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「ディア・ペイシェント」で久しぶりの爽快一気読み!ドラマ化熱望!!

評価:★★★★★

どんなに的外れなクレームであっても、患者が納得するまで説明しなければならないとしたら、いったいどのくらい時間が必要になるだろう。
(本文引用)
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 いやー、スッキリ爽快面白かった!
 最近、何を読んでもページが進まず挫折・・・ということが多かったので、「もう読書ができない体かも」と落ち込んでました。
 
 でも「ディア・ペイシェント」で自信復活。
 息を止めて潜水する勢いで一気に読み、「やっぱり面白い本なら読み切れるんだ!」と安心しました。
 
 南杏子さんの本は「サイレント・ブレス」が期待以上(失礼!)に良かったので、本書も迷わず購入。
 新人とは思えない「巧みすぎるストーリー展開」と「種明かし」に、今回もおおいに唸りました。
 
 医師が描く医療小説って、医療知識に終始して食傷気味になることが多いです。
 でも南杏子さんの小説は、それだけではありません。



 「へえ~!」と思える医学知識に加え、「本人にしかわからない人間の心のひだ」が実にうまく描かれています。

 本作「ディア・ペイシェント」も「医は仁術」を地で行く小説。
 しかもきちんとミステリー仕立てとなっており、「医療小説に新たな風を吹き込むもの」となっています。
 
 とりあえず「ディア・ペイシェント」、ドラマ化希望です。
 ぜひ年末年始や夏休みのスペシャルドラマで!

 2時間サスペンスで放送してくれたら、テレビにかじりついちゃいそう!

 業界の皆さま、どうか映像化をよろしくお願いいたします。

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■「ディア・ペイシェント」あらすじ



 主人公・真野千晶は女性医師。
 大学病院から市民病院に移って以来、「モンスター・ペイシェント」の存在に頭を悩ませています。

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 そんなある日、病院内で一人の男性と出会います。
 彼の名前は座間。

 座間は千晶に好意的に近づきますが、どこか不気味な雰囲気。

 そのうち座間は、頻繁に睡眠薬をもらいに通院。
 さらに院内で千晶にさんざんクレームをつけ、ブログで病院や千晶の悪口を連発。

 座間とのトラブルに疲弊していた千晶を、先輩医師・陽子は励ましますが、陽子に大きな異変が起きて・・・?
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■「ディア・ペイシェント」感想



 本書を読むと、まず「病院のかかり方」「医師の見方」が変わります。
 そして「ミステリーの読み方」も。

 医師といえば「頭がいい」「エリート」「お金持ち」「すべてを手に入れた人」という「恵まれたイメージ」を抱きがちです。

 でも読むうちに、医師に対する見方が大激変!

 「毎日毎日、人の命を見つけつづける」というプレッシャー。
 患者の体が発するサインを五感全てを研ぎ澄ませてキャッチしないと、すぐさま「死」につながるという緊張感・・・。

 「世の中、これほど割に合わない仕事があるだろうか」と、医師に対する敬意が何倍、何十倍、何百倍も増しました。

 そして医師に対し感謝の思いをもつことは、結局、自分を救うことになると認識。
 患者が医師をビクビクさせると、医師は「患者の体の声」を集中して聞くことができず、誤診につながりやすくなります。
 
 極端に言うと、「死にたくなければ、医師と良好なコミュニケーションをとるべし」といったところです。

 超高齢化社会、これからどんどん医師の助けが必要となってきます。
 本書は、いえ南杏子という作家は、時代に求められた存在です(キッパリ)。

 さらにこの「ディア・ペイシェント」、ミステリーとしても秀逸!
 
 究極のモンスターペイシェント・座間がなぜ千晶をねらい、問題行動を起こすのか。

 座間の行動の謎が解き明かされるとともに、ドミノ倒しのごとく「さらなる謎」が判明。
 
 病院の警備員や同僚医師などさまざまな人物が、最後の最後まで「なぜ座間はこんなことをしたのか」を推理します。

 意外すぎる「真犯人の登場」も、本書の魅力。

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 これ、ドラマでやったら「意外すぎる真犯人」を誰が演じるか、キャスティングが大変だろうな~・・・。
 俳優さんの知名度によってはバレちゃうしな~。
 もし映像化されたら、「真犯人」のキャスティングをまずチェックしようっと。

