに行ってしまうのか」がようやくわかる。

  「探検する心」がわかると、自分も何か限界に挑戦したくなる。
 実際に冒険はしなくても、「せっかくもらったこの命、ギリギリまで使って生きてみよう」という気にさせられる。

 エネルギー切れを感じていたら、栄養ドリンクを飲むつもりで本書を読むのがおすすめ。

 読みながら、自分の心と体が充電されていくのがわかるはずだ。
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■「空白の五マイル」概要



 角幡唯介は、以前からツアンポー川の秘境に憧れていた。
 誰も踏み入れたことのない「空白地域」があるからだ。

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 大学卒業後、ツアンポー川探検を敢行。
 一定の成果を得たが、「未踏の地」への憧憬は強く、勤めていた新聞社を退社。

 地上最後ともいえる「空白の五マイル」を踏査すべく、チベットに旅立つが・・・?
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■「空白の五マイル」感想



 さすが人類未踏の地。
 旅程だけでも、ヒリヒリと焼けつくような内容だ。
 
 ツアンポー川で盟友を失った、カヌーイストの話。
 それでもなお心をとらえて離さない、ツアンポーの魅力。
 完全に「死」を意識した滑落。
 探検するうちに、骨同士が音を立てはじめる「肉体の限界」。

 ツアンポーの旅は、まるで「あの世」と「この世」の狭間をタイトロープでわたるような過酷なものだ。

 角幡氏はその工程を克明に描写。
 読めば読むほど「そりゃ、これだけの場所なら空白地帯にもなるわな・・・」と納得できる。

 つまり「空白の五マイル」は紀行文としても十分読み応えがあるのだが、そこで終わらないのが「角幡流」。

 なぜ命の危険を冒してまで、探検をするのか。
 意味のある探検、意味のない探検とはどのようなものか。
 角幡氏にとって探検とは何か。

 そんな「探検の意義」を哲学的に書いているため、紀行文を完全に超越し人生論となっている。
 
 さらにここからが本番。
 角幡氏が言う「探検」を、人生に当てはめれば、そっくり「良い人生の歩き方」の指針となる。

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 今、生きることに虚しさを感じている人。
 「私、このまま死んでいくのかな」という、漠然とした不安を抱えている人。
 生きるエネルギーが切れてきてる人。

 そんな人に「空白の五マイル」は、心底おすすめ。

 とりあえず本書を読めば、エネルギー満タン。
 その後は「宝物のような人生」が、きっとあなたを待っている。

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「地図のない場所で眠りたい」感想。「極夜行」を読む人・読んだ人は絶対はずせない一冊!

評価:★★★★★

角幡:角幡ワールドを作るのがやっぱり楽しいから。ノンフィクションといえども、ものすごく創作的ですよね。
高野:ワールドをつくるって創造主になるわけじゃない。それは楽しいよね。

(本文引用)
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 「極夜行」を読んだ人、そして「極夜行」を読みたい人には絶対おすすめ。
 
 読んだ人は、角幡氏の言葉の端々から「あ、あの本で角幡さんがこう言っていたのは、こういう理由だったんだな」と納得。
 読みたい人は、本書読了後に「極夜行」を読めば、「あ、あの対談で角幡さんがああ言っていたのは、このことか!」とこれまた納得。
  
 本対談を読むのと読まないのとでは、「極夜行」の味わい・面白さが数百倍は違ってくる。
 (ちなみに私は「あとがき」のラスト1行を見た瞬間、「極夜行」も本書も読んで良かったー!と実感。
 ヒントは「あとがき」を書いた場所。
 これは「極夜行」を読んだ人だけがわかる、素敵なプレゼントだ。)



 何だか角幡氏のことばかり書いてしまったが、実は私、高野秀行さんのファンでもある。
 きっかけは「わが盲想」
 スーダンからの留学生と自転車に乗るシーンを読み「何て自由で温かみのある、魅力的な人なんだ!」と感涙し一気にファンに。
 「謎の独立国家ソマリランド」は、私の愛読書のひとつとなっている。

 今や「探検家・ノンフィクション作家」のツートップとなった、角幡唯介と高野秀行。

 いわば彼らは現代人にとって、「できそうでできないこと」をやってのけちゃう「憧れの君」。
 
 本書は、そんな二人に「聞きたいこと」がギュッと詰まった夢の缶詰だ。
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■「地図のない場所で眠りたい」概要


 
 角幡唯介と高野秀行は、共に早稲田大学探検部出身。

 本書では探検部での体験談を中心に、「探検家・ノンフィクション作家としての礎を築く過程」を披露。

 少年時代の思い出や、「好きな女性」と「探検」の関係、「山岳」ではなく「探検」を選んだ理由、大学卒業後の身の振り方等々・・・さまざまな視点から、「今の自分」を作るまでのプロセスを公開していく。

