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「妻が椎茸だったころ」感想。ポテサラおじさんも、今頃椎茸になりたいと思ってるかもしれない。

「もし、私が過去にタイムスリップして、どこかの時代にいけるなら、私は私が椎茸だったころに戻りたいと思う」
(本文引用)
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 最近、話題となっているポテサラ論争。
 日経新聞でも何度かとりあげられるほど、熱い話題に。

 論争のなかで目にする、「手間がかかるわりに主役になり切れない」というポテサラの特徴には「確かに!」と瞠目した。

※ついでにお伝えしておくと、笠原将弘さんのポテトサラダと、井上かなえさん(かな姐)の「キャベツとツナのポテトサラダ」は超おすすめ。

 両方とも非常に簡単なのに、「えっ? なぜ?」って言うぐらいおいしい!
 笠原さんのポテサラは、夫が「こんなの家で作れるんだね。お店みたい」と絶賛(そこまで褒められると、作り方が簡単すぎて明かせない・・・)。
 井上かなえさんのキャベツツナポテサラは、レンチン一発。
 時短なのにホックホク&超美味で、「労少なくして功多し」のお手本みたいなレシピです。


 笠原さんのポテサラレシピは「100年レシピ」「僕が本当に好きな和食」を。
 井上かなえさんのポテサラレシピは、「井上かなえオフィシャルブログ」をご参照ください。)


 

 それはさておき。
 ポテサラ論争を知り、真っ先に思い出したのが、この本。
 「妻が椎茸だったころ」

 タイトルを見て「何だそりゃ?」と思うのも無理はない。
 「妻が椎茸だった」と知った夫自身が「妻は頭がおかしかったのではないか」と思うほどだ。

 しかしその言葉には、「手料理」というものに対する「意識の違い」が横たわっていた。
 
 かの“ポテサラおじさん”も、己が発言の思わぬ波及を知り、今頃、こう思ってるかもしれない。

 「嗚呼、自分も椎茸になりたい。椎茸だった頃に戻りたい」と。
 

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「夢見る帝国図書館」感想。「人を受け入れて生きるって素敵なことだね」と思える夢のような一冊。

評価:★★★★★

「しばらく口利いてくれなかったよ。ここは上野なんだから。いろんな人を受け入れてきた場所なんだからって」
(本文引用)
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 中島京子さんの本は「面白い」・・・というのとはまた違う。
 「面白い」というよりも、「読書の楽しさを教えてくれる」と言う方が近い。

 中島京子さんの小説は、読むたびに、読書という温泉に浸かってるような気分になる。
 お湯にゆっくり体を沈めながら、ふ~っとため息。

 「あ~、やっぱり本を読むっていいわ~。極楽極楽」と目を閉じてつぶやきたくなるような、幸福感をくれるのだ。
 
 「夢見る帝国図書館」も、そんな夢見るような一冊。

 図書館の歴史とともに、ある老女の生涯を振り返る。
 そこには「すべてを受け入れることの崇高さ、素晴らしさ」が満ち溢れている。
 そしてそれを阻む世情への悔しさも、ページの端々ににじんでいる。

 世の中の憂さも喜びも受け入れてきた図書館と、時を経てようやくすべてを受け入れる人間たち。
 
 図書館と人間が交わった瞬間、見えた奇跡とは?

 
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■「夢見る帝国図書館」あらすじ



 主人公は文筆業の女性。
 彼女はある日、上野でひとりの老女・喜和子に話しかけられる。

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 「小説を書いている」と伝えたところ、喜和子は彼女にある依頼をする。

 「上野の図書館のことを書いてみないか」


 それも「上野図書館が主人公みたいなイメージ」の小説を書いてほしいという。

 樋口一葉と相思相愛だった図書館、幸田露伴が日参した図書館。
 お金が足りず、戦争に巻き込まれ、何度も存亡の危機に直面してきた図書館・・・。

 主人公が図書館の半生記をつづる間に、喜和子の人生もさぐることに。
 
 実は図書館には、喜和子の人生に大きな影響を与えた「謎」が隠されていた。
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■「夢見る帝国図書館」感想