 ところで著者・南杏子さんは日本女子大卒業後、出版社に勤めた後、大学医学部に学士入学して医師になったとか。
 
 一度社会に出てから医学部に入るなんて、相当難しいと思うのですが、こんな小説も書けるのですから「異能の人」「超頭脳の持ち主」なのでしょう。

 なみいる小説家志望者を抜き去って、スーッとトップに躍り出た「天才肌」・・・そんな気がします。
 こういう人って、いるんですねぇ。

 南杏子さんのメディカル・ミステリーは、今後もぜひ読みたいもの。
 新人作家さんですが、すでに私のなかでは「読めば必ず面白い作家」のリストに入ってます。

 次回作が待ち遠しいです!
 (ドラマ化もよろしくね)
 
詳細情報・ご購入はこちら↓

サイレント・ブレス  南杏子

評価:★★★★★

 「水戸君、もう一度言っておくよ。死は負けじゃない。安らかに看取れないことこそ、僕たちの敗北だからね」
(本文引用)
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 現役医師による医療小説というものは、昔からある。医師によるミステリー小説というのも、別段珍しくもないだろう。

 しかし、本書のタイトルと表紙を見た瞬間、どこか「他の医療小説とは一線を画す」雰囲気を感じた。多くの患者の死を見届けてきた現役医師が、終末期医療に特化して書き下ろしたミステリー。そんな宣伝文句に、著者の底知れぬ覚悟と温かさを感じたのだ。

 そして、その予想は見事に当たった。いや、予想していたよりも遥かに面白く味わい深い小説で、心酔しながら読んでしまった。
 正直に言って、著者のデビュー作ということで「ハズレ」でも仕方がないと、期待半分諦め半分で読み始めた。
 しかし、ミステリーの内容といい、「人の死」に対するメッセージ性といい、これはベテランの域に達している。南杏子氏の次作が非常に楽しみだ。



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 主人公の水戸倫子は、大学病院の医師。外来に時間がかかるため、他の医師からは要領が悪いと言われている。
 そんな倫子に、小さなクリニックで訪問医療をするよう辞令がくだされる。担当する患者はいずれも間もなく死を迎える者たちで、治療方法はもはやない。倫子にとって、それは左遷と同様のものだった。
 
 倫子は、男性看護師と共に患者の家を訪問するが、そのうち、この仕事の意味を悟っていく。
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 本書は6篇からなる短編集。各話に1人ずつ、死を迎えようとする患者が登場する。

 倫子は彼ら1人ひとりについて、何とか安らかな最期を迎えさせてあげたいと苦心するが、そこに必ずちょっとした「秘密」が隠されている。この「秘密」がなかなか手が込んでいて、思わず唸る。

 なかでもミステリーとして面白いのが、第3話「エンバーミング」だ。
 
 患者の古賀芙美江は、老衰で息を引き取ろうとしている。毎日、娘の妙子が献身的に介護をしている。
 倫子は妙子と共に、芙美江が幸せな最期を遂げられるよう精一杯働くが、そこに思わぬ横やりが入る。

 それは、芙美江の息子・純一郎。純一郎は最初から倫子を敵視し、母親が死んだら訴えるとまで言い出す。

 純一郎は、芙美江の命を延ばすよう倫子を威嚇するが、そんなある日、芙美江は息を引き取る。
 その後、純一郎の意外な思惑が発覚する。

 これは純粋にミステリーとして、実に面白かった。ドラマ「相棒」さながらの二転三転の展開には、ただただ拍手。他の物語も良かったが、この一話だけでも本書を買う価値があると思う。お見事!

 さらに、第5話「ロングターム・サバイバー」は、ミステリー性プラス人間ドラマとして完成している。

 倫子が担当する患者は、医学界の超大物教授・権藤。自分の死期を悟った権藤は治療を拒否し、倫子に外出の手助けを要請する。
 そこで権藤が廻った先には、ある大きな共通点があった。

 本書は短編集とは言いつつも、1つひとつの話が独立はしていない。回を追うごとに、死者を看取る倫子たちと、死を迎える者たちの姿とがひとつになっていき、その姿はさながら連作短編のようだ。
 最初は「なぜ、この患者は治療を拒否するのか」「家族はその姿をどうとらえるのか」について倫子自身が戸惑い、その謎を追うミステリー色が濃い。しかし徐々に倫子自身の意識が変わり、「この患者にとって最もよい生き方は何か」を深く考えていく内容になっていく。
 倫子が成長すると共に、患者1人ひとりの人生に隠された謎が大きく深くなっていく経緯は、読んでいる私自身も成長させられた気がする。

 超高齢化社会の今、終末期医療は目を背けてはいけない問題だ。
 そう思ったら、ぜひ本書を手に取ってみていただきたい。ミステリーというエンタテインメントを存分に楽しみながら、その問題について自分なりの解決策を見出すことができるだろう。
 そしてそれは必ず、世界にひとつしかない、あなただけの豊かな人生を生き抜くことにつながるだろう。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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