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「ベルリンは晴れているか」。10万円ぐらい払いたいスゴ本。意外過ぎる結末にうなった!

評価:★★★★★

 いずれにせよ、“戦争だったから”“非常事態だったから”目を覚ました猛獣が、私自身の内側にいたのは確かだった。
 私はいつから狂ってしまったんだろう。
(本文引用)
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 またスゴ本に出合ってしまった・・・。

 「ベルリンは晴れているか」の評判は聞いていたが、まさかここまで充実した読書ができるとは。

 ストーリーの重厚さは片手で持てないほどで、濃厚さは喉が焼けつくよう。
 あふれんばかりの人間愛が心をグサグサと刺し、意外過ぎる結末がとどめに。
 
 「この内容を1,900円+税で読めるの?読んでいいの?ホントに?」と著者と出版社に確認したくなった。

 はっきり言おう。
 「ベルリンは晴れているか」は10万円ぐらい出して読んでもいい本。



 ハードカバーの新刊を買い「損した」とモヤモヤしている人に、本書は絶対おすすめ。
 「損した読書」の苦い体験が一掃され、一気にプラスに転じることだろう。
 (そしてまた本を買ってしまい、出費がかさむという・・・。いいんだか悪いんだか)

 終戦直後のベルリンで、ある男性が毒殺される。
 かつて、その男性に恩を受けた少女は、彼の死を甥っ子に伝えようと奮闘するが・・・?

 国境や民族主義を越えたところで見えたものとは?

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■「ベルリンは晴れているか」あらすじ



 舞台は1945年のベルリン。
 戦争に敗れた今、米国・ソ連・英国・フランスの統治下に置かれている。

 土地も人間も荒廃しきったなか、ドイツ人少女・アウグステは突然、軍人の尋問を受ける。
 彼女の恩人・クリストフが毒殺されたというのだ。

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 警察はクリストフの周辺を洗い、犯人を捜す。
 その間アウグステは、クリストフの甥っ子の行方を捜す。

 クリストフの甥エーリヒは、かつてクリストフ夫妻のもとで大事に育てられていた。
 しかしエーリヒは幼い頃、突如失踪。

 アウグステは何とかして、エーリヒにクリストフの訃報を伝えようとするが・・・?
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■「ベルリンは晴れているか」感想



 本書を読み、まず浮かんだのは、宇宙飛行士・毛利衛さんの言葉だ。

 「宇宙からは国境線は見えなかった」
 
 聞いた当時も、「何という名言!」と心が打ち震えたが、本書を読み、毛利さんの言葉は本当に至言だなとしみじみ。

 なぜ国境はあるのか。
 同じ人間なのに、敵国とか同盟国とか●●民族や●●人種というものがあるのか。
 そして、なぜ戦争はあるのか。

 本書を読んでいたら、そんな思いがわきあがり、胸が震えた。

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 どっちの国が味方で敵で、敵国の人間は何をしてるかわかったもんじゃない。
 民族主義が自分に何をしてくれた?迫害と差別しかないじゃないか。

 そんなやり場のない怒りと、途方もない猜疑心。
 戦争とは、ここまで人の心を荒ませ腐らせるのか・・・と改めて戦慄した。

 だからこそ、作中で時おり見える「国境・民族を越えた思い、越えたい思い」に触れると涙が出てくる。

 陽気な泥棒カフカの、ユダヤ人を演じた日々の告白。
 アウグステが愛読書を命に代えてでも離さない理由。

 差別や民族主義で封じ込められた思想が解放される時、人は言いようもない喜びを覚える。

 本書に登場する人々の「告白」や「思い」には、「人間捨てたもんじゃない」という希望を感じる。

 明日世界が滅亡してもリンゴの樹を植えよう・・・そんな気にさせられるのだ。

 そしてラスト直前に明かされる、毒殺事件の真相。
 
 「ミステリーの禁じ手では!?」と思うほど意外すぎるものだったが、動機を聞いて納得&号泣。

 「意外過ぎる」のに、戦争・迫害という異常事態と重ね合わせて、実にうまく昇華されている。

 こういうミステリーの書き方もあるのかと、著者の力量にただただ脱帽・敬服した。

 「ベルリンは晴れているか」、今年読んだ本で、軽くベスト3にランクイン。
 家族で読み継いでいきたい一冊だ。

詳細情報・ご購入はこちら↓

戦場のコックたち  深緑野分

評価:★★★★★

――もし俺を心配してくれるなら、外の世界でがんばってくれ。もうこんなことが起こらないように。俺たちが戦場に行かなくて済むように。
(本文引用)
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 これほど、作者に会ってみたいと思った小説はない。それは「『深緑野分』という作家の顔を見たことがないから」という意味ではない。
 何て温かい物語を書く人なのだろう。何て人間味のあるストーリーを作る人なのだろう。こんな物語を書く人物に会ってみたい!純粋にそう思ったのだ。

 一応、「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい」で第2位にランクインし、週刊文春のミステリーベスト10でも第3位につけた作品なので、「ミステリー」と位置づけがほうが良いのかもしれない(実際、小さな事件がポツポツと起こるのだが)。しかし、本作はそんなことを完全に超越した文学作品だと思う。あー、何だか泣いちゃったなぁ。この小説に出会えて、良かったなぁ。



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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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