 本書を読み、意外だったのは「謎解き」があったこと。
 北村薫さんか米澤穂信さんを思わせる、「本にまつわる見事な謎解き」が登場するのだ。

 その謎が解けた瞬間、ポロポロポロポロ・・・。
 「こんなに粋な、気持ちの伝え方があるんだなぁ」と、涙がこぼれてきた。

 ここまで緻密で、ここまで人情味あふれる謎解きが出てくるなんて、「この本、もしや中島京子さんの新境地!?」と鼻息が荒くなってしまった。

 そして本書を読み、涙がポロポロ出てくるのは、「謎解き」だけではない。

 この物語には「すべてを受け入れる」という、雄大な温かさがある。
 己の価値観で排除するのは簡単。
 でもちょっと困難さを乗り越えて、相手を受け入れたとき、そこには「今まで見えなかった幸せ」がある。

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 「夢見る帝国図書館」は、そんな「寛大であること、受け入れることの素晴らしさ」を存分に教えてくれるのだ。

 「上野はすべてを受け入れる」と主張する喜和子さん。
 そのかげで、受け入れてもらえない苦悩をも味わってきた喜和子さん。
 
 彼女の人生こそ、図書館の人生そのもの。
 さまざまな人を受け入れ、さまざまな人と相思相愛になり、しかし国の経済状態が傾くと、一気に排除の対象とされる図書館。

 喜和子さんと図書館の生涯を重ねて考えると「すべてを受け入れるとは、何と幸せで心豊かなことか」と涙が出てくる。

 私も年を重ね、自分の価値観を絶対視してしまうことがある。
 しかし「夢見る帝国図書館」を読み、反省。

 己を妄信し、他者を認めないことが、いかに人生にとって損であるか。つまらないことであるかがわかった。

 そう考えると、本書自体がすでに「図書館が主人公の小説」なのかも。
 「小説の中に小説がある」という二重構造だが、喜和子さんが主人公に依頼した本こそ、この「夢見る帝国図書館」。

 ということは主人公の女性とは・・・?

 どうやらこの本、もうひとつ大きな謎がありそうだ。

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認知症が急増する現代に、これは絶対読むべき!中島京子「長いお別れ」

評価:★★★★★

 この人が何かを忘れてしまったからといって、この人以外の何者かに変わってしまったわけではない。
 ええ、夫はわたしのことを忘れてしまいましたとも。で、それが何か?

(本文引用)
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 今、世界的に認知症が急増しています。
 2017年、WHOは認知症について「国際的な公衆衛生上の優先事項として、各国で協力して対処する必要がある」と発表。
 2030年には認知症患者が7470万人に、2050年には1億3150万人になると推計されています。
(※日本経済新聞 2018年3月12日朝刊25面より)

 認知症の種類は主に4つ。
 「アルツハイマー型」「脳血管性型」「レビー小体型」「前頭側頭型」に分けられます。

 そのなかでも多いのがアルツハイマー型。



 日本の認知症患者のうち、3分の2がアルツハイマー型にあたるとされています。

 今回紹介する「長いお別れ」は、アルツハイマー型認知症患者の物語。

 校長や図書館長も務めた男性が、趣味の会合にたどり着けなくなり、家に帰れなくなり、家に帰っても帰っても「帰りたい」とわめくようになる・・・。

 家族にとって、男性の姿はすべてが理解不能。
 妻、三人の娘、孫たちは、そんな男性とどう関わり合うのでしょうか。
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■「長いお別れ」あらすじ



 東昇平と妻・曜子は、東京郊外に住む夫婦。
 昇平は国立大学を出て中学校の教員となり、校長や図書館長まで務めたインテリです。

 そんな昇平は、ある病気に侵されていました。
 病名は「アルツハイマー型認知症」。

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 昇平の病状は確実に進み、家族は昇平の一挙手一投足に頭を悩ませることに。