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■「地図のない場所で眠りたい」感想



 「探検家・ノンフィクション作家」と言っても、ひとくくりにできないものだなぁ・・・。
 
 本書を読むと、心からそう感じる。

 なぜなら角幡氏と高野氏が、あまりに対照的だから。

 角幡氏は「自然」と向き合い、高野氏は「人」と向き合う。
 角幡氏は「己の限界に挑戦・システムからの逸脱」と、やや「尾崎豊」入った感があるが、高野氏はどことなく「楽しもうぜ!」的なゴールデンボンバー感がある。
 ロックライブで例えると、角幡氏は「アンプラグド」な静寂な空間を作り、高野氏は「観客にダイヴ!」。

 それぞれの著作を別々に読むと、そこまで違いを感じなかったが、こうして対談を読むと「両者の違い」がありありとわかる。

 その違いは、「語学に対する向き合い方」にも如実に出ている。

 本書のなかで、互いの語学力について言及しているが、高野氏は複数の言語を操り、角幡氏は比較的「語学に対する執着」は低めだ。

 このエピソードを受けて、両者の著作を思い浮かべると、なるほど納得。
 角幡氏は「人のいない未知の場所」を歩きつづけ、高野氏は「人のいる場所を選び、中に飛び込んでいく」ものが多い。

 彼らの著作を漢字にたとえると、角幡氏は「孤」、高野氏は「共(あるいは協)」。
 
 そんな二人のコントラストが見えてくるのが、本書の大きな魅力だ。

 一方で、二人の大きな共通点も見えてくる。

 それは「表現者である」ということだ。

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 実は私は、本書を読むまで大きな誤解をしていた。

 まず探検をして、その経験がすごいもんだから文章にして、その内容がすごいもんだから売れて・・・というループを思い浮かべていた。
 つまり「探検ありき」で、たまたま文章力もあるものだから本を書いたら売れました・・・という「運も才能もある恵まれた人」と思っていたのだ。

 しかし本書を読み、認識がガラリと変わった。

 角幡氏も高野氏も表現・発信することを第一とし、命をかけている。
 極端に言うと「まず文章ありき」で、探検は「表現の材料」。
 「一に探検、二に探検、三、四がなくて五に文章」かと思っていたが、実は「一に文章、二に文章、三あたりに探検」といったスタイルなのだ。

 角幡氏も高野氏も「ものを書くこと・表現すること」に対する情熱は、並々ならぬもの。
 彼らの本は、単に「文章のうまい探検家が書いた本」ではない。
 「書くこと・表現すること・発信すること」に人生をかけたノンフィクション作家が、未知なる世界を旅し、それを我々に伝えてくれるレガシーなのだ。

 ・・・とまあ、こんな風に書くと小難しい本に思えるかもしれないが、構える必要は全くない。
 
 そもそも高野秀行氏が関わっているという点で、ユーモアたっぷりなのは明らか。

 コンゴから帰ってきたあとに彼女ができて、最初に行ったデートが洞窟だったんだよ。ほら、誰でも最初のデートは自分の得意な場所に連れていきたいじゃん。

 

俺が(大学)5年生ぐらいのときに、マツドドンを探すとかいうやつがいたんだよ。千葉の松戸にマツドドンという謎の未知生物がいるそうで。



 その他、勝手に「ものすごい未知生物」を想像していたら、ただの野犬だった等、探検家ならではの面白エピソードも満載。 
 3ページに一度ぐらいはブッと吹き出すエピソードが出てくるため、電車のなかでは読まない方がよいだろう。

 今や押しも押されもせぬ人気ノンフィクション作家となった、角幡唯介氏と高野秀行氏。
 彼らの本を一冊でも読んだことのある人、そして本屋大賞等をきっかけに「これから読もうかな」と思っている人は絶対おすすめ!

 「地図のない場所で眠りたい」一冊読むだけで、全ての著作がグーンと美味になるだろう。
 
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角幡唯介「極夜行」。読む人生と読まない人生、絶対変わる超絶スゴ本!

評価:★★★★★

 私には地球にいるというより、宇宙の一部としての地球の表面に俺はいる、という感覚があった。(本文引用)
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 40ウン年生きてきて、それなりに、いやかなりの本を読んできた。
 このブログで紹介しただけでも1,000冊以上は読んでいる。
 おそらく今まで6,000~7,000冊は読んでるだろう。