 家に帰れなくなり、旅行に出かけてもどこに来ているのかわからず、葬儀に来ているのに誰の葬儀かわからず、入れ歯をベッドに隠しては探し、汚物をオムツからよけては並べるなど、「あのしっかりしていたお父さん」からは考えられない行動が次々と出てきます。

 ヘトヘトになる妻と娘たちですが、最終的にたどり着いたところとは?
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■「長いお別れ」感想



 一言でいうと、「最高」。
 もろ手を挙げて、そう賞賛したくなる小説です。

 認知症を題材とした小説は多々ありますが、これほど「高度な技術」を感じる小説はありません。

 どこが高度かというと、「笑いながら泣け、泣けながら笑える」からです。
 
 とかく暗く、過酷な描写になりがちな認知症の物語。
 でも「長いお別れ」は、ユーモアを持たせながらも、認知症の現実をしっかり描いています。

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 だから余計、「長いお別れ」は心に迫ります。

 悲しみが底を打つと、人間、笑いたくなる。
 いや、笑いでもしないとやっていけない。

 泣いているうちに笑ってしまい、でもやっぱり泣いてしまうという何とも複雑な感情が、読むうちにドドーッと押し寄せて「感情の海」に溺れそうになります。

 たとえば印象深いのが、お通夜のシーン。
 昇平は娘と一緒に、旧友の通夜に参列します。
 
 通夜の席で、昇平はかつての友人たちと再会。
 故人は昇平と最も仲が良かったため、友人たちは昇平に告別式で弔辞を述べるよう勧めます。

 娘は「無理です」と断るのですが、友人たちはなかなか承諾しない様子。

 でも次第に、昇平の身に起きていることの深刻さを友人たちは悟っていきます。

 マツモト氏は一杯目を一気に飲み干すと、昇平に向かって言った。
 「まったくいやになっちゃうなあ。我々の同期もこうしてどんどん死んじゃう。残される者はたまらんな」
 昇平の目はみるみる丸くなった」
 「え? 誰か死んじゃったのか?」


 その時は無理やり「他の同期が死んじゃったことを指している」と解釈した友人たちですが、会話が進むうちに、昇平の病状の深刻さを痛感せずにいられなくなります。

 他、昇平の「きれい好き」エピソードも秀逸。
 就寝中、きれい好きなだけに思わぬ行動に出る昇平。

 それを聞いた娘たちはただただ驚愕。
 
 妻・曜子の「ほら、お父さん、きれい好きだから」の言葉に対し、娘が「なんか、その言葉は、この場合、当てはまるのかしらね」と返します。

 この「きれい好き」のシーン、思わず「ブッ」」と笑ってしまいますが、笑った後、心の底に重い石がのしかかったような気持ちになるんですよね・・・。

 「ああ、人間の尊厳って何だろう。こうなってもまだ、人は生きていかなくてはならないのだろうか。こんなことになるのなら、いっそ・・・」と絶望的な気分になります。

 だから「長いお別れ」は、悶絶するほど「うまい!」と言いたくなるんです。
 認知症の現実が、臨場感たっぷりに、かつユーモラスに描かれている。だからこそ認知症の厳しさが、ちょっと跳ね返せないほどに強く伝わってくる。
 これはものすごく高度な技術です。
 
 中島京子さんの小説は何冊か読んでいますが、「こんなにすごい作家だったとは・・・」と尊敬の念を新たにしました。
 小説家らしい小説家、という感じですね。

 「長いお別れ」は、着陸も実に見事。
 最後、どうなるかとヒヤヒヤしていましたが、こういうラストは全く予想外。

 最後の最後の最後まで、ひたすら「う~ん、うまい!」と唸りました。

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祝!広島カープ優勝・・・というわけで「ハブテトル ハブテトラン」中島京子

評価:★★★★★

初めから「まずい」って、思わなきゃいいんだ。「もしかしたら、おいしいかもしれないよ」くらいに思ってればさ。
(本文引用)
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 広島カープ、リーグ優勝おめでとうございます。
 連覇は実に37年ぶり。
 いよいよ本格的に神ってきましたね~。

 私は両親ともに山口県出身なので、一族郎党カープファン。
 叔父はメアドにcarpと入れているし、兄は古葉監督時代に買った広島カープのスポーツバッグを後生大事に持っています。
 
 あ、広島カープのファンの方は、ぜひ重松清さんの「赤ヘル1975」も読んでみてください。
 ファンなら悶絶すること間違いなしの一冊ですよ。

 というわけで、今回読んだのは中島京子さんの「ハブテトル ハブテトラン」
 実は私、結婚するまで「ハブテトル」を標準語だと思っていました(「スイバリ」も)。

 母は、私がむくれたりすねたりするたびに、「何かねもう、はぶてて!」と必ず言います。
 だからてっきり、「はぶてる」という言葉は全国共通だと思っていたんですよね。

 ところがある日、アンガールズさん(広島出身)がテレビで「はぶてる」と「すいばり」を方言として紹介しているのを発見。

 それを見た瞬間、「えっ!?あれって方言だったの?」と驚きました。





 「はぶてる」はいいとして、「すいばり」は結構いい表現だと思うんですけどね(※「すいばり」とは、手の平に刺さった木のトゲを言います。まさに「吸い込まれた針」という感じなので、とても的確な表現だと思うのですが、いかがでしょうか?)

 そんな私にとって、この「ハブテトル ハブテトラン」は、たまらなくノスタルジーを感じるというか、とにかく両親や祖父母親戚の顔がちらついては「ウフフ」と笑みがこぼれてしまう一冊でした。

 山口・広島出身の方は、ぜひ「赤ヘル1975」と同時に読んでみてください。
 思わず頬がトロ~ンと緩みますよ!
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■「ハブテトル ハブテトラン」あらすじ



 主人公の大輔は小学5年生。
 学級委員を務めていますが、クラスは完全に学級崩壊。

 方々から「学級委員なんだから何とかしろ」と言われ、そのプレッシャーから不登校になります。

 心配した両親は、大輔を一時的に転校させることに。

 広島県にある母親の実家に大輔を預け、学校に通わせることにします。

 大輔は新しい出会いに恵まれ、楽しく過ごしますが、あるタオルを見て、やり残したことを思い出します。

 悩んだ末に、大輔は「やり残したこと」を「やる」旅に。

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 さて、大輔の積年の思いは実るのでしょうか?
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■「ハブテトル ハブテトラン」感想



 この小説を読むと、「やる前から諦めてはいけない」という気持ちになれます。

 やる前から「ダメに決まってる」と思いこんでしまうと、人生の半分以上は損をする。
 逆に「ダメでも何でもいいから動いてみる」と心に決めると、人生は何倍も何十倍も楽しくなる。

 心からそう思え、ブルブルッと気持ちが奮い立ちます。

 大輔は最初、何に対しても消極的。
 いえ、消極的と言うよりも、ひたすら物事を斜めに見ては「やらない理由」を探すような子どもでした。

 その態度を見た大人や友人たちは、大輔に対して「ハブテトル」と苦言。
 次第に大輔は心を開き、大きな行動に出ます。

 「なに、ハブテトル」と言われていた少年が、ハブテルのをやめ、硬い殻から飛び出していく。

 そのプロセスを見ていると、矢も楯もたまらず、自分も行動を起こしたくなります。

 そして過去の自分が猛烈に恥ずかしくなります。

 今まで、ハブテルことで物事から逃げてきたんじゃないかって。

 自分の怠惰や過ちについて弁解する言葉すら見つからず、ただハブテテ、無為に時を過ごしていたんじゃないかって

 ハブテることで周囲に甘え、許してもらおうと思っていたんじゃないかって。

 でも大輔の姿を見ていたら、ハブテている場合じゃない。

 ハブテそうになったら、深呼吸をして、とにかく前に進んでみよう。

 無理やりにでも笑顔を作って、ハブテていた自分を変えよう。

 そう思えるようになりました。

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 児童文学なのでサラッと読めますが、かなり人生に「効く」一冊。