 「極夜行」は、そのなかで間違いなくベスト1。

 胸震わせ号泣した本、とびきり元気が出た本、その時その時「この本最高!」と思ってきた。
 しかし本書は、それらの本をガツーンッ!!と抜き去ってしまったのだ。

 なぜ「極夜行」がそれほど魅力的かというと、世界が本当に違って見えるから。

 本書を読んだ後、外に出ると、昨日まで見ていた風景が全く違うことに気づく。



 太陽、風、草、花、土、気温、そして家族(特に子ども)。
 
 自分と関わる事物すべてが愛おしく、全身で受け止めたくなる。
 自分の感覚を総動員して、その事物が発する熱量をドーンと感じたくなる。
 
 そして夜になれば、星の瞬きを目でしっかり感じ、冷気を頬で受け止めたくなる。

 人工物だらけの街に住み、こんなことを言える立場ではないかもしれない。
 しかし本書を読んだ後、改めて・・・いや、初めてこう思えたのだ。

 私はこんなに美しい世界に住んでいたのか、と。

 さらに私にとって革命的だったのは、子どもへの見方が大きく変わったことだ。

 大人の道理が通じず、時にイライラさせる子どもが、こんなに美しい存在だったのか、と。
 大人の論理が通じず、感覚で生きているからこそ、子どもとはこんなに素晴らしい存在なのだ、と。

 私事で恐縮だが、本書のおかげで子どもへのイラ立ちが激減した。
 
 今現在、育児に悩んでいる人には、ぜひ一読をおススメする。
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■「極夜行」概要



 本書のタイトルにある「極夜」とは、白夜の逆。
 一日中太陽が昇らない状態で、極北地域では半年も続くという。

 本書の舞台は、そんな極夜地域シオラパルク。
 先住民が住む地域としては、世界で最も北にある場所だ。

 ノンフィクション作家・探検家、角幡唯介氏は、そこを起点に旅をスタート。 

極夜の世界に行けば、真の闇を経験し、本物の太陽を見られるのではないか-。

 稀代の探検家による、4ヶ月もの「極夜行」。
 果たしてその結末は?

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■「極夜行」感想



 本書は「本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作」。
 審査では圧勝だったそうだが、そりゃそうだろう。
 
 帯に「これ以上の探検はムリです」と書かれているが、読者としては「これ以上の本はムリです、読書はムリです。もう会えません」と言いたいぐらい。

 描く世界のバカデカさ、未知の世界に読者を誘う半端じゃない吸引力、絶対に想像では書けない「事実は小説より“メチャクチャ”奇なり」力、そして何度も「ブッ」と吹き出すユーモラスな文章。

 「この本が賞をとらなきゃ、何がとるのよ!」と、私の中のマツコ・デラックスが思いっ切りツッコミを入れてしまった。

 本書の魅力は、とにかく「先が見えない」ことだ。
 この本が出版されているということは、著者は健在であることはわかる。

 しかし読みながら何度も「実は角幡さんは死んでいて、遺稿なのではないか」「実は文章は現地からメールで送られていて、本人は未だ行方不明なのではないか」・・・そんなことを真剣に思っていた。

 何しろ月光だけが頼りの超大自然だ。
 
 あると思っていた氷がなくなり、テントの重みに命の危険を感じ、セイウチや狼が自分をねらう。

 なかでも大きな敵は、飢餓。

 本書いちばんの「読みどころ」は、食糧危機の場面だ。
 ドッグフード含め食糧を保管したデポが、ことごとく白熊に荒らされ、いよいよ命の危機に瀕することに。

 狩りをしようにも、「極夜」という環境が枷に。
 角幡氏も犬も日に日に衰弱。
 「犬を食べる」という妄想というか計画が、角幡氏の頭の中でどんどん明確になっていく。

 ああ、もはやこれまでか!?

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 結末は本書をお読みいただくとして、「大自然の驚異」をこれほどまでに生々しく伝える本は、ちょっとない。
 読むだけで寿命が20年ぐらい縮みそうだ。

 そう聞くと、「何だかこの本、怖い・・・」と思うかもしれないが、これがあにはからんや、実に楽しく読める。
 ユーモア満点な文章と、時おりさしはさまれる「ちょっと情けないエピソード」が、濃すぎる内容をうまくマイルドにしている。

 命がけの探検と、およそ同一人物が経験したとは思えないような「ナサバナ」。
 そのバランスが絶妙なので、とてつもなくヘビーな内容なのに「なにこれ、おもしろーい!」という感じでグイグイ読める。
 
 ただの「重たいノンフィクション」に終わっていないところがまた、本書のすばらしさである。

 ちなみにそんなエピソードで秀逸なのは、「犬は●●が大好物」という件。
 私が犬を飼ったことがないから、知らないのかなぁ?
 すみません、本書を読んだら「目に見える風景全て」が変わったが、いちばん変わったのは「犬」と「その飼い主」に対する見方かも・・・。

 探検・冒険・登山を書いたノンフィクションは結構読んできたが、これほど地球・宇宙の雄大さ・残酷さ・美しさをビシビシ感じた本は初めて。
 
 そして人間・・・特に「感覚で生きている子ども」が、とてつもなく美しく神々しく見えるようになった。
 本書を読んでから、我が子に対して優しくなれるようになったのは、意外な副産物だった。

 自分の中にも、今まで埋もれていた、見たことのない太陽が顔を出したようだ。 

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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