 なーんかやる気が出ない、面白くない。モヤモヤ、頭にくる。

 ふて寝のひとつもしたくなったら、ぜひこの本を読んでから寝てみてください。

 目が覚めたら、面白い人生を歩める自分に変身してますよ。

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小さいおうち 中島京子

 「優れた女中は、主人が心の弱さから火にくべかねているものを、何も言われなくても自分の判断で火にくべて、そして叱られたら、わたくしが悪うございました、と言う女中なんだ」
(本文引用)
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 誰にも教えたくない、極上の隠れ家レストランのような小説だ。といっても、2010年上半期・直木賞受賞作品であり、山田洋次監督のもと映画化もされる(2014年1月公開)のだから、誰にも教えたくないも何もないのだが。

 赤いお屋根のお洒落なおうち。決して豪邸というわけではないけれど、豊かな生活を送っているということは間違いなく伝わってくる。
 そんな幸せそうな家で起こる、ちょっとしたトラブルや秘密は、周囲の者の好奇心をかきたてるものだ。そしてそれは読者の心をも。


 絵本の「ちいさいおうち」よろしく、激動の時代を見つめつづけた「小さいおうち」の物語は、鈴を転がすような流麗な筆致で人間の暗部をさえざえと描いた、実に見事、いや天晴れな小説だ。
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 主人公のタキは、昭和初期、尋常小学校を出た後に女中奉公のため上京する。
 器用で頭の良いタキは、優秀な女中として、行く先々で頼りにされ可愛がられる。

 そんなタキが最も長く勤めたのが、赤い瓦屋根のしゃれた洋館をもつ平井家。
 玩具会社に勤める主人は、戦闘機等のヒットで景気が良く、美しい奥様も上機嫌。奥様の連れ子である坊ちゃんも含め、タキは影となり日向となり平井家を見守っていく。

 そんななか、日本には確実に暗雲が立ち込めていた。中国や米国との戦争、兵隊にとられる男たち、禁じられる贅沢、お腹をすかせる子供たち、壊れゆく人間性・・・。

 平井家も以前のような華やかさが失われ、赤い屋根の洋館は常にギスギスするようになっていく。

 そこで隠された、ある「秘密」とは?
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こう書くと、単なる「激動の昭和を生きた一家の物語」のように思えるかもしれないが(そのように読んでも十分面白いのだが)、この小説の面白さはそんなものではない。

 平井家に流れる、どこか不穏な空気を、テンポの良い会話や情景描写でなでるように描き、「秘密」を暴くようでなかなか暴かない。
 その焦らしようは、登場人物も読者も一体となって「本当はこうなんでしょ?早く言っちゃいなさいよ!」と突きたくなるほどだが、そのはぐらかし方があまりにチャーミングで品があるので、ついつい許してしまう。

 ところが驚いたことに、私が考えていた「秘密」とは違う、もっと大きな「秘密」が、この小説には隠されていたのである。

 それに気づいた瞬間、読む者は皆、表紙と裏表紙を改めて見つめ、この赤い屋根の家の「本当の姿」に目を剥くことだろう。
 小さいおうちの小さい世界がコッソリと描かれているのに、何て大きな想像の翼を開かせてくれることか。

 この不思議な構造の小説が、映画でどのように表現されるのか。スクリーンで最後に映る「小さいおうち」と、私の頭の中で最後に映る「小さいおうち」とどう違うか、いや同じなのか。
 それを劇場で確認するのが、今から楽しみで楽しみで仕方がない。